あおば 2011年6月10日1時15分から2011年12月22日23時34分まで ---------------------------- [自由詩]おとなのえこのくに/あおば[2011年6月10日1時15分]                   110609 日が経つと 降り積もった雪も堅くなる かじかんだ手でスコップを掴み 腰を伸ばし 柔らかそうなところに 突き立てた 音もなく入っていく刃の先が とらえどころのない不安に怯え 立ち止まるのか 柄が潜ることはないが 堅くなった雪は重い プロレベルのジューキが唸りを立てて街道を走るが 狭い枝道には入らない ここまでは来ない 戸口の前まで1時間費やして雪掻きをした 大人になると雪が重くなる 今年も春が待ち遠しいが 雪が降らないと水不足となり 夏に不便をかけることになると 遠慮しながる降るためか 堅さもイマイチで へっぴり腰でも除雪できるのが少しだけ悲しい 雪が無くなると花が咲き 賑やかになると ジューキは何処かに行ってしまうようで 走らなくなるが スコップを持たなくなった私は 手持ちぶさたに道草を食ったりして 忙しそうにしている ---------------------------- [自由詩]車前草/あおば[2011年6月16日9時52分]                  110616 ものども頭が高い! 恐れ多くも ここにおわすは 先の副将軍 水戸光圀公であらせられるぞ 印籠を目掛け矢音 目を瞑り横っ飛びに 3回転して立ち上がる 目がふらふらするが 若いから平気、平気と考えた 右足はこむら返り スニーカーのつま先が空を切る 手も滑り 目の前の車前草すらつかみ損ねてしまったのね 情けないあなたと 場違いなセリフを繰り返す 一面の菜の花 きれいきれい 薄汚いおおばこはこべ 嫌われ者は底なし沼と 囃し立てられ 谷底へ真っ逆さま ずるずると滑り落ちていく 顔面を打ち付けて気を失った 気がつくと お供のものどもが 真っ青な顔をしている 傷の手当てをしてもらい 助三郎に命じ 街籠を雇って宿に帰り 忍びの者たちにも 口封じの弐分金を渡す 気の弱そうなものには 壱朱でも構わないと念を押す 財政緊迫の今 お蔵米の横流しだけは許せないと 助太刀に来たのにこの始末 情けない 期待はずれはこりゃ車前草 ずる賢い金貸しの前ではぺったんこ 手も足も出せません お陰で崖から転落したではないか ご威光もなんのその 痛い目に会ったよと お供の格さんは呟いた 好いではないか また来週に期待しようぜ さすがに天下の副将軍 にっこりと 金平糖を頬張った 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作を修正、タイトルは、小原 明季さん ---------------------------- [自由詩]くーるくるくる良い目眩/あおば[2011年6月20日20時22分]                    110620 どんなに素晴らしい内容でも、端から理解できないことをしゃべり続けられては堪りません。また、時間がないときに丁寧に詳しく話されても困りますし、会話を成立させるのは難しいです・・。 お腹が空いたら チーズかまぼこを輪切りにして串に刺して揚げる。 宅配便がまだ届かないので 約束の時間が来たのに外出できないとメール 今頃イライラしたり腹立ち紛れに絶交とか もう見限ったよと決められたりしている頃だと思うと 時計がなかった時代の方が気が楽だったよと考える 昔だって 月が山の端から顔を出したときとか 神社の杉の梢に隠れたときとかに 決められていたんだから そんなに遅れるわけにはいかないぜと 小さな兄貴が横から口を出す 律儀な兄貴は几帳面 義姉さまとのお約束の買い物に出かけました 横着な弟は 引き籠もったまま 古い上着を繕っております 着た切り雀の甚平と綽名され リサイクルショップの前では 首を縮めて立ち止まる 古着屋の前では胸を反らし 交差点を右に折れ モノレールを頭上に感じながら とあるビルの1階に辿り着いた 其所では月の出を合図に詩の朗読会が催され 遅刻してゲスト朗読を聞きそびれた人も居ましたが 月が杉の梢に隠れる頃までは賑やかな人の声に溢れ 夢中のうちに チーズかまぼこの気配も失せて お腹が空いたなぁと 誰もが感じる頃まで帰る人はいませんでした。 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作 ---------------------------- [自由詩]祭り囃子/あおば[2011年6月26日2時25分]               110626 首が回らない それは緊張し過ぎたためでしょう お金がないのはそれだけ厳しいことですから 500円不足の苦情処理途中に 1万円札を崩してくださいと 話しかけるのは間違いの元 虎の子を渡したのに 払ったの払わなかったのと 当然の権利を疑われたりしますから 1000円札をいつも用意しておきたいものですと 声には出さずに タクシー乗務員はGPSをリセットする はい、着きました、710円です ありがとうと一声掛けて下車したところ 目的地は目の前で 楽をして 歩かないから 昼食代もなくなった それに気がついたのは5分後だったのに 500円が不足したりして 恥をかいたり疑われたりするのは2時間後だと予測不能のことだったと 予測不明をさらけ出す 自分のためにお金を使ってなにが悪いと 誰かにいいたい気持ちを抑えて 深夜のバス停の時刻表を携帯に写し込む 我慢したときとしないときの味覚の相違についての論文は 査読委員の逆鱗に触れたのか 掲載不可との返事があった 返事があっただけありがたいと思いなさいと消息通 恩着せがましく耳を嚼むように囁いた ぼんやりして愁嘆場を見逃したけど それはそれ 今日からは 祭り囃子も聞こえる季節が来たから 30分だけ歩いて行こう クールビスに身を包み 少年少女の姿になって てんでんばらばら 足音軽く 身体中が解れていくね 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、ひかり。