よだかいちぞう 2003年4月13日19時44分から2006年7月25日22時06分まで ---------------------------- [自由詩]甘いミルクキャンディー/よだかいちぞう[2003年4月13日19時44分] ぼくはミルクキャンディーを毎日舐めていた 生まれたときからずっとだ だからいつも舐めるミルクキャンディーがどんな味をするのかなんてわからない そんなぼくとおなじ ミルクキャンディーを舐めつづけている そのひとが 今日ミルクキャンディーを舐めるのをやめたのだ そのひとは これが自由の味だといって ぼくたちに云いまわって いる ぼくは自由の味ってなんなんだいと その人に聞くと 自由の味 それは自由の味だよ おれにもわかんねぇよ あのいつも舐めてる飴の包みを 剥がさなくていいってことだよ まいにちまいにちおれらはあの包みを剥がしているじゃないか もううんざりだとかおもわないか? 俺はな そのわずらわしさもなにもかもなくなったのさ どうだ いい気分だ でもその自由の味って何なんだい? ああたしかに味がちがうんだよ ミルクキャンディーの包みを剥がす鬱陶しさだけじゃなくてさ たしかにちがうんだこの舌の感覚がな おまえにも舐めるのをやめてみれば解るよ 口では説明できねぇんだ 俺にもどういう味がするのかわかりゃしねぇよ でもたしかになにか違う味がするんだ もう吹っ飛ぶんだよ 最高なんだ ---------------------------- [自由詩]ババロア/よだかいちぞう[2003年4月25日20時53分] 彼女はびしょびしょに濡れた服を着て この服いいでしょ といった ぼくは濡れてるから着替えた方がいいって いったけど 彼女はそのうち乾くから平気だよと まったく気にしていなかった いつまでも濡れた服を着ていると いけないというのは いつからか常識のようにぼくのあたまの中に入っていたので ぼくはその濡れた服ばかりに気を取られていた 次の日も 彼女はびしょびしょに濡れた服を着て ぼくの前に現れた ぼくがまた、また服が濡れてるよと いっても 彼女は何も心配していなかった 彼女とぼくは街中を歩いた すれ違う人が びしょびしょに濡れた彼女の服に気付いても 驚かず、なにも関心を示さないようだった ぼくも、彼女と出会う前に 服を濡らした人とこんなところですれ違ったとしても 別になにも思わなかっただろ そんなことを考えながら彼女と歩いていると ぼくはなにかいままでずっと 勘違いして居たんじゃないかという気がしてくる けれどもびしょびしょに濡れた服は 誰の目にも彼女の体に貼り付いていて あまり心地よさそうには見えなかった 彼女はババロアの話をしようといってきたので ぼくたちは歩くのをやめて ババロアの話をすることにした ババロアはヨーグルトの偽物だとか ババロアはプリンのできる前のもので プリンができる前まではみんなババロアだったのだけど プリンが出来てしまったから ババロアだったところはみんなプリンに取って代わってしまって ババロアは廃れてしまったんだとか そんな意味の無いババロアの話を彼女は熱心にした ---------------------------- [自由詩]精神科の待合室でのつまらない妄想。(千葉県民の会で朗読したやつ)/よだかいちぞう[2003年5月21日19時04分] ぼくの名前は秒針 チッチッチッチッと音を鳴らして 0秒から59秒まで 時間を知らせるのがぼくの存在 ぼくはある待合室の掛け時計の中にいた ぼくのことを見詰めている ひとりの女の子が居た 誰だってそうかもしれないが ぼくはその子のことが好きになった 彼女が決まって火曜日の同じ時間に来るたびに ぼくのことを必ず見た ちらりっとみるときもあるし ただずっとみているときもある ぼくはそのたびにどきどきして クォーツで動くぼくの秒針がすこし早く時を刻んでしまっているんじゃないか そんないらない心配をするぐらいだった そして彼女の名前もぼくは知っていた 彼女がぼくを見ているときに 彼女の名前が呼ばれると 彼女はぼくから目をそらして 違う部屋と行ってしまうからだ ぼくは一週間が待ち遠しかった たまに子供とにらめっこをしたりした だけど必ずぼくが勝ってしまう 子供が必ずいつか目をそらすから ぼくは退屈だった 長針と短針はあまりにも遅くてぼくはいらいらしていた この掛け時計の中でぼくが生活するのはあまりにも不快なことだった あるとき彼女がぼくをちらりではなく ただずっと見詰めているときだった ぼくは決心を決めた えいっとやったのだ ぼくは掛け時計から抜け出でて 彼女の膝の上に落ちた 秒針を持っている女の子がいた 彼女は手に秒針を握って いつも離さなかった 彼女は秒針と会話ができると云っていた ぼくが彼女に その握ってる手の中に何が入ってるの? と、質問すると 彼女は秒針が入ってるという そうなんだじゃあ見せてよ というと 「秒針がずっと握っててほしいというから 開くことはできないの」と言う 彼女はなにをするときも 右手をずっと握ったままだ ぼくは思う彼女の握ってる手の中に ほんとは秒針なんか入ってないんだろうって いつか彼女は手のひらをひらいていた ぼくが秒針はどうしたの? と、聞くと 彼女は、わたしたち一緒になったのといっていた どういうことって聞くと わたしも秒針で秒針もわたしなの おなじからだになったの そういっていた それからというもの 彼女は暇があると小声でチッチッチッチッと言うようになった チッチッチッチッ 