あおば 2009年7月19日7時21分から2009年11月10日0時44分まで ---------------------------- [自由詩]袋のネズミ/あおば[2009年7月19日7時21分]                  090719 きみどり みどり 福神漬けが嫌い 怖いのは唐傘のお化け 愉快なのは鉢巻き 2人で遊んだ思い出 キミドリミドリの思い出を 紙の袋に詰め込んで バンと一打ち粉々に 袋のネズミが目を回す ---------------------------- [自由詩]私/あおば[2009年7月21日15時16分]                  090721 数を合わせて こんがりと焼く よい匂いです 皆既日食にも負けません 予約客がドタキャンすることもなく 経営は安定ですと 投資を募る 新たな脅威と思う人と 儲かるかなと食指を延ばす人 他に生きる手だてがないのだろうと 蘊蓄を語る人 大勢の人が住んでいるこの街には 生きている感覚が乏しい その原因は明らかなことなので そのためにも ウナギの生態が解明されねばならないと 数を合わせてこんがりと焼く 理屈を抜いて 例え 39度の熱があっても 少しでも儲かると思えば 終日ウナギを捌くのだ 食べるのは私 ---------------------------- [自由詩]夏をかう/あおば[2009年7月23日5時49分]              090722 皆既食が終わると なにもすることが無くなった(笑 散髪してから 魚屋で 鰺を2匹買う 豆腐屋でお豆腐を買い 帰宅して 鰺のフライと 冷や奴を食べる 夏らしい1日かも知れないが 夏は既に過ぎた感じもして少し物足りない しばらく夢中になっていた ケータイ化並四受信機は 完成をみた途端 出演の出番を失い 部屋の片隅で埃をあびている 欲を言うと 同調コイルの性能アップが必要だが 受信にはさほど支障がないので 面倒なのでそのままにしてある ときどきスイッチを入れて AM放送を聞くが ニュースの他には 少し饒舌な会話や 野球中継にうつつを抜かしているので 聞いていると スイッチを切り 何処かに行きたくなる 昨日の 皆既食も雲に覆われて 三日月形を 一瞬チラリと見せつけて姿を隠し それがおまえの人生のカタチなのだと 言っているようだった 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、mizさん。 ---------------------------- [自由詩]ムササビとマタタビ/あおば[2009年7月29日10時06分]                    090729 からんとおちるおとのあとからあとから猫が踊るようについてくる トーさんがカーさんと比較対象の動物をえり好みしている 皮を剥いでから鞣して毛皮のバッグを作るのだ 自転車の荷台には首を絞められた鶏が3羽 青大将が2匹 クロコダイルの子供が2匹 カーさんは動物を飼うのが得意で 餌の配合が旨い 安い餌を上手に混ぜている カーさんはトーさんの食事の世話はしない トーさんは自分で作っている 僕はたまにはカーさんの料理も食べたいのだが カーさんは皮を剥ぐのが好きなようで 魚だって上手に捌くが 肉を刻んだり焼いたりが下手で 全部トーさんに任せている ネーさんは受験勉強に忙しいと 塾に行っていると言いながら 映画を見たりライブを聴いたりして 夜遅くまで帰ってこない 夕食は適当に済ましていると トーさんの料理には手を付けない カーさんは ネーさんに いくらでもお小遣いを渡しているから (ネーさんは) 元気で 痩せることもない ムササビ座の座長はトーさんの幼なじみだ ネーさんの顔を見ては 役者に向いていると 入団を勧める トーさんはその気で カーさんは役者修業に明け暮れたこともあり ネーさんは役者に向いていないと言う カーさんトーさんネーさんとムササビ座の座長が 居間に集まっている 猫はマタタビを囓り 僕はカップ麺を啜る 雲が出てきた 風が吹いてきた 雨が降ると思いながらも 猫じゃらしが繁茂する荒れ果てた庭の手入れは どこの誰がするのかと考えている 猫はそこであいびきしたりして 荒れ果てた状態を楽しんでいるのが 少し憎いのだ 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作を推敲、タイトルは、木屋 亞万さん。 ---------------------------- [自由詩]輪郭/あおば[2009年7月30日21時46分]               090729−30 輪郭が無い人は お化けか 死人ですなと 噺家さんが鼻歌を唄ってる 長閑な気配の中にも 噺家さんの輪郭が明確であり 付け入る隙がないと お弟子さんのような感想を漏らす ようななどの曖昧な表現はいけませんと カワガラスが水から顔を出す 水の中は曖昧な存在は許されない 密度が600倍もあるから ぼんやりしていると 吸い込まれて溶けてしまうし 流されてしまったり 我慢して耐えていると ご存じの苔が生え 鮎に背中を囓られて 喜んでいる訳にもいかなくなる 緩い拘束が輪郭を太くして 映像を濃くすると 素人カメラマンが訳知り顔で解説するから 見知らぬ初老の紳士が今夜は如何ですかと 誘うので バイクのエンジンはいつでもスムーズに掛かるのだと 点火プラグは悠然と放電を開始する 電気の火花が狭い燃焼室で弾けて燃料を燃やす 音が出るのは同時だが 音は特に力とはならない ただうるさく弾けた感じを表現するだけで 実体は力の中に潜んでいて 誰の目にも見えないようだ 曖昧な表現は力を削ぐと 自転車のスポークがキラリと放つ どこまで行っても終わりのない道は Uターンするしかないのだと 輪郭を好む文字の習性がアルファベットを唱える声がして ゴシック体が元気よく うるさいくらいに響いてる ---------------------------- [自由詩]魚釣り/あおば[2009年7月31日23時28分]                    090731 拾ったばかりの 疑似餌を探す 空の彼方にあるはずと 小さな兄貴が法螺を吹く 疑似餌はおまえの目の前に 木の枝に ぶらぶらと 見えない糸で誘うのだ ジョロウグモのように 美しい模様を目立たせて ギラギラ 朝日に輝き ギラギラ それでも気がつかないおまえは 魚以下の視力の持ち主だ 近所の人が集まって 力餅ですなぁと 輪になって ガチンコと搗いたお祝いの一俵を 空の彼方に放り投げ 黙って食べた ほらあそこと 知らん顔 ---------------------------- [自由詩]エレジー/あおば[2009年8月2日0時53分]         090802 外れた声がうるさいと 隣の人から電話が鳴った ぶち切れそうな声だった 歌う声が耳障りだと 嫌われますから 音楽の先生がやって来て その声の身振りが手振りが 君を丈夫にするのだと 楽譜に合わせて 延々と調子の外れた歌声が流れ 耐えきれなくなったのか 隣人がぶち切れて 警官を呼んできて 大騒ぎとなった そこまでが想定内で 巧くいった くすっと含み笑いをした途端 うるさいなぁと ミミズクの声がして 見たことのない鳥を 真夜中に 起こしてしまった 頭を掻き書き 見たことのない鳥を追いかけて 鶏の姿を思い描き 下を向いては 頭を下げ続けて 部屋から部屋へと 謝りながら 彷徨いているうちに 朝になってしまった 昼には昼の仕事があって 忙しくて眠っては居られない 今日も辛い日が始まって 終わることのないお小言を たくさん頂戴して お金持ちのような気になっているのが 誤解の始まり 大きな声で歌を唄っては 警官隊と衝突を繰り返して それから曲の手直しをして 仕事に行って お小言を頂戴して 憂さばらしに歌を唄って 警官隊と衝突して 豚箱に放り込まれ 目が覚めたら 朝だった 仕事に行って参りますと ネクタイをしてから 鶏に餌をやり 見たことのない鳥を 探しに行く 青い鳥だから 探しに行くことはないと 家の中にいると 知ってはいるのですが 家にいたのでは もうけが出ないので 外に追い払ってから 捕まえるのです 大声で歌って 警官隊と衝突して 豚箱に投げ込まれるのも 想定内のことです ネクタイの柄は 毎日変えます 同じ柄だと 馬鹿にしていると みんなから嫉まれるので ネクタイは毎日変えるようにしております 冥王星では 変えなくてもよいのかも知れませんが 見たことのない鳥が飛んでいる地球上では 毎日変えないと仕事にならないのです 毎日警官隊と衝突して 豚箱に投げ込まれていると 丈夫になって 空を飛べるようになるかも知れないと 思う君は 間違ってます 人は どんなにトレーニングを積んでも 独力では 羽根を付けない限り 空を飛ぶことが出来ないのです 見たことのない鳥ですら 鶏だって 