合耕 2005年3月1日21時24分から2006年4月3日23時36分まで ---------------------------- [自由詩]出土/合耕[2005年3月1日21時24分] 波打ち際歩きながらひとつひとつの砂に名前付けた僕は とっくにおじいさんになってるはずなのにな 遠くからやって来る大きな文字の群れになら いくらでも負けてやっていい気持ちなんだ 手の中にひとつだけ 握りしめたものを ずっと遠くまで飛ばせる力が無理を通したこの空だ 誰も見ちゃいけないよ 神様の都合で メガネが似合う僕だから 同じ場所へ向かう彼にだって 今ここに浮かべてる表情こそメッセージだ 階段を上る途中あの娘からの電話が 「絶対、追いついてみせる」って翼竜の羽音と一緒に届くけど いつか 彼と僕はもうビルの屋上に着いていて 同時にメガネを外す準備もばっちりなんだ これからこの場所に降って来るものには全部 大きな手榴弾にだって あらかじめ名前が付けられてる そうだ、この後カメラのシャッター音が 大きく響くと思うから 耳を澄ませといたほうがいいよ ほら、 ---------------------------- [自由詩]リサイクル/合耕[2005年3月18日21時31分] 売れないたこ焼き屋をやってる子を好きになった 屋台の前に置いてあるスツールを意味なく動かしたよ すごくドキドキする どうかテントの骨組みの重しに 僕のこの空気抜けタイヤを使ってくれないだろうか いくつか積み上げれば土手の向こうからも見えるだろう いつまでも世界の秘密事 君に似た髪形を探しても結局真ん中分けに落ち着いたんだ おかしくて外人さんを付け回したよ それから英語で手紙を書いた 読めなくても 食べてほしいな いつか こうしてるだけで必ず テントにかぶせてるその青のシートには芝生じゃなく 堤防の近くのと同じくらい茶色びた草が生えて来ると思うんだ さて 今日も対岸からスチール缶を投げた 拾った君はその缶をしっかりアルミ缶と区別したよ リサイクルだね リサイクルだよ ---------------------------- [自由詩]水玉記念日/合耕[2005年3月22日10時45分] あなたは 黒いゴミ袋好きなのに その黒いゴミ袋に追い回される夢にうなされたりする 林の中を マカロニの湯気探してると 灰皿に乗っかって見つかる けれどその周りの土が盛り上がってきたりして どうしてなんだろう 好きなのにどうしてなんだろう なんて 落ち込んでしまうあなたの手は中指を外に向けるけど そこのその指にだけしかない指紋を知らない クリームを上手に泡にする あなたの指紋を知らない でも今夜 屋上のはしっこから紙コップが届いた 嫌いなふりしたり つまらないふりしたりしないで 夢に見た林を歩くあなたは中指の指紋を知らない だけど ゴミ袋をいっぱい 宙に浮かせた 変なポンチョみたいのかぶって恥ずかしい思いをしたりしても もっと浮かせればいい 涙が出るだろう クリームも泡になれば 水玉 水玉の 記念日 ---------------------------- [短歌]非電源系短歌/合耕[2005年7月2日20時42分] クラマーが向こうへ渡した細麺が途中で白地に置かれてしまう 轍からシド・サクソンを掘り出してポンプ修理が午後までになる トイバーの潜り込む穴が増えすぎて逆に迷えばつま先伸びる 紫で曇った窓から沈ませるレンガの上にもコロヴィーニ遠く 戸棚から漏れそうだからトンネルにまたがるムーンのポーズも決めない 材木を刻んだ途端に解かせない氷に思い当たってフェドゥッティ 絨毯をランドルフ宅に敷くだけで夜が来てくれればいいと思う ちょうどいいドーラの指の埋め場所が見つかったのに色が真緑 くじを引くシャハトの箱の蓋だけが流れ出しても欠けないままで 葉の汁をもう拭き取ったラジカセにクニーツィーアの寝息が詰まる #参考リンク:http://www1.u-netsurf.ne.jp/〜hourei/game/author/index.html ---------------------------- [自由詩]壱秒祭り/合耕[2006年1月29日0時00分] 昨日まで司法書士じゃなかった から バズーカの砲口が黄色く見えない 同じ毛モジャのバスタオルをかぶせられても 胸が張らないけど 空気圧でブルブルと 振るえてる自分の頬が どんどん擦れるような感触になってしまう 事務所へ上がる階段が崩れるときの 