1486 106 2006年12月11日0時39分から2006年12月25日1時17分まで ---------------------------- [自由詩]同じ月を見ている/1486 106[2006年12月11日0時39分] コンビニへと向かう無花果の坂道は 街灯の灯りがほとんど無いから 月の光が際立って見える 変わらぬ愛に誓いを立てる人 変わってしまった愛を嘆く人 平和な世界に願いを託す人 誰もが同じ月を見ている そして僕は遠く離れて暮らす 大切な人の顔を思い描いていた 深夜一時に突然の着信 受話器越しの声が震えていた 普段は見せない君の姿に かける言葉が見つからなかった 「同じ月を見ているよ」 そんな使い古された台詞でも 君は少し楽になったと言った 二人の気持ちが繋がった気がした ---------------------------- [自由詩]オートロック/1486 106[2006年12月12日0時42分] 鳴らないインターホン 一人では広すぎる部屋 無意識のうちに閉ざした心 誰が扉を開いてくれるだろう 疑うことはとても簡単だ 小さな綻びを見つけだせばいい 厳重に施錠された鉄の扉は 弱い自分を守るための壁 忘れてしまった合い言葉 無くしてしまった合鍵 鍵穴などは初めからない 誰も扉を開いてはくれない 信じることはとても難しい 小さな綻びで崩れ去ってしまう 厳重に施錠された鉄の扉は 弱い自分から逃げるための盾 本当はどうするべきか分かっている 陽の光さえ入らない窓 忘れ去られてしまった空間 外から鍵を開けられないのなら 自分から扉を開くしかない ---------------------------- [自由詩]芽〜大木/1486 106[2006年12月13日0時25分] 小さな種が風に乗り 何もない原っぱへ流れ着いた 恵みの雨から栄養を貰い 小さな小さな芽を出した その芽は太陽の光を浴びて 人間くらいの高さになった 巡る季節を幾度も乗り越えて 大きな大きな木へ育った 枯れたその木は種を撒き散らし 再び新しい命が芽生える ---------------------------- [自由詩]生と死の狭間で/1486 106[2006年12月15日1時14分] 「ひとりになりたい」 その言葉は適切じゃない 初めからずっと独りだった 「ひとりは寂しい」 その言葉は適切じゃない 誰かといても満たされはしない 最後のわがまま 悲しみの果てに行き着いた答え 浴室でプラットホームで校舎の屋上で 世界にピリオドを打とうとしていた 「ひとりじゃない」 その言葉は信じられない 誰も向き合ってはくれなかった 「ひとりじゃない」 その言葉は信じられない 誰も本当の気持ちを知らない 最後のわがまま 気付いた時にはもう手遅れ 8.3ミリの剃刀よりも 時速120kmの電車よりも 高さ12mの衝撃よりも 見えない未来が怖かった 泣きたいわけじゃなくて 逃げたいわけじゃなくて 叫びたいわけじゃなくて 捨てたいわけじゃなくて どうしたらいいか分からないだけ 「ひとりじゃない」 その言葉はもう聞こえない 誰も本当の気持ちを知らない 浴室でプラットホームで校舎の屋上で 最後の一歩を踏み出せずにいる …お願い誰か気付いて 今ならまだ間に合うから ---------------------------- [自由詩]夕陽ヶ丘/1486 106[2006年12月19日0時49分] 此処までずっと歩いてきたけど なんだか一休みしたくなって 夕陽ヶ丘のベンチに腰掛けて 刻んだ足跡を振り返ってみた 知らない間に時は流れていた 仲間と乗り越えた苦悩の数々 ささやかな愛に包まれた生活 何度も道に迷ったけれど 残されたものはまっすぐな轍 知らない間にこんなに歩いていた 世界の理を覚えていくたびに 皺や白髪は増えていった 刹那の時と人は嘆くけど 心はこんなに満たされている だから安らかな眠りを前に 思い残す事は何もない そろそろ家へ帰ろうか ---------------------------- [自由詩]海水浴場/1486 106[2006年12月19日17時58分] 季節外れの海辺に残されたものは 一夏の甘い恋物語 