Monk 2005年8月31日22時45分から2007年9月9日19時03分まで ---------------------------- [自由詩]やきそばパンはいかにしてなくなり、夏はどのように始まったか/Monk[2005年8月31日22時45分] 「ここから飛び降りるって言ったらどうする?」 「やれやれ。気まぐれなお姫さまだ」 「なによ、その棒読みのセリフは」 「感情がこもっていないんだよ」 「あのねー」      屋上、ほどよい風とやきそばパン     「他人の話をちゃんと聴く、ということができないわけ?」 「そんなこともないよ」 「そんなことあると思うけど」 「慣れてないんだよ」 「他人の話をちゃんと聴くことに?」 「いんや、チサがオレに」 「あのねー」      僕は彼女の名前を知っている  彼女は僕の名前を知っている     「やきそばパン、眺めてて楽しい?」 「んー、眺めててもなくならないところが」 「ふーん」      ぴゅー、と急に突風     「きゃっ」 「あ、シャーペンがころがってゆく」 「パンツ見たでしょ?」 「見てないよ」 「見なさいよ」 「なんだよそれ、それよかシャーペン」 「それよかって」      はためく学校の旗とスカート     「わたし、けっこうカワイイと思うんだけど」 「けっこうカワイイと思う」 「自分で言うのもなんだけどね」 「自分で言うのもなんだよな」 「ねー」 「なに」 「性欲旺盛な高校生らしくないよ、キミ」 「おまえ、たまにヘンだぞ」 「そうかも、でもキミよりマシでしょ」 「どうだか」 「ねー」 「なに」 「『キミ』って呼ばれるのひそかに好きでしょ?」 「よくわからないな」 「なによ、その急に低い声は」 「ハードボイルド」 「ふーん」 「オレ、けっこうハードボイルドだと思うんだけど」 「そうでもないよ」 「そうかな」 「どっちかというと、」 「こっちに来なよ」      時間が風力で動いていた  ときに勢いよく、ときにゆったりと  チサの腰にすっぽりと腕をまわしスカートに顔をうずめた  耳元でバタバタと音がする  いろいろなものが風力で動いているんだなと思った     「どうよ?」 「『どうよ?』って、」 「この格好」 「そんなこと言われても」 「いいにおいがする」 「バーカ、バーカ、バーカ」 「バカですから」 「ねー」 「なに」      何も変わらないでいられる限界の線はどこだ     「ここから飛び降りるって言ったらどうする?」 「・・・と彼女はどこか遠くを見つめながら言った」 「で?」 「ぼくは『大丈夫、すべてうまくいくさ』と言って彼女の左手にキスをした」 「却ー下」 「なんだと」 「おもしろみに欠ける」 「おもしろみが求められていたとは!」 「はい、別の答えをさがして」      やきそばパンは食べなければなくならない    わかるのはその程度のことだけ  わからないことはたくさんある  誰かが教えてくれないだろうか  ああそれはね、と数学の証明問題を説明するように     「・・・ちょっとイタいよ」 「しかたないよ」 「しかたないのか」 「対価と代償というやつだ」 「いつものことながら、」 「ん?」 「わかりづらい言い方、好きだよね」 「そうかな」 「そうよ、解説して」      コホン     「ここから飛び降りたいのか?」 「どうでしょ?」 「無理だよ」 「なんで?」 「オレがこうやってギュッとつかまえているから」 「代償って?」 「スカートに顔をうずめられる痛み」 「ふーん」 「いいにおいがする」 「キミの性欲ってどこかあさっての方向に向かってると思う」 「テレない、テレない」 「テレてないわよ」 「顔が赤い」 「そのかっこじゃスカートの生地しか見えないでしょ」 「見なくたってわかる」 「へー、すごい」 「そのうちチサのことは何でもわかるようになる」 「何でも?」 「何でも」 「がんばってね」 「そうなったら大変だろうな」 「なにがよ」 「『いろいろとさ』」 「はいはい、ハードボイルドくん」      何を言ったりしたりすれば彼女が喜ぶのかよくわからない  やきそばパンは食べなければなくならない  午後の授業が始まる     「さて行こうか」 「いらないんだったらちょうだい」      チサがやきそばパンをひったくってパクッとかじった     「あ」 「うん、おいしい」 「あ」 「食べられるときに食べておかないとこういうことになるのよ」      さっさと歩いていくチサ  ぴゅー、とまた風が吹いたけど  スカートの端はしっかりと手で押さえられていた    くやしいんだかうれしいんだか  なんだこりゃ  ゴチャゴチャだ、もう      そんなふうにして夏は始まった ---------------------------- [未詩・独白]HTTP999/Monk[2005年9月4日0時38分] リンクです。 http://homepage1.nifty.com/saruhobo/junk/http/http_999.html ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]こんなものを書いてきた 01/Monk[2005年9月4日19時44分] 僕が初めて書いた詩は高校の漢文のノートの最後のページに書かれ ていました。暇だったんだと思います。しかしこの漢文ノートを うっかりある女の子に貸してしまうとは。 その日、私は今まで絶対にしなかったミスを、した 有馬君にジャージでダイブなわけです。宮沢雪野、一生の不覚です。 気づいた瞬間、猛ダッシュで大事なあの娘を奪い返しに行きました が時すでに遅し。「いや、なんか意外。あはははは」とおっしゃっ てましたよ。そりゃそうです。僕はそのころ、近辺の族(ゾク)とい う族をうち破り伝説のヘッドとして恐れられ、日々の生活といえば 喧嘩、飯、喧嘩、喧嘩、ファミコン(1時間)ですから。意外どころ か圏外です。彼女の笑い声が心なしひきつり徐々にフェイドアウト していくのもうなずけるってものです。というより僕の存在自体を フェイドアウトさせてくれ。 その後しばらく記憶がありませんが、気が付くと漢文のノートは焼 却炉で焼かれていました。ずいぶんと陽がかたむくのが早くなり立 ち昇る煙と西の空を見上げながら、ああもう夏も終わりだなぁと思 いました。 なので現物はもうないんだけどそこに書かれていた詩のタイトルは 「青」といいます。海の青と空の青は違うの?どっちが本当の青な の?ああ、とかそんな内容です。いたたた。頭痛がします。あと 「才能」というタイトルのものもありました。才能を測る定規を 持った連中め、やめてよ!やめてよ!そんな悲しいことは、って感 じでした。別の意味でひどく悲しくなります。たしか全部で五編く らい書いてあって、みんな似たようなもんでしたが、とりあえず僕 は漢文ノートを廃棄し、詩はもう書かなくなりました。たぶん、何 の得にもならん、と思ったからでしょう。 ただ文章を書くのはわりと好きだったのかもしれない。いや好きと いうより金もかからないし、絵や音楽と違って文字が書ければ書け たからというのが正解ですか。詩は書かなかったけど妄想体験記を 青少年のための雑誌(エロ雑誌)に投稿したり、それがクラスで人気 をはくし、授業中にも回覧され、職員室に呼び出され、スリッパで ビンタされたこともあります。スリッパでビンタされたのは初めて でした。  * * * 大学の頃は友達のバンドの歌詞をたまに書きました。世の中でヒッ トしている曲の歌詞を見ながら「これは僕でも書ける」と思ったわ けで、書けることを確認するために書いてました。そう考えると最 初の「青」にしても妄想エロ投稿にしても動機は同じで、書けるこ とを確認する作業のような気がします。このとき書いた「張り込 む」という詞を月間歌謡曲って雑誌の歌詞道場コーナーみたいなの に投稿して「アイドルが歌う曲じゃないよね」というコメントをも らいました。そりゃそうですね。この歌詞は、今でいうところのス トーカーの歌で、毎晩君の部屋を張り込んでいるっつう話です。ろ くなもんじゃありません。屈折した愛情表現やアブノーマルセック スに対し寛容であることがカッコイイと思ってましたね。この曲は おおむね評判よくなかったです。簡単に言えば「ひいた」というこ とです。ちっ、世の中まだ僕についてきてないなぁと思いました。 まぁ青少年によくある病気です。一回、女王様にムチでたたかれる といいと思います。おのれの無知がよくわかりますから(うまい)。 小説も書いてましたが結局、小説は「合わない」と思いました。書 いてる途中で飽きてしまいます。自分の中ですでに完結している話 を文章で黙々となぞっていくのに耐えきれないわけです。頭の中に 浮かんだことをすぐに文章化してほしい、お願いドラえも〜ん。 まぁドラえもんがいたら、もしもボックス出してもらってあとは 早々に未来へ帰っていただきますが。 で、ここで詩なわけですよ。詩は短い、これくらいの長さなら耐え られる、小説は長い、こんな長いのハイんない!(えー今でも途中 で脱線しないと飽きてしまうからであって、特に下ネタは好きでは ありません)。で、まぁ最初はそう言ってもすぐに慣れるさ、ダメ 絶対無理、無理だから!(重ねていいますが下ネタは好きではあり ません)じゃなくて詩だったら飽きずに書けると思い、再び詩作の 世界へ戻ってきたわけです。元々5作しか書いてねーじゃねーか。  * * * 仕切り直しで初めて書いたのは「夕方校庭ペンギン」。これは現代 詩フォーラムにも投稿してありますが、本人もまぁいいんじゃない のと思ってる作品です。作中で「僕」は小ずるいペンギンにしてや られるわけですが、最後に「こんな大人に僕はなりたい」とつぶや きます。成長しましたMonkさん。あれほど大人への反発を詩に書き 散らし(たかが1,2作ですが)、真夜中に校舎のガラスを割っては貼 り割っては貼り、盗んだバイクをまた盗まれたあの頃から、立派に 小ずるい大人に成長しました。 