訓練すれば空を飛べます 美味しいお肉をほおばりながら 空を飛べる鶏の絵を 頭に描き どんなに辛くても 空を飛べるのだから 我慢しなさいと 頭の中の絵の中の見知らぬ鶏に語りかけたところ 大きなお世話です 貴男は貴男のお仕事をきちんと果たしてくださいと とととと とととと とと と モールス信号のように頭の中を突っついてくれました お返しに とんとんとん と 肩を叩いてやりました ---------------------------- [自由詩]工程表/あおば[2009年8月7日0時55分]                    090807 工程表をチェックする 好きなように出来るのは今のうちだけだ 楽しんで書きましょう 趣味の雑誌の解説に目を走らせる 好きなように線を引っぱって時間を決める 楽しみを長持ちさせるのだ 楽しみは細切れにしても楽しめる 横書きの工程表にはそのような細かな解説はなく 着手から完成までの細かい工程が明確に記されていて 無駄な動きと待ち時間が無いようになっていて 好きなように おもいきり楽しめるようになっていた こんなことが出来るのは今のうちですと 作者は言うが 工程表を作る前からため息をついている僕は あ〜ぁと天井を仰ぎながら窓から覗く白い雲の数を数える 行程表には記さない作業だが こんなことが出来るのも今のうちだからと思って 工程表のページは最後まで読まずに 次の工程に取りかかる以降空白につき好きなように記入してね ---------------------------- [自由詩]安全ピンなら安全ですから/あおば[2009年8月15日7時42分]              090815 勧善懲悪 超テック鵜 苦しいときの神頼み 安全ピンを飲み込んだダチョウを クジラの鬚で誘い出し 捕まえる慣れた手つきの狩人が お米の御飯を蓄えた 東名高速の渋滞を尻目に ヘリコプターが 復旧工事をリアルタイムで中継する 発泡スチロールを敷いて基礎の重量を軽くする 最近では当たり前になった工法だが 日の当たるところで見ると なんだがジオラマを直しているようでもあり 超人気のガンダムの等身大を見に行きたいと 中年のオヤジがせがむので そんなぁ・・・ ゲームをやっている暇があったら ローンの支払いを早く済ますように がんばりなさいと 子供たちに叱られる マイナスの遺産は要りませんので よろしくと 諭された 今日は終戦の日だ 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、こ さん。 ---------------------------- [自由詩]イデアの影/あおば[2009年8月20日5時29分]                090820 再導入された 資本主義と 評価を得たが 貧乏暮らしが 良くなるわけではなくて お金持ちが再評価されて 資本の形成が促進されると言うことのようだ 敗戦投手は 内容が良くても負けたのだから 我慢するだけで ウナギの並でも叱られそうな気分 カップ麺で我慢しておけば 世間の請けは良くなるが それでは 野球商売を続けるわけにはいかないと ウナギ屋の暖簾をくぐるのですが カップ麺をひとつだけ ショルダーに忍ばしている 猛暑日の今日は 美しい夕焼けが期待されると カメラのレンズと フィルターを カメラバックに忍ばせて これからお仕事に行くのです お仕事は美しいとも言えませんが 醜いと卑下したくない気持ちもあり 収支がとれれば良しとする職場の弛緩した雰囲気を 営業部長が叱咤激励 今日も元気で頑張ると ラジオ体操のスイッチを入れる 跳んだり跳ねたりしたあとは 昼休みまではなにもすることがありません 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、ABさん。 ---------------------------- [自由詩]紅茶が冷めるまで/あおば[2009年8月26日23時49分]               090825 モビルスーツが欲しい 食べたいだけ食べて 夜は 名刺のように眠る 弾かれたように起き スマートに走る 美しい心の持ち主と競い 心拍数を高めた午後は ミジンコを飼う 温かい紅茶を 冷たい背中に流し 乾いた風と土壁に 淡い色を塗り ティーホーツーと踊る人形を ショーウインドーから回収し パラパラと小袋に落とし 颯爽とした顔で 早起きの 古物商に卸す 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは流川透明さん。 ---------------------------- [自由詩]デイドリーム・ビリーバー/あおば[2009年9月2日23時08分]                 090830 らしからの ほらの みたなの ほしの かず ふむ あしお と ひろの 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルはクローバーさん。 ---------------------------- [自由詩]たて長/あおば[2009年9月4日17時35分]                       090904 如雨露の穴を 塞ぎ 声の漏れるのを 止めたのは 昔のことで今は 穴も無くなり クシ形のスリットになっている 内圧が高まると スリットの隙間から 勢いよく水は流れ落ち 地面にたどり着く前に 美しい球形になろうとする 穴の開いた如雨露では 集中豪雨が好まれる現代 時代遅れだと クシ形スリットに着目した君は 功労者だが 誰にも知られずに グリーン車にも乗れず 青春18切符を握りしめ マスクをして たて長にゆっくり揺れている ---------------------------- [自由詩]The Coo Coo Bird/あおば[2009年9月7日20時27分]              090907 兎の毛を毟る ハゲタカのように 猫の缶詰を棚に探し ついでにカップ麺を購う 今日の作業は防水シートを 校庭に拡げ 不必要な山羊、鶏を畳み込んで から秘蔵の 根性の塊のようなこんにゃくいもの糊で 貼り合わせた 明朝、奴等が息のあるうちに水素を詰めてソラに廃棄する 気球が公海に達した頃には高度も得て軟弱な防水シートは悲鳴を上げずに破裂して 水素が漏れて 一切は海に落ちる予定 粗大廃棄物を公海に投棄するのが気になるので 予め告知いたします 私利私欲のために行ったのではありません 無慈悲な権力への異議申し立てなのだと 考えております。 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルはミヤシタさん。 ---------------------------- [自由詩]体操/あおば[2009年9月10日19時21分]               090910 朝起きると ラジオ体操をする ラジオ体操の番組を鳴らす 元気のよい小父さん小母さんの声で 目が覚める ラジオ体操を聞き終わると 一日が終わったような気がして あんしんして眠れるが 朝だから 眠っては居られない あさだあさだと 声が弾んでいる  あさだ    あさ  だ    あ   さ だっ   あ  さ   だ       あ    さ   だ  アサ ダ ただだっだ ダッ ダ 朝起きると 朝日が眩しい 一円玉のような天気だと 天気予報が語る これ以上は絶対に崩れないよい天気なのだと 崩れないならば 雨が一日降っている日が崩れない日だと思ったが 崩れてしまったのは 対象外で 圏外で 無いのと同じなのだということだ 体操をしながら考える これから仕事が始まって お昼を食べて 夕方になり やれやれと思うと 残業があり それが終わる頃には 真っ暗になり 腹が空いて もう誰も体操をしようとは思わない 整理体操をして ストレッチをして 身体の疲れを癒したいと思う人は 駅前の整体に駆け込んで 着たまま15分コースを選ぶのだ その後はなにをしてよいか分からないが 食事をしないと明日の仕事に差し支えるから お財布の中身と相談してから 腹一杯食べて 文句を言われないうちに眠るのだ 朝起きると ラジオ体操をしている人が居て ラジオの音はいつも元気だ 元気な小父さん小母さんお兄さんお姉さんが ぴょんぴょんとソラに向かって跳ねている 跳び箱を前に跳ぼうかどうか考えているうちに制限時間が来て 失格となった体操選手は 跳びたかったのだけと タイミングが悪くて跳ぼうとしなかったので 跳ぶのが嫌いなためではないとみんな分かっているので 駄目な奴とメダル色の呪詛を投げかける そのうちに番組も歌番組となり 跳んだり跳ねたりは優雅に楽しく行われるので 見ている人は安心してみていられるのです ダダダッダ ダッ ダ ダ ・ ・ ・ ダッ 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルはred baseさん ---------------------------- [自由詩]ロク/あおば[2009年9月15日2時14分]                 090915 5のつぎは6 指が足りない いっぽんかしてくださいねと お祖父さん お墓の中で指を折る ガラガラと 意志が崩れて 明日は休む 休むと電話をしてくださいねと 声が出ないので 紙に書く 書かれた文字を電話口で読む 奥様の声が 会社の同僚の耳をくすぐる ガラガラと石が崩れて 砂利となる 砂利を砕いて砂にして セメントを混ぜて 三和土の上面に 上塗りをしてから 防水シートを被せ 二日間養生すると 再び声が出てくるから 会社に行くことも出来ます ろくでもないことを 考えていると 取引先から 電話 不良品が増えて 困っている なんとかしてくださいと 遠慮がちの声が 退社間近な時間を縛る 明日では駄目ですかと 声にならない声を出してから 今日は遅くなるからと 家に電話する これで気が晴れたでしょうと 碁敵が立ち上がり 三日月の色が一段とさえわたる 色がくすんでいた時代の名残に ピストルを撃って 地面を血だらけにして 暗転 明日の朝は目を擦りながらの通勤電車 走るのが辛そう 遅刻間違いなしです! 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作 ---------------------------- [自由詩]おひとり戦記/あおば[2009年9月23日22時11分]               090923 萎びた地球に 問うてみた 感じたままを素直に 吐いてみてと 言ったのだが 萎縮したのか 言いたいことがまとまらない ようだ だから負けたのだと 声なき声が呟くが 自主性を無くし ここにも用がないから帰ると言えないのが 辛い カーナビの渋滞情報を横目に 喫茶店でお茶をする人は居ないかと 目をすうーっと走らすが 喫茶店はどこにも見えない ここは公園のベンチ前だ 東京生まれは撃たれ弱いと 背筋を伸ばす 延髄切りに耐えた首筋も 脊髄パットの猛攻には耐えきれないようで 街道ライダーは 暑い中を身軽な格好ですっ飛んでゆく ぶつからないように こけないようにと それだけは切に願う 神仏を信じていないものの願いは どこに向かうのか 鎌倉街道から 永福寺に向かう途中 明日からは秋といわれたツクツクホウシが 聞き取れないだみ声で 懸命に経を読む 少し蒸し暑いのが救いと 公園の水飲み場で水を飲む 縄文人の居住跡がコンクリートで保存されている 四阿のような家か 縦穴式の住居か 定かでないが いくつかの穴が 大地に深く穿かれていて 太い柱でも大丈夫だと 言いたそうな遺跡跡を残して 神田川沿いの道をひたすら辿ると 旧帝都電鉄改め京王井の頭線電車がスマートに走る 湘南型2枚窓のスタイルを前面に残し 20メートル4扉車は 車を持たないハイティーンの身軽な躯を座席に埋め 定刻に発車する 小銭入れの中には 残金136円 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは鈴川ゆかりさん ---------------------------- [自由詩]回転軸/あおば[2009年9月30日7時10分]                090930 リコールを検討している 散文が耳を踊る みみをと 音をもたない文字が 文字が モジガ もじが ・・・ ... ーーー −−− − 5 0 具体的に 経済的に リコールを検討しながら 頭の上を アブが飛ぶ 危ないとだじゃれているのは リコールが嫌いな耳と 目と 口と 頭の中の 回転軸 ---------------------------- [自由詩]とあるアジアンカフェからの招待状/あおば[2009年9月30日23時28分]             090927 三味線の爪弾く音が かすかに聞こえてくる 母様が弾いているのだろう 母様が家を出たら 教えてくれる人が居なくなるので 母様が家にいる間に しっかり手ほどきして貰いたいと 不遜な気持ちで居るのだが その不遜の気持ちが 上達の妨げとなっている 岩をも貫く硬い意志と熱い情熱 好きでもなく 嫌いでもなく なんとなく日を過ごす 気持ちの 