1486 106 2018年1月30日21時45分から2020年8月31日22時24分まで ---------------------------- [自由詩]Another MOON/1486 106[2018年1月30日21時45分] ガスマスクを着けたまま 廃墟となった遺跡を歩く 地上に出たのは3年振り メーターの針が大きく揺れた ここでは人は暮らせない 有毒なガスが蔓延している サイレンの音が鳴り響いた 身を隠さなければ殺される センサーライトを掻い潜り 背後から銃弾を浴びせた ロボットは動作を停止して 束の間の静寂を取り戻す ここでは人は暮らせない 地上はオーパーツの楽園 屍の身包みを剥ぎ集め 細々と命を繋いでいく この星の動力装置は もうすぐ完全に停止する ここでは人は暮らせない あとは運命を共にするのみ 頭上に浮かぶのは片割れの月 そこには綺麗な水があると 遠い昔に聞いたことがある 部品を集めて船を作れたら この目でそれを確かめたい (そして思い知ることとなる  ここでは人は暮らせない) ---------------------------- [自由詩]タンザナイト/1486 106[2018年1月31日6時31分] 逃げるガゼル  追い掛けるリカオン 星が輝いている 真っ暗な夜だ 逃げる観光客 それを追う犯罪者 サイレンは鳴らない 真っ暗な夜だ 命のやり取りは 対等にならない 銃声が鳴り響く 真っ暗な夜だ 死にたくなければ 身を隠して生きろ 運が悪ければ 真っ暗な朝が来る ---------------------------- [自由詩]召使い/1486 106[2018年1月31日20時27分] いってきますとかただいまとか 綺麗になったとか愛してるとか 欲しい言葉は一つもくれない 発する言葉は一言だけ 飯 私は召使いなんかじゃない 叫んだら我に返ったみたいに 謝ってきてももう遅いんだから さようなら二度と顔も見たくない ---------------------------- [自由詩]少年漫画/1486 106[2018年2月1日8時05分] エスカレーターに乗っていたら 後ろから急に強く押されたんだ 相手は何かぶつぶつ言いながら 足早に立ち去ってしまった はずみで割れたスマホを拾って 肩を落としたままホームを出た 自分も悪かったかもしれないけど もやもやが胸に渦巻いていた 少年漫画の主人公だったら こんな時何と言うのだろう 何度も読み返したはずなのに 必要な台詞が浮かんでこない コーヒーショップで並んでいたら 知らない人が割り込んできたから 文句を言おうと声を掛けたけど 上手く言葉に出来なかったよ 告白するけど人生で一度だけ 不良に絡まれたことがあるんだ 完全な言い掛かりだったのに 勢いに負けて謝ってしまった 少年漫画の主人公だったら こんな時どう戦ったんだろう 何度も読み返したはずなのに 必殺技の一つも浮かんでこない 公園のベンチで弁当を食べながら ぼんやりと空を眺めたりしている 仕事や毎日は上手くいっているのか 自分でも自分のことが分からない 少年漫画の主人公だったら どんな未来が待っていただろう 憧ればかりが大きくなっていって 心を置き去りにしてしまったんだ ---------------------------- [自由詩]波乗り/1486 106[2018年2月1日19時37分] あの日のことは忘れはしない 打ち上げられたサーフィンボード 砂浜に残された足跡達も 波が全部浚ってしまった あぁ悲しみもいつか波が全部浚ってくれるよ さぁ恐れずに立ち上がろう 向かい風の中で希望の帆を貼り もう一度歩き始めよう 失われた地図に描かれた未来へ 今は何も考えず漂う波に揺られながら あの日のことは忘れちゃいけない 自然を前に人は無力だ それでもいくつもの夜を越えここまで来たから 振り返りながらも進んでいける あぁ繰り返す悲劇その延長線上に光があるなら いつか君と撒いた種は荒れ果てた大地に根付き 芽を伸ばして小さな花を開くだろう さぁ恐れずに立ち上がろう 向かい風の中で希望の帆を貼り もう一度歩き始めよう 失われた地図に描かれた未来で またいつか傷付いたとしても互いの力を合わせながら ---------------------------- [自由詩]光/1486 106[2018年2月2日7時05分] 小さな掌に触れた あどけない貴方がくれた笑顔が あまりにも可愛らしすぎたから 温かい気持ちで満たされてた 貴方が生まれてきたそれだけで世界が かけがえのないものに変わったんだ 夏の風が吹いた七月の晴れた日 目の前に現れた小さな光 振り返れば後悔ばかり それでも俺はまた剣を手に 険しくも長い道を往こう 貴方がそれを望むならば