大人のずるさっていうのもかわいげがあるというか、かわいげがあ るように書いてみようということでペンギンを持ち出してきたりし てるわけですね。この頃から僕は詩の投稿というのを始めたのだけ ど、作品はおおむね雰囲気が善良です。そういうほうが読んでて楽 しいんじゃないかと思いました。特に女性にはそういうほうがウケ がいいんじゃないかと。いや別にモテたいとかそういうんじゃない ですよ、とかく世の中のマーケットの主導権を握るのは女性でしょ? ね、だから女性をターゲットにするのは理に適っていますよね?ね? うんって言ってよ、またいつもみたいに「バカだなぁ」って笑って よ・・・お願い、お願いだから・・・まぁ僕にも少しくらいは善良な部分 があるのでその少ない切れっ端を無理やり意思の力でひきずりだし て書いてたわけです。それをやると反動で24時間の睡眠を必要と しますが。このへんの作品はWeb詩文集「SUNDAY WORKS」「汽車学 エピソード」あたりにまとめられてます。ようやく宣伝できました。 つづく ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]こんなものを書いてきた 02/Monk[2005年9月6日23時45分] 三つ目にまとめた詩文集「架空オレンジ」。このあたりまでが僕に とっての初期かなぁと思います。今はもう閉鎖しちゃいましたが 「ark」というサイトによく投稿してました。コメントをもらうと いうのはやっぱり嬉しかったですね。加えてどういうのが評判がよ くて、どういうのがイマイチなのかもよく考えました。あの手この 手で気になるあのコをゲットなわけです。どんなルートを通れば デートイベントが発生するのか日々フラグ探しです。もしかして BAD END一回見ないとダメなのか!とか、それはそれで楽しかった わけですが。 ただですね、僕にも好みというのがあるんですが例えば「ピーター  イン ベッドルーム」って作品(汽車学エピソード)。これ、僕は 気に入ってるんですが、ぜんぜんまったく反応なっしんですよ。う んともすんとも言いません。まるでうちの250Gのハードディスクみ たいです(これもうんともすんとも言いません。いえ泣いてません、 泣いてなんか)。まぁこういうことは後になって考えるとよくある ことで、というよりたいてい自分で気に入ってるものは世間の評判 はよくないもので、今はそれもしかたないかなと思いますが当時は 「ちょっとどーゆーことよ、説明、説明しなさいよ、そんな都合の いいことばっかり言って、わたし絶対別れないからね!」と詰め寄 りたい、そしてキスしたい気分でいっぱいでした。 とりあえずいろいろ混ぜて書きますかね、ってことで「架空オレン ジ」は混ぜモノになってます。「だんだん無感動になってゆく」 (フォーラム)みたいな書き方は好きで性に合ってますね。こういう お話のシーン切り出しみたいなのが。小説みたいに長々と書かなく てよいので精神衛生上よろしいです。 僕はお話を手軽に読んでもらえたらそれでよくて、そのために 「詩」という方法は便利だなぁと思いました。僕には特に伝えたい 想いとか感情はなかったし、詩書きになりたいわけでもなかったの で、ただおもしろいだろうと思うモノを書いてそれがおもしろけれ ばもう十分でした。これは今でも変わらないし、これから変わると したら「僕がおもしろいと思うもの」が変わるだけのような気がし ます。 「詩とは・・・」ということを考えたことはあまりないです。考える 必要に駆られなかったからで、僕にとって詩は娯楽というのはほぼ 確定しています。娯楽のひとつとして詩を読みたくて、娯楽として 楽しい詩が好きだということです。もちろんそうでないもの、とい うより僕がくどくど書いてるようなこととはそもそも考え方や観点 が違うものもたくさんあって、それがまったくかまわないことも当 然ですし、いろんなものがあって好きなモノが読めれば十分だなぁ と思います。あとは好きなモノを簡単に手に取れる手法があればい いです。 つづく ---------------------------- [自由詩]愛とサンダルとジャム/Monk[2005年9月11日1時55分] 僕は君のためならなんだってできる って サンダルにジャムをつけて食べようとするの ごく普通の人なんだけど イチゴジャムにアップルジャムに ピーチジャムにアボガドジャムに ときにはマーマレードも そんなのが愛の形なんて サンダルと愛は これっぽっちも関係ないじゃない? とうてい受け入れられないと思ったの でもね 悩ましいの、これが だってあんなにたくさんのジャムを持っているんだもの わたしってジャムにはほんっっと目がないのよね ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]こんなものを書いてきた 03/Monk[2005年9月11日21時44分] つらい、つらいです。この文章をですます調で書き始めてしまった ことがつらいです。 第四集「必要のない寓話」は徐々に僕の好みが占める面積が増えて ます。少しやらしいことも書き始めてます。「そういうこと(セッ クスに関連すること)は書かない人だと思った」と面と向かって言 われた(ダメ出しされた)こともあるのですが、これはかるーく傷つ くような、少しくすぐったいような、母上に「布団の下の本、机の 上に置いといたから」と告げられたときのような、夜中に部屋のド アをコンコンと叩く音がして開けてみるとそこには大きめの枕を抱 えた妹がうつむいて立っていたときのような!(妹がいないのでわ かりませんが!)ともかく、いつまでも夢見る少女じゃいられない ですから、こうガバッとね、公園あたりでガバッと、もしくはカ プッとね。えー、限度というものはわきまえる必要があります。で もけっこうみんなそういうのも好きですよ、ね、ね(暗示に乗るこ とも時には重要です)。 「巡回水槽」(フォーラム)という作品は葛西臨海公園の水族館のこ とを書いてます。あそこの名物マグロ水槽で当時の彼女と2時間く らい床に座ってボーッとしてたことを思い出します。「東山動物園 初〜(なげータイトル)」も同様、東山動物園行って、通天閣通って 帰ったときのことですな。こういう実際の出来事とリンクしてるの は非常にめずらしいです。たぶんこれくらいしかないです。けっこ うね、ベタな方法で彼女を喜ばせようとしてたってことですね、や れやれですよ、僕も若かったようですね、あはは。今でも同じよう なことをしている気がするのはきっと気のせいです。 「必要のない寓話」の中で好きなのは「バスト」です。これは書き 直しました。初稿はスーツの女が赤いスポーツカーでウィンクを投 げながら走り去っていくという普通の終わり方でしたが、つまらな いので好きなように書き直しました。こういうたたみかけが好きで す。一応、カフカの「審判」とか安部公房の「壁」を思い出しなが ら、その上澄みだけひょいとすくったような作品なんですけどね。 「毎日の小犬」はタイトルが好きです。ぜひ女性にリーディングし てほしい(倍角)。男性は却下です。自分で読もうとしましたが最初 の二行で自らの頬をグーで殴りたくなりました。 「loop」みたいなものをもっと書こうと思ってたんですが、やはり 難しいですな。「loop」は簡単なJavaScriptなんですがプログラミ ングの詩あそびです。i=私であり、yours=あなた、という関数に よって私は変わってゆく。しかしここではyours関数は私をそのま まreturnするだけで、私は私のままです。つまりwhileで括られて いるループは永遠に抜け出せません。私はあなたによって変えても らえることを期待しているのにその期待は完全に裏切られていると いうことでもあり、どうか私を変えてくれという願望でもあります。 yours関数内のコメントに挟まれたところにあなたの方法を書いて ほしいという。と解説するとまぁまぁ意味があっておもしろいかな と思うんですけどね。本当はさらにオブジェクト指向に発展させた かったりします。クラスの継承とかインターフェースの実装とか変 数のスコープとか、けっこう詩的ですけどね。  * * * この後、僕はあまり書かなくなります。飽きました。詩を書くこと に飽きたのではなくて、自分に飽きました。何か書こうとしたとき に、いかにも自分が書きそうなことを思いついて、それを書いて、 まぁ体よく収まってチャンチャンみたいな末路のようなものが見え てしまうので、出来上がったモノを読むと「またこんなんかよ」と 思ってしまいます。そろそろ周りの人々も飽きてくるんじゃないか なぁと思い始めました。僕は「へたくそ」とか「意味わからん」と か「こんなの詩じゃない」と言われるのは全然かまわないのですが、 「ああ、やっぱりね」とか「そうくると思った」と言われるのがす ごく怖い。イヤ、イヤァァァです。これが自分の中で起こってしま うので、こりゃしばらくヤメだなぁと思ったわけですね。 そしてこの頃にゴソゴソ書いてたのが「おはなし」(フォーラム)や 「君に宛てて」(フォーラム)です。暇なときにこういう一行詩っぽ いのを書いてました。電車に乗ってぼーっとしてるときとか歯を ぼーっと磨いているときとかつまらない会議でぼーっとしていると きに考えて日記なんかに書いてました。こういうのはすぐ読めて、 すぐポイッと出来そうでいいですね。このお手軽使い捨て感がたま らないです。書くのもいろいろ混ぜて書けるので飽きなくて済むし。 「君に宛てて」は別に詩として書いたものじゃないので未詩にして あるんですが、せっかくなのでまとめてフォーラムに投稿しました。 ちっとはおもしろいかなぁと。あと「萌えー」とか。萌えますかね? 実際にいたらイラつきそうですが、そこを「萌えー」と、ある種の 寛容さ、男としての器の広さが試される作品となっています。今考 えました。 この中に実話はほとんどないです。ゼビウスは実話ですが、ほとん ど想像です。