kawa 2011年4月30日17時51分から2021年2月27日17時39分まで ---------------------------- [川柳]蝶とスイートピー/kawa[2011年4月30日17時51分] 月光透す蝶のステンドグラス 夜の粒子は星明かりに熟する 生家に邂逅し得ぬ四十色の石 街上一日についての数式 どこか素敵な場所へ赤いスイートピー 親虎の寡徳滅する大陸の夏 変化表彰に足る空前の神事 笑う電車祝福する夕暮れ畳 仔鳥に飲下される夜積もる羽根 ---------------------------- [自由詩]水中花/kawa[2011年5月25日15時26分] 海面をうらがえして歩いてる 裸足で踏む空 ひとつだけえらべばいい そう思う 目がとけていく 涙が雲へおちていく 光とともに生きている 知っていたらもっと違ったのに なあ、海の中では いつも虹が咲いてる ---------------------------- [川柳]秋と血球/kawa[2011年10月16日16時38分] 木の葉降る楽しい声は秋の空 カレー派の彼は枯れ葉に別れ華麗 図書館でさわやかな日に生理学 野良猫に辛子つけ麺不道徳 枯れ葉かさねて渡されキレ芸のみ 友人も冴えない日かTwitterで知る 数秒で語りつくせる十日間 予定はずれこみ記憶力カバ並み 赤血球に生まれても君をきらわない いつか遠くなるはずの面白い君 ---------------------------- [自由詩]三月のライオン/kawa[2012年3月24日23時46分] 父は絵本で、母は旅人だった。 ダンジョンを地下へ地下へと解き進み 衰弱しきって手に入れたのは たったそれだけの事実だった。 うつくしい物語を記録する誠実な本 わたしは文字を指で読んだ。 そうして口から電撃を飛び散らせ 青空を呼んだのは ただ君に好かれたかったからだった 重力のみでよりそう月 さみしいものに感じながら わたしと君にはそれすらほとんど働いていない なあ、こんなにつよく求めるのは、偶然だ。 たとえどんなにつよく手をとり合っても わたしたちがつながっているのは偶然だ。 たまに帰ってこれたのは いつも雪の降る春の日だった。 たくさんのたくさんの雪片 それと道端で土を生んでる三月のライオン。 ---------------------------- [川柳]春の住人/kawa[2012年4月1日16時13分] 天を咲いてる わたし見る限りの空 類まれなる人類、月から帰る 抵抗忘れ、ここは真っ白い桜さくら 爽快はあるときの君春の空 いのちわたしはいまそれを知るこども 天と天つなぎ千年ひつじ飼う 春に恋しろ死神ただそれだけ 凡人春をしり描く不可解な鳥 パンツスカートスカートスカートパン 紺色でそんな犬らとウエディング メガネ似合う?そうかよ花と空と春 ---------------------------- [自由詩]色のない花屋/kawa[2012年4月3日20時05分] 赤 紫 金 白 風にふかれて俺は 君のたいせつなかなしみを踏みつぶす 雨がふる 虹が崩壊する 目をあける 目をとじる 心をこめて俺を愛する それが君の答え 子を産み、親より長生きする それが君の答え 雨がふる 虹が崩壊する 目をあける 目をとじる 一緒に、皆と同じ疑問を口にしよう それから願うよ 雨がふる 虹が崩壊する 目をあける 大きな声で笑う 大きな声で笑う 大きな声で笑う ---------------------------- [自由詩]トマトジュース/kawa[2012年6月7日6時59分] __は 地球より大きなものをさがして 空を向く 口をすこしあいて 鳥がきこえる いつか たくさんのトマトを植えてくれ 前世まで忘れてしまうほどの いい匂い そうしたら、金星のみえる夕ぐれに しあわせにしてあげる すごくたのしいものを 生きていたい、と思えるものを みせるよ ---------------------------- [自由詩]造花のブーケ/kawa[2012年6月23日19時11分] 私たちの星についての知識はすべて間違っていた、と ようやく人びとは悟った ほんとうの、私の不思議 ひかりの造花とは、いったい何なのか? 