さん ---------------------------- [自由詩]ばけもの/あおば[2011年6月27日20時57分]                 110627 化け物といわれた男 おとこなのに乙子と呼ばれるのは大嫌い 蒲柳の質で ウィルス感染を恐れ 人混みを忌避した 老いて 関節リュウマチになったが 人混みを恐れ 塗り薬で誤魔化しているうちに 痛みに耐えきれず 医師の元へと 蹌踉と街に出たが 帰宅途中の 愉快な集団に追いつかれ 文字通り立ち往生した ウィルス感染を恐れ 自ら呼吸を止めたのだと噂されたが リラックスするために噛んでいたチュウインガムを誤飲して 呼吸不全になったのだという そんなこともあるのかと信じたが 事実は全くの冗談で からかわれたのだと知る この世には 化け物がいないのだから 端からそんなおとこも存在していなかったのだと笑われた 懸命にメモを取って損したと文句をいったら 要請したわけではありませんよと 目が厳しくなる 声が厳しくなり、口が裂ける前に慌てて退散した これだから世間は怖い ---------------------------- [自由詩]誰も貴方を呼ばない/あおば[2011年7月1日0時51分]               110701 ありふれた放射性同位元素を探し 地球を三周くらいした後に 原始人の顔をした博士が暖簾を潜って入ってきたときに 味噌ラーメンを啜っていた者たちは3名で 豚骨ラーメンを啜っていたのが2名 きつねうどんが食べたいとごねていたのがあおばで ご亭主は嫌な顔もしないでうどんの玉を湯がいてた 博士は、なにも言わずカルシウムが湧き出すようにゆったりと腰を下ろし 水をぐいと飲む なにも言わないのにすぐに運ばれてきたのがチャーシュー麺 細胞の中のカルシウムイオンの挙動についてはEテレに任せ 飼われてキタキツネは裏口からそっと抜け出して 生まれ故郷の河原に帰る 呼ばれなくてもやってくるものと 忙しくてなかなか来られないもの 利益のために捕らえられ 虐待されるもの 理不尽な扱いに耐えかねて逃げ出す者も居て この国の成り立ちもいささか複雑ですと 博士は誰に言うともなく呟く ラーメンは思いの外に消化が良いので カルシウムイオン不足の君たちにもお勧めできますと 私はなにに使えるか分からないが とりあえず使えそうなキャッチコピーを取りそろえ 専用のノートに索引付きで認める これから先は呼ばれない限り入場できない世界だから 君たちは置いて行くよとは 心優しい博士が口にすることはないが 僕たちは行けないのだとはなんとなく分かる 魔法の金属(カルシウム)を薄く伸ばして箔にして太陽に透かし 眺めてみたい どんなふうに見えるのか 君たちは知っていても教えてはくれないから 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、クローバーさん ---------------------------- [川柳]雷雲/あおば[2011年7月2日12時08分]                     110702 能天気ノー電気だとビラ配る 天気雨電力不足は管轄外 平日は電気が不足足擦る 子育ても介護も知らぬ放射能 危険だと高度を上げる雷雲 ---------------------------- [自由詩]かけがえのない時間/あおば[2011年7月4日15時33分]              110704 時間はいつでもその時独自の意味を放ち、代わりなどあろうはずもないのだけど37年ぶりに「電力使用制限令」が発動され、15パーセント節電しないと罰金を取られるから、それは困る。7月1日からは木金を休みにして土日に操業することにした。上からの命令で、土日の休みが無くなって、代わりに木金がお休みとなり、なんだか気分が落ち着かない。今朝も学校に通う男の子達はいつもの顔をしているが、土日はどんな顔をしているのだろう。一人遊びが出来なくて、とらえどころのない時間をもてあまし、ぽつねんとケームに熱中するしかないのが目に見えるから、私設の学童保育所を探す必要もありそうな気もするが、代休割増金などもらえないから、学童保育の費用が出ない。虎の子の貯金を下ろししばらくはそれでしのぐか、それとも生命保険を解約するか。かけがえのないはずの時間があっさりと等価交換されて、すっきりした顔の電流が早朝の架線をスイスイと流れていくのが君に見えるか、そんなことを呟く男の周りにもどんどん熱気が押し寄せてきて、もうしばらくすると耐えきれなくなりそうだ。 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作の誤字脱字を修正、タイトルは、るるりらさん ---------------------------- [自由詩]ヒートテックに花束を (朗読用)/あおば[2011年7月7日14時29分]                  110707 古き良き時代を懐かしみ[1] 「ヒートテックに花束を」 プレート損失40ワットでは [2] 寿命1850時間 うーむと唸りながら 真空管アンプを起動する [3] 微かなノイズのあとの ピアノソナタの確かなリズム 今日も生きているのだと 呟かなくてもよいのだ 1本1500円のソ連製真空管 (ワンカップ大関そっくりの形の) [4] 軍用ГУ-50型 [5] ドイツ生まれで 第2次世界大戦後 寒い国でも使われた [6] 1850時間÷24時間は約77日 2ヶ月と2週間 あまりにも短いですね 儚い夢ですねと 3本足のトランジスターが慰めて ICの顔で振り返る 個が消えて 個々が集合化して 顔を変え ICになり超能力を獲得したと ユニクロの ヒートテックも同意する そこでは ぬくぬくとあたたかで爽やかで 不思議なことはなにもありません お金さえあれば いつものとおりの生活が いつまでも送れます その声に 正月の行事は怪訝な顔で振り返り [7] 今までのリズムが取れないよと 走り疲れた箱根駅伝ランナーの苦しそうな顔の たすきを渡し、崩れ落ちる映像からは どんな音も感じとれないが 寿命1850時間の束縛のなかでも 絶え間ない振動とリズムの 音のある世界が拡がって 水が無くても 生きていけそうな 気がする 注 [1]当事者責任回避のため・・。 [2]40ワットが最大定格。 [3]起動させるの意。させるではリズムがとれない・・。 [4]朗読する説明文なので、ワンカップ大関そっくりな格好とは、と書くわけにもいかない・・。 [5]詳しくは、ウィキペディア (Wikipedia)インターネット百科他をご参照下さい。 http://en.wikipedia.org/wiki/GU-50 [6]作られて使われたの意。 [7]初稿は、2011年1月2日、「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。タイトルは、帆かけさん。 古き良き時代、狭義的には、2011年3月11日以前を、広義的には、生々しいリアルな記憶がやや薄れる10日以前ぐらいかと感じております。 ГУ-50型送信機用5極真空管 試作に用いた5球スーパー改造のバラックセット 危ないので、馴れないかたは真似しないでください! ГУ-50型を3極管接続A級オーディオ増幅器に用いたときの高調波歪み率特性(計測周波数は1キロヘルツ)。 歪み成分は耳に優しい第2次高調波成分が殆どなのでオーディオ用途にも充分使用できそうだ。 パワーがあまりにも小さいのは、電源回路が貧弱なため、電源強化すれば、数倍のパワーが期待できそう。 ---------------------------- [自由詩]停電の夜に/あおば[2011年7月9日1時09分]                 110709 牛10頭分のすじ肉求む 血を抜かれ吊り下げられた解体中の牛の姿に 無罪判決を聞く検察官の寂しさを重ねてはなりません 頼りのお父様も定年を迎え 我が家も財政規模を縮小さぜるを得ないので 霜降り肉は当分食卓に並ぶことはありませんが 今日は、お祝いですからと 老舗のお座敷に膝を揃え 岩谷のガスカセットをセットして 青い炎を揃え すき焼きの準備が整った この辺りで隣室の幼児が泣きだしたりして まだ若い母親が取り乱したりして騒がしい様子だが 声だけなので、聞こえないふりをして お父様はいつもの陽気を装う 作者は、老舗では、今でも炭火を用いているのではないかとの疑念が沸々とわき出すのを覚え これ以上書き続ける気持ちを失い 廊下を音もなく通り過ぎる古老に声を掛け 計画停電の夜の思い出を語るように促すが 古老は、歳を取りすぎていてつい最近の計画停電の夜のことは忘れてしまい 1946年頃に始まる不規則な停電の夜のことを語り出す なんでも、1945年8月に戦時体制が解かれ、軍需工場は操業を停止 当然のことながら、動力源のモーターも止まり、水力電力に余剰が生じた 都市では家庭用薪炭、石炭などの燃料は常に不足気味で、電力料金は定額であっ たのをこれ幸いと、簡便な電気コンロ等の需要が増大、冬を迎え、電気ストーブなども製造販売され、あっという間に未曾有の電力不足となったという。定格100ボルトの電圧が、夕餉時には50ボルト程度まで下がり、電灯は暗く、蛍光灯は光を失い(蛍光灯は家庭には無かったので、想像するだけですがと古老は左手で頭を掻く)ラジオも音を止め、すいとんを啜る貧しい食卓の主なる話題も自然と暗く乏しくなって、食料配給の遅配への不満と不安、配給物資の闇市への横流し疑惑についてなど、清貧を楽しむ余裕など少しもありませんでした。そのうえに明日は早起きして、殺人的な満員列車に乗り込んで買い出しに行かなくてはなりません。一張羅の背広を売って継ぎの当たった国民服を着続けるのは嫌だと思ってもお米を食べないと力が出ないから仕方のないことと思うようになりました・・。湿っぽい話が延々と続き、静かに頷きながらも、霜降り肉のすき焼きの柔らかい舌触りと脂の甘み、艶やかなふっくらとしたごはんを拝むように素直に頂いたのは、作者だけだったかも知れません。なにしろ、近頃の停電の夜は蒸し暑くて・・。 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作の修正、タイトルは、noteさん ---------------------------- [自由詩]マリーンスポーツ/あおば[2011年7月12日0時31分]                     110712 紫外線防御を完璧にしなくてはなりませんから フルカバーのバイクに乗って 夏の海に行ってみよう 2サイクルでも構わない 4サイクルならなお良しと 頭の大きい評論家氏が横柄にセルモーターを押すと uvカットのボディはぷるぷると震えだし 粘着性を嫌い 僅かな空気がまつわりつくのも許さない 見あげたものだねその美人根性 夏の眩しすぎる光線を遮って 内側のエンジンを保護してる キラキラと光り輝く軽合金の 水平型の並列ピストンは目を回すことなく ストンストンと回り出す コピーをものともしない根性で走り出す その軽やかな音を聞きながら 重々しいVツインの マルーンのボディにワックスを掛けて これから納車に出かけます。 ---------------------------- [自由詩]杞憂/あおば[2011年7月13日12時47分]                  110713 相済みません。 タイトル提示を一日間違えてしまったようです。 不手際を心からお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。 