想像するときに当てはめてた女性の方々はいますが皆 さん聡明な方々なので実際にはいたちの着ぐるみをかぶったりしま せん。文庫本にスライスハムを挟んだりもしません。モランボンの 人にはこの文章が読まれないようにお祈りしています。 つづく ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]こんなものを書いてきた 04/Monk[2005年9月13日7時59分] この文章も第四回になりますが今回でおしまいです。 最近また少し詩のようなものに興味が向いてきたので5個目の詩文 集「劇場アルゴリズム」をまとめました。ちなみにタイトルはいつ もてきとーです。何の考えもなしにつけられていると思われます。 こいつはまた新旧ぐっちゃぐっちゃですね。昔「poenique」さんの 即興ゴルコンダで書いたやつで使えそうなのを引っ張り出してきた り、最近フォーラムに書いたヤツを持ってきたりで、今まで以上に 統一感がないですね。バラバラ、手足があっちこっちに散乱してま す。ある意味Monkさんらしい気もします。移り気な小悪魔タイプで す。 あと出来上がってから気づいたことなんですが、肉男爵(=ペニス) のことを書きすぎです。間接的なものも含めると8個くらいありま す。肉男爵の登場率が二割です。これはさすがにいかんと思いまし たよ。あれ?知らないところで欲求不満?っていやいやそんな欲求 はないですから。また別の考え方をすると間接的なセクハラとも言 えます。こんなところにセクハラ願望が!表れているのか!普段は! 紳士的な振る舞いで!婦女子の方には!小粋なパーティージョーク と!挨拶代わりのミニ手品で!健全安全好青年と呼ばれ!てるとい うのに! (少しおちついて蝶ネクタイを結び直す) 偶然とはこわいものです。妙なところで統一感が出てますね。あは ははは。 今回、昔のもずっと読み返してみたんですが若干は変わったような たいして変わってないような。例えば「キリギリス」なんてのは昔 なら書かなかっただろうなぁと思います。多少張りつめていて比較 的抽象的な、というかよくわからんですが。でも僕は基本的にゆる ゆるなんですね。もうずっとゆるいまま。張りつめた感じというの はあまり食指が動かないみたいです。10個書いて1個くらいの割合 でしょうか。嘉門達夫がアルバムに一曲だけ普通の歌を混ぜるのと 似たようなもんだと思います。「朝からクワガタ」はおのれのゆる さ加減をまたゆるゆるく書いたものですが、自分では笑えます。 あっはっはー。青春の甘美な雫がこぼれるぅぅ。  * * * というわけで軽くふりかえってみたんですが、とりたててに山もな く谷もなくまんべんなくゆるーくやってきたんだなぁとということ がよくわかりました。なんもかわっちゃいねーです。あ、そもそも この文章は失敗じゃないのか、という結論ですか?平たんで表層上 滑りってやつですか?なんかそんなのを昔、国語の時間にやった記 憶がありますが。まぁ上滑り万歳って言っときます。人間ってのは 上っ面だけでも相当おもしろいですからね。一生かけても上っ面を 味わい尽くせないですよ、おそらく。 書くことに関しては前にも言いましたが読み捨て感覚が好きなので、 まるめて捨てても全然気にならないような感じで、かるくスキマを うめるようなものが書けるといいなぁと思います。暇な5分、10分 をうめるような。そしていろんなところにのびてるアンテナに引っ かかって、その5分のうち10秒でも20秒でも楽しくなるような、そ ういう幸運がこれからもあるといいですな。うん、神頼み。 おわり ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ニューロン/Monk[2005年9月14日1時40分] 午後からニューロンが降った。 ニューロンが降るなんてことはめったにないのだ。マカロニ状のも のが空から次々降ってきて、すぐに地面に溶けてゆく。 隣の家の子供が大喜びで外をかけまわっていたがそのうち手足をバ タバタさせてひっくりかえってしまった。ニューロンには微量な電 気が流れているのであまり長い間浴びていると気が狂ってしまうの だ。 僕はしばらくそれを見ていたが新聞のほうに再び目をやった。する と恋人がそばにきて窓の外を眺めながら「マカロニ食べたい」と 言った。「そしてセックスしたい」と言った。 新聞の予報では今日一日やみそうにない。 ニューロンが降ったその日、僕らは午後の間家の中でずっとマカロ ニサラダを食べながらセックスをしていた。外では親の目をぬすん で飛び出した子供たちがみんなひっくりかえって手足をバタバタさ せていた。 ---------------------------- [自由詩]彼女という人は/Monk[2005年9月18日20時36分] 彼女という人は 詩人とかそういう類の人みたいで ときどき僕を近所のファミレスに呼び出しては 伏目勝ちにちょっと小難しいことをしゃべり 左手に持ったフォークでグリーンサラダにやつあたりします。 僕にはメタファーなんて言われてもよくわからないので 目の前のあわれな野菜たちに同情していることが多いのですが。 ある日曜日には彼女はベージュのカーディガンを着ていて 「あたしはもう、あたし自身のことしか書きたくないの」と言いました。 「それでいいと思うよ」と僕は言いました。 次の日曜日には彼女は真っ赤なくちべにをつけていて 「あたしはもう、恋愛のことしか書きたくないの」と言いました。 「それでいいと思うよ」と僕は言いました。 その次の週とさらに次の週には彼女の呼び出しはありませんでした。 僕は返してほしい本があったので何度か電話してみたのですが 一度もその電話はつながることがなく、少し残念な気もしましたが 彼女にもいろいろあるんだろうな、と思いました。 雨降りの日曜日 彼女はいつもまとめている髪をすっかりほどいてしまい 「あたしはもう、何も書きたくないの」と言いました。 僕には何も言えませんでした。 彼女の左手のフォークにはいつもの勢いもなくて レタスやトマトもなんだか気の抜けたように見えました。 そしてその週はずっとゆるやかな雨が続きました。 久しぶりに晴れの日曜日 彼女はおそろしく短いスカートをはいていて 「あたしはもう、食欲と性欲と睡眠欲のことしか書きたくないの」と言いました。 僕はびっくりしてしまい、また何も言えませんでした。 ともかく彼女は眉間にしわを寄せてまた小難しいことをしゃべりながら 元気よくその左手のフォークで野菜たちを虐殺しています。 彼女という人は 詩人とかそういう類の人みたいで それはそれでいろいろあるんだろうな、と思うのです。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]詩のおっさんのこと/Monk[2005年9月19日23時15分] 詩のおっさんは夕暮れ帰り道を歩いていると後ろからちゃりんこで 追い抜いていく。そしてしばらく進んでから「追い抜いたらあかん がな」とひとりつぶやくのだが再び戻ってくるほど律儀ではない。 詩のおっさんは「なるほどなぁ」と言いながらよくこぶしを手のひ らにポンっとやる。けれどもそれほど感心しているわけではなくて、 実はそのポンっとやるポーズをしたいがために「なるほどなぁ」と 言っているらしい。「このポーズがな、ええねん」とおっさんは言 いながらまたポンっとやった。 詩のおっさんはコインランドリーで乾燥機のグルグルを眺めてると よく隣に座ってくる。いつもバームクーヘンを片手に現れ「おおよ そ世の中はバームクーヘンみたいなもんやな」とつぶやきながらそ の真ん中の穴から瞳をのぞかせる。けっこうつぶらな瞳をしている。 詩のおっさんは電車に乗るとつり革をギュッと握ったり下にグィと ひっぱったり隣り合ったつり革のわっかの部分をカツンカツンとぶ つけている。そして黙々と胸ポケットから取り出した手帳に何かを 書いている。たまに中吊り広告の端っこをひっぱることもあるがそ れについては特に手帳には書かない。 詩のおっさんは地下鉄大江戸線でよく見かける。地下鉄大江戸線森 下駅の下りエスカレーターでよく見かける。その長いエスカレー ターでおっさんはいつも逆向き、つまり上る方向を向いている。気 になって振り返るのだが何かがそこにあった試しはなくて、おっさ んはいつも「あほが見よった」という感じで背中をひくひくふるわ せている。 詩のおっさんは本屋で本棚を眺めていると近くに寄ってきてごちゃ ごちゃとつぶやく。先週会ったときは「ハム大虐殺」と言っていた。 昨日は「ビジネスマン・ライク・ア・バージン」と言っていた。 きっと意味なんかないんだろうと思う。 詩のおっさんとこの間ケーキ屋の前で会ったときにおっさんは「娘 にケーキでも買っていってやりたいもんやね」と言っていた。 「買っていかないんですか?」とおそるおそる聞いたのだけど、 おっさんはいまさら何を言うとんねんみたいな顔をして「あほか。 どこに娘がおんねん」と言った。僕はひどく納得がいかなかったの だが同時に恥ずかしくなってそのままケーキ屋に逃げ込んだ。 詩のおっさんは晴れた日にプラモデルを作りたがる。晴れれば晴れ るほどその欲求は強くなるらしい。特に好きなのは城のプラモデル で中でも姫路城がお気に入りであり、この間は姫路城の写真まで見 せてもらった。しかしおっさんは一度もプラモデルを作ったことが ない。どうしてか聞いたら「そんなもん、作ってもうたら終わりや がな」と言ってまた姫路城の写真を見ながらお昼のクリームパンを 食べていた。 詩のおっさんは腰が痛いらしくベンチに座り「これをな、ここに置 いてやな」と言いながら自分の腰の部分をベンチに置くジェス チャーをする。そして「パンこねる棒あるやろ。あれでな」と言い ながらさっき置いた自分の腰を棒で伸ばすジェスチャーをする。一 通り終えると「まぁそのうちやな、そのうち」と席を立ち、置いた 腰を元の腰の位置に戻すジェスチャーをする。 詩のおっさんは朝、歯を磨いていると後ろでいろいろ話をする。