欠片も無い子は 困ると思いながらも 面倒なので 夕方の 三味線の稽古をはしょる 自分で弾いた方が音はよいし 楽しいのです 軽やかな 音に誘われて やってくる人たちは 漂ってくるいい匂いに釣られて 手前のアジアンカフェに入る 薄焦げ茶色の チャイを一度でも飲んだら もう逃げられないのです 頷くと コキンと頸の骨が鳴るので 少し疲れたと思いながら 左手を滑らせて メロディーを奏でる 名人の手つきを真似た 良い姿です 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、はゆさん ---------------------------- [自由詩]線形空間/あおば[2009年10月6日14時57分]                     091006 なによそれ 線香花火に選挙された廃墟の裏庭の片隅の 魔遺跡のことだと 戦中派のお兄ちゃんが教えてくれた 魔遺跡だって 毎夕の聞き間違い ゲームのしすぎだよとお父さん 21世紀の落とし子と言われてます 辰年生まれなので タツノオトシゴの駄洒落なのは明らかですが 線形空間に線香花火がピチピチ舞って 可愛い魔空間を奏でているのならば それはそれで構わないのです しかし 本当は 船形空間と綴るつもりであったのは 誰にも知られてはなりません それが 戦型空間と聞きとがめられたとしても なによそれと 平気な顔して 口を尖らせて あなたは相手にしないわよを見せつけて ---------------------------- [自由詩]かいそう/あおば[2009年10月8日0時45分]                091008 カマンダレが 雨の中で 大きな石を持ち上げては 池の中に ドボンと 音を立てて 投げ込んでいる 音の善し悪しが 彼にとっては 重大なことの ようで 飛沫がどこまで 跳ぶかよりも 音の 強弱 余韻 破裂する聴覚の感覚が 彼の 生を 呼ぶ かんたんな音と ふくざつな音が 台風の襲来を 恐れ 戦いて 誰も近づこうとしない池の畔 暴風雨の予感に苛まれ ドボンという音を 何度も耳の中に呼び覚ます 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、小川 葉さん ---------------------------- [自由詩]魔法/あおば[2009年10月12日0時10分]               091012 カレーライスと ライスカレイの違い よく分からないままに 大人になって もう一度と思ったが ライスカレーという人は居なくなり 昔のこととなった 腹が空いたら 食えばよい 空腹にまずいもの無しと 昔の忍者も言っている 宿の亭主はくせ者で まずいものを持ってきて ご馳走の振りをする 魔法のような 調味料 戦国時代の幕がおり 般若の面が売れている 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、若原光彦さん ---------------------------- [自由詩]僕らはたまに/あおば[2009年10月17日2時59分]                091017 コロッケを買う 帰り道の悦楽 見事なほどの 木の根の太さ あ〜ぁ〜あ〜ぁ〜 赤い車のホースを伸ばす 裏の川から水を汲む 火事だ! 赤猫だ! ニゲロニゲロと 口々に コロッケを咥えた 泥棒猫を追いかける 放水する消防車の エンジンが唸る 紅蓮の炎が焼き尽くす 重要文化財だって 一夜で ハイになる 悪夢だ コロッケを咥えたまま 朝になる 街中の コロッケを温めて 御飯を済ます 行って参りますと お辞儀をしてから ランドセルを背負い 靴を履いて 学校に出かける 学校の裏の川からは 水が這い登ってきていたが 今朝には用済みとなり 濡れたままになっていて 立ち入り禁止のロープが張られ 回り道して 教室に入る 自転車道を通って 先生がやってこられた コロッケを咥えたままの 私たちは お腹が空かないままに 給食を平らげなくてはなりません 脱脂粉乳は コロッケとは 仲が悪いのか 一言も口をきかないので 私たちは コロッケを無理矢理呑み込んで 脱脂粉乳を口にする 初めて笑ったような顔をして 仕返しに 牛乳瓶を粉々に砕いてから 帰宅する 子供たちの群れを 窓から眺めて コロッケが不足すると 牛乳瓶が 粉々に なると 