粗忽者とは知ってはいたが、今回のは弁解の余地がないようだ。 腹切ってお詫びとも考えたが、それは近所迷惑だし、歓迎する人は何名いるか、 とんまな奴が、迷惑を掛けて、尻ぬぐいもしないで、あの世に逃げたと叱られるだけだろう。恥を忍んでこれからも身を謹んで生きていくのだ。好意的な意見だけを懐中に手ぶらで外に飛び出した。 気づいたら広々とした水田地帯に居た 飛び出してから何日、何時間経ったのか分からない 喉が渇き腹が空いているのだけは確かなようで 暑いので唾を飲み込む余裕すらなくなった 水が飲みたい なにか食いたい 食えるならば 木の根を掘っても囓りたい 木の芽を摘んでも囓りたい とぼとぼと ずぶずぶの沼地のような水田地帯の畦道を行くと 遠くで蛇が何匹か寝そべっている 無表情にこちらを見るから 久しぶりの獲物だと 気づかないふりして近づいた 稲株の近くではトノサマガエルが息を止めてじっとしている 蝸牛も気づいたのか動きを止めた 空にはトンビがけだるそうに旋回するのみで 日が陰っても知らん顔 枯れ枝を探すが見つからない 小石もない ここは整備された水田地帯なのだ ベルトを外し ヘヒの頭を目掛けて一振りしたが 2寸程外し 蛇は稲の株と株の隙間をシランフリして抜けて行く 蛇以外にも 手近なもので食えるもの無いか探したが 足下の蚯蚓くらいだろうか 素手で掘るのは嫌だから なにか掘るものはないかと探したが 小石がひとつあるだけで 割れたかわらけ一枚無い 田圃の中にはタニシがいないかと 目をこらしたが 生きものは見えないようで ザリガニがいたら大喜びするのだがと 残念に思う ウナギはおろかナマズもタウナギも雷魚もいない 産卵に訪れる鯉も鮒も居ないようで オイカワも泥鰌もハヤもカダヤシすらいない 日は中天にさしかかり 雲が切れた空からはこれでもかというくらい熱い光線と 目には見えない紫外線が降りそそぎ腕がひりひりする みるみるうちに身体から生気を奪って行く 喉が渇き 食欲も失せて 立っているのも辛くなる 遠くを快速電車が轟音を立てて通り過ぎる エアコンの効いた窓は閉め切られていて 別世界の住人を運んでいるのだと宣言している 財布の中身は空ではないが コンビニはおろか販売機もない 納豆売りも豆腐屋もアイスキャンデー屋も通らない トコロテン屋が来るとしたら それはテレビの撮影の為だけだろう 無慈悲な仕打ちを受けているような気になって 手持ちぶさたのまましばらく呆然としていたが ケータイがあるのに気付き ケータリングサービスを利用しようと考えたが 今すぐには間に合わない 少し乾いた草に座り 力無く東の空を見ていたら 大きな赤い物体が静かに現れて こっちの方に向かってくる アレが噂の大隕石かもしれないと思ったが 呑み込むには熱過ぎるし噛み砕くには堅すぎる こどもの玩具に少しだけカケラを頂いておこうかと 欲を出して立ち上がると 送迎用マイクロバスが農道脇から顔を出し県道へと向かう 運転しているのは定年退職後にも業務委託契約で不定期の運行だけを任されている個人事業者だと分かる 退職金で購入した電力株価が少しだけ上がったので 気分よくアクセルを吹かしているみたい 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作 ---------------------------- [自由詩]窒素ガス/あおば[2011年7月15日0時05分]                    110714 単純な気候に憧れた猫の眼を考案して真空管ラジオに付けてみた 電源を入れるとみるみるうちに緑色に光り、選局する度に眩しそうに瞬く これは素晴らしい実用新案は堅いと思ったら 1930年代には実用化され 殆どのラジオには採用されていたと知る 21世紀の今頃に気がついたおまえは何者なのだと ジンギスカンのような強者に襟首をつかまれ 廃材置き場に投げ捨てられた 雨が降って地固まると聞いてはいたが こんなに暑くては耐えきれない かちんかちんに堅くなり コンクリートのような硬度だと 歩きながら感じているが 数値化できないので万歩計にも嫌われて 休めの声に肩で息を整えてから おもむろに窒素ガスを注入する ---------------------------- [自由詩]擬宝珠/あおば[2011年7月16日17時41分]                  110716 ギと鳴く虫か やりかけの画像が ぎごちなく 振り出しに戻ると 好くない知らせが 虫の息で横たわっている 凡人には感じられない 寂しい風景が描かれ 通り過ぎる男達が目を背け 配達請負人を呼びとめ 支払期限を延ばそうとする 地デジの天下になり 意味あるものが映らなくなった頃に 横柄な回収車がやって来て 有無を言わさずに連れて行く うっすらと埃の跡が残り 台風の訪れを待ちわびる 吹き飛ばされて 跡形もなくなるのを願っているのか 大雨に洗い流されるのを期待するのか ザーザーいう音のなかにも ギとかボとか聞こえないかと 耳をすまし 擬宝珠と改名しようか 考える ---------------------------- [自由詩]心星/あおば[2011年7月20日21時19分]              110720              トコロテンでごはん 辛抱おし 半時ぐらいは 保つでしょう お母さまは まだお帰りにはならないのです 白黒のテレビが片隅に置いてある 幼い眼に映る目玉汁の虚ろな揺らぎも えふぶんのいちに従っているのか 遠くの鐘がじ〜んと鳴り 寝惚けた蝉もジッと鳴く 乾いた歩道を目で追うと 千鳥足の小父さんが お稲荷さんの鳥居に凭れ 息を整え座り直し 帰宅前の儀式のように 袂からお土産の笹かまぼこを取り出し 左手にぶら下げる やおら立ち上がり 数軒先の軒下に立ち いつもの調子で戸を開けた 夜も更けてゆくと 小腹が空いて 笹かまぼこも寝所を得るのに 眼をギラギラしてばかり 