夜明けの湖のように ゆっくりと色を変えまたたく花びらと おしべとめしべ 少しつめたい葉脈 柔らかくつまんで、ライトに透かす 私はまるで落下する 私たちの星についての知識 造花のブーケを、小さく揺らす ひかりが共鳴して、音が消える 犬がねむる 鳥がねむる 私は、声なくつぶやく 君に会いたい 私たちの星についての 生きていくには、花が必要だ 花のいのちを終わらせて コップに飾る あるいはしばらく持って歩いて 橋のうえから投げ捨てて 祈りをささぐ 花のいのちを終わらせて ただの君と私だけの いつも聴きにいってた君のピアノ いつも好きだった いつもいつも好きだった ---------------------------- [自由詩]サーチライト/kawa[2012年6月30日15時52分] オルガンを 小さくして 香りつけて 戸棚にならべてひとり暮らし 古いノート 描きかけてた 歳とった君 遠くにふざけてトカゲの僕 わかるんだってさ 丸い部屋に ☆のかたち すきまあいて ふたりはさまって嫌な気持ち 空にいてくれ どこをみてても ヒットしてる仮想大陸 ヒットしてる壮大 ヒットしてる存在 ヒットしてる存在 ヒットしてる存在において我々は僕は一日無駄にして サーチライト サーチライト ---------------------------- [自由詩]ジャングル大帝/kawa[2012年7月11日11時21分] 人よ ジャングルの中で 虎に襲われたといって泣くな それは人ではない おまえはひとりではない 人よ ジャングルの中で 大蛇に殺されたといって泣くな 人は猛獣にはかてない おまえはまちがっていない 人よ おまえはジャングルをいつか抜け出せる 人であるために 生きていく力をもて きっとそのさきに 人に出会える おまえが知らないだけで 人はジャングルのむこうに生きている おまえは人であるために 生きていく力をもて ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]絵描きの鳥/kawa[2012年8月20日6時46分] 反射的に目を閉じて、何かが溶けて冷たく頬を流れたので、私はそれが雪片なのだ、と知り目を開けた。 私は雪原で、キャンパスと向き合って立っていた。 そこには雪原しかなかった。 遠くで森が寝そべっていたり ところどころ草原が息をついているような偽物の雪原ではなく 地図の完成する前の時代の、獣しか知らない山奥の湖のような 完璧な雪原だった。 雪は無表情に降り続けていて 私ははじめてみた工業機械の部品を手にしたように 絵筆とパレットをぶら下げ 真っ白い空と雪原の間に地平線を探していた。 雪原を描くのだ と声がして、私はようやく、傍らに男が立っていることに気がついた。 なにやら描かなければ仕方のない心持ちになった私は 一度持ち替えた筆を役立たぬ位置に留めながら 果たしてこの視界の全てが真っ白の雪原をどう描いたものか、と戸惑ってしまった。 それから、急にむかむかと腹を立てた。 何故私は絵など描かねばならぬのだ。 私は絵など嫌いなのだ。 今日においては、絵などすでに役目を終えた幽霊のようなものではないか。 私を、そのようなものに取り入れるな。 生きている私を、幽霊にするな。 そう腹を立てた。 すると男は私の筆をとり、黒の絵の具で、一筆がきに鳥を描いた。そうして ああ、自由だよ といった。 私は、男の水色の瞳に雪片が落ち、それが眼球の上でゆっくりと鳥の形に溶け残ったのをみて ああ、この男は死んで鳥になったのだ、と理解した。 ---------------------------- [自由詩]しゃべりたくなければ/kawa[2012年8月30日16時07分] しゃべりたくなければ 口をとじていればいい (・・・・・・・・・・・・・・・ぷはっ) しゃべりたくなければ 口をとじていればいい 息はしてもいいから (・・・・・・・・・・・・・・・ぷはっ すーはーすーはー・・・・) さみしくなっても しゃべらなくてもいい どのみち変わりはないから (・・・・・・・・・・・・・・・・・・すーはーすーはー・・・・) (・・・・・・・・・・・・・・・・・・すーはーすーはー・・・・) (・・・・・・・・・・・・・・・・・・すーはーすーはー・・・・) ---------------------------- [自由詩]そんなの全然不条理じゃない/kawa[2012年9月12日10時56分] ド、レ、ミ だけで曲を作れとしいられて 泣きもしたけれど私が馬鹿だった そんなの全然不条理じゃない 前世で私が誰かを裏切ったことを 謝れ謝れとしいられて 腹立ちもしたけれど私が馬鹿だった そんなの全然不条理じゃない さみしくなること かなしくなること しにたくなること なぐりたくなること そんなの全然不条理じゃない 私が馬鹿だった 10分間 1時間 1日 10年 私の一生 そんなものにしばられて生きている そんなの全然不条理じゃない 泣いている人とだけ話そう 泣いている人は、私となんか話したくないかもしれないが 泣いている人にだけ、言葉が届くかもしれない