細かい字で 記録する 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、ヒヤマキエさん ---------------------------- [自由詩]停車場/あおば[2009年10月17日18時47分]                091017 吉備団子あげます ください くれ おくれ 家来になった顔した侍達が ぞろぞろ 動物の面を着けて歩いてくるから ぎびだ〜んごっ といいながら 口をもぐもぐさせて 電車が来るのを待つ ---------------------------- [自由詩]おひとり戦記 (朗読用)/あおば[2009年10月26日14時21分]          停車場で 吉備団子あげます ください くれ おくれ 家来になった顔した侍達が ぞろぞろ 動物の面を着けて歩いてくるから ぎびだ〜んごっ といいながら 口をもぐもぐさせて 電車が来るのを待ちながら 萎びた地球に 聞いてみた 感じたままを素直に 吐いてみてと 言ったのだが 萎縮したのか 言いたいことがまとまらない ようだ だから負けたのだと 声なき声が呟くが 自主性を無くし ここにも用がないから帰ると言えないのが 辛い カーナビの渋滞情報を横目に 喫茶店でお茶をする人は居ないかと 目をすうーっと走らすが 喫茶店はどこにも見えない ここは公園のベンチ前だ 東京生まれは撃たれ弱いと 背筋を伸ばす 直射日光の延髄切りに耐えた首筋も 脊髄パットの衝撃には耐えきれないようで 街道ライダーは 暑い中を身軽な格好ですっ飛んでゆく ぶつからないように こけないようにと それだけは切に願う 神仏を信じていないものの願いは どこに向かうのか 鎌倉街道から 永福寺に向かう途中 明日からは秋といわれたツクツクホウシが 聞き取れないだみ声で 懸命に経を読む まだ少し蒸し暑いのが救いと 公園の水飲み場で水を飲む 縄文人の居住跡がコンクリートで保存されている 四阿のような家か 縦穴式の住居か 定かでないが いくつかの穴が 大地に深く穿かれていて 太い柱でも大丈夫だと 言いたそうな遺跡跡を残して 神田川沿いの道をひたすら辿ると 帝都電鉄改め京王井の頭線電車がスマートに走る 湘南型2枚窓のスタイルを前面に残し 20メートル4扉車は 車を持たないハイティーンの身軽な躯を座席に埋め 定刻に発車する 小銭入れの中には 「poenique」の「即興ゴルゴンダ」投稿作の前に「停車場」を連結して改稿。「即興ゴルゴンダ」でのタイトルは鈴川ゆかりさん ---------------------------- [自由詩]passage/あおば[2009年10月26日23時50分]                  091026 水の上からの眺めを 台風が せせら笑うように 湖岸の木々は 大枝を揺らして 今にも根本から 倒されようとしているのが テレビ画面から 伺える 台風は ここぞとばかりに 風を送り込み 湖底の 秘密が 暴かれるのを恐れて 竪穴住居に移り住もうと 好奇の侍達が ハイスピードボートに乗って 狭いクリークを右往左往 前後に転進を繰り返している 先に入り込んだものは 見通しを誤って 隘路に倒れ 後から押しかけた大勢は 見えない中州に乗り上げ 座礁したりして その後ろからも次々とフルスピードで付き従う者どもの エンジンの響きが 風を切り裂くように 悲鳴となって ひとしきり 聞こえた後は ビーボーとなる風の音が支配して 波は荒く 沈んでゆくボートの群れにのし掛かり 引き剥がし 散乱させて 湖は 海となっていた 「風の復讐」というタイトルをつけ 懸賞に応募投稿したが なんの返信もなく 投稿の海に沈んだようだ しかばね共が のたうちながら リサイクルされる日は 来るのだろうか 静かに回転する物音が 部屋の隙間から 気の抜けたビールの匂いを運んでくるから そろそろ此処も逃げ出さなくてはならないと 覚悟を決める 「poenique」の「即興ゴルコンダ」未投稿作、タイトルは、小原 明季さん ---------------------------- [自由詩]児童憲章/あおば[2009年10月27日19時57分]              091027 偶然が 囁くので ききみみを そばだてる 歩きながら 考える 歩きながら 思いだそうとする 未来の記憶 偶然が 素直な顔をして 裏切るから 裏表を確認して