今 朝は1998年の日本ハムファイターズのクリーンナップについての話 をしていた。寝起きで頭がぼーっとしているし、そもそも1998年の 日本ハムファイターズのクリーンナップについて何の興味もないの だが、話が終わるまで歯磨きを続けてしまい、いつも話と歯磨きは 同時に終わる。 詩のおっさんは夜中に猫にちょっかいをだす。寝ようかなと思った 途端、猫が騒ぎ出すとそれはおっさんの仕業だ。その現場を見たこ とは一度もないが、おっさんの仕業であることは明らかだった。一 言注意しようと思うのだが見つけられたためしがなく、いつもその まま夜の散歩を15分ほどして部屋に戻ると寝てしまう。 詩のおっさんは回転寿司屋で鯖ばっかり食べる。回っているのを食 べ尽くすと寿司屋に鯖、鯖と連呼する。おかげで僕も鯖が食べたい のだが気がひけてしまいイカや貝柱など鯖以外のものを食べざるを 得ない。おっさんが「魚はな、鯖と鯖以外やねん」と言ってるのを 聞いてとても腹が立ったのだが、すでに目の前には鯖以外の皿が積 み重なりお腹がいっぱいになって店を出た。 詩のおっさんがぶらさげているカバンには少なくともテレビのリモ コン、母乳漏れパット、螺旋型ストロー、カーテンレールの予備、 あと姫路城の写真が入っている。そんなものをいつも持ち歩いてい ることも驚きだが、もっと驚くことに僕はそれらが役に立った場面 を全て見たことがある。 詩のおっさんは僕が学生の頃からずっと詩のおっさんなのだが、昔 は気味が悪くてほとんど近寄ることはなかった。今は声をかけられ れば一応挨拶はするし、この間は突然「いちご狩り行ってきてん」 とおみやげのいちごを1パックもらった。前から思ってたんですが おっさんはいったい何をしてる人なんですか?と聞いたら「そやな、 いちご狩りは冬やな」と言っていた。そして何やら指折り数えて考 えてから「あとカレーをな、食うわ」と言っていた。さっぱりわか らないのでハァとため息をついている僕の横で、おっさんはまだ何 やら指折り数えていた。 詩のおっさんは安物のデジタル腕時計をしている。そして腕時計を 見ながら「もう五時かぁ」などと言って口笛をピィと吹く。特に何 が起こるわけでもなく、しばらくすると「ほれ次、自分の番や」と 言う。しかたなく僕もピィと吹くのだがやっぱり何が起こるわけで もなく黙っていると、おっさんは「あかんなぁ自分」と言って笑う。 詩のおっさんは土曜日の午前中に歯医者の待合室にいる。ソファー に座って週刊誌を開き、読者欄のクロスワードに取りかかる。しば らくして腕時計を確認すると週刊誌をパタンと閉じ、それを持って 受付の窓口に行く。おっさんが週刊誌を受付の人に渡して「今日は 帰るわ」と言うと受付の人は「はい、お大事に」と言う。 詩のおっさんが仕事の終わる時間あたりに電話をしてくる。正直、 僕は仕事でミスをしたばかりで、あと恋人ともケンカ中だったので 遠慮したかったのだが、「うまいもんがあるから来ぃや」と一方的 に切られてしまった。しかたなく駅で合流したおっさんに付いてい く。途中、うまいもんてカレーかなぁなどと考えていたら、そこは 知らないマンションの屋上だった。おっさんはズカズカ入り込み フェンスも乗り越えてしまいタバコをうまそうに吸った。夕暮れ間 近でそこからの風景はまぁそれなりにきれいだった。おっさんは 「どうや」と言ってタバコをさしだし、僕はそれを受け取りながら 「アホですね、おっさん」と言った。おっさんはタバコを踏み消し ながら「アホに合わせたっとんねん」と言い、そのまま夕焼けの中 に飛び込んで消えてしまった。僕は不思議と驚きもせずそのまま夕 暮れのタバコを吸い終わると駅に向かって歩き出した。  * * * 何日かすぎた日の同じく夕暮れ、駅から家に帰る途中で通りがかる 公園のすべり台の上から長ーい影が伸びていた。僕はあの日、ひと つわかってしまった。その影をたどり、すべり台の上の人を指さし てこう言った。「あ、詩のおっさん『ツー』や」 おっさんは相変 わらずでかいカバンをぶらさげており「アホか、人を指さしなや」 と言った。「『ツー』や」と僕が繰り返すとおっさんは悔しかった のか「ツーと違うわ、ボケ」と言った。僕はずいぶんと久しぶりに 大笑いしてしまった。 ---------------------------- [未詩・独白]呪文/Monk[2005年9月27日23時09分] 誤解を解いてはいけない それが誤解であることを知られてはいけない 誤解は誤解のままでなくてはいけない 誰にも打ち明けてはいけない それが誤解であることはあなた以外が知っていてはいけない あなたは抱えて行かなくてはいけない あなたの荷物はあなたが抱えて行かなくてはいけない 他人に渡してはならない 捨ててもいけない それを抱えて行くことが強さだと思ってはいけない 強くなろうとしてはならない 強さを必要としてはならない 荷物を抱えることに強さを必要としてはならない 同時に弱さに甘えてはならない 荷物を抱えることに弱さを理由としてはならない 比較してはいけない 他人と自分を比較してはいけない 自分と本当の自分を比較してはいけない 本当の自分を拠り所にしてはいけない 本当の自分という仮定に甘えてはいけない 理由があってはならない 理由を探してはならない ただ黙々と歩き続けなければいけない 目的地を作ってはいけない 目的地のために歩いてはいけない 死んではならない 生きなければならない ただ平然と生きなければならない どちらかを選択してはいけない 事実として当然生きなくてはならない 呪文を口にしてはいけない せずともあなたと共になければいけない 全ての呪文は過去形に変換されなければならない そして 呪文に力を求めてはならない ---------------------------- [自由詩]山の手/Monk[2005年10月3日2時43分] ショパンね 午後のダージリン 微睡みの中に 小さじ一杯の冒険心? それとも ただの気まぐれ? スコット君(文鳥)に問いかけたら 肩をすくめて ナ・マ・イ・キ わかっているの この微熱の正体 だけれど だけれど、ね 夕暮れね 玄関の床がひんやり つつましやかに 正座 礼 そして テイク・オフ 私の小さな宝石箱 家庭と名の もうあんなに小さくなって 見えないわ トラフィック シグナルいっせいに交差点 100万分の1の確率 上空からさくらんぼ摘み スカートのすそ気にしながら いわゆるクールガイ それともシャイガイ? 瞳と瞳 言葉はいらない それが合図 カシャン 月が綺麗ね シャンパンも悪くないわ あら ひざまくら? 案外、あまえんぼさん ムキになるところもほら 口唇を指で咄嗟に塞ぐ そこから先は、ね 火遊びは限度をわきまえるから楽しいの ホット過ぎるハートは 危険だわ はい 姿勢を正して 正座 礼 またね テイク・オフ 私の小さな玩具箱 悪戯と名の もうあんなに小さくなって 見えないわ 見えないわ ---------------------------- [自由詩]仕事/Monk[2005年10月4日1時24分] ツリーのてっぺんの星を100万個にひとつ、ほんとうに願いがかなうものに取りかえる仕事です。 王子様の先回りをして解毒剤を吹き矢で姫の首筋に突き刺す仕事です。 日々の生活のアクセントとして、48時間のタイムリミットを設定する仕事です。 詩人などろくでもない奴なんだと吹聴して、1杯150円のコーヒーをどうどうと値切る仕事です。 ピーマンぎらいの子供たちに、ハンバーグに仕掛けられたみじん切りピーマンを警告してまわる仕事です。 大きな壷で混ぜられた魔女の秘薬の原料を自慢の味覚で言い当てたなら、たとえカエルになってもかまわない仕事です。 冬の星空を賛美するために自動車の屋根を夜ごとノコギリでひっぺがす仕事です。 ガラスのかけらで育てた花をひとりぐらしのベランダに敷きつめる仕事です。 鳴らない電話と冷めたコーヒーを比較し、その将来性を数値化する仕事です。 1000枚のラブレターを焼き払った炎で新巻ジャケをまるごと一本ホイル焼にする仕事です。 失ってから気づく愛情の大きさを測るための新たな単位を学会に発表する仕事です。 あたたかいスープのお皿をひっくり返そうともくろむ、ねこぜの超能力者と町外れで決闘する仕事です。 ベルトコンベヤーに乗ってやってくる記憶の断片を組み合せ、まだ見ぬ宝のありかを大きな模造紙一面に書き記す仕事です。 血で血を洗う争いの最中ひとり皿を洗いながらふきだす仕事です。 チョウを追いかける少女を追いかける母の不安を追いかけて行き着いた日本海の厳しさを教える仕事です。 三日で終わった日記帳を集めて作った一ヶ月分の日記帳を、夏休み最後の日に小学生に売りつける仕事です。 生まれてからのあらゆる悲しみを使って涙の吸収性抜群の枕を開発する仕事です。 時計を分解してもういなくなった恋人の忘れ物を探しだす仕事です。 スイッチを「押さない」仕事です。 虹のふもとにたどりつくために船員として船の台所でじゃがいもをむきつづける仕事です。 ビルの屋上から飛ばした紙飛行機があのコの家の窓に飛び込むまで監視する仕事です。 夜中にコピー機と語り合い自伝にまとめたものをホッチキスでとめる仕事です。 ゴールネットの裏で湯を沸かし、ゴールキーパーの苦労をねぎらう仕事です。 すみやかに下校しない生徒達を人体模型と二人三脚で追い回す仕事です。 従業員達の見守るなか売れ残ったショートケーキの上を反復横跳びで迅速かつ巧妙にまたぎ飛ぶ仕事です。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]Y/M/Monk[2005年10月16日21時12分] 特に何もない。今日僕があなたに語るべきことは特に何もない。あ なたに語るべきことが何もなくてとても残念だ。明日また語るべき ことがあればそれは残念ではなくなるが、あなたがいったいいつど こでこれを読んでいるのかはわからない。わからないがきっと残念 ではなくなるのだろう。  *** 予定がたくさんつまっている。