いつでも全力で生きている貴方が どこまでも真っ直ぐ歩いていけるように 遮るものがあれば命を懸けたっていい そう思える人は他にはいない これからもずっと傍でこの身体が果てるまで 必ず守り抜くそれが俺の誓い 貴方が選んできたこれまでの全てが 間違いじゃなかったと信じられるように 道に迷う時は同じように悩み 共に目指す物は果てない未来 貴方が生きているそれだけで世界は こんなにも眩しく輝きを放って 大事な物が何か俺に教えてくれる 何度だって言おう 貴方は俺の光 俺が貴方の光 ---------------------------- [自由詩]明けない夜/1486 106[2018年2月2日18時30分] 凍えるような夜の空気に包まれていたかった 満月はそれでも道を照らそうとするから 僕はまた歩き出そうとしてしまうだろう 本当の気持ちと向き合うこともなく ただ何も決まらないまま考えていたいだけ 明けない夜の帳の中で 賑やかな午後の空気は好きになれない 太陽は嫌でも町を照らそうとするから 全ては光が当たっているだけで 何一つとして輝いていないんだ ただ何も決められないままじっとしていたいだけ 明けない夜の静寂の中で 全ては闇から始まったはずなのに 光こそが正しいとどうして言えるの ---------------------------- [自由詩]夕闇/1486 106[2018年2月3日0時54分] 歩き煙草に咳き込んだ 不機嫌そうな顔こちらを見る 目を逸らした自分が間違っているのか 転んだ痛みに呟いた それはただの独り言 差し伸べてくれる手を伸ばす 期待はいつも裏切られる 夕日が眩しく輝いて 君の顔が見えなくなる 老いぼれ犬の影は伸びていく 老いぼれ犬の影は消えていく 老いぼれ犬の影は見えなくなる 誰もいない公園を横切る 子ども達の声は聞こえない 揺らめく街灯音も無く 乾いた風が枯葉を揺らして 音も無く 知らない町に迷い込んだ気分 ---------------------------- [自由詩]いいね!/1486 106[2018年2月3日11時10分] 簡単に呟けるくらいがいい 指先一つで誰でも気軽に 考え過ぎないくらいがいい 直接話すのと同じ感覚で 盛ってしまうくらいがいい 大袈裟な方が盛り上がれる 責任を取るのは自分なんだし 好きにやったっていいじゃない 真面目に語るのもたまにはいい 茶化されるのもまた一興 写真を載せるのもたまにはいい 少しだけ身近に感じられるし 心無い返答もたまにはいい 頭を冷やすきっかけになる 放ったものは消せないけれど 言葉も文字も同じことだから 好きなように解釈すればいい 感じ方は人それぞれだから 直接コメントをくれればいい 貴方を身近に感じられるし 拡散してくれるなら更にいい 貴方にが感してくれたなら いいね!ボタンをクリック ---------------------------- [自由詩]メーデー/1486 106[2018年2月3日19時39分] 冷たい風が窓を叩く ため息は白く浮かぶ 毛布に包まったまま 凍える身体を温める 外はスノードームの世界 直にこの家を覆い尽くす 少しだけ眠くなってきた あとは只身を委ねるのみ 脳裏に浮かぶシルエット 名前も思い出せないけど 最後に一目会いたかった 氷のなみだが床に落ちた ノックの音が響いた いつの間に雪は止み 毛布を剥いだその人 凍える身体を温める ---------------------------- [自由詩]最後の歌/1486 106[2018年2月5日21時47分] I’ve been thinking for a long time, I want to change Never trying my best, never trying so hard I’ve been staying here and wasting my life Don’t want to give up, don’t know how to do Now is the time, if I thought So let’s start from now on This is my last song to sing my regrets and failures My life is just once, one time, one reason to say Running up and jumping up the highest wall And I will make my dream comes true I’ve been thinking for a long time, I want to change Change my world, change my way change