彼女は待合室で秒針と一緒になったと云っていた けど、それはありえないことだった 精神科の待合室には秒針のある時計は置かないことになっているからだ もともと待合室に置かれている掛け時計には 短針と長針だけで秒針なんか無かったのだ だけど彼女は掛け時計を指差して云う いま私はここにいるけど、もともとはあそこに居たの ぼくは彼女と同化することができた ぼくは彼女の体の中に入り込んだのだ ぼくの存在は0秒から59秒を数えて 長針と短針を動かすことじゃなくなった ぼくの存在はぼくの存在はぼくの存在は チッチッチッチッと声を出して云うこと ぼくは彼女のチッチッチッチッという声が好きだ ---------------------------- [自由詩]ただいま恋人募集中/よだかいちぞう[2003年6月19日9時55分] 雨はしとしと降っていて あの子のあそこもぬれぬれで 今日もあのひと待っている 部屋のじめじめしたところ そこをながめて待っている どうしたんだいぼくのかわいい彼女。そんなんじゃ、そこも黴てしまうよ。 舐めると出て来るその液体 キャンディーみたいに笑ってる 君の顔みて笑ってる カエルもピョンピョン飛び出して ぬれぬれまんなかあのひと泳いでた どうしたんだいぼくのくそばか彼女。そんなんじゃどこも行けやしないよ。 カエルの口から飛び出した 名前の知らないその人は 黒いマントを羽織ってて 口から舌を出していた いったいなんてざまだい、まるで失恋したみたいじゃないか。 黒いマントのそのひとは あたしを海に連れてって そこで悩みを打ち明ける きみの近所の駄菓子屋の ラムネのビンのビー球を ぼくはそっくり抜き取った いけないことだと思うだろ まったくぼくのかわいい彼女、使い物にもなりやしない、おまえなんて死んじまえ! 彼女の身体はうごめいた 油の切れた動き方 ビー球返してといったのさ ---------------------------- [自由詩]ウエハース島の思い出 1  〜ウエハース〜/よだかいちぞう[2003年9月8日13時12分] ウエハース島は どこかの星の どこかの海に浮かんでいる ウエハースでできた島 そこには人が住んでいて 研究者や子供たちが住んでいる 研究者はウエハース島のことを研究している 子供たちはウエハースの陸地で遊んでいる 日差しが強い日だった 表面のウエハースがサクサクに乾いていた 子供たちはウエハースを棒や踵を使って掘って 中に埋まっているバニラ味のクリームを舐めようとしていた また違った場所では地質学者がバニラ味の地層ではない チョコレート地層に付いて研究していたが あまりにも熱くチョコレートが溶けかかっているのを見ると 指でそれをすくって口の中に入れたのだった 大変だ!大変だ! それはのどかなウエハース島では あまりにも聞きなれていなかったので 浸透するのに間が掛かった 防災設備に不備があるビルに 火災が起きたようなことだ 島が沈む それはウエハース島一の研究者である オキシドドール博士の言葉だった その言葉は間が掛かって 島に伝えられた 博士が言うには 海に浮かんでいるウエハース島は そのうち海水がウエハースに染み込んで その重みで島が水没してしまうと言うのだ 島の住人はやっぱり 自然に不安だと云う顔をみんなでした ウエハースで遊んでいた子供たちも 異変に気付いて不安だという表情をみせた 恋人が居た アルルコールという男の子と リタという女の子 アルルコールは直接博士から聞いたことを リタに話した 「博士が言うには沈むのは一億年先かも知れないし 今にもすぐかもしれない、けど確実に沈むって」 リタはそれを楽しそうに聞いていた まるで、目の前を歩いていた子が躓いて転んで 笑いが吹き出そうなときのように リタはアルルコールに云った 「楽しいことがはじまるわね 私はこの島の生活にうんざりしていたのよ もしこの話が無かったら 私は暇を持て余して 首をくくっていたかもね ああ、なんておもしろい話なの 島が沈むなんてすばらしいわ」 「でもリタ、沈むのは一億年先かもしれないし 島の人だって今は不安そうな顔を見せてるけど そのうちなにも思わなくなるんじゃないかな?」 「そんなことはないわよ 私はさっき島の人たちを観察しに行ってたの みんな終りを迎えたような顔をしていたわ きっとみんな島がいつか沈むと そう、いつかね そのいつか沈むというので もう、駄目になったのよ」 ---------------------------- [自由詩]ウエハース島の思い出 2  〜LLサイズ〜/よだかいちぞう[2003年9月8日13時14分] ウエハース島の人たちは 紫芋を食べる 紫芋は皆が食べるが 紫芋を作るのは 作る人と作らない人に分かれる 作らない人は作る人の紫芋を貰って食べる 作る人は自分の紫芋を食べる アルルコールとリタは 紫芋を作らない人の中にいる だからアルルコールとリタは 紫芋を作る人に紫芋を貰いに行くのだ アルルコールとリタは 紫芋をいつも貰いに行く人を決めている けれどもたまに違う人からも 紫芋を貰いに行くこともある 「リタ、トレドさんのことがぼくは気がかりだよ トレドさんのところに行かないか?」 