土曜日も日曜日も平日も、僕たちの 生活はたくさんの予定がつまっている。しなければならない事とし たい事で溢れていて休む暇もない。君は「もっと時間があればいい のに」と言いながら忙しそうに夕飯の準備をしている。僕は本当に しなければならない事と本当にしたい事は何かについて一つ一つ消 去法を用いながら考え、カレンダーを横目にベッドで寝転がってい る。どちらにせよ期間が限られていることについてお互いの認識は 一致していた。だからこそ僕たちは日々の予定を必死に消化し、十 分に堪能し、夜には感想を聞かせ合い、翌日にはもうその日の予定 のことで頭がいっぱいになったのだ。  *** 今すぐに返してほしい、と君は要求する。しかし僕には返すことは できない。すでにそれは使い込まれ消費されてしまった。もうこの 世の中には存在しないのだ。君は繰り返し返却を要求し、僕は繰り 返し返却不能であることを根強く説明する。 もうとっくに君が乗るはずだった列車の時刻は過ぎてしまった。君 は帰るはずだった場所のことを忘れてしまったのだろうか。僕は悩 んだ末にまったく同等とは言えないが新たに作り直すことを決意し、 そのことを君に告げる。君は今すぐに、と言い続ける。僕はその声 を聞きながらゆっくりと元の形を思いだし設計を始める。 僕らの立っていた駅舎はいつのまにか無人となり老朽化が進んでゆ く。時間の流れと目の前の現象がまったく同期していない。  *** 具体的には何もない。ただ僕たち二人が一緒にいるという事実が存 在し、その必然性を裏付けるような事実は存在していない。理由な ど後からいくらでも考えられるものだ。僕たちはただ一緒にいる事 実が必要なのであり、その理由を必要とするのは僕たち二人以外の 誰かなのだ。僕がそう言うと、君は「そうね。わたしもあなたと同 じよ」と言った。 しかし事態は急変した。僕たちは一緒にいる理由が必要になった。 理由がなければ一緒にいることはできなくなってしまった。僕は必 死に理由を考えたがいざとなるとどの理由も僕たちにとって正しい ものだとは思えなかった。僕にはよくわからない、と告げると君は 「そうね。わたしもあなたと同じよ」と言った。そして、そのまま 期限をむかえ、僕たちは別れた。理由がなければ一緒にいることは できなくなってしまったからだ。  *** 僕の物が壊れたので元に戻した。意外に簡単だ。もう一度今度はわ ざと壊してまた元に戻した。やはり簡単だ。「君もやってみればい いのに」と言うとそんなことまったく興味がないわと言って君は眠 る。 眠っている間に君の物を壊しておいた。そしてやっぱりやってごら んよと言ったが君は興味がないばかりで触れようともしない。しか たなく僕は君の物を元に戻そうとするがそれは僕の物とは違ってい っこうに元に戻せない。君はずっと興味がないまま眠って起きる。 壊れてしまった君の物を僕だけが気にしながら大丈夫きっとと言い 続けていた。 最後には僕は僕の物を壊してしまい元に戻すことをしなかった。君 はそれにもやはり興味がなく君は僕と一緒に寝たいようだったが僕 はもうどうすることもできないと思い黙ってその部屋を出ていった。  *** 夜中の間にほとんど埋めてしまうことができた。順調だ。順調に物 事が進むと気分がいい。雨が降らなくてよかった。多少の眠気はあ るが出かける準備を始める。そういう気力がある。荷物も少ない。 残ったものは行きがけに金物店の裏にでも埋めてしまおう。 すでに冬は始まっている。しばらくすれば君は冬の休みに入るだろ う。その間君が退屈することはないだろう。君はもっと手を汚すべ きだ。土を掘り、残らず見つけることができたならつなぎ合わせて みればいい。僕が興味を失ったものに君は興味をもてばいい。僕は その場所にいないが君は興味をもてばいい。  *** 君は毎日のように昨晩見た夢について僕に聞かせる。夢の内容は基 本的に同じで、よく知らない男と性交するという内容だ。日によっ て体位が異なったり、合意であったり、無理矢理であったりするよ うだが常に相手はよく知らない男だということは共通していた。君 は「これは何かセックスに関連することなのかしら?」と聞くので 僕はいつも「それはおそらくセックスに関連しているだろう」と答 える。すると君は「ごめんなさい。相手があなただったら問題ない のに」と謝る。僕は「それが誰であっても問題はない」と答える。 僕は毎日のように君と性交する。夢の中に登場した様々な体位を試 し、時には優しく、時には強引に君の身体を抱く。君は十分にオル ガスムスに達することができたし、僕は問題なく射精をした。これ ほど満足のいく性交を重ねられることは極めて希で、とても素敵な ことに違いなかった。問題などまったくない、と僕は思った。  *** 僕のものは僕のものだから君のものは君のものだ。僕の考えたこと は僕のものだから君の考えたことは君のものだ。僕のものがほしけ れば1つあげるから君のものも1つくれ。僕のものを君が持ってい るのが、いい。君のものを僕が持っているのが、いい。だからいち いちこんな面倒なことをしている。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評ギルド】『沈黙』 早瀬ミキヲ/Monk[2005年11月13日15時54分] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=45389 始まりはなかったわけだが、終わりもなかった。終わりこそないの ではないか。「沈黙」は文章の形式でほとんどを見せてもらってい ることになる。最初は三行、次四行、最後が五行。増えていって分 割されていく。これが枝のようなものとイメージがマッチしていく のであり、そうしたらどこまでも分割していくのではなかったか。 文字単位にマックス分けると十八行になるのだが、音声分割もして もっともっと行って、音声の素因子?って勝手に言葉を作るが物理 学でいえば個体から分子へ、分子から原子へみたいな行く末を感じ るのだった。原子まで行けば物理学では一応おしまいであるが、も ともとこの精神の枝のようなものが物理世界のルールに則るとも思 えないので分ければどこまでも分かれていくのだ。物理というより 数学的だ。 終わりについて言及しないのは終わりを示唆しているともとれる。 彼の精神の枝のようなものは五分割まで到達した時点であとは停滞 しているのか所在不明となった。遺書のようにも思える。この場合 の死というのは分割の限界であるが、数学的な分割限界ではなく精 神の枝のようなものの上に「立っている」限界だ。精神の枝のよう なものは分割されれば徐々に強度が弱くなっていき、立てる場所と しても徐々に不安定になってゆく。そしてここから先は二つのケー スがある。一つは立っている本人は分割されず、彼の持つ(精神的) 重力を枝が支えられなくなる、そして落下。さようなら。もう一つ は立っている本人自体も等比分割されてゆくが「本人」という個を 保てなくなるほどの分割限界があるということ。ハンバーグという 個体も切って切って切りまくるとただの肉片でしかなく、肉片&エ ビフライなどというメニューはファミレスにはない。我々はただの 肉片をハンバーグディナーとは見なせないのだ。よって立っている 本人という個が崩壊し、存在するが存在しない、さようならの状態 となる。 どちらにせよ彼の行く末はない。このまま先に進んでいたとしたら すでに消えてしまっているだろうし、停滞しているのであれば彼は ここから先にも後にも動けない。後にも動けないだろう。精神の枝 のようなものは後戻りを許しそうにない。 文章の形式でこれを表しているのであってなかなか良作だと思うが、 そもそもこの作品は形式と心中するしかない作品であり、いまいち ピンとこない人にとっては「なんとなくたどたどしい感じ?」くら いの精神の枝のご様子が伺えるのみであって、あまりおもしろい作 品でもないだろう。この作中では精神の枝と言っているが、これは 八王子の隅っこでも良くて、単にスタート地点が精神か八王子かの 違いしかない。 八王子の 隅っこのような ところに 立っている だとしても形式としての整合性は取れており、このずっとさきに分 割したさきに精神の枝のようなものが登場してくることになるの だった。でもそんな手前から書かなくてもまったく問題ない。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評ギルド】『叫びと沈黙』 安部行人/Monk[2005年11月13日16時28分] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=42417 特にコメントすることがなかった。それがこの「叫びと沈黙」の弱 点ではないか。叫びと沈黙という相反するものを並べてそれぞれが 同一であると言う。叫びは沈黙によって生まれ、沈黙は叫びによっ て生まれる。お互いの果たす役割は同一であり、故に叫びと沈黙は 同一なのだという話だった。類似として昼と夜、生と死が挙げられ、 これらは叫びと沈黙が同一だよということの説明に用いられている。 言っていることはこれで以上ではないか。 最初から最後まで叫びと沈黙の同一性の話をしていて退屈になって しまった。僕たちはこういう相反するものが実は同一である、とい う話をすでにたくさん知っているし、それの真偽はよくわからない が、というよりその日の気分で真でもあり偽でもあり、この手の話 で「なるほど、違うものだと思っていたものが実は同じだったん だ!」と感動することはあまりない。情報は流通しすぎてしまった。 愛するが故に憎み、憎むが故に愛するような話が典型という座席を すっかり勝ち取ってしまった。 そしてもう少しひねくれた大人になると、愛と憎しみが同じなんだ、 という話を聞いてもそれは詭弁だろと思う。違うもんは違うだろと。 なんか流行が一回りしてしまった感じであり、再びレトロブーム到 来みたいなところだ。お話として聞かされる分にはそれくらい冷静 に処理される。 