myself But I know it’s too late to get back my youth Through any chances, through any periods There’s no way backwards So I face to the future This is my last song to sing my past and lost My life is just once, one time, no reason to stay My heart is beating and spanning so fast And I will make my dream comes true I swear I will make my dream comes true I’ve been thinking for a long time, I want to change Now I’ve got to realize, I can change, I do change ---------------------------- [自由詩]いいに決まっている/1486 106[2018年2月7日18時51分] 誰かに優しくできないのを時代のせいにしないでよ 誰かに優しくできないのを社会のせいにしないでよ みんなが幸せになれる世界が一番いいに決まっている 正しいとか間違いとかそんなのは関係なくて 可能だとか不可能だとかそんなのは関係なくて みんなが幸せになれる世界が一番いいに決まっている 何もかも分かったつもりになって考えることを止めないでよ 人の意見を聞く気もないのに話し合おうとなんてしないでよ みんなが幸せになれる世界が一番いいに決まっている 綺麗事でも理想論でも叶わない夢でもないんだよ 具体的な方法を語るのはずっと後でもいいんだよ みんなが幸せになれる世界が一番いいに決まっている 口に出さなきゃ自分で選ばなきゃ手に入るはずがないんだよ 望みの形をイメージできなければ実現できるはずがないんだよ みんなが幸せになれる世界が一番いいに決まっている 好きなことをしながら好きなように生きられる 好きな人を好きになって好きなように愛し合える 好きな時間に好きな場所で好きな格好で好きな方法で そんな世界を創れたならば一番いいに決まっている ---------------------------- [自由詩]リジー/1486 106[2018年2月22日21時53分] 真っ黒な廊下を歩いていた ボロボロのテディベア抱えて 窓を開けろと風が叩くから 外の方は見ないようにした 爪先立ちでドアノブに手を掛けて 飛び込んだ部屋には二つの寝息 気が緩んで思い切り泣き喚いたら 暗闇の中髪の毛を優しく撫でる手 ライトが点いて部屋中を照らした ベッドに潜ってそのまま夢の中へ おやすみなさい目を閉じたなら もう怖い夢は見なくて済むよう この手は繋いでいてあげるから 何もかも忘れて眠りなさい ---------------------------- [自由詩]真っ白/1486 106[2018年2月23日7時52分] 真っ白な肌が好きだった 真っ白な笑顔が好きだった 真っ白な心が好きだった 真っ白な君が好きだった 真っ白な紙を広げて 真っ白な文字を書いた 真っ白な頁をめくると 真っ白に消えていく 美しいまま最後まで 真っ白な約束が消えていく 真っ白な未来が消えていく 真っ白な思い出が消えていく 真っ白な日々が消えていく 真っ白な未来の中で 真っ白な太陽を見上げ 真っ白な翼を広げて 真っ白に消えていく 美しいまま最後まで 真っ白な雪のように 真っ白な景色の中で 真っ白な音を立てて 真っ白に消えていく 真っ白な服を着て 真っ白な夢の中へ 真っ白な煙になって 真っ白に消えていく 美しいまま最後まで 真っ白な言葉を餞に ---------------------------- [自由詩]瞑目/1486 106[2018年2月23日19時38分] 競い合うために生まれたわけじゃないでしょう 奪い合うために生まれたわけではないでしょう 憎しみ合うために生まれたわけじゃないでしょう 傷付け合うために生まれたわけじゃないでしょう ただ生きるために生まれたんでしょう 騙し合うために生まれたわけじゃないでしょう 探り合うために生まれたわけじゃないでしょう いがみ合うために生まれたわけじゃないでしょう ぶつかり合うために生まれたわけじゃないでしょう ただ生きるために生まれたんでしょう ただ生きるために生まれたはずなのに 生きるということはどうしてこんなに難しい 競い合うために生まれたわけじゃないでしょう 奪い合うために生まれたわけではないでしょう 憎しみ合うために生まれたわけじゃないでしょう 