天井を見つめ 一晩中一睡も出来ないとは どこの誰に似たのか 因果な性分だねと 手の掛かる子を持った母は 老いたメガネをかけ直す 夜はまだ始まったばかりというのに 照度計の数値がぼんやりとして読み取れない 節電もほどほどに・・ 声にも出せずに呑み込んだ (一晩くらいは保つかもね) 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、小原 明季さん ---------------------------- [自由詩]ガジュマロ/あおば[2011年7月29日10時09分]                  110729 朝が早い 草の息吹を聞きながら 根本を這う生きものたちに嫉妬して 火炎放射器をぶっ放す 燃料が無くなり あたりはうっすらと黒こげになっている もう一本分やらないと駄目だ 計算高い俺が観察するうちに にわか雨 一本では駄目だ トラック毎運んでこい 雨だれの音が唆すので 業者に頼んで始末した 夕方になり 星が出た 気短な暦が明日を示す頃には 再び豪雨となって 匂いも無くなった すぐに草が生えて 木も生えて その頃にはもう一台分の燃料がいると 計算高い俺が呟いている ---------------------------- [自由詩]コラージュ風/あおば[2011年8月3日12時24分]                   110803 ベークライトボディーと避暑にいったよ 荒唐無稽な真空管が 二人三脚で躓きそうに駆けだした 蒸し暑い夜になっても 蚊取り線香の煙が棚引かない 並四ラジオに似たDKE1938 gd@(4c4d'dw 機銃掃射しても けっして悪びれない若者をおびき出す 墓地の外れには セイダカアワダチソウが刈り取られ うず高く積み上げられ 木製ボディーの三輪車の到着を待っている 改造された電気車の電池を交換するのに手間取って うっかりして放射線計測器を積み忘れたと 直流から交流に変換するインバーターの殺し文句を 積み上げられたアワダチソウに聴かせながら タバコを吸おうか考えているあなたは 横着でずる賢いとは思わないか シンボルの機能する    都会の 裕福な家庭では 既に良識化しているようだ 小企業の貧弱な製造設備を売り払い 地下室で密造酒を醸造する勢いで 真空管を密造していた人が居たのを昨日知った 時代も禁酒法時代であったのは偶然ではないだろう 金太郎飴のような麗しい空間を通り抜け (やってくる) 甘い空気を少しだけ味わう それが贅沢だったんだよと 煙のような青年が 笑うように転がって アワダチソウに潜り込み どこまで行っても晴れない季節を堪え忍んでいるようだ 少しは晴れると好いね ---------------------------- [自由詩]わたしがきらいなわたしがだいすき/あおば[2011年8月11日21時03分]               110810 わたしのだいすき わたしのすきなわたし だいすきなわたしがわたした わたしがすきなわたしは  わたしもりがすきなあめんぼう   ぼうふらのすきなかとりせんこう    せんこうのすきなはなび     はなびのすきなせんこう      おはなしがすきなせんこうはなび じめんにえがいたはなびがどんとなって  あまなっとうのようなあめがふってきて   こうふんしてさわぐわたしがだいすき あまなっとうがすきなわたしが  すきだ きらいなのはわたしがきらいなわたしのだいすき ゆかいなわたしがきらったわたし 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、カンノユウヤさん ---------------------------- [自由詩]天使と悪魔と山本さん/あおば[2011年8月27日11時07分]                 110826 山本さんの奥様は それはそれは奥ゆかしくて可愛くて声が良く 無口な山本さんの奥様にしておくのは惜しいと 陰口叩く人も居て 可愛い子と3人でいつまでもむつまじく暮らしておりましたで終わらないのが此の世の定め 悪魔に魅入られたのか知らないが 二人はいつのまにか別れ 3人は バラバラになりまして 天使のように可愛い子はすくすくと育ち いまでは社会の重鎮を担っているのです それではここで問題をさしあげます 天使のように可愛い子は社会の重鎮を担うほどになりましたが かっては羽振りも良かった山本さんは今どうしているのか 奥ゆかしい奥様は今どうして居られるのか パントマイムで30秒以内に答えなさいと 黒い目出し帽の男がやって来た 風が吹き寒いときには覆面するよりも楽だから 目出し帽を常用しているわけで 他意はございませんと 3回ほど呟いてから フルフェイスのヘルメットをかぶる スモークのシールドを下ろしたから 目出し帽を被っているかどうかは余人は窺い知ることは出来なくなり 消息通にお伺いを立てて 始めて 事実を掴むことが出来るのさ 山本さんが今も バイク便を走らせているかどうかも 分からないから 世の常として 入り口は細めに開けて その侵入を拒むのですが 山本さんは 並はずれた セイタカノッポなので 歩き方にも特徴があり 奥ゆかしくない人にもすぐに分かるのさ 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、ぶるーびっとさん ---------------------------- [自由詩]のぼる夕日/あおば[2011年9月12日23時42分]             110912 祈りたいならば どこか遠く だれにも見えないところで おやりなさい 異教徒の群れの中では 声を立てたり 十字を切ったりしたら 命にかかわりますからと 金髪の青年に告げる マネーゲームの果ての 殺し合いが静かに潜行していますから 友人と思っても 本音を話すのも危険です 一人では出歩かないでください 