作者の気持ちとしてはふとそういう叫びと沈黙の同一性を身に感じ て記した作品なのかもしれない。ただそのふと身に感じたものが文 章を介して読者に伝わることはなかなか困難なことだ。少なくとも 「なぜならば」という説明では知ることはできても、同じように身 に感じることはできない。「叫びと沈黙」という作品は説明の域を 出ていないと思う。どうすればもっと感じさせることが出来るかと いうといくつか方法があるのかもしれないが、読者を話中に引き込 むのが手早い。作者がふと身に感じた状況と仮想的にでも同じ立場 に読者を置くことだ。そのためには、それなりのお膳立てと作品と しての魅力が要る。ひきこむためのものが。 詩でそれをやってほしい。散文詩を書けということではなく、むし ろ散文以外でやってほしい。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評ギルド】『破滅に向かうピース』 リョウ/Monk[2005年11月13日18時26分] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=45210 世直しヒーローって言葉が、洋画見てたらそこだけ直訳かよ、みた いな感じがした。違うんじゃないか?書き表したかったイメージと マッチしきれてないんじゃないか?世直しって来た瞬間に、僕は金 さん?遠山の?と思ったわけだ。 全体のトーンもかっこよさが足りないというか、LOCK STOCK & TWO SMOKING BARRELSをやりたいのにロックマンになってるというか、 善良に厭世的になるのは無理があるというか、コミカルロックとし ては笑いが足らないというか、ギャハハとは笑えるところはない。 ふむふむというところはあるが。 > それでも今日だって破滅へ向かうのです というのが大体全体の雰囲気を表している。ですます調でやはりあ る程度善良コミカル少しシニカル、というところだ。なので政治家 を撃ち殺そうがブサイクな女の子とセックスしてむかついて寝てる ところにポテトチップを放り込んでガムテープで塞ごうが、ジョー クだよジョークと街をバイクで滑走する感じ?バイクはハーレーな んかじゃなくホンダ・タクト?ともあれセックスとピストルとドラ イフルーツ的な(なんだそれは?いやわかるだろ)文章として見たと きにアーシーさと疾走感が足らない。もしくはギャハハ笑いを挟む 場所が出てこないのが残念だ。 この行間をたくさんあけてるところで一つ一つが切れてオムニバス ということか。それぞれが言ってることの関連があまりないから。 特に「泣けもしないし」から始まる連がちょい変。そこまでだと世 直しヒーローなんか実はいないんだーっつう結末を予期してしまう のだが、この連だけは現在進行形の世直しヒーローの話だ。その ヒーローは「僕」とは違う。「僕」はヒーローになれないんだろう。 くらいやがれ!は誰が言ってるのんだろう。 なので一つ一つ切れてオムニバスなのかと思った。もしくは一つの テーマについて日々気づいたことを書き留めたメモのまとめ、とか。 主格が「僕」だったり「俺」だったりするし、口調も違うし。でも オムニバスってバラバラをつなげればいいってもんじゃないからも うちょいオムニバスにする意図をしたたかに書いたほうがわかりや すい。いやこれは一つの話なんだってことならたいそう捕らえどこ ろがない。 いろいろ書いたのだが、二の線でも三の線でもいいからもっともっ とカッコヨイのがいいな。カッコヨイは酷い!とか尋常じゃねぇ! でもいい。ついてこない奴は置いていくぜ、くらいの勢いがほしい わけで、メッセージソングの心配りみたいなのはいらんのでは。読 者に先行リードを許してはいけない。 あんまり関係ないが「俺にカレーを喰わせろ!」はかなりロックだ。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評ギルド】『サンドウィッチ』大覚アキラ/Monk[2005年11月23日23時27分] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=54978 『淫猥ナース2〜深夜病棟二十四時〜』をレンタルする上で『風と 共に去りぬ』と『博士の異常な愛情』の間に挟んでそっと差し出す 大和撫子の振る舞いを描いている作品である「サンドウィッチ」に ついてだが、本当にそういう作品だと思ったら大間違いだ。全然違 うから。この作品でサンドするという校医は、行為はそんな照れ隠 しの所業ではなく、一種の安心感を得るための校医、いや行為。し つこいな校医。 つまりたとえランチが安っぽいとは言え、我々は何も考えずそれを 受け入れればランチは腹を満たし、平凡なランチこそが幸せ、何も ないことが幸せなのよと言っておしまいにしてしまえる、きっと温 かい家庭を築いていける。問題はないよ。「問題はないよ」と改め て言うまでもないくらい問題がないまま通過してしまえばよい。し かしサラダのドレッシングが精液の色だとか考えてしまうものだか ら、挙げ句ひび割れた便器のことまでランチタイムに思い浮かべる はめになってしまい、平穏な生活は脅かされ始めてしまった。ひび 割れた便器というのはイカす想像だ。マイナス方向へきっちり向い ていてイカす。便器という一つの安心感を求める存在に対して「ひ び」という安心を脅かす亀裂を表現することで僕たちの安心感は一 瞬にして霧散してしまう。話を戻そう。 この精液ドレッシング発想はわざとだ。わざと嫌な思いをしている よこの人。人々かもしれない。ひとりで手軽に出来るマゾっ娘プレ イとも言える。あなたの豊かな想像力一つで穏やかな午後のひとと きを、カビ臭い施錠された「な、なんだこの器具は!」と叫んでし まうような地下室物語へと変えてしまうことが出来る。ただしバラ ンスが重要だ。プラスとマイナスの、普通と違和感のバランスが。 これをうまく保つことを話者は無意識に望んでいるのであり、平凡 な生活の幸せを諸手を挙げて受け入れることは逆に不安なのだった。 うまく書いている。 わざとだ、と書いたがいちいち気にしてバランスを保っているわけ ではなく、癖というか自然に身に付いた処世術のようなもので俺自 身も同じようなバランスの取り方をするのでよくわかる、共感した! 感動はしない! 嘔吐する、の連が一つの見せ場だ。女子高生から人妻までの一気通 貫ねらいの捨て牌は「意味」としての語呂が良い。言葉の力は普通 だがあえてここは伏線だと踏む。つまりは最後のウサギのぬいぐる みが素晴らしいということだ。これはすごくいい。乙女の恥じらい からノスタルジーまで包含する一方で、ぬいぐるみのくせにお肌つ るつる。というか包含とかどうでもいい。お肌つるつるのウサギの ぬいぐるみがいいよ、ヘンテコにキマっている。そしてここに至る までの女子高生〜人妻がヘンテコではないので目立つ。ひとつのテ クニック。 逆に最後の「食えたもんじゃねえな」はなんか違うと思うが。ここ だけ他人のふりみたいで「あれ、今までノってたのにいきなり素か よ」という裏切りじゃないのか。つーことは最初から、終わりで素 に返るつもりだったのか。一行目から直前の行まで全部フリ?ひと りノリツッコミ?と俺まで素に返って冷静に考えてしまったよ。そ れは不幸だと思った。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]廃棄文章 #01/Monk[2005年11月23日23時43分] (1) 予兆 パソコンがどうもいつもと違う音、カラカラカラと変な音を立てていたら ・パソコンの寿命が間近 ・良くないことの前兆 ・中のハムスターが暴れている のどれか。ハムスターのエサくらいちゃんとあげなさい。 そして数日後、気が付いたら変な音もやんでたーってことありますね。 でもなんで?それは ・パソコンがもちなおした ・良くないことは回避された ・中のハムスターが、 ---------- (2) グラタン不足 グラタン不足である。 既製品にしばられ、いつしか自由を奪われ、空を失った鳥のごとく。 グラタン不足なのだ。 たまの日曜日にグラタン皿を棚から取り出し、 ホワイトソースを作りあげ、 具に多少の工夫を施し、 ときには行き過ぎた素人の工夫で台無しとなりつつも、 オーブンで焼き上げ、 その表面の焦げ目を評価する、 その過程が君たちがかつて持っていた翼だ。 ---------- (3) ありきたりなドラマ 彼女と喧嘩。 走り出す彼女を追う。外はどしゃぶり。 待てよ!叫んでも止まらない。 彼女は踏切を渡り、僕は渡れない。 二人を遮断する電車。 警笛が鳴っている間、僕はうずくまる。 電車が通り過ぎる。 きっと彼女はもういない。 警笛が鳴り止み、力なく顔をあげる。 ほら、もういない いや・・・いる。 しかも二人いる! どうなってんだ! 駆け寄る僕に二人がかりの ツープラトンスープレックス。 仰向けに倒れた僕をのぞき込む顔と顔。 双子なの おどろかせようと思って まったく 彼女には振りまわされてばかりだ。 ああ、これからは彼女たち、か。 笑いがこみ上げる。 どしゃぶりの中に響く。 声と声。 頭血。 ---------- (4) 僕のピーチパイ ああ、泣かないで 僕のハチミツ 緑に染まった髪の毛だってとてもかわいいよ 僕のピーチパイ さあ、笑ってごらん とっておきの手品を見せてあげるから 僕のテントウムシ 今日は一日中手のひらをくすぐりあいっこしよう ああ、 僕の野イチゴ 僕の子ヤギ 僕のシュガービーン 僕のハンバーグ&エビフライ 僕の耳かきの綿毛ちゃん 僕のスプリットフィンガーファーストボールちゃん 僕の木工用ボンドちゃん 僕のゆるゆるズボンちゃん さあ、おいで おでこにラクガキしてあげるから ---------- (5) 食べれます スナック菓子の袋の中に乾燥剤が入っていて 「食べれません」と書いてある。 そして思うのだが。 乾燥剤の袋の中にスナック菓子が入っていて 「食べれます」と書いてあるとして。 