傷付け合うために生まれたわけじゃないでしょう 生きることの意味なんて本当はよく分からない 騙し合うために生まれたわけじゃないでしょう 探り合うために生まれたわけじゃないでしょう いがみ合うために生まれたわけじゃないでしょう ぶつかり合うために生まれたわけじゃないでしょう 生きることの意味なんて本当はよく分からない 生きることの意味なんて本当はよく分からないのに 死ぬことの意味をどうして求めてしまうのでしょう 助け合うために生きられたならよかったのに 与え合うために生きられたならよかったのに 労わり合うために生きられたならよかったのに 慈しみ合うために生きられたならよかったのに たった一つの幸せを見つけることさえ難しい 救い合うために生きられたならよかったのに 笑い合うために生きられたならよかったのに 喜び合うために生きられたならよかったのに 愛し合うために生きられたならよかったのに たった一つの幸せを見つけることさえ難しい だからせめて永遠の眠りにつくその時には 目を閉じて全てを忘れてしまえたならいい ---------------------------- [自由詩]水遊び/1486 106[2018年10月14日23時54分] 雨上がりの街を歩いた 露出の多い服が肌寒く 季節の変わり目に吹く風が 取り残された私の体温を奪う 抱きしめられた温もりも シャワーの後の優しい時間も たった一言で嘘に変わっていく ふやけてしまったアルバムの写真 捨てられないまま次ばかり探して 空っぽの心を埋められないまま 悲しい恋がしたいわけじゃない 思い出に浸りたいわけでもない この人こそはと思えるような たった一人を見つけたいだけ 枯れ果てたと思っていた 涙が頬を伝わり落ちていく 簡単に人を信じてしまうのは 悪い癖だと分かってはいるけど 同じような人を好きになって 同じような終わりを向かえる 終わりを迎える直前の空気が いつからか分かるようになった 勝手に好きになって勝手に傷付いて 最初から最後まで一人ぼっちだ 悲しい恋がしたいわけじゃない 思い出に浸りたいわけでもない この人こそはと思えるような たった一人を見つけたいだけ 簡単に人を裏切れるような 本当の愛を知らない人を 嫌いになれる方法を教えて 簡単に溺れてしまうような 本当の愛を知らない自分を 嫌いになれる方法を教えて 悲しい恋がしたいわけじゃない 思い出に浸りたいわけでもない この人こそはと思えるような たった一人を見つけたいだけ 引き止めないし縋ったりもしない だけど諦められるほど器用でもない いつの日か涙が枯れ果てるまで たった一人を探していくだけ ---------------------------- [自由詩]いっぱいいっぱい/1486 106[2018年10月15日21時17分] たくさんのしあわせをありがとね かかえきれないほどありがとね つたえきれないかんしゃのきもち のこさずぜんぶきみにあげる そばにいてくれてありがとね つないでいてくれてありがとね おかえしになるかわからないけど のこさずぜんぶきみにあげる ちいさなあたしのあたまのなかは きみのことだけでいっぱいいっぱい なにもてにつかなくなってしまう それはとってもうれしいことね あきれてしまうほどみつめていてね さみしくなるほどはなしをしてね ておくれになってしまわないように いますぐぜんぶきみにあげる はれつしてしまうほどみたしてね なきたくなるほどあいしあおうね うそなんてひつようないくらい かくさずぜんぶきみにあげる ちいさなあたしのあたまのなかは きみのことだけでいっぱいいっぱい なにもかんがえられなくなってしまう それはとってもすてきなことね いっぱいいっぱいなまいにちがたのしい もっとこまらせてよきみのおもいどおり ふりまわされるほどひっしになっても どこまでだってついていくんだから ちいさなあたしのあたまのなかは きみのことだけでいっぱいいっぱい なにもてにつかなくなってしまう それはとってもうれしいことね ちいさなあたしのあたまのなかは きみのことだけでいっぱいいっぱい なにもかんがえられなくなってしまう それはとってもすてきなことね たくさんのしあわせをありがとね かかえきれないほどありがとね しっていることばぜんぶつかって あたしのすべてをきみにあげる のこさずせんぶきみにあげる ---------------------------- [自由詩]シオマネキ/1486 106[2018年10月18日7時26分] 切り落とした無数の黒髪が 浴室の床に散らばっている 鼓膜の真横から聞こえてくる 二つの刃物が擦れ合う音 例えるならば泡 閉ざされた水槽の底から 少しずつ浮かび上がってくる 泡 泡 泡 泡 泡 