トレドさんは いつもアルルコールとリタが 紫芋を貰いに行く人で とても大きな紫芋を作るので ウエハース島一有名な人だ 収穫祭というのが月に一度開かれて そこでは収穫された紫芋の大きさを 競う催しがメインイベントとしてあるのだけれど そこでは必ずトレドさんが1位か2位に毎回なる トレドさんが収穫祭の会場に来るとき その場の空気がいっぺんに変わる トレドさんが両手で抱えてくる 一際大きなLLサイズの紫芋の存在もあるけれども それよりもトレドさん自身が LLサイズのTシャツをはち切れんばかりに 風格をもって現れるからだ アルルコールとリタは トレドさんのその風格と同じ位の 包み込まれるような大きさのある性格を 気に入っていて トレドさんと居るときは いつも心地いいと思っている 「やあ君たちか」 トレドさんがドアを開けると そう云って アルルコールとリタを部屋の中に入れ いつもと様子が違う あきらかに気落ちしている様を アルルコールとリタに隠すつもりもなく 体格にあわせた椅子に腰掛けた アルルコールとリタは 想像はしていたけど 実際気落ちしているトレドさんを見ると 今書き終えたレポート用紙を 一枚めくって 真っ白のまだ書かれていない用紙が 見えたときのような気分になった リタの浮かれていた気持ちも ここでは25mプールで潜水している 「なにがあったんですか?」 アルルコールはリタと同じソファーに座りながら聞いた 「この紫芋を見てくれ」 テーブルに置かれた紫芋を指差して トレドさんは云った テーブルに置かれた紫芋は 少し見たくらいでは なにもいつもの紫芋と変わらない気がした アルルコールがためらっていると リタが紫芋を手に取って よく観察した 「トレドさん」 リタは云った 「なにも変わったことなんてありませんよ この紫芋がどうしたんですか?」 「君たちにはわからないのかい? 変わってしまったんだよ 島が沈むと解ってから」 アルルコールは云った 「説明してください ぼくたちに解るように」 「説明、説明なんかではわからないよ 感じるんだよ 君たちにもいずれわかる」 リタはおもむろに 紫芋を食べ始めた トレドさんに見せつけるためだ 「やめるんだリタ! そんなもの食べたらいけない」 トレドさんは少し怒鳴るように云った 普段のトレドさんには見られないことだ リタはそれに応戦するつもりはない という表情を見せながら云った 「トレドさん、安心してください この紫芋、いま私が食べました なにも変わっていません 味もいつも食べてるトレドさんの紫芋です 島の人々がおかしくなっても トレドさんはおかしくなることは無いですよ おいしい紫芋です どうしたんですか? なにを感じるというんです?」 そう、リタが話し終えると トレドさんは黙ってしまった 「ぼくたちトレドさんが 島の人たちみたいになってないか 心配して来てみたのです」 アルルコールがそう云うと トレドさんは「ありがとう」と云った それからこういった 「すまないが、一人にしてくれないか」 アルルとリタは部屋を出って行った なるべく音を立てずに出た方がいい気がしたので トレドさんには何も云わずに出て来た 「アルル、遂に壊れて来たわね トレドさんまで、 ほんとおもしろくなるわ」 潜水をしていたリタの浮かれていた気持ちが ゆっくりとまた水面に顔を出した アルルコールは云った 「リタ、君のこと好きだよ」 ---------------------------- [自由詩]ウエハース島の思い出 3  〜ユリイカ〜/よだかいちぞう[2003年9月8日13時15分] ウエハース島の頂には ユリイカという研究所がある そこではひねもす ウエハース島に付いての研究が行われている あまりにも研究熱心な研究者ばかりなので 島が沈み始めて ウエハース島の頂の研究所より下が すべて海水に浸かってしまったとしても かまわずウエハース島の研究を続けることだろうと思う 研究所だけしかもう残ってないのに ウエハース島にあるユリイカという研究所 そのユリイカという名前の意味を 子供たちは発見しているはずも無かったが 週に一度は子供たちの溜まり場でもあった あのウエハース島一の研究者 研究所の所長でもある オキシドドール博士が 子供たちに紙芝居を観せるからだ もちろんそれは無料で行っていて 子供たちにはお菓子も無料で提供される 子供たちはたぶんその紙芝居よりも お菓子をメインに紙芝居を観ているのだと思う オキシドドール博士もそのことは 十分に研究済みで 紙芝居を子供たちに見せたいのなら 紙芝居を見せるより お菓子をあげることだと 研究用ノートに書き付けている その紙芝居も とても変わった紙芝居なのだ 普通、紙芝居は シーン事に何枚もの紙をめくって 行われるが この紙芝居は一枚の紙しか使わないのだ 一枚の紙で物語が最初から最後まで 展開されるのだ 大抵はじめは 紙の中央からはじまる そして最後は紙の四隅のどこかに収まるか 中央にもどって来て終わるのがほとんどだ 紙の四隅のどこかで終わる物語の場合は ハッピーエンドで終わることが多い だけど紙の中央に戻って来て終わる物語は 哀しい物語が多いのだ アルルコールとリタは その研究所に向かっていた アルルコールはもう直接 オキシドドール博士から 話を伺っていたが リタはまだ博士からは その島が沈むことを直接は聞いていなかった アルルコールもリタも小さい頃は オキシドドール博士の奇怪な紙芝居を 熱心に観ていた リタは特にオキシドドール博士から 島が沈む原因を聞きたいのではなかった 島が沈む原因をつきとめて発見した オキシドドール博士が どんな風に居るのかが知りたかったのだ トレドさんや島の人のように おかしくなっているのか それともなにか島が沈まないような研究を 熱心にしようとしているのか そういことをリタは知りたいのだ 今日はあいにく紙芝居の日ではなかった 研究所の様子は まったく変わった感じはしなかった やはりここは ウエハース島が研究所だけになっても ウエハース島の研究を続ける場所なのだ けれども紙芝居はどうするのだろう? オキシドドール博士の部屋は 子供たちが自由に入れるようになっていて 大きな広間のようになっている リタはちいさい頃 オキシドドール博士と 一ヶ月ほど同じ部屋に住んでいたことがある オキシドドール博士はそういう人だ 子供たちをこよなく愛しているのだ 部屋の中から子供が出て来た アルルコールは子供に向けて云った 「オキシドドール博士は居る?」 