君は食べられるか。 食堂でしょうが焼き定食を頼んだら皿に 「食用」と書いてあったら君は食べられるか。 そうか、よくわかった。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]廃棄文章 #02/Monk[2005年11月29日22時52分] (6) 引っ越し 「俺、引っ越すんだ」 「え・・・急に・・・、どーして今まで黙ってたのよ!」 「いや、なんかか、言いづらくってさ」 「バカっ、そんな大事なこと、ギリギリまで黙ってるなんて」 「ごめんな」 「・・・で、いつ引っ越すのよ」 「明日の昼には」 「そ、そんな急に!・・・で、どこに行くのよ」 「えーと、アメリカ」 「ア、アメリカ!あの、アメリカザリガニのアメリカ!?」 「え、ま、まぁそうだけど」 「あの、ミス・アメリカのアメリカ!?」 「だ、誰それ?」 「あの、街角で肩と肩がぶつかれば互いに拳銃を抜きそれが決闘の合図、のアメリカ!?」 「いや、そんなことはないと思うけど」 「あの、ヨネスケが『となりの晩ごはん』でピザを、」 「きっと違うから」 「そっか・・・、アメリカかぁ」 「うん」 「ついにメジャーかぁ」 「や・・・」 「先進国の仲間入りかぁ」 「・・・」 「スシ・バーかぁ」 「もう、行くわ」 「アメリカザリガニかぁ」 ---------- (7) 引っ越し #02 「俺、引っ越すんだ」 「ああ、すぐ近くなんでしょ。転校もしなくて。」 「はえーよ」 ---------- (8) 数学 やめろよ! もし、オレがあいつのことを好きだとして、 それならばオレはちゃんと自分であいつに 好きだ!って言う だから余計なことをするな わかったか オレとあいつのことはほっといてくれ <問1> (10点)  このとき、「あいつ」が廊下の角でこっそりと  このやりとりを聞いている確率を求めなさい。 ---------- (9) 詩 #01 「まぜるな」 なわとび なわとび 逆から読めば さぁビトワナ選手、2回目の施技の得点は 10点 10点 9点 10点 誰? 9点 9点 こらこら 質問をまぜるな ---------- (10) エレベーターアワー エレベーターの中で二人になったときよくしていること。 俺『お前、オレの頭の中を読んでいるな!』 彼『ほぉ、わかるのか』 俺『いや、初めてだ。同類に出会ったのは』 彼『なるほどな。いや、はははは』 俺『なんだ?なぜ笑う』 彼『これは失敬。あまりにも今の君の想像力が豊かだったのでな』 俺『ちっ』 彼『しかし、それはあながち間違いというわけでもない』 俺『なに!?』 彼『そうだ、この力を悪用しようとしている奴だっているということだ』 俺『!!』 彼『まぁ、君はあまりにも無防備だがね』 俺『・・・』 彼『さて、私なら君の力になれるかもしれないがどうするね?』 俺『・・・・・・』 チーン 彼『到着だ。私についてくるかどうかは君におまかせするよ』 俺『ま、待て!』 彼『ははははは』 ってなことになるかもしれないので、テレパシーを送り続けています。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]廃棄文章 #03/Monk[2005年12月7日20時25分] (11) バイオハザード:真エンディング ドッキリだったのに・・・  倒れたゾンビのマスクを取ると  ほろ酔い気味の友人達が! ---------- (12) 密着スーパーマリオ キノコ出現 パワーアップ!  ギシッ ギシ グィシィ!  ブチッ! ブチ ブチブチ!! 成長期のみんな 一気に成長するのはやめようね 骨が一風変わった音をたてたり、筋肉がぶちきれたりしちゃうぞぉ ---------- (13) Web日記が書けないときの方法 みなさん、Webで日記書いてますか? 毎日、赤裸々に現役女子大生の実態を綴っていますか? そうですか。 でも毎日書くの、大変ですよね。 今日は書きたくないなー、でも書かないとせっかく読んでもらってるのに・・・ 書くことない日だってありますよね。 でも「書くことありません」とは書きたくない・・・ よろしい。 伝授しましょう。 ■日記の逃げ方 1) データがふっとんだことにする (かわいく)    2時間かけて「ソフォクレスにおける喜劇的観点」を書いたんですが  登録直前にIEがかたまっちゃいました。えーん。今日は寝ます・・・ 2) 消したことにする (ちょっとシリアスに)    今日の日記は消しました。  日記に書いても何かが解決するわけではないですからね。  すいません。 3) いきなり会員制にする (ビジネスライクに)  ログインID: [       ]  パスワード : [       ] [ログイン] 4) 金で解決する (さらにビジネスライクに)  バイトを雇って書いてもらいましょう。  バイト君の日記で構いません。 5) あぶりだしにする  みんな面倒なので本当にあぶったりしないから大丈夫。 6) バカには見えないことにする  プライドが邪魔して誰も文句が言えません。 7) 文字化けしてみる  迪萢審憐≠÷凍楳魘皃緋・  吏臑疋遺・覽膸蠕蘖C丗世y裘蓉/?p処・  屮欒n"蛟準・・・A  アハハ  る"烙・Aード蒼"聡Ou5旧嘯・oょ"・  ・楳÷・B燥躙噫轟枕ヰ・秤熄Kv鏡  閹圏・なー・了逅嬶走・_ジり豹c・Aクトs÷・  嘘 8) サーバのせいにする  こんな感じ  http://homepage1.nifty.com/saruhobo/image/up/error.jpg 9) 日記が書けない時の方法を書く  ぉ ---------- (14) 詩 #02 バスが走る 君の町へと 君が洗濯物を干す町へと 君が油絵を描く町へと バス停からとても遠い 最初はたどりつけなかった かならず犬がほえた パン屋の二軒隣、君の家へと 普段着の君を思う とてもひどい格好なんだ いますぐその横で 僕は枝豆をゆでてあげたい バスが走る 土煙をあげて バスが走る 向かい風を受けて 君の町へと 君の横顔の町へと バスが走る 僕の 僕の鞄だけをのせて バスが走る 待ってくれ バス ---------- (15) 懐かしいお話 「世界が101匹ワンちゃんの村だったら」    世界のなかで101匹中101匹が犬です。    おしまい ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評ギルド】 『愛の22』 瓜田タカヤ/Monk[2005年12月11日4時04分] http://www.po-m.com/forum/showdoc.php?did=25775 「ビラビラの花内部に侵入しました、館長!」 「なにっ、浣腸だと!?」 燃えた。批評でありながらこの「愛の22」に対抗すべく右膝備え 付けのデスブリンガー'2003を発動させようかと思った。今でも 迷っている。家で待っている子供たちのことを考えれば至極まっと うにこの「愛の22」を各段落毎に評価し、一旦分解したのち再度 の構成、そしてマクロからミクロへ、非常に宇宙的ですねこれはか つて渡辺美里が「ムーンライトダンス」で表現した宇宙的であると 同時に夕暮れ帰り道でもある、つまりは一方の写像を一方の実態に 重ね合わせることによる並行存在的なアプローチが見られ、ちりば められたアイテム関しては懐かしくもありTシャツに描かれるポッ プさも兼ね備えている、いわゆるモノシリック(一枚岩)では味わえ ないマイクロカーネルの楽しさを改めて認識する作品だった。とい う文章を続けていくべきだろうが「愛の22」はわたくしの小宇宙 (コスモ)を揺り動かすので拳を交え、あえて戦ってみたい、それが 男というものだという気持ちである。たとえそれが批評としてふさ わしくなく、原稿料をカットされるとしても、だ。(そもそもギル ドの給金はミスドカードで支払われるのでファンシーお弁当箱をい くらもらってもそこに詰める米が!米がない。ひどい!) しかし君たちは謎を知りたがる。「愛の22」にちりばめられたト リックを解き明かす次号解決編への期待がある。犯人はおそらくい ないであろうことは薄々わかってはいるだろうが、それでも散りば められた愛の欠片をつなぎ止めて手に触れてみたいと考えるだろう。 わかった、いいだろう、僕の子供のことは忘れてくれ。ハッピー ターン(おせんべい)をとりあえず舐めるところから始める僕の子供 のことは忘れてくれ。これから愛に触れてみようと思う。散りばめ られた愛の欠片をつなぎ止めるため、月の裏側へ堕天使の唄を奏で ながら、湖面に揺らめく光の記憶を集めにゆこう。お尻かゆい。 ビラビラの花内部は子宮、コビトタクシー模様は精子。失われてし まった自殺者の頭脳はふたたび花の内部で新たな生命肉体と結合す る。生命の愛だ。輪廻転生だ。無念の自殺者と妊婦の間には語るに 尽くせないドラマがあったのだった。 丘の滑り台から流れた雪解け水の春への愛は受け皿もなくただ流れ てしまった。誰も受け入れずに流れるだけ。しかし洪水にはならな い。ただ存在する愛。誰の興味にも止まらない。 恋人たちはカマキリの生殖器の話をした。淡々と。文字放送のよう に。これが彼らの所有する愛の秘密だ。どうしてカマキリの生殖器 の話ばかりのするのですか?尋ねた人々に対して彼らは逆になぜそ んなことを聞くのだろうと思うのだった。 再びビラビラの花びらはもうエロい。雪の結晶越しだとかもう頬を 染めてしまえ。君たちは頬を。 ねえカチョウサン! うるさいよ、君は。おまえは本当にカタカナでしゃべる奴だ。こう いうのは知っているぞ。あたかも人が発した温度のある言葉のふり をして精巧に作られた電子ヴォイスで、うちの上司の使っている留 守番電話サービスはかける度に腹がたつ。リカちゃん電話か!マタ オデンワクダサイネー。しない、二度としない。もっと。愛の。こ もった。暖かい。お母さんのような。「わたしが握りました」とい うおにぎりのような。やはり既製品か!違うのだ。もっと。