外は明るいのか暗いのか 確かめようにも小窓はなく 微かに漂う黴の臭いが 脳細胞を侵食していく 例えるならば泡 微生物にまとわりついて 少しずつ体を溶かしていく 泡 泡 泡 泡 泡 混濁した記憶を寄せ集め 正気を取り戻そうと試みても 目の前の鏡はひび割れていて その顔がよく見えない 例えるならば泡 しゃぼん玉のように脆く 少しの力で簡単に壊れてしまう 泡 泡 泡 泡 泡 流れているずっと流れている 蛇口から水がずっと流れている 流れているずっと流れている 蛇口から水がずっと流れている ---------------------------- [自由詩]風使い/1486 106[2018年10月20日19時40分] 知らない人だらけの教室の中で 周りの会話に耳を傾けていた 誰か話し掛けてこないかな 友達ができたらいいな 一人きりで弁当を食べながら 周りの会話に耳を傾けていた 誰か話し掛けてこないかな 友達ができたらいいな 自然と周りに溶け込めるように 空気を読んで空気になって 風が背中を押してくれるまで 空気を読んで空気になって うつ伏せになって寝たふりしながら 周りの会話に耳を傾けていた 誰か話し掛けてこないかな 友達ができたらいいな 聞こえてきた自分の悪口に 何も聞こえないふりをした 自然と風景に溶け込めるように 空気を読んで空気になって 誰の目にも映らなくなるくらい 空気を読んで空気になって このまま耐え続けるくらいなら 風を起こして空気を変えたい ---------------------------- [自由詩]常久/1486 106[2018年10月21日9時43分] 終着駅の空に落陽 飛び立つ鳥と広がる闇 古びた映写機は回り出し 遥かな旅路を振り返る 安寧の中に潜む幸福と 悲愴の陰に佇む光明と 忘却の底に煌く情景を 僅かな時間で振り返る 夢と現実の境界線など この世とあの世の境目など 陽炎のように揺らぎながら 誰も正体を知ることなく 連綿と続いていく日々に やがて終わる時が来るのなら 懸命に生きた存在の証を 時代の片隅に刻み付けよう とこしへの眠りにつく前に ---------------------------- [自由詩]アディオス/1486 106[2018年10月22日18時49分] 背中を向けたまま返事をしたのは 嫌われた方がいいと思ったから 勝手な男だと怒っているだろう そのうち忘れてくれたらいい 惚れた女を幸せにするための方法が これ以外に思いつかなかったんだ 馬鹿な男だと泣いてくれるなよ 決意が折れてしまうだろう 無様に生きるのか格好良く死ぬのか どちらを選ぶかなんて決まりきっている それを知りながら俺を選んだんだろう だから最後までわがままを聞いてくれ 叶わない約束をするくらいなら 嘘を吐いた方が遥かにマシさ サヨナラだけを伝え終えたら 扉を閉めた後は振り返らない ---------------------------- [自由詩]sleeping/1486 106[2018年10月23日18時44分] ook up to the sky and you’ll see the stars shining in silence sleeping in silence look back to the past and you’ll see the people dying in silence sleeping in silence can you hear them speaking? no words but lights above on the corner of the universe waiting for the day of rebirth remember nothing lasts forever time goes by and you’ll be the one shining in the sky sleeping in the sky and I hope strongly our dream goes on shining in the sky greeting in the sky ---------------------------- [自由詩]タキオン/1486 106[2018年10月23日23時33分] 立ち入り禁止のビルに忍び込んだ真夜中 インスタントラジオからの呼び声を頼りに 僕達は星が一番近くで見える屋上を目指した 星座の名前なんて何一つ知らないままで 手すりから身をのりだして大声で叫んだ 滑り落ちそうになってみんなで引っ張り上げた 覚えたての缶ビールの味にほろ酔い気分になって 普段だったら言えないような恥ずかしい夢なんかも語った この世界には僕達以外の人間がいないかのように 