子供はこう答えた 「オキシドドール博士は居る」 そういうと子供は外にと出て行った だぶんあの子供も この研究所の名前のユリイカの意味を 発見する時期には来ていないはずだ 「子供はおかしくなっていないわ」 と、リタが云った 「でも不安なのは一緒じゃないかな」 アルルコールはリタにそう云った ---------------------------- [自由詩]ウエハース島の思い出 4  〜したがって〜/よだかいちぞう[2003年9月10日12時52分] それより前のページは切り取られていた 「したがって ウエハース島は思い出の海に沈むのである ウエハース島も ウエハース島の海も すべては思い出の断片でしかない 私や研究所の職員 島の人、子どもたちも すべては思い出の中で生きているに過ぎず 我々は実在しないのだ 最後にリタへ 君はここに来てこのメモを見るか 誰かがこのメモのことを 君に伝えてくれるだろうから ここに君のことを書いておく 私は リタ君に謝りたい 君を悲しませるようなことを してしまったことを 君と私にしかわからない あのことを謝りたい 私は君の指示したとおりにしたまでだ けれどもそれは誤りだった それは君の間違いでもあり 君を生涯後悔させることだったと思う 君はいま忘れているだろうけれども 私が島が沈むことを表明したことで 気付くはずだと思う 私は研究者だから 島が沈むことを 発表することをためらわなかった 私だけの胸にしまっておくことも できたかもしれない けれども私は研究者だから そしてこの島と私たち研究者と この島の人と子供たちは このことを知るために 存在しているものである だからわたしはためらわなかった いや、私はしたがったのだ リタ、すまない」 リタはそれを読むと 外に逃げて行った アルルコールも逃げたい気持ちだったが なぜだかそこに居なくてはならない気がした リタは オキシドドール博士が 首を吊って死んでいるのを見ると 足から崩れ落ちて それからしばらくして 排泄物の匂いのする 博士を アルルコールと一緒に ロープから降ろし 床に横になった博士の胸元に しがみつくように顔を埋め 泣き崩れていた アルルコールはその光景を見て なぜだが予防注射を思い出した ひんやりとした消毒液が ガーゼで注射する腕に塗られて 針が入っていくのを見て 早く終われ という気持ちを思い出した 早くその光景は終わってほしいと アルルコールは思った オキシドドール博士の デスクの上にこのメモはあった リタが出て行った後 アルルコールもこのメモを読んだ デスクの上には紙芝居の絵を書くときに使う クレヨンが蓋を開けたまま置かれていた アルルコールは もう一度オキシドドール博士をよく見た リタを追わせずに アルルコールをここにとどまらせたのは オキシドドール博士だったような気がした それから 研究所の職員の所へ行って 博士が死んでいることを話したが 研究所の職員は 「そうですか」といって アルルコールがそのあと 「どうするんです?」 と、聞いても 「研究を続けるだけです」と答えた アルルコールは研究所を出て リタを探すことにした 研究所の職員もこの島の人も おかしい おかしくないのは子供たちと ぼくとリタだけだと アルルコールは思っていた そして 博士となにがあったのか 知りたくてしかたがなかった アルルコールは正直ものだったから このとき誰かに いまリタの安否のことと リタと博士に何があったのか どっちが知りたいか? と、聞かれたら 正直にリタと博士に何があったのか を知りたい と、答えたに違いなかった 紙芝居何を忘れて描くのか遠い記憶とリタの思い出 したがってついえた命転がってどこに向かったのリタと一緒に ---------------------------- [自由詩]ウエハース島の思い出 5  〜シュトゥルム・ウント・ドラング〜/よだかいちぞう[2003年9月10日12時55分] アルルコールは リタを探そうとしたが どこに行ったのか見当が付かなかった 「シュトゥルム・ウント・ドラング」 その時だった ユリイカ研究所に向かって歩いてくる 地質学者のフルボサミン女史と遭ったのは 女史はアルルコールが リタを探してるんです知りませんかと 切羽詰った感じで女史に伝えると 女史は「しゅとぅるむ うんと どらんぐ」と云った アルルコールはどういう意味ですと訊ねると 女史は「疾風怒濤という意味です」と、答えた アルルコールは女史が何を云ってるのか わからなかった 女史はそのあとにこう云った 「チョコレート地層とバニラクリーム地層が 混ざり合うところを シュトゥルム・ウント・ドラングといいます そこはチョコレートとバニラクリームが 渦を巻いて混ざり合っていて とても安定していない地層です」 アルルコールは女史が何を云おうとしているのか いまだに理解できなかった 女史はアルルコールに落ち着かせるそぶりをみせて こう云った 「あなたもリタのことなんて忘れて 私と一緒に地層の研究をするべきです」 