いつまでも泣いているのはもったいない、と言いたい そんなの全然不条理じゃない ---------------------------- [川柳]もごもご/kawa[2013年4月23日4時41分] ていしせい わたしをさぐる わるいもの ほうせんか ざるつぶるぐで おおはやり みどりいろ ちちがさいごに ふれたいろ きょうかいで ほえるおれたち さるこよい もっともっと ねがいましては にちようび いまのうち いきていないと いのれない ちきゅうぎは どうせあたしの いぬだもの どろぼうと かねをなくして らーめんや ---------------------------- [自由詩]祈り/kawa[2013年4月29日18時51分] わたしは生まれてこのかた きっともう何も知らない カペラ、 木星の謎も水星の謎も 忘れていてすまなかった いつかを今とは気づかなかった 空は大きすぎる いつでも そんなことを言った なぜわたしは知りたいのだろう? 生きるもの 生きるものたちよ どうか私は叶えたい 誠実に愛することを ---------------------------- [自由詩]にどめのたび/kawa[2013年7月30日22時10分] ねむりながらおきて いつものように あめがふってかぜがやんで せんねんたって わたしはわたがしになった くだらなくてつまらないわたがし さかなをさがしたり きのみをうえたりきかいをみてたり きらきらひかってすきだったんだ そばにいてくれたんだ たくさんのかなしいことなんか みんなどうしようもなくてもね わたがしはいつか じゆうになったつもりでいた ふうせんなんだ、とおもったわけもなく わたがしのだいじなものは、ふうせんなんだ とんでいってきもちいんだ そうだろとんでくんだろ あめがふってつちにまみれて わたがしはわたぼこり にどめのたびにでるんだすてきだろ こんどははじめにもどるたびだ いつかひっしでないたろ そしてがっちりにぎりしめていた ぶさいくなわたしをさがすたびだ ---------------------------- [俳句]秋のうた/kawa[2013年9月23日13時52分] 秋がわらう。君がうたえばいつでも。 遠くで木影が弾くまだ見ない日々。 造花のブーケとともに、午後を見送る。 ざんざんか空は秋には同じうた 秋空と夏空。冬空と春空。 「この先は私有空ですから」「Yes」 秋がわらう。君がうたえば私も。 ---------------------------- [自由詩]たわごと/kawa[2013年10月30日2時05分] 人が死ぬということは、 その人と話せなくなる、ということなんだな 当たり前だけど。 とても当たり前だけど、すごい好きだった、ということを 伝えられないことなんだな。 当たり前だな。 どこかの休日で、新幹線に乗って 電話をかけて呼び出して 公園でも喫茶店でも良いから、 君とふたりで話したかった 君と話したい 僕の十万倍賢くて、うつくしい君 僕は好きだったと伝えたかった 君が好きだったと。 君のことを知る人は少ないけれど 君ほどすてきな人には、会ったことがないと。 僕は君が好きだった。 本当に君は、素晴らしい人だった。 ひとことだけで良かったのに、僕は言わなかった 絶対とどかないのに 仕方のないたわごとだ 酔っ払いの ---------------------------- [自由詩]七つの島/kawa[2013年12月8日14時35分] 一つの島で、わたしはつよく、過ぎたことに囚われた 太陽が地球を崩壊させるため 爆発的なうつくしさで海と空を染めとばし 宇宙を貫く星々の轟きが いきのこった生命を汚染するとき わたしはかなしみになって 蟹がひとつ浜をさり 朝がまたくるのをみた わたしは、結局は今、生きていると気づいた それがわたしの一つの島だ 二つの島で、わたしは物騒な約束をとりつけた それは、大雨の日に遠くにみるいかずちのような 気の利いた冗談のような 絶望的な希望だった とことんまでくると 絶望と希望は同じなのだ それは、かなしいということだった 涙がでてきたのと同時に 体が浮き上がるほど わたしはわらった 最後のときに、言葉がどれほど意味を持つだろう わたしはほんの塵芥だったが 生きていたのはほんとうだ だれも知らなくとも わたしはこのたくさんの星の下で 好きなものを思った たいせつなわたしの塵芥のことを 三つの島のことを、わたしはけっして、語らない それは誰しも、知っていることだからだ 四つの島で、わたしは愛された 斬新に汚れきった蟲と獣の剣を振り回し 紅い毒の霧を独り切りつけていたわたしを