警護の侍にも 油断してはなりません 攘夷思想が浸透し 異人を見る目が変わったと 窓際に歩を進め 給与明細の総額欄にゼロを2つ書き加え 昇る夕日に期待を込めた 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、かんなさん ---------------------------- [自由詩]呪文/あおば[2011年9月16日22時17分]                  110916 ○○地方は120ミリ 新たな水害も予想されますから 雨の降り方にはご注意ください 天気図の指し示す先には 2つの台風が同心円を描き 確かに蒸し暑いのは彼等の仕業と納得できた 日中の暑さは 残暑だと諦めるが 夜中の暑さは 残暑ではない これは夏が居座っているのだ 居住権を与えたつもりはないが 長い夏の季節のうちに いつのまにか時効が来たようで 今ではもう追い出すわけにも行かず エアコンのスイッチを入れようかどうか迷いながらも 眠りにつくまでの僅かな時間を不快に過ごせば 入れなくてもよいのだと 入れないで我慢する やせ我慢の土地柄なので 節電意識も遺伝したのか 3才の子供も汗疹を息でふうふうしながら我慢している それを見てはなんでスイッチが入れられよう 地デジ化していないアナログテレビの上にはくるくるの蚊取り線香 奴等の季節はこれからだ言うように呪文の煙を立ち上げて すべての苦情を却下する 少しの隙間からも 網戸を拡げるように入ってきて ブンともいわずに刺すんだ 痒いよう 暑いよう 眠くないよう 譫言のように唱えながら 眼をぱっちり開け 天井を凝視する 彼はもうじき眠るだろうと 親の私は確信したが 信じていないあなたは ずっとずぶ濡れさ 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作を改題 ---------------------------- [自由詩]いつか花咲くDNA/あおば[2011年9月20日9時33分]              110920 ケッ! 右肩上がりの統治下の真昼の決闘が 出鱈目な紛い物と知っているのに 筋書きを少しだけ書き直しての再上演 力道山が空手チョップの代わりにマシンガンを撃つたびに 60年は耐えられるはずの煉瓦塀に罅が入る初期微動が10秒間 その間に机下に潜って冠を正せと正史を糾したと 得意顔のスプートニクが96分で地球を1周すると これまた満面の笑みをたたえたような得意顔の曲面ガラスを光らせて 57年式のオート三輪車が横町の角から顔を出し 方向指示器を点滅させては 矢印のアポロの時代は過ぎ去ったと うさぎの耳を引き裂いて 裏の川に捨ててゆく 世はまさに宇宙時代の到来と 中学生は希望職種を特急列車の運転士から アストロノーツに急変更した それを笑う者は 今では誰もいない そう それからと 愛の手を撃つたびに 真志願高校が マンシガン高校になったような気がして 道路脇に一次停車してはグーグルアースの角度を変えるので 本年度から採用試験には時事問題を五肢択一形式に変更しましたのメッセージを見逃したA君は、コンビニプリントの常用漢字表を見つめては書き取りを繰り返している 21歳にもなって常用漢字をすべて書けないのはあまりにもみっともないと本心から思っているので5分の暇でも書き取りを繰り返す 一昨日などは、ケータイの漢字変換機能は直ちに廃止した方がよいと教室の後ろで叫んでいたが 今日、キャンパスの庭の隅の蓄積から 鶺鴒の羽根のように5色に輝く物体が這い出てきて まだ遺伝情報を書き換える段階に至ってはいないのだとの 世代交代を告げるベルの音が鳴り続けているのを無視しているのにも気がつかず 満面の笑みを絶やさない3D合成イメージに気を取られ・・・・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 残念ですが7発目に命中したので合格には至りません、交通費をお渡しいたしますので、左側のドアからお帰り願います。<右のドアを開け>お待たせいたしました、次の○○○番の方、速やかにご入室願います。 何処かで聞いたような下手なセリフを打ち込みながら 2次面接まで辿り着いたことはないが、エアーガンで撃たれるのはとても痛いものと知っている君だけがたどり着ける世界からも見放されたのも漢字変換機能が欠如した血筋のなせる技と作者は確信しているが・・。 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは博喜さん ---------------------------- [自由詩]謙虚であれ/あおば[2011年9月23日10時45分]               110922 有馬の殿様 見かけは丈夫 膝のお皿が割れている 謙虚な侍が控えます 何の因果か直立不動 左右に並んで控えます お殿様と仏様 お顔は違うと思うけど 同じ姿勢で坐ってた い  く   ら    の ご は ん   に    ご     ま      め       の    あ     た      ま   ご    く     り    と  飲   み    込     め   朝  ご   飯 謙虚であれと 噛み砕く 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは中川さん ---------------------------- [自由詩]ボタンを押したら(改作)/あおば[2011年10月3日15時32分]             111003 予定調和の気分のままに あれがマンダラこれがキナコと 笑い出す ひどいものだね ツクツクホウシ ボタンを押したら お別れねと 9月末には居なくなる 機嫌良く フルタイムの レコーダーと ベルト付きの滑り台が 嫌われ者を奈落に運ぶんだ ろろじゃらじゃらこちゅん