リタは一人 ウエハース島の海を臨む崖にいた 崖の淵に座って 足をプラプラさせているのだ 崖のしたは波打つ海で 海までは20メートルはある もしここから飛び降りるのならば 死にはしないが確実に骨折はする高さだ リタはオキシドドール博士のことを考えていた 「オキシドドール博士」 と、リタが声を掛けたとすれば となりに居るはずのオキシドドール博士の霊が 「なんだいリタ 私は死んでしまったが いつでも話し相手にはなるがね」 と、云ってくれるような空間であった リタは昔のことを思い出そうとしていた しかし思い出せないのだ 海の音 風が身体を流れ過ぎていき 湿った手にはウエハースがくっつくのだ アルルコールは リタを探すことをあきらめた どこにいるのかもわからないし 疲れてしまったのだ アルルコールは リタと最初に出会ったことを 思い出そうとしていた あれはいつどこで出会っただろうかと 子供のときから リタとアルルコールは一緒だった オキシドドール博士の紙芝居を一緒に観ていた ウエハースの土いじりを一緒にしていた 紫芋を二人で一緒に食べた そんな単調な思い出を浮かべていた アルルコールはトレドさんの家に向かっていた 紫芋を無性に食べたくなったのだ リタは思い出したように アルルコールのことが 心配になった 残して行ったことを自責した きっと私を探し回って 不安になってるに違いないと思った リタはアルルコールを探すことにした 海を臨む崖から立ち上がって出で行く時 オキシドドール博士の霊がこう云った 「冷蔵庫の中の死体が腐乱して 臭いを発するのは まだまだ先だから もう少し 君たちは物語を続けなさい」 アルルコールは 呼び鈴を鳴らした トレドさんは出て来ない かまわずアルルコールはドアを開け 部屋の中に入って行った トレドさんが首を吊っていた アルルコールはもう慣れた光景のように それを無視して 視線を紫芋の入っている 大きな袋に向け 中に入ってる紫芋に齧り付いた 紫芋を食べてるときは誰でも安定するものだ アルルコールはお腹に入るだけの 紫芋を何も考えずに 紫芋を食べることだけに頭の中を一つにさせて ほんとうにたくさんの量の紫芋を食べた アルルコールの思考は止まった それはもうリタのことを思うアルルコールではなかった 葉っぱを美味しいそうに食べる芋虫と変わりがなかった トレドさんの遺書にはこう書かれていた 「アルルとリタ 君たちは存在する ぼくたちに夢をみせてくれて ありがとう」 ---------------------------- [自由詩]ウエハース島の思い出 6  〜スーパーストロングガール〜/よだかいちぞう[2003年9月10日12時57分] ここでウエハース島の物語に戻る前に ぼくのことを伝えておこう ぼくはどういう訳だか冷蔵庫に閉じ込められている それは ある女の子にぼくが酷いことをしたからだ ぼくはその女の子のことを殺そうとしたんだ だけどどういう訳だかもみ合ってるうちに ぼくの手に持っていた包丁がブスリと ぼくのお腹に刺さったんだ それでねその女の子はぼくを 冷蔵庫の中にしまったんだ その女の子の名前を なんて云ったか いまとなっては曖昧でね ぼくはその女の子を ほんとに愛していたのかわからないよ だけどその女の子は とても強い女の子だったんだ ぼくはそれをすごく印象的に憶えているんだ 名前よりも その女の子がとても強かったことを憶えてる だからその女の子の名前を スーパーストロングガールとしておこうか とりあえずぼくはその女の子に 冷蔵庫にしまわれたんだ その女の子はね いまとても困っていてね だってぼくを冷蔵庫の中にしまってしまっただろ? だからこんなことを思ったんだ 私はどこかの星の どこかの海に浮かんでいる 何かでできた島で生活したいと 思ったらしいんだ でも彼女は現実に生きているだろ だから無理だとわかったらしいんだ それにすごくお腹も空いていててね なにか食べるものがないかと探してると ウエハースで出来たお菓子がね ちょうどぼくの入ってる冷蔵庫の上に置いてあったんだ 彼女がそれを食べてるのを見てね ぼくは思ったんだ ウエハース島の物語を彼女と一緒に作ろうとね 彼女もしばらく経って ぼくと話ができるようになったみたいでね ウエハース島の物語を私が作ると 云いはじめたんだ ぼくはそれに同意してね ぼくはその物語を 見守る役になることを約束したんだ 彼女はまだ物語を続けるそうだから ぼくももう少しだけその物語の続きを 見守ることにしようと思うんだ そういうわけで ぼくは彼女の作った物語を 話していってるんだ それでは物語続きを見よう ぼくも彼女の作る物語が楽しみだから リタは呼び鈴を鳴らした けれどもトレドさんは出て来なかった リタは不穏な空気を感じて 部屋の中に入って行った そこにはトレドさんが首を吊ってる姿と アルルコールが紫芋を食べ過ぎて 朦朧と宙を見詰めている姿が 二ついっぺんに飛び込んできたわけだから リタは固まってしまって 声も出ないし これからどう身体を動かしたらいいのかも わからなくなったんだ アルルコールがそんなリタに気付いて 「リタ」と、朦朧とした意識の中で呼んでみたのだけど リタはそれでも 次に取る行動が何をしていいのか それとも何をしたらいけないのか とか、そういうことが コントロールできなくなっていて まだ固まっていたんだ だけども、アルルコールの方へ 行けばいいんだという 昔からの習性 子供のときの記憶から アルルコールの方へようやく 向かうことにした