むしくいのわたしを 陽だまりの枯葉のように てんとう虫のように 犬の背中のように 愛するひとりに わたしは愛されていた 五つの島と六つの島と、数千に及ぶその他の島々を わたしはしらない 名前のない島を知らない 理解しない 認識しない 想像すらしない島々を知らない わたしは海の果ての末端で口を開ける 永遠に落ち続ける滝壺のような 無罪な声帯で 七つめの島を呼んだ 言葉ではなかった まるでけものだ おんなじだ なきながらなきながらさけんでいた ---------------------------- [川柳]餓鬼の月/kawa[2014年1月2日3時14分] 無精風邪 水槽で夜月詣で 水槽に立体で泳ぐ今朝の夢 朝うかぶ二十四個の月の夢 夢の音さんざん残酷木魚の香 香りきく不埒淫猥部屋の隅 隅にては惨めな餓鬼が剣抜く 剣ひく大地に紅いみじめさよ みじめさよ我に我々に沈黙 沈黙は年明けて尚月の傷跡 ---------------------------- [自由詩]あたらしいまち/kawa[2014年2月16日3時31分] あたらしいまちをあるく わたしはすこしこうふんして ここで、だれにであうだろう どんなことがおこるだろう そんなことをおもいながらあるく わたしはあたらしいコートをきて かわをおよぐとりをみたり ふるいマンションにはためく、せんたくものをながめながら はるのにおいをかいだ それからすこし、すきだったひとをおもいだした このまちをすきになるよかんがした ---------------------------- [俳句]雨と白/kawa[2014年5月16日13時06分] 五 月 雨 吾 と 吾 と の 数 か 月 天 気 雨 ち い さ く て 白 い 太 陽 月 寒 く 母 の 日 忘 れ 花 粉 症 青 あ ら し 内 側 か ら な ん か く る 牛 蛙 花 び ら 数 片 つ い て お り し ろ い 空 吾 と 見 上 げ た 五 月 雨 と 誰 か ---------------------------- [自由詩]メメント・モーリエ/kawa[2014年7月27日22時14分] 蛇の足も役に立つもの 告白とは一言であるから あまりに自然なので いつかあなたを守りすぎ あなたは真っ直ぐになってしまい 傷ついてかけて、隙間に砂が詰まる 呼吸はとても大切であり ほとんど息をひそめて目を閉じた そのときに、となえる メメント・モーリエ(死ではなく海を思え) あなたはとても嬉しいので 時折どうしようもなくわらい 息をわすれてなみだをながし 傷ついてかけて、隙間に砂が詰まる そのときに、となえる メメント・モーリエ(死ではなく海を思え) あなたの南十字星 ---------------------------- [自由詩]惑星探索もどき/kawa[2018年6月9日15時50分] 人びとの心に残ったきずは まるで石壁に咲く蒲公英だ 空よりも君を好きになった 君がつむぐきれいな言葉に なにかたいせつなことが隠されていると思った おそらく唯一の道しるべだった ひどく細い線状の夕暮れ 火星に降り立って、それがなんになるだろう しかし願いを持って、それを叶えること そこには深い理由があって どこにもない未来がひとつの誰かの鍵となって 今生きているあなたのために私は生きて なくしてからではないと、きづかない とても不確かな、私の楽観的な星空だ いつか、すごく好きな人がいた 見えない星に祈ること そんな独白が私の物語 ここにしかないものを探すこと 人びとの心に残ったきずは まるで石壁に咲く蒲公英だ 空よりも君を好きになった おそらく唯一の道しるべだった ひどく細い線状の夕暮れ ---------------------------- [自由詩]10円/kawa[2018年8月25日1時58分] 財布の中には、10円ぽっち 気持ちのいいくらい金がない 金なんか嫌いだ、いるもんか 金なんて馬鹿なんだどうしようもない 金め、親の顔を見てやりたいとくだくだ叫んでやりたいが 暑くてそれどころではない あと、変に台風が多いので喘息がひどい 結局何度見ても10円は10円で これで寿司が食えるわけでも酒が飲めるわけでもない どうしようもないほど金がないわけだが このくそ仕様もない10円よりも俺はましなんだ いや俺で寿司が食えたり酒が飲める訳でもないのだから 俺は10円とおんなじなのかではなんか買ってやろうか など、次第に何を考えていたのか分からなくなってきたので もしかしてもう寝てしまおうとバスタオルに絡まっている ---------------------------- [自由詩]アッパーライン/kawa[2018年9月10日22時27分] つづきに認める混乱した地平線とx 