なにかに縋って転がる 今日も舌先三寸の商いを繰り返しているが 仕立屋の キンジロウ爺さんは忠実だったと 起きあがり小坊師のように呟いている声がして 賑わう食堂から立ち昇る明治の薫りに 汚らしい格好の私たちは ドアを開けることも出来ないね ボタンを押して一足飛びに 夜逃げして 放射線を少しだけでも落としてから いつかここに戻れる日をねがっていよう あれがマンダラ これがキナコ 微粉末の可笑しさを 膝に貯めるな グラニュー糖 ---------------------------- [自由詩]Eを着こなす膝小僧/あおば[2011年10月5日20時48分]             111005 ちょっとだけ お知恵を拝借 素直に πを分け合う時は いつ訪れるのでしょう いつでも就職難の記憶だけが残り さほど期待されることはなかったのですが それでも 食パン一斤20銭の時代に 1本2円もしたからねと 古ぼけた光を放つ 骨董じみた真空管が 薄汚れた 並四ラジオを鳴らしてる はぁーというばかりで 耳を塞がれたままに 無関心な通行人 逮捕され 連行される前にたらふく食べたいと 食欲を満足させるクリアーファイルの不透明な生活感から 自動車が エンジンを取り去られたときの気持ちを想像してくださいと 表現の手ほどきを受けている幼稚園生は 隣の保育園との合戦に備え 雪だるまをいくつも用意しては 目玉の炭団に火を付ける めらめらと燃えだす両眼 Eビーム光線が放射され 見つめらた敵を火だるまにしてしまうと 教えられ 必要量の3倍も雪だるまを作ってしまう律儀な園児達は 今夜降るという初雪の降り積もる光景を想像しては 保育園との雪合戦を楽しみにしている どんなに 膝小僧を冷たくしても気にしないその若さが羨ましい てほどきする先生のつぶやきを発信するiphone5が鈍く光り 真っ黒な炭団の眼に火を付けた 今朝も水道管が凍結して破裂する音が鳴り響く 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作 ---------------------------- [自由詩]花電車/あおば[2011年10月13日11時54分]           111010 花電車がやってくる日に チョー簡潔な祝いのお品 チョコレートのパイを焼く 暖かいうちに運ぶんだ 横断歩道の先にある プラットフォームには人だかり ケータイを握りしめ デジタル一眼を構え コンデジを差しあげ 脚立に仁王立ちする者も居て 反対の方向を睨んでる 33年ぶりに花電車がやって来るというので 人が集まっているのだと知る もう5分もすれば来るんだから 買い物なんかは後回しにして 見物していきなさい 少しもったいぶった紳士が言うので それもそうかと自転車を止め ケータイカメラをチェックする おかあさんも花電車を見たんだよとメールするんだ 近頃は嗜好が細かくなって ひとはひと、じぶんはじぶんと付和雷同を煙たがり 関心のないものには少しも心を動かさない だから 自分の好きなものだけでこの世界は立派に成立して居るんだと うちの息子は言いたそう お隣の紳士はどこの誰かは知らないが いい大人の私を捕まえて 見て行きなさいと言う お節介かそれともお人好しに見られたか 少し口惜しいが 周りには人が集まってきて 凄い騒ぎ 警備の係員も声を枯らす チンチンと予定よりも少し遅れてやって来たのは チョコレートの美味しそうなケーキが載った 花電車というよりもケーキ電車だ 少しでも景気を良くしたいのか お伽の国の香りを運び 花嫁御寮が立ち去るように しゃなりと音を立て あっという間に通り過ぎたのが 33年ぶりの花電車であったのだが 一瞥した人々は一瞬にして居なくなり 3分後にはいつもの穏やかな沿道に戻り 我に返った私も夕食のメニューはなんだったのか思いだそうと 自転車のペダルに力を込めて 走り出そうとしています。 登場人物 私 買い物途中のおかあさん 家には大きな息子がいる ケータイカメラ 紳士 地元企業の社長さん 鉄オタ歴 50年以上 デジタル一眼 脚立の男 気の好い鉄オタ壮年 デジタル一眼 作者 根性無しの元鉄オタ コンデジ 警備員 鉄道関係の壮年 私の隣の青年 夜景も撮影するのだと大型三脚を携えている デジタル一眼 その他大勢の老若男女が ケータイカメラやコンデジ、ビデオを手に待ちかまえ ていて車道にはみ出しそうな案配、警備員の声も自然と高まる 動画↓ http://www.youtube.com/user/aoba20071107#p/a/u/0/Z0F8gcMafaQ ---------------------------- [自由詩]空を飛ぶより楽しいこと/あおば[2011年10月16日19時50分]               111016 経営陣は一連の不祥事の責任を取って速やかに総辞任いたします 朝になるといつもの顔ぶれが胸を張って正面玄関にやって来る あれは単なる夢だったのかと思う チャオプラ川を下るとアユタヤの工業地帯が拡がり 未曾有の洪水に操業を停止して回復に大わらわだと報道は伝える 昔、アユタヤには神通力のある仙人が住んでいて 洪水だろうが台風だろうが一吹きで復旧させたという 野党の党首発言のような超能力を発揮したのだろう あなたのルーツは九州の熊祖だと言われた 関東の出だから少し遠すぎると思ったが 顔つきが似ているのだと言い張る 貧しいから関東にまでやって来て 住みついたのか ことばも全く覚えていないし 土地勘もない 今では九州は遥か遠いところとなり 帰るところなどはどこを探してもないと思いたい 日本製のソーラーカーに乗って 東回りで地球を一周するのだと 小学生が地球独楽をぶん投げるから 太陽電池が働く昼間は好い子になって 快調にぶっ飛ばすが 単結晶の従兄弟はアバウトな振りをして 自転車に乗って図書館に借りた本を返しに行く 返却期限を1日遅れていたが なにも言われなかったので 