アルルコールは床に座り壁に背中を凭れながら リタにこう云った 「リタ、ぼくたちはずっと一緒だった 子供のときからずっとだ ずっと君のことが好きだった いまも好きだしこれから先も変わらなく好きだよ だからリタぼくから離れないでくれ 過去や未来へ行かないでくれ 島が沈むことがわかってもぼくたちだけは変わらないよ」 リタはアルルコールの目を見た アルルコールも目を離さなかった 「私は強い女の子だから平気だよ 君と一緒にいつまでも居よう アルル、島が沈まないように 私たちが二人でどうにかしよう」 アルルコールは云った 「そうしよう島を沈ませないように ぼくたちがなにかすればいいんだ」 アルルコールはリタの手を取った リタはそのときこう云った 「好きだよ、アルルのこと」 ---------------------------- [自由詩]ウエハース島の思い出 7  〜割り箸〜/よだかいちぞう[2003年9月11日18時37分] 割り箸が均等に割れたら両思い そう願って女の子は割り箸を割った みごとに均等に割れた そのときの女の子の表情を 思い描いてほしい きっととてもいい顔をしていると思う この物語とは関係ないけれど そのときの女の子の一瞬の表情を 思い描いて この物語の最後を見てほしいと思う 割り箸のささくれのような物語を ぼくを殺した彼女が作ってくれた物語を 女の子の曇った顔を思い描かずに アルルコールとリタは トレドさんの家を出て 島が沈むない方法を見つけるために 研究所に向かった 研究所の前には子供たちが集っていた アルルコールとリタは 何をしに集ってるの? と、子供たちに聞いてみた 子供たちの一人がこう云った 「知らないけれど ぼくたちは集らないといけないらしんだ 誰が集ろうと云ったのかわからないけれど ぼくたちはいま集ってるんだ」 アルルコールとリタは 研究所の中に入って 研究所の職員と話をした 「外に子供たちが集っています なにがはじまるんですか?」 アルルコールがそう職員に話すと 職員は云った 「我々の研究は最終段階に入りました これで我々の研究は終りを迎えるのです 子供たちにはいま飲み物を与えるところです 子供たちにあげる飲み物ではありませんが オキシドドール博士が研究していたものが まだあります これをあなたたちが飲んでもらえれば オキシドドール博士は喜ぶかもしれません どうです 飲んでみますか?」 アルルコールはどんな飲み物なんです と、職員に聞いた 職員は「それはわかりません オキシドドール博士が 研究していたものですから」 と、答えた リタは「飲んでみるわ」と答えた それは、研究室の冷蔵庫から取り出された ビーカーに入っていて 緑色したメロンソーダを濁したような そんな飲み物だった 「アルル、私がこれを全部飲むわ」 その飲み物はビーカーに1/3程度残されていた 「ぼくも飲むよ」と、アルルコールは答えた リタは云った 「たぶんこれは一人分の量だわ オキシドドール博士が 私が飲む分として残しておいたのよ アルルは、私がこの飲み物を飲んでどう変わるか ちゃんと見ていてほしいのしっかりと 私が何か変わってしまうかもしれないけど 見守ってほしいの」 アルルコールは少し考えてから それに頷いた 「ちゃんと、見守るよ それにリタはどんなになってもリタのままだよ ぼくはリタとずっと一緒さ この飲み物でそれを証明できるよ」 リタはアルルコールの目を見た後 ビーカーを持って一気に口の中に傾けた 飲み物はリタの口の中に流れ込んでいく アルルコールは、それを心配した様子で見守った リタは空になったビーカーを 机の上に置いた 「大丈夫かいリタ?」 リタは云った 「とても口の中が甘いわ でも、まだこれからだわ」 アルルコールは云った 「ぼくがちゃんと付いてるからね」 ぼくはどうやら冷蔵庫の中から出られたみたいだ 出るときに部屋を窺ったのだけれど 物語を作っていた彼女は首を吊っていたよ どうやらぼくたちは 発見されたらしい とてもすごい異臭を放っていたのだろうね でもぼくはもう少し 彼女の作る物語の続きをみたいんだ 彼女もそれに同意してくれている だからぼくたちここに残ることにしたんだ 物語を最後まで見届けるために 「ここは現実ではないのアルル、 私は博士と一緒にあの男を冷蔵庫に閉じ込めたの それが私が忘れていたことよ」 意識を失って長椅子に横になっていた彼女が 意識を取り戻したのはほんの数分だった 「リタ、大丈夫かい?」 身体を長椅子から起こしたばかりのリタは答えた 「大丈夫」 アルルコールは リタが平気そうなのを確認してから こう訊ねた 「どういうことだい? なにが眠ってる間にあったんだい?」 リタは云った 「アルル、よく聞いて 私は忘れていたことを思い出したわ あの飲み物はそういう飲み物だったの」 アルルコールは云った 「博士となにが有ったんだい?」 リタは云った 「博士と一緒にあの男を冷蔵庫に閉じ込めたの どんな男だったかは思い出せなかったは でも、それは重要なことではないの そのことは私たちと関係ないことなの アルル、よく聞いて ここは現実ではないの それから忘れていたことで いちばん重要なことを話すからよく聞いて 私たちは作られたものなの この島も この島の人たちも 私とアルルも」 アルルコールは云った 「ぼくたちが作られたものって どういうことだい?」 リタは云った 「アルルも私も 島の人たちも すべては思い出から出来てるの そしてここの研究者たちは みんな思い出を研究していたの」 アルルコールは云った 「でも、ぼくたちは変わりないんだろ?」 