生まれたままのありのままの姿で笑い合っていた 地球が回る速度に振り落とされてしまわないように つまづきながらも転びながらも僕達は全力で走るんだ 限界を知らないから無茶ばかりするけど倒れたりしない 胸の奥で大きな音を鳴らすその存在を信じているから 騒ぎ疲れてコンクリートの上に寝転がった 沈黙に負けてどうでもいいことばかり話した 目の前に広がるのは雲一つない満天の星空で 誰が一番最初に流れ星を見つけられるか競い合った 何かを思い出させるかのように吹き抜けた 冷たい夜風なんて少しも気にならなかった 駆け足で過ぎ去る季節に置いていかれないように ぶつかりながらも転びながらも僕達は全力で走るんだ 誰かが作った勝手なルールは振り回されたりはしない 心の奥で大きく光を放つその存在を信じているから 理由なんて考えずにいつも反対の答えばかりを探した 根拠なんてなくても正解だけを選んでいこうと決めた 地球が回る速度に振り落とされてしまわないように つまづきながらも転びながらも僕達は全力で走るんだ 限界を知らないから無茶ばかりするけど倒れたりしない 胸の奥で大きな音を鳴らすその存在を信じているから 駆け足で過ぎ去る季節に置いていかれないように ぶつかりながらも転びながらも僕達は全力で走るんだ 誰かが作った勝手なルールは振り回されたりはしない 心の奥で大きく光を放つその存在を信じているから 終わりを告げるようとする時が容赦なく追い掛けてくるけど 音や光にも負けないスピードでどこまでも逃げ切ってみせるさ 理解できないものは受け入れない守り抜いてきたものは奪わせない 単純なルールで繋がり合っている互いの存在を信じているから ---------------------------- [自由詩]はじまり/1486 106[2018年10月24日21時01分] 昨日でもない 明日でもない 今日でもない いつだってはじまりだ ---------------------------- [自由詩]スターチス/1486 106[2018年10月24日22時57分] 変わらないものなんてあるのかな 不意の呟きの真意が分からなくて 曖昧に微笑んでみせた水曜日の夜 降り始めた雨に不安になったのか ざわめくように木々が揺れていた 変わらないものなんてあるのかな 繰り返し自分自身に問い続けては 途方に暮れてしまった土曜日の夜 鏡に映る姿に手を伸ばしてみても 薄いガラスに隔てられて届かない 証明したくてもそのための方法は どこにあるのかどんなものなのか 不確かなことばかりの世界の中で 昨日と同じように口付けを交わす 隔たりあった二つの世界が唇を通じて繋がりあう その時感じた確かな温もりこそが答えだと感じる 変わらないものなんてあるのかな 君からの問いかけに応えるように 明瞭に微笑んでみせた月曜日の朝 変わらないものなんてないのかも 脳裏に浮かんだ疑念を掻き消して 今日も同じように口付けを交わす ---------------------------- [自由詩]月花/1486 106[2018年10月25日20時23分] 三日月の夜にだけ零れ落ちる 月の雫を浴びた花のことを この地では月花と呼ぶ その花を煎じて作られた秘薬は 古くから健康長寿の源として 月夜の民に親しまれてきた 真面目に働き旅人にも優しい 村の評判もとても良かった みんな幸せに暮らしていた どこで噂を聞きつけたのか 秘薬を持ち帰った朝日の民が 献上品として王様に差し出すと 瞬く間に人々に知れ渡った 兵隊達に包囲された村 秘薬を作れもっと作れと 月夜の民を酷使し続けた 秘薬は大層高く売れたが 月の雫は僅かしか取れず 村人達には行き渡らなかった 程なくして村人達は病に倒れた せめてもの抵抗とでもいうのか 秘薬を作るための方法については 誰一人口を割らなかったという 気の遠くなるほど昔の出来事 三日月の夜にだけ零れ落ちる 月の雫を浴びた花のことを この地では月花と呼ぶ 今では愛し合う恋人達が 首飾りに使う神秘の花にも 秘められた悲しい逸話がある ---------------------------- [自由詩]トランスルーセント/1486 106[2018年11月2日20時03分] 横断歩道の 真ん中辺りで 立ち止まる 逆行が背中に 突き刺さって 立ち止まる 誰にも気付かれず すれ違っていく 自動販売機の 真横に立って 空を見上げる 夕日が瞳に 突き刺さって 泣けてくる 風だけがきっと 私を見ていた 私はきっと透けている 透明になれず透けている 私はきっと透けている 満たされないまま透けている 周りがみんな 見逃すような 些細な汚れが 気になって 夜のリビング ソファーの上で 丸くなる 静寂が心に 突き刺さって 私はきっと透けている 透明になれず透けている 