逃げ方もいつも同じ 腕を回せない窓の下まで  踏み止まってみたくなって  でも そう言えなくても  もっと大きなブルブルを待つ時間 すっ飛ばして 体育帽みたいな頭にも 毛モジャを移してほしい 今度こそバズーカをしっくり感じれば 5匹のムカデに分かれ 競技場で立ち止まる  振り返って指差す壱秒 仮死状態の体を 横たえる板張りに チューブを滑らせて指差す壱秒 広々とした廃屋を回り 何かに寄りかかる それが何かわからないままで 指差す 壱秒を指差す ---------------------------- [自由詩]いきおくれ/合耕[2006年2月2日8時00分] 無事故で改革 大化の改新 バラバラに刻む前の貝殻ばかり足の裏に当たってきて冗談みたいだ 砂粒はこれ以上細かくならないって知らない人が 一面を海にして 背中を反らせたから 太陽光はここで乱反射する 本当に乱反射する 太めの人が消火器持って来たってね その次の細めの人と間違わなかったかい 急に 横移動に変わって 走って来たかどうかなんてみんな忘れてる はずだったのに 傾けた手のひらに合わせて視界が縮まない 見つけたいものがわからない  そんなとき 足の指の爪を一瞬見えなくした 君はやっぱり いきおくれだ 誰も 彼も 海パンの股ぐりのことしか頭になくて 嬉しい ---------------------------- [自由詩]きろ、つきはなし/合耕[2006年2月10日0時54分] 笑ってやるつもりで夕空になった そんな時間だから 恐ろしく冷たい態度を取ってしまったって 海岸線を描くのは どうか止めないで 早足で砂を踏む君の息が 斜め後ろから僕の肩に当たるだろう 沈む日が差すと 一瞬 タンバリンの音と見間違える そういう風にして海岸線を描くこと 僕は知らないふりして 君は知らない僕に教えるふりして どこまで着いて来てくれれば信じられるのか なんて わからないから 1km歩いた 4km歩いた 500km歩いて もしかしたら700000000km 笑ってやるつもりの夕空が愛想を尽かしても どこまでも歩いてしまうから きっと 思いきり恥ずかしい顔をすれば それでもまだ夕空は呼べるかもしれなくて 700000000kmついて来る人なんて  だって やはり いないはずで ---------------------------- [自由詩]三日三晩/合耕[2006年2月19日10時29分] 雲の上と下にそれぞれ辿り着いて 心から取り出せない団地を焦ってみても下手だ 見られるのなら車窓から てっぺんの白いギザギザを右へ右へと詰めて 何かに突き当たったあたりで知らせてほしい                                       ベランダの柵に必死になってしまう男の子は       スケッチブックを余りにしっかり固定できて 真横に肘を張る以外なくなったけど    もっと下のほうに座りたい人達の代わりに 尖った音だけ鳴らして ため池にアゴを沈める 唾の出るほうへギザギザを引き寄せると それぞれの場所で それぞれに影が掛かり それぞれに一番近い場所で ずっと迷ってしまう 三日三晩の虹だから ---------------------------- [短歌]【短歌祭参加作品】教えて、エロい人/合耕[2006年3月8日19時50分] 高らかに目押しのできないふりをした私に和尚が近づいてくる 頭蓋骨からして大きめだって言うなら猫の腹をあてがってやる 涙目で「バスタブの縁に上ってたかどうか教えて」なんて無意味だ そこそこに削った鉛筆とすれすれに伸ばされた腕に当たりたいだけ ハイチに行きたいと書いた君の字面からなんにもならない生き血が吸えた キューピーマヨネーズの分量を書いた紙が古くなって古くなって笑ってしまう このトンネルだって誰かの持ち物です だから私の背に乗りなさい マシュマロの過剰包装に抗議して湿ったままの指を差し入れる 注射器を捨てる丘にはスカートの生地だけ抱えて永遠に伏せ 眠そうな目で消火器を扱ってしまったから血はここに溜まったのか ---------------------------- [自由詩]1.マーク・ラファロ/合耕[2006年3月16日23時08分] はまぐりが周りへ近づくのを止めようと 頑張ってしまったのかい 代わりに 熊みたいな牛の 黒い鼻先だけが囲むよ 見えなくても 嫌でも  こっちへ ---------------------------- [自由詩]2.