青春時代最後の思い出 そんな綺麗なものじゃない あるカップルは 変わらぬ愛を誓い合いながら かき氷のカップを砂浜に投げ捨てた ある子ども連れの親は 走ったら危険だと注意しながら お弁当の割り箸を砂浜に投げ捨てた ガラスの破片が散らばる浜辺では カモメも助走をつけられない あるカップルは 夕凪の中で口づけを交わした後 ペットボトルを砂浜に投げ捨てた ある仲良しの学生達は 来年もまた来ようと約束を交わした後 花火の燃えかすを砂浜に投げ捨てた 家庭用排水の流れ込む海では 海月やヒトデも寄って来ない 生命の源母なる海へ 人類は恩を仇で返す しっぺ返しを受ける前に 何か出来る事はないだろうか ある白髪のはえた老人は 曲がった腰に鞭を打ちながら 煙草の吸殻を拾い上げた ---------------------------- [自由詩]願い/1486 106[2006年12月20日1時05分] I know... 多くの子どもたちが 命の重さを理解しないまま 平気で人を傷つけていること I know... 多くの大人たちが 子どもの心を理解しないまま 力でねじ伏せてしまっていること I know... 多くの動物や植物が 環境破壊や乱獲によって 地上から姿を消していること I know... 多くの伝統や文化が 心無い人々に破壊されて 地上から姿を消していること I know... 多くの国々が 戦いを繰り返すことによって 憎しみを連鎖させていること I know... 多くの人々が 幸せの意味に気付くことなく 生きる力を無くしてしまっていること I know... I know, so I really hope 私にもっと力があれば ---------------------------- [自由詩]祈り/1486 106[2006年12月20日1時05分] I wish... すべての子どもたちが 武器の使い方を教わることなく 大人へ育っていけますように I wish... すべての大人たちが 憎しみや悲しみを教えることなく 子どもを育てていけますように I wish... すべての動物や植物が 一つの種類も欠けることなく 未来へと受け継がれていきますように I wish... すべての伝統や文化が 一つの種類も壊されることなく 未来へと受け継がれていきますように I wish... すべての国々が 不必要な痛みを伴うことなく 紛争を解決していきますように I wish... すべての人々が 不必要な苦しみを伴うことなく 安らかな眠りにつけますように I wish... I wish you to be happy あなたが幸せになれますように ---------------------------- [自由詩]一人きりの夜には/1486 106[2006年12月20日18時08分] 一人きりの夜には 君が残した最後の言葉が 走馬灯のように甦る 夢の中でさえ君は 私を許してはくれない 一人きりの夜には 携帯電話を握り締めながら ボタンを押す事を躊躇っている 夢の中でさえ君は 私の事を責め続ける それは一体誰のせい? そんな事は問題じゃない ただ一つだけ確かなものは 誰もいないこの部屋の冷たさ 一人きりの夜には 一人きりだという事実が 沈黙と共に突きつけられる 夢の中の君にもう さよならを言わないといけないね ---------------------------- [自由詩]ワイシャツ/1486 106[2006年12月21日1時19分] 汚れてしまったら洗いなおせばいい 破れてしまったら縫い直せばいい だけど捨ててしまったら どうする事も出来なくなる 掛け違えたら着直せばいい シワになったら熱を与えればいい だけど何もしなければ 何にも変わるはずはないし 悪化してしまう恐れもある 生鮮食品は腐る前に食べよう 花火は湿気る前に打ち上げよう 水は零れ落ちる前に掬い上げよう 命の炎は消える前に… 例えば歌手に憧れる人達へ スーパースターにはなれなくても 路上で歌い続ける事も出来るし、 合唱団に属するという手もある だけど歌う事を止めてしまったら それで幸せだと心から言えますか? 