リタは云った 「ええ、そうよ 私たちは私たちのまま 何も変わらないわ」 アルルコールは云った 「それならいい」 外から子供の一人が アルルコールとリタに近づいてきた 子供が「苦しいよ」と云ってきた リタは云った 「どうしたの?」 子供は苦しい声を出しながら答えた 「飲み物を飲んだんだ そうしたら苦しくなったんだ みんなも苦しんでる」 アルルコールとリタはその子を連れて 外に出てみた そこには 悶え苦しんでる子供たちが そこらじゅうに倒れ込んだり 叫んだりをしていた 研究所の職員たちは それを観察するように眺めていた アルルコールは職員に向かって云った 「どうして助けないんです? あなたたちは何を子供たちに飲ませたんです?」 職員の一人が冷たい口調で答えた 「毒薬です」 リタは云った 「なんでそんなことをしたの?」 さっきぼくたちと 飲み物のことで会話をしていた職員が答えた 「オキシドドール博士は間違っていました 子供たちをすべて殺すべきだったのです 週に一度の紙芝居なんて意味がなかった」 アルルコールは云った 「助ける方法はないのですか?」 職員は溜息を付くように云った 「もう手遅れです」 アルルコールとリタは 手を強く握り合って 子供たちが苦しんで死んでいく光景を 二人で見詰めていた ---------------------------- [自由詩]口口■ 北斗の拳 VS 詩人 ■口□/よだかいちぞう[2004年5月18日18時12分] ラオウ「おまえの力はそんな程度か」 ケンシロウ「うふっ」と言いながら体が崩れる (効果音)ちろりりーろーろー  画面には終わりと表示される。 しかし! (リンが叫ぶ)ケーン ケンシロウ「うおー」ケンシロウ立ち上がる (効果音)ちゅどーん  バトルボーナス! (BGM)てれれれてれれてれれれ (雑魚を殺す効果音)あたっ あたっ ふぉーあた そうなることを疑いなく 何の根拠も無く ぼくたちは北斗の拳をやる シン、サウザー、シン、サウザーという 最悪なステージ移動にも構わず ぼくらは千円札を取り出し 50枚のメダルを 空っぽの受け皿に置いて メダルを取って メダル入れに入れる その繰り返しを なんどもやる ぼくたちは思う 世の中には終わりがあるものだ いつかケンシロウがラオウと戦うものだと そうでなければ メダルが三つ落ちた 二枚のメダルは 近くにあって しゃがんで拾った もう一枚はどこか遠くに行ってしまった ---------------------------- [自由詩]無題/よだかいちぞう[2004年6月13日23時15分] こんなに日が昇ってるいるのだから 1時間の誤差はみんな気づかないだろう ぼくたちも気づかない ---------------------------- [自由詩]無題/よだかいちぞう[2004年6月13日23時17分] 青い扉を開けば ぼくたちの思い出が始まるだろう ぼくはゴキブリを ゴキジェットプロで倒す 君は何をする? ---------------------------- [自由詩]路上で無料占いをしていた時の話/よだかいちぞう[2004年6月23日15時36分] 90%知りたい だけどそれはやめておく 死ぬのはいくつの歳か それを聞きたいけど 聞かないことにする と、57歳のおじさんが言った ぼくの座る 駅前の公園のベンチの前には 柵があった その柵が 公園と通勤客を 分けていた だから公園に入るためには 柵と柵のわずかな隙間から 入ることが許されている おじさんは公園の中に入らず 柵ごしからぼくに まずはと千円札をくれた おじさんはぼくが勧めても 公園には入らなかった おじさんは公園には入らず 柵に両腕を乗せて ぼくに話し掛ける 先のことを聞くのは嫌だから 過去のことを知りたい ぼくは57歳なんだけど まだ一度も結婚したことが無い もし結婚をしていたら いくつの時だったか 知りたい そう云って来るのだ 過去を占ったことは いままでやったことがなかった おじさんの顔形 風采は悪くなかった けっして 女には不自由はしなかったはずだ ぼくの占いで出た数字を云うと 頭をのけぞって そのころのことを思い出そうとしていた ぼくは間違っていた おじさんが居なくなってから気付いた こう占えばよかったのだ おじさんはいつ 柵の中に入らないと決めたのか? ぼくは見当違いに公園の中を占っていた ---------------------------- [自由詩]■マ○コ映像公開!■/よだかいちぞう[2004年8月10日1時52分] わたしは だれのものなのか だれもおしえてくれなかったので わたしは文字になりました そうすると 色々なところで わたしを使ってくれました 本の中にわたしが居たり チラシの中に居たり メールやチャット 迷惑メールまでわたしを使ってくれました わたしが使われることは わたしは嬉しいです けれども わたしはだれのものなのかを おしえてくれるひとは いまだいません それでも いつも使ってくれて ありがとうございます これからもわたしを使ってください どんなものでも わたしを使ってくれるのは 嬉しいのです たとえばこの詩のタイトルでも ---------------------------- [自由詩]■□■小泉総理大臣大麻所持で逮捕!■□■/よだかいちぞう[2004年11月12日19時13分] 「覚醒剤やめますか? 人間やめますか?」 このCMを子供の頃 見たことがある 今になって思うのだけど 人間やめたい人が覚醒剤やるんじゃないか? 