トーマス・クレッチマン/合耕[2006年3月16日23時32分] ワサビを隠すときだけは違う って噂が立ったから ベッドの足の後ろや 角張った帽子の中から覗いて それでも どこが最初に鉄棒に触れるか 見極めが難しいくらい均等に 体を均したまま 気持ちの中なら 伸ばされた手はぐにゃぐにゃにくるまれそう ---------------------------- [自由詩]3.ピーター・サースガード/合耕[2006年3月17日18時35分] よぼよぼの輪の広がりをせき止めると その分 細かく染まる 庭の散らかりは 天井が降って来て初めて 薬を飲み込んだだけ と気づくくらいの 戸惑わせ方で どんな中華料理屋に行っても青い ---------------------------- [自由詩]4.ジョシュ・ルーカス/合耕[2006年3月17日23時30分] 「ちぎりたいの」と言うばかりで 襟元に吸い付くのも顎ばかり それなら 広がるゴムの下ぎりぎりで ずっと伏せていよう 潰れ方を選べるマンガを手に ベンチの裏で回して ベンチの裏で回して ベンチの裏で回しているのかもしれない ---------------------------- [自由詩]5.マックス・ミンゲラ/合耕[2006年3月18日10時17分] 本棚のそばから窓際に移るときは 下敷きになった光線を襞にして 持って行かれそうになる 首の下が 大事で いつでも首の下が大事 ドッグリールの向こうにしか見えない橋へ 束になった空を掛けて それだから着てる服の色もきっと ---------------------------- [自由詩]6.ウィル・フェレル/合耕[2006年3月19日1時49分] 斜めに見る丘を独り占めしたくない 膨らみすぎた風船で押し出された奴等だけ クジラの群れへ戻して 手のひらが足りなくても 登山する子らには 一つ上の倍率の 脇の下で足りるはず すぐにも吹き付けてしまいそうで ---------------------------- [自由詩]7.相島一之/合耕[2006年3月19日20時41分] Yシャツの上の蜂だと思ってたら 発泡スチロールの上のYシャツの上の蜂 だった 飲み込んだふりだけ巧くできて それでもタイミングは迷うんだろう ドアの下の隙間から アイスの棒を突き出すのはいつか すれすれで乗っかれるような 上顎はここにだけ ---------------------------- [自由詩]8.ヴィンス・ヴォーン/合耕[2006年3月21日0時01分] くじ引きするのはタイヤの転がりやすい草の上で ハンカチを猟銃と見間違っても構わない それは昼だから 何故引き上げてくれるって知ってたかって? 拡声器の後ろに当てる手を見たから ! コアラも コアラも同じように扱える 弾んで ---------------------------- [自由詩]9.ホアキン・フェニックス/合耕[2006年3月21日13時52分] タイガーさん、計算機の分厚さは そこまで皮算用するほどにはならないって 塀伝いに伝えて来てるのは 夢見が悪くなりそうな果物ばかりを 縄でこすりながら落とした夜の子ども 戻した分だけまた全部戻した唇なら 気付かなくて 大丈夫 ---------------------------- [自由詩]10.スティーヴ・カレル/合耕[2006年3月22日0時19分] 鏡だけが上から迫って来るより 下敷きをはめ込んだ鏡が降りて来るほうが そりゃあ怖いさ 頬を伸ばして いつか窓辺に並ぶって知っていても 湿らせずにいられない折り紙 きちんと折ったやつで丸に届こう ---------------------------- [自由詩]11.ポール・ウォーカー/合耕[2006年3月23日0時17分] 旅立ったパンツの形を思い出しながら 肘をつかえさせて そうしてできた環の向こうに置き引き犯を見たい パンフレットだけで身を隠すよりも 中身を覗けないポップコーンの容器を投げ合って かたどった幸せをそのまま被れるように ---------------------------- [自由詩]12.グレッグ・キニア/合耕[2006年3月23日22時28分] 洗濯板の上で転がる飴玉が ある時間 止まって見える 土を固めることができる赤い薬で 米俵を三角に切り裂き 屋根の上と 自分の頭の上で 同じ形をとらせたら 湧いて来る点と点を結べるのは 茶色だけだよ 気をつけなさいと言おう ---------------------------- [自由詩]13.