私はきっと透けている 染まれないまま透けている 透けている 透けている た すけてって いって いる 叫んでいるよ 小さな声で 聞こえないように 小さな声で ---------------------------- [自由詩]科学四季/1486 106[2020年3月10日21時47分] 等間隔に立ち並ぶビルディング 一斉に変わるシグナル 巨大なターミナルから3.6秒のテレポーテーション 緑の溢れるプロムナード 清潔な空気の濾過装置 AIシステム搭載された最新型のメガロポリス 生活基盤のタワーマンション 食事も娯楽も無償提供 プログラム通り動けば幸福な人生が保障されるという 完璧に管理されたこの街では同じタイミングで桜が咲く 昔の人達にとっては一体何が特別だったのだろう 完璧に管理されたこの街では同じタイミングで蝉が鳴く 昔の人達にとっては一体何が特別だったのだろう ICチップを埋め込まれた胎児 解析されたDNA 刷り込まれた生涯設計 生まれた瞬間に決められる運命 データベースを照合し 選出される最適なフィアンセ 思考回路は筒抜けテレパシー 存在しないプライバシー イレギュラーな行動を起こす人間は 記憶消去でクリアランス 仕掛けられた監視カメラのおかげで犯罪一つ起きないという 完璧に管理されたこの街では同じタイミングで果実が実る 昔の人達にとっては一体何が特別だったのだろう 完璧に管理されたこの街では同じタイミングで雪が降る 昔の人達にとっては一体何が特別だったのだろう ドーム型の空巨大なスクリーン フルCGのスカイブルー 機械の部品の一部となった人生はバーチャルリアリティー シャットアウトされた外部情報 進入禁止の非常口 一歩踏み出そうものなら命の保証は無いという 完璧に管理されたこの街では同じタイミングで桜が咲く 昔の人達にとっては一体何が特別だったのだろう 完璧に管理されたこの街では同じタイミングで蝉が鳴く 昔の人達にとっては一体何が特別だったのだろう 完璧に管理されたこの街では同じタイミングで果実が実る 昔の人達にとっては一体何が特別だったのだろう 完璧に管理されたこの街では同じタイミングで雪が降る 昔の人達にとっては一体何が特別だったのだろう 完璧に管理されたこの街で繰り返されていく春夏秋冬 昔の人達は一体どうして四季のプログラムを残したのだろう ---------------------------- [自由詩]オリーブ/1486 106[2020年6月6日19時19分] テーブルの上に並べられたディナーを ナイフとフォークで切り分けていく 音は立てない クロスは汚さない 躾けられた習慣は簡単には抜けないね 足しげく通った放課後の図書室で 難しい言葉をいくつも覚えたけれど マティーニの味とメンソールの煙は 年を重ねても理解できそうにないね 読み進めていた本に栞を挟んだ ソールを脱ぎ捨てて波を蹴った 長い雨の降り続く季節を乗り越えて ようやくあたしは本当の夏を知る イメージの翼で窓枠を飛び出した オリーブの生い茂る丘を目指して 生きていく全ては手に入らないけど ロザリオを握り締め祈ったりしない 手品師の要領で並び替えたアルファベット 特別な意味を持ち誰かに届くよいつの日か 希望も理想もない世界は健全じゃない 信じる力が悲劇を喜劇に変えていく 男の人には力では敵わないからと 武器を持ち替えて知識を盾とした 栄冠を誰かに明け渡そうとする時 ようやくあたしは本当の強さを知る 収穫の季節まで小さく揺れながら 太陽の光を目いっぱい身に受けて 生きていく全ては手に入らなくても コイントスに運命を委ねたりしない 広場に群がる人々と掲げられた万国旗 音楽を杯に宴は続くよいつまでも 勝利も敗北もない世界は絵空事じゃない 信じる力で創話を実話に変えていく 清書した文章を読み返していくほどに 完璧とは程遠い自分自身を思い知る 残るものが残したいものであるよう 何度でもあたしは筆を走らせる ---------------------------- [自由詩]Rebuild/1486 106[2020年8月31日22時24分] 一週間前から降り続いた雨のせいで 河沿いの家屋は今にも流されてしまいそう 避難したホテルの1階から不安そうに眺めていた 叩き付ける雨がガラスまで壊してしまいそうだった 晴れ上がった翌日の昼下がり モノレールで妻と買い物に出掛けた 向かい合わせに座った見覚えのある顔 ぎらついた笑顔の飲料メーカーの営業さん 断れるような理由など持ち合わせておらず そのままギフトの買い出しにつき合わされた 床に落ちたオリーブオイルの瓶の泥を払った時の 軽蔑するような妻の顔が頭から離れない ---------------------------- (ファイルの終わり)