似合う・似合わないではなく 着たい・着たくないで決めればいい ---------------------------- [自由詩]北天/1486 106[2006年12月21日19時54分] 名前を知らない人にとっては 五つの星にすぎないけれど カシオペヤは輝いている 名前を知らない人にとっては 七つの星にすぎないけれど 北斗七星は輝いている そして中心で輝く特別な星を 人は北極星と名付けた カシオペヤの姿を Mの形だと言い張る人も Wの形だと言い張る人も 見上げているのは同じ星座 北斗七星の姿を 柄杓の形だと言い張る人も 尻尾の形だと言い張る人も 見上げているのは同じ夜空 それが争いの種となるなら 無理に合わせる必要はない 5つの星から辿ってみても 7つの星から辿ってみても 中心で輝く星は見つけられる それだけで十分じゃないか ---------------------------- [自由詩]固結び/1486 106[2006年12月22日15時10分] 靴紐を踏んで転んでしまった 消毒液が擦り傷に染み込んだ もう二度と転んでしまわないように 靴紐を固く結び直した 赤い糸が誤解で解けてしまった 生身の言葉が心に染み込んだ もう二度と解けてしまわないように 大切な人の手を握り締めた それを何度も繰り返して 少しずつ強くなっていく ---------------------------- [自由詩]26時の幻影/1486 106[2006年12月22日19時48分] 午前二時 ブラウン管の海は大荒れ 漕ぎ手のいない舟は進んでいく 水平線の彼方に光る不知火 Is it a dream? 午前四時 ブラウン管の砂漠は砂嵐 駱駝の背に乗りキャラバンは行く 蜃気楼の彼方に浮かぶオアシス Is it a dream? ふと窓の外に目を遣ると 赤い月が浮かんでいた 夜の静寂を切り裂くように サイレンの音が鳴り響く Is it a reality? Am I still dreaming? 午前六時 ブラウン管の中は大忙し 衣装を纏ったニュースキャスターは 昨日の惨事を赤裸々に伝えている This is a reality, but could be a dream. Who knows that? ---------------------------- [自由詩]クリスマス、天使の羽根につつまれて…/1486 106[2006年12月25日1時17分] 15分延長のバイトが終わり 駆け足で向かう先は待ち合わせのツリー前 震えて待つ君にごめんねのキスをして イルミネーションの町並みへ繰り出した 今夜のプランはウィンドウショッピング バッグとお揃いの指輪を買った その後予約したイタリアンレストランで シャンパン片手に優雅な食事を 楽しい時間はあっという間に過ぎてゆく 電車を乗り損ねた訳は もう少しだけ君といたかったから 駅のベンチで寄り添う二人に 空から雪が舞い降りてきた 神様ありがとう 今日が聖夜で本当に良かった 12月の夜に起こった奇跡を 胸に刻んで歩いていこう 帰り際の言葉はさよならじゃなく 今夜だけの特別な言葉 I wish you a Merry Christmas ---------------------------- [自由詩]Merry Christmas Good-Bye/1486 106[2006年12月25日1時17分] 「本当にごめんね」 その口癖を聞くのも今日が最後 本当は私が悪かったのに 貴方は一度も怒らなかった 返せなかった部屋の合鍵を そっとキーホルダーから抜いた 帰りの駅のプラットホームは 若いカップルで溢れている それぞれ仲良く手を繋いで 電車が来るのを待っている 行き場所を失った私の両手は ポケットの中に潜り込んだ 車窓から見渡す町並みは 貴方との思い出で溢れている もし雪でも降っていたら 私は泣いていたと思う いじわるな神様ありがとう 今日が聖夜で本当に良かった 写真も手紙も全部捨てるから 私の事は早く忘れてね 優しさが人を傷つける事もある どうかこれだけは忘れないでね 「メリークリスマス、さようなら。」 ---------------------------- (ファイルの終わり)