遅すぎない、遅すぎない、ついに私は カペラと過ごす一夜を忘れて 助けない、だからなにもしない 近いを縦に灰色の中心地 目で譲り受けてから忘れ得ない声の君 遠くてさわれないシャッフルを由来とする 由来由来、私へ迎え ちょうど息を止めない quo I, quo I, 怖くない 静かなるiPhone うすっぺらな湖、うすっぺらな欲求 つづきに認める混乱した地平線とx 遅すぎない、遅すぎない、ついに私は 利き手にたずさえるベテランのコーヒーカップ 助けない、だからなにもしない ---------------------------- [自由詩]瞳の色/kawa[2019年3月27日17時32分] 僕はつづけた。 ………というわけで、クジラの瞳の色がネイビーブルーであるのは、 空の色を吸収して、また放射しているからなのです。 傍らにいる誰かが、うなづきながら聞いていた。 僕たちは、鳥も鳴かない湖のほとりで 石段にすわり、霧を眺めていた。 このまま、何かを待っている必要があるような そしてそれは、そんなに先ではないような気がしていた。 不意に、今の僕の説明は全くの間違いであったことを思い出した。 違う。何を言っているのか。 クジラの瞳は北極圏の深海の色だ。 そして、鳥の瞳が黒いのは、宇宙の色を写しているんだ。 獣の瞳の色が※△◯なのは、??※△であるからで…… 少し混乱しながら記憶を混ぜ返していると ヒトの瞳の色は? と声がした。振り向いたが誰もいない。僕はひとりだった。 呼吸して、もう一度湖を眺めた。 ?づえをつく。 人間の瞳の色が、様々である理由。 霧を眺めながら、それを考えていた。 ---------------------------- [自由詩]Switchください/kawa[2019年12月28日16時08分] 明日やりますと言い続けて70年 結構なんとかなってきた 比較的、いい子にしていました 最後の願いを聞いてください Switchください 今年で70回目の良いお年を クリスマスは私が作りました 概念そのものを、です あと門松も、私が最初に作りました 本当です。信じてください だからギガください ほんとギガをテラください それともデートしてください You just say it. え、なんて言ったんだけ 何を言いたかったんだっけずっと さみしかったんだっけ Switch欲しかったんだっけ 腹が減りました ねえ僕にもSwitchくださいよ、だまされたと思って なんて、そんなこと 誰に言えばいいんだっけ ずっと言いたかったんだけど 涙を流せないでいることを いつまでも忘れていることを ---------------------------- [自由詩]HERE IS/kawa[2021年1月8日18時53分] ここは独房 ここは当直室 ここはギアナ高地 ここは素敵な草原 ここは最後の病室 ここにいるということ どこであっても わたしがいるということ 外にいるのは刑務官 外にあるのはたくさんの仕事 外にいるのは美しい鳥 外にいるのは素敵な湖 外にいるのは医療スタッフ わたしがどこにいても どこかで美しい鳥が鳴いているということ どこかで愛した人たちが生きていること 与えられた5分間 与えられた一呼吸をわたしは生きる なんのために生まれたのかは、分からなかった ただ、生きていることは、幸せだった 幸運をもらって生きた なにをしても良い時間 人を殺しても良い時間 人を助けても良い時間 なにか素晴らしいことをしても良い時間 なにもしなくても良い時間 憎んでも、愛しても 憎まれても、愛されても ここにいるのはわたしだけ ここにあるのはたくさんの仕事 ここにいるのは美しい鳥 ここにいるのは素敵な蝶 ここにいるのはわたしの家族 なんであっても同じ 誰かといるということ わたしが泣いて 愛する人が泣く それでわたしがわらってしまうので 愛する人がわらう 涙がとまらないが、わたしはしあわせだ ここでいま生きているということ わたしはわらいながら あなたといるということ ---------------------------- [自由詩]re-call/kawa[2021年2月27日17時39分] 思い出させてください 砂漠に咲いた一輪の ランタンに写るひとひらの 影のような彼方の記憶 何もないではなく、喪失を わたしはもらった その場所では救われない だから、どうか 思い出させてください 砂漠に咲いた一輪の ランタンに写るひとひらの 影のような彼方の記憶 ---------------------------- (ファイルの終わり)