煽ってるだけじゃん、と思う 「小泉総理大臣大麻所持で逮捕!」 年金を払い忘れる政治家が居ても 薬に興味を抱く政治家は まず居ないと思う 政治家は薬に手を出す程 暇じゃない 薬に手を出す程の有権者は まず投票所に行かないだろうから 政治家はそいつらに向けては冷たいはずだ 今回の「金八先生」は ドラックをテーマにしているらしい なぜ一部の人間は 薬を欲しがるのか それが謎である と、書いて「毒」など「環境」など そういったことを ながながと書いて行くと 詩にならないので キッパリここで この文章を詩にみせるため 自分の考えをもって こう云ってみようとおもう 「薬は詩である」 それは世界中のハリーポッターを 一ヵ所に集めて キャンプファイヤーの火にしてしまうぐらい 冒険やファンタジーに充ちていると思う あるバカは蛾のように その火に向かって突進するはずだ 自分の体が燃え尽きていくと はじめから分かっていながら そしてぼくみたいな 小心者は その火で体を温めるだろう それからファイヤーマンがやって来て 消火活動をはじめるだろう ファイヤーマンは それは良いことか悪いことかで 消火するのでなく 火を消すことが 彼等の仕事だからだ この文章はなぜ 薬を擁護するのか? 疑問に思うだろうから説明する ぼくはつい最近 精神科からようやく念願叶って リタリンを処方されたからである リタリンは合法で唯一 飲むことを許される覚醒剤だ ぼくはそれを飲んで この文章を書いている だからこの文章この詩この火は 薬を擁護している これを読んだ誰かが それを否定したとしても この火の存在は認めざるをえない 事実だ ちょっと前 ぼくは彼女と牛角に行って 豚トロを焼いた 豚トロの油が予想以上に溢れ出した結果 それに引火して 恐いくらいな火が飛び出してびっくりした 今度また牛角に行くときは 豚トロを食べるだろう ---------------------------- [未詩・独白]物欲だけの愛の無い欠片/よだかいちぞう[2006年1月22日3時17分] 子供の頃 粗大ごみ置き場があったんだ いまは粗大ごみをすてるのにお金をはらわないといけなくなってるけど あの頃は金など払わずなんでもぶち込んでた 粗大ごみ置き場はぼくらの基地でもあった それはとても冒険に満ちていた 粗大ごみと粗大ごみを乗り越えて 五月人形の刀を手に入れて 武器を入手 軍資金もある ボードゲームの中のお札たち たまにこれがなんなのか わからないものまで あった 夢の中で出会った 粗大ごみのなか ぼくは 古い柱時計や値打ちのあるものを掻き集めて ぼくの家に持って行こうとしていた ぼくは物欲にとらわれていた 彼女がぼくに時折話しかけてくる ここから去る 引越しをすることを ぼくはその彼女の言葉を聴いてる振りして 彼女の家で捨てたものを 掻き集めていた 彼女は夢の中のこどものぼくと 同じぐらいの年だった 彼女には気品があり 世の中のすべての事を 見透かしているように見えた そして何か もの寂しいようすだった 彼女とそのとき旅に出た 財宝や値打ちのある古い柱時計を捨てて 旅に出た どこにいこうか? 大きな道路を渡って白い公園に行こうか 彼女からの最後のプレゼント匂い球 名札の裏に入れておこう大切なものだ ぼくは彼女のことを考えず自分の私欲を満たしていた そんなガラクタ捨てて 大きな道路を渡って あの白い公園にいけばよかった ちゃんと二人とも毛糸の手袋をして ---------------------------- [自由詩]□■ひかり■□/よだかいちぞう[2006年2月5日20時45分] ある日神様が降りてきて すべての半分を君に与えた しかし残りの半分は 自分で何とかしなさいと言われた 数日は、いや一年くらいは 与えられた半分のもので 飽きずにすんだ けれどもまだ半分を読みきってないうちに 自分には無いもう半分を探しはじめた 自分のある半分はあとで見れるからと言って 探し方が雑だったのか 粗大ごみばかりが部屋の中を埋めていた これらをどこで拾ってきたのかと聞くと ヤフオクで買ったと言われた 遮光性の無い薄っぺらのカーテンから 日が差し込んで来た 斜めになってる箪笥に 西日があたる この部屋の箪笥ひとつで 人生が終わってしまうのは よくあることだけど それはとても詰まらなそうで 嫌な気分になった 君が言う この部屋に火をつけるんだ 神に宣戦布告する たとえ半分でも 神は戦いを避けるだろうから そのときに少し教えてもらえるはずだと 君は言う 太陽の光と 火の光 どちらが強いか 目に見せてやる ---------------------------- [自由詩]■白き休日よ永遠なれ■/よだかいちぞう[2006年5月3日10時00分] いま大音響でロックを聴いている のめりこんでいい気持ちだ 向こうの部屋では 気持ちよさげに 彼女が寝ている 真空パックや魔法瓶で この白い時間を閉じ込めたい 部屋に白いちょうちょが舞い始めた 窓ガラスから透けて入って来たのだ 彼女にも見せよう いまからそっちに行くね ---------------------------- [自由詩]〜■メロンソーダ世界選手権■〜/よだかいちぞう[2006年7月25日22時06分] みんな1.5リットルペットボトルいっぱいに メロンソーダを詰めて来るなか ひときわ量の少ないメロンソーダがあった ぼくは、ほんの少し なにか起きることを期待した ---------------------------- (ファイルの終わり)