ジェイソン・ビッグス/合耕[2006年3月24日22時55分] カーペットの厚さだけが氷を渡って 郵便箱に届くけど ハム詰め 大したことないエンジンにばかり 間接を押し付けすぎて タープの色に染まった そう思っていたのに  豚毛の毛羽立ちは最初からずっと ---------------------------- [自由詩]14.マシュー・リラード/合耕[2006年3月26日18時04分] 血の気の引いたホットドッグは鉛筆になるから 肘で挟めるんだそうだ こちらへ倒れて来そうな灯台も 前歯で押し止めながら 挟む 喋り言葉の中に こめかみの内側を上ってゆく汗が 自然に混じるのか そうでないのか わからないままでいて ---------------------------- [自由詩]15.エリック・バナ/合耕[2006年3月26日18時21分] 始まってから後の受け皿は 銀色の物を溜めるよりも炊飯してしまう プロペラの風がいつまでも心地いい場所じゃないから まな板で転がした消しゴムを描くのなら 画板を垂直に掛けるのもよしとして 右半分だけ 急に膨らませて見守る 初めてテレビを動かすときの手つき ---------------------------- [自由詩]16.ヒュー・ジャックマン/合耕[2006年3月28日19時52分] かさばらないように トゲトゲしないように そう言い聞かされた綿が覆いの向こうで体を 折っている 毎日同じ国旗を並べても忘れるならこうだ、 と言って どの顔も長方形で隠すことにしたら 寄せてある幕でできた影と同じ線を描いて跳べた ---------------------------- [自由詩]17.山中聡/合耕[2006年3月28日22時29分] 爪楊枝が太陽と泥を仕切るとき 音波がグラグラ揺れながら引っ張られてゆくのと 同じような見え方で覗き込みたい 滝と沖が縦だったとき引いた線とずれてるのに 肘の筋はここからよく見えて 定規を当てようとしたり 違うときは 届かない肩の先へ無理に白を届けて 斜めに流れ出したときだけ 驚いて ---------------------------- [自由詩]18.ジュード・ロウ/合耕[2006年3月30日22時12分] ざる蕎麦の麺を一つ一つ取り上げてギザギザにしたら それだけでそれらはきっとノコギリになってしまうんだ 甲羅も飛ばないような霞んだ浜辺へ 脱いだばかりのひも靴なら飛ばせる 口にしない スローモーションは 助手席に乗ってる 下の毛に思いを馳せさせるタイプの そんな女性を先に行かせて 初めて肩を逆に回して ---------------------------- [自由詩]19.ジョン・ハナー/合耕[2006年4月2日20時47分] 風車の展開図を見てがっかりした心で 悩んでみせる 石垣の山折り谷折りについて たぶらかされた巾着のひだひだは 喜んでプールを埋めようとするかも 流れ着いても誰もいないなら こぼれない目尻の集め方も 全て確信した上で 頬に吸い込んで ---------------------------- [自由詩]20.ブレンダン・フレッチャー/合耕[2006年4月2日20時59分] 蜂が飛びすぎるダイニングを 沖のほうまで突き出したら四駆が買えなくなった 注射器におっかなびっくり触ったときの気持ちで トレイを持って並ぶ列に詰め寄るけど 転がし方によって点き方の違うランプ 何度も踏まれた木の板の下で 寝かせて 楽しみに待つ ---------------------------- [自由詩]濃縮回廊/合耕[2006年4月3日23時36分] 見つめる壺に潜むとろみは 触れてみずにはわからない と唱える これはただ 頭の裏を回る塗り箸が キリンの模様に塗られていくのと 同じ速度に揃えるだけだと  何度言ったらわかる 好きな子はみんな忍者屋敷の奪い合い 忙しそうなふりをして回廊へ カブト虫は見えず カブト虫のいる木だけが見える場所に着いたら ビスケットを取り落とすのは毎度のこと 今日は擦ってみた ビスケットで 廊下を 毎度のことじゃない 一度だけ 股を大きく広げ しゃがむ子らの上を飛び越えたときのことでもない ---------------------------- (ファイルの終わり)