月遅れの雑誌を一冊借り 郊外電車の線路際の喫茶店で一気に読んだそうだ 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作 タイトルは、コーリャさん ---------------------------- [自由詩]ただいま/あおば[2011年11月11日16時56分]                    111111 まがじんがらになせられたら、がらんだりんぐらんぐにんぐみんくしんぐりんぐやんぐ、まんぐりにんなにのんぐりみまらりんぐり、たらまんがらりんぐんぐんぐんぐり、はらまんてらせられたりんぐらんぐまんぐ、ゆんでりんぐりにんぐりふんぐりはるき、やらんでられたりしたのは昨晩のことで 不満が・・自ずと募る 立ち止まり仲介する世界の音響学的遺伝を 螺旋階段の下から眺める度に 二重構造から三重構造へと複雑化を辿り進化するのか退化するのか棄却するのか 二重母音の乱用を戒めながらも検定済みの判を押し 窓の下を通り過ぎる女性事務員の恰幅の良い姿に複雑な思いを抱いたままの報告書をタイプする細い首が打つ音は単調なリズムとは言い難く 耳障りな乱調が途切れる度に砂消しはどこだと声を荒げ 徹夜明けの部下を呼び起こす課長補佐の細い首はカマキリの姿と二重となって 夜露に濡れた枯れ葉色の羽根を拡げたような色の褪せた袴が歩く度に まがじんがらと擦れて喧しい 早く帰って眠りなさいと 疲れた部下を気遣う所長の まんぐりにんなにのんぐりみまらりんぐりした訳の分からない説明を身振りを加え記憶する玄関の三和土に たらまんがらりんぐんと水を撒き過ぎ 萎れている何処かの家の妻女の ぐんぐんぐんぐりした顔を思い浮かべ それではならぬと 意気揚々ただいまと大きな声を張り上げる 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作 タイトルは、るるりらさん ---------------------------- [自由詩]カニ食べに行こうー/あおば[2011年12月18日11時06分]              111218     背   後 霊  を 信じるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!                                       と 蟹   コロッケ     が      騒ぎ  がらんどうを    突き抜けて 喚く   大人      の 声が 横町を     通り抜け 八丁堀の同心の耳にも届くのだと 朱房の十手が 観念したかというようにがっちりと刀身を抑え付ける 後ずさりしながら楽屋裏から逃げ出したこそ泥は コバンザメの半七と呼ばれているが その頃はただの半七と呼び捨てられて 冷や飯に水を掛けては呑み込むようにかっ喰らい 米の飯とお天道様だけはついて回ると信じていた 出世して今ではコバンザメと綽名され 大身のお武家様の屋敷を伺うのが日課となっている 奥向きの腰元衆に黄表紙をそっと差し出しては 平然と盗んだ簪やツゲの櫛を売りさばく 盗品なのは内緒なのは言うまでもないが 黄表紙に夢中の腰元衆は 二次元の世界に遊ぶのに馴れているから 重さのある物質には頓着しない お財布の中身と釣り合うかなどとも思わない 旬の蟹食べに行こうなどとは 口が裂けても言わないはずだと とっときの榧の油でコロッケを揚げながら 腰元衆に気に入られるように身を細かく解し 頬張りやすいよう苦心をこらしている 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作 タイトルは、エイジさん ---------------------------- [自由詩]スマホ(お利口な多機能型携帯電話機?)が犬橇を曳いてゆくね/あおば[2011年12月22日23時34分]                    111222 江戸城外堀を3ヶ月で掘ったエネルギーの蓄積が現在の日本にも潜んでいるのだと解説者は力説するが、大東京と大逢坂が鉢合わせする摩擦熱が蓄積されて次第に熱を帯び僅か3センチの電車のフランジを削っていくから、3ヶ月もするとレールも削れて交換しなくてはならないと新宿駅の山の手線の助役はぼやく。中央線は新宿←→東京間には踏切が無いのだと明治の卓見を褒めそやしながら電子レンジに冷や飯を入れ90秒間過熱する光景が火花を散らすように瞬いてクリスマスツリーの☆を少しだけ膨らましてゆく。上下開通した暁には夜行列車を無停車で通過させることが出来ます。100メートルを10秒3で走り抜けて日本新記録を樹立してその名を後世に残した名選手の走る姿を180文字以内で記せとの難題にも躊躇することなく取りかかる共通1次試験受験生の鉛筆の先は滑らかに摩耗し柔らかな軟曲線を描き紙の上から机上を走り抜けてその先はスマホの思うつぼの映像に託す。 かのようにして思うままに記すことが出来るのだとつい先年の偉業とも言えるかもしれない心得違いの受験生達が一列縦隊で犬橇を曳いて万年雪の吹きだまりもなんのその、富士山の頂上目指し、初日の出を拝む企てを企画する。参加するしないは自由だが、各方のスケージュールに狂いが出ない限りは、力試しに挑戦しても良いのではないかと、中年の塾講師は投げやりな調子で投げやりな企画書に目を通す。 橇を牽く犬だって、訓練しなくては積雪中突破などは覚束ないのだ。今日も天気予報とスマホの電池を確かめてから犬橇の訓練に出かける。外は吹雪いているが、それが少しも苦にならないように臆病な犬たちも加え入念に走らせて、馴らし、走ることが、橇を牽くことが楽しくなるように絶え間なく訓練する。 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作 ---------------------------- (ファイルの終わり)