コピーを取って 畳の下に隠すように仕舞う 偶然が 谷の傍に落ちてくるので 偶然が 支えきれない重さを 聞き耳を欹てながら 読めない文字の意味を考える 移動中の事故の損害は 保険で救済されますと 裏側に記されているので 安心して あんしんして 側転を開始する児童憲章 ---------------------------- [自由詩]あちらのお客様からです/あおば[2009年11月6日12時37分]                     091106 時間軸が傾いたので 慌てて修理の電話したのですが 補正予算の執行が停止され 本年度は難しい 次年度以降に期待してくださいと 愛想の良い返事があって 切れた 時間軸が傾くと 独楽のように回転して 地球がみそすり運動をするのだろうか すり鉢の筋は効率よく胡麻をするためと 信じていたのですが 胡麻の身になると 些か剣呑で 堅いセラミックで身を切られ スリコギで押しつぶされて 身体の形を失って カスとして捨てられる お客様扱いをして貰いたいのではないが もう少し丁寧に扱って欲しいものと ガラス越しの目に訴える 紙に書かれた文字は 朽ちないように ガラス容器に保存され 公開されることは滅多にないので 集められたお客様は一列に並び 順番が来る度に歩きながら ディスプレイ上で眺めるか 新しい紙にプリントアウトしたのを 手に取って しげしげと眺めるのですが どちらのお客様も 夢中なので 時間軸の傾いているのに 気が付かれないようなので 再来年の予算に期待しております 「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、流川透明さん ---------------------------- [自由詩]晩秋/あおば[2009年11月6日14時47分]                   091106 稼ぐに追いつく貧乏無しと 村の鍛冶屋が槌を打つ 間違えたのはお殿様 天下取ると聞こえたので 良い気分 天下取るにはそれなりの 鎧の数と袖の下が必要と 今の人は知っている なにしろ歴史物は手っ取り早くて読みやすく ハラハラドキドキ ケーム擬きの展開ですものと 裏のカボチャも混ぜ返す カボチャぼちゃぼちゃ 泥水掬い 金の成る木を育てる気 烏の鳴き声 透きとおり 蛙が見送る 散歩道 簿記の帳面落とすなと 泥んこ遊びが大好きな 武蔵野台地に冬が来る ---------------------------- [自由詩]横断歩道/あおば[2009年11月10日0時44分]            091110 毛皮を着て 山の中を彷徨う 鉄砲で撃たれそうな気もするが この山の中は静かで 誰も訪れない 雪が降ってきて 毛皮を着ていても寒い コンビニで当たったカップ麺を暖める 3分間の間に麺がほぐれて美味しくなるのだと しみじみと眺めていたが 2分過ぎに我慢できなくなって 食べ始めてしまう 我慢のならない人ですねと 木の枝から落ちるつららにも笑われる つららがつららとならんでいると 麺を噛みながら思う お汁を飲み込んだ後には 食べ物はなにもない 口を開けて 地面を眺めるが 白い新雪が生きもののように優しい曲線を描いているだけで 横断歩道を渡って 居酒屋に入る この町では 雪の降る日でも 営業しているのは 小腹が空いた人たちが 山から下りて 訪れるからだと 思う コンビニでは くじ引きが大流行で くじ運の良い人は ニコニコ顔で外へ出て それから 静かな山に入る カップ麺を啜り 横断歩道を渡り 居酒屋に入る 運の悪い人は つまらなそうに 真っ直ぐ帰宅する 家では鍋がぐつぐつと煮えていて 家族は満足そうに笑みをたたえて 山の雪景色をテレビで見ている 子供たちは 受験勉強したりして その日の義務を果たしている カップ麺に満足できなかった僕たちは 居酒屋に入り 翌日は コンビニでクジを引く 運の良い人は山に入り 運の悪い人は帰宅する 帰宅するのも悪くないと思う人は 居酒屋への通路を遮断され コンビニでカップ麺を家族の人数分買い込み 山へ寄らずにそのまま帰宅する 帰宅するとカップ麺にお湯が注ぎ込まれ 小腹が空いて来るが 眠気に誘われ 寝てしまう 朝になれば 雪が積もっていて 山に向かうのは 無謀だと分かる カップ麺を人数分抱えて 横断歩道を戻ってくる人に 会う ---------------------------- (ファイルの終わり)