ほら、 わかるだろ? イイカラ、カイナタイヨ、オナカイタイヨ 愛はどこにあるのかわからない。ピラニアTシャツを着たままひき こもりたい。外に出ても上を見ても下を見てもほしいものはない。 犬が鳴いたところでそれが本物かどうか疑うことしかできない。 肉厚の人食い花。ひどい彩色だ。間違っても店頭で売れることはな い。が。特定の人間を惹く絡め取る悪魔の彩色だ。たとえ僕の母親 を奪った、僕の愛を奪ったのがその花だとしても憎むことはないだ ろう。むしろ一緒に飲み込んでしまってくれ。だってここにはない のだ。愛は。 ねえオニイサン! ってまたおまえか。俺は課長だ。中間管理職だ。それなりに昔は やったもんだ。昔は、な。今度は思い出話か。レトロノスタルジー か。まぁ懐かしいがな。ストリップ小屋とか知らんだろう、君らは。 よく行ったものだ。なぜか出口のところで手品セットやスプリング が階段降りるヤツ、なんつったっけあれ、そうトム・ボーイ、少年 トムだよ。あれ売ってるんだがな出口のところで。ストリップ小屋 来て、帰りに子供の土産買えってことなのか知らないが。初期のデ ザインに戻るカルピスってのもすごいな。どんな仕掛けだい?教え てクレよ、水買うから。 しかし僕はもうすでに母に追いつくことはできなかった。ずっと遠 くに離れてしまった。距離のことを考えると悲しくなってしまう。 愛はそんなところにあった。距離は遠く離れてしまってあとは忘れ てしまうだけのそんな位置に愛はあった。どんどん忘れていくよ。 すでに新しい身体を手に入れて性能は格段によくなったがもう昔の 僕ではなくなったよ。いらないものはどんどん忘れていくよ。いら ないのだろうか。 ねえそこのニイサン! いや、いらない。それはいらない。母さん、次々と新たなセックス 産業が僕を塗って塗って塗ってゆくよ。大量のニシン風呂の中の女 たちに欲情していくよ。ニシンの躍動にも。この間、接待で行った んだ。金持ちの考えることは本当にわからない。あいつらはより高 性能な身体を手に入れ、常に僕たち一般人には理解し得ないロジッ クを生み出しては「どうかね?」などと半笑いでなでつけるための ヒゲをたずさえやがっていらっしゃる。 閑話休題 結婚しました 恋をして結婚した。恋は愛になった。ハマチはブリになった。妻は この話をすると少し怒り、子供たちは魚をよく食う。小さい頃から 魚を食わせていたのだ。新たな愛はここにあった。僕も妻の内部に まだまだキスしたいが今は小鳥ちゃんたちにゆずろう。愛着のキス はしたいときにしたいだけするのが健全だ。僕の愛情は待っている ことができる。少し安心したのだ。帰ってくれば妻はまだそこにい るだろうし、僕はかならずここへ帰ってくるからだ。 母さん、もう忘れましたが母さん。そっちはいかがですか。タバコ はうまいですか。僕はもうすっかり大人になり、セックスを何十回 もしました。 ということで僕は十分楽しんだ。 工夫次第で十数通りの楽しみ方がご家庭で手軽に。 お子様の知育教育にも最適です。 ---------------------------- [未詩・独白]クリスマス即席5編/Monk[2005年12月25日23時43分] (1) ジングルベル ジングルベル ジングルジングルジングルジングル しまった無限ループだ ジングルジングルジングルジングル テープを止めろ はやく ロウロウロウユアボート ロウロウロウユアボート ばか違うそのスイッチじゃ ロウロウロウユアボートジェントリダウンザストリーム メリリメリリメリリメリリメリリメリリリリリリリリリ ももう息が 苦しい 苦しみます 苦しむとき クリスマス! (倍角太字) よしっ解散  * * * (2) 極悪サンタがやってくる 赤子の手をひねりまくり 合成着色料をいれまくり ヤーヤーヤー ほしいもんは好きなだけ言え 言うだけならタダってこった 極悪サンタがやってくる エレベーターで騒ぎまくり 公園のバスケットゴール占領しまくり シットシットシット ドアの鍵はしっかり開けておけ 余計な手間をわずらわせんな 極悪サンタがやってくる カラオケで知らない曲いれまくり チョコついた手で借りた本触りまくり ロデオロデオロデオ よいこのやつらはさっさと寝ろ 明日の朝がゲラゲラ楽しみだ  * * * (3) 今日は一年で一番好きって言える日 だいじょうぶ あたしがゆるすっ ほれ 言ってみ? ほれ なに、タバコ? それが要るんだ なんでもないなんでもない はい、どうぞ や、こっち見て はやく メガネはずすスか うん、かっこいいからはやく ほれ さん、はい  ピーッ  一件、録音しました  * * * (4) 君はだいじなこわれもの 段ボールにつめて運べやしない 心配なんだ 事故 気が気じゃないんだ 事故 君はこがらなおひめさま ポケットに入れるのちょっと無理 中途半端な ハート だけど気ままな ハート 君はいたずらことりちゃん すきなおやつはハンバーグ そりゃないよ ガール そりゃもちろん ガール  * * * (5) ヨーグルトください ゆるゆるしてないやつ 最近のヨーグルト みんなゆるゆるしてる もっとカタイのください 歯ごたえ抜群の バリバリ音のする あごを砕かんとばかりの ハードでコアな クールでシャイな 太くて熱い そんなカタイのください 「そりゃ、ヨーグルトじゃないですぜ、旦那」 そんな! じゃあ、あれは、いったい --------------------------- 12/24 受注請負、路上で書いたもの。 他にもあるがメモしてないので忘れた。 以下の注文で書いた。 *(1) 特になかったので自由に *(2) クリスマスソングっぽく、ということなので *(3) ラブラブな感じで、とか言いやがった *(4) カップルだったので *(5) ヨーグルト。注文からしてクリスマスに関係ない。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評ギルド】 『シャボン玉』 松本卓也/Monk[2006年1月23日21時40分] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=55840 シャボン玉ノスタルジックアワー。 シャボン玉を見て、自分の小さい頃を思い出して、苦笑いみたいな のはたいそうわかりやすい組合せで、これはシャボン玉がなんだか 平和そうで無垢であどけなくてちょいと夢が込められているメルヘ ンなのもご存じかと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。 特に意地悪な文章でもなく、しっかりしてるのでただ読むだけ。 しっかりしてるっていうのも逆に失礼か。読める文章をきちんと書 くのは当たり前かもしれない。一方ではごくありきたりの内容で、 だからこそ迷いなく読めるわけだが、物足りない、もうひと味、と 言うと思ってるだろうがそりゃまぁそうなんだけど、その前に今あ るものを楽しめばいいじゃないか。 まずこの僕という30代の男だが、金がないね。寒いのにろくな上着 も持ってないね。あと仕事クビになった。午前中から意味もなく ほっつき歩いて、「ちっ」と舌打ちしながらブツブツ文句言いなが ら昼飯何食うかな、ラーメン昨日食ったなーそういや家賃振り込ま ないと、とりあえずバイトすっかなーなどと考えている。 ちょい違って人と人とのしがらみに疲れて、路線からはずれて休憩 しつつも、不安を覚える今日この頃かもしれないが、少なくとも子 供のシャボン玉に目を奪われるくらい暇だった。ただね、「奪われ る」というが実際はそんなに受動的なものでもないんじゃないのか。 初めて見るわけでもあるまいし、意思と無関係に奪われることはな い。つまりこの男は奪われようとしているのであって、内部ロジッ クを説明すると「あ、シャボン玉」→「久しぶりだな」→「ちょい と目を奪われてみよう」ということになる。こんな裏の話はミッ キーの中の人と同様に口にすべきことではないのだが、僕もすっか り意地悪な大人になりました、いかがお過ごしでしょうか。 ともあれ目を奪われることに決めたシャボン玉を使って、男は日常 の欠落を埋めてみる。実際には埋まらないが埋めてみることでなん か納得する。固執することでより納得を得ようとする。寂しさとか 孤独を感じるときに外部に発散する人と内部で処理する人がいて、 この男は後者だ。偶然出会ったシャボン玉を使い、彼は彼なりに自 分が失ってしまったものを補えるかをテストし、テストすることで 自分は補おうとしていることを確認する。まだ諦めてない自分を確 認する。内部でそういうロジックを組み立て処理していく。まぁそ こまで明確じゃないにしろ理屈っぽいのは確かで行動の前に一旦考 えてみるタイプだ。書いてて、想像しすぎな気もしてきたから次。 > あの風景に一瞬でも > 僕は居れたのだろうか > 駆られた衝動を苦笑で抑え > 浮いた造型を思い浮かべ シャボン玉に奪われてしまった男が、シャボン玉なんかに!30年間 大事に取っておいたのに!とハンカチの端を噛みしめ・・・じゃなく てだな。 シャボン玉の光景に自分自身を重ねて、衝動に駆られちゃう場面。 この「僕は居れたのだろうか」の問いの答えが、はたしてどんな衝 動に駆られちゃったのかしら彼ったら、の答えだ。 ケースその1) ああ僕にはシャボン玉で遊ぶような子供の頃の思い出はなかった なぁ(鉄仮面をかぶせられ地下牢に監禁されていたので)→今からで もやってみようか→なんてね、やらないからやらないから ケースその2) そういえば最近シャボン玉ってやってないよなぁ→これでも結構昔 は得意で「シャボンの山ちゃん」なんて言われたもんだけどなぁ→ どれ、シャボンの山ちゃん復活といきますか→なんてね、やらない からやらないから ケースその1は過去の自分、その2は今の自分との重ね合わせ。ど ちらもシャボン玉の持つ無垢や純粋さみたいなものを求めていて、 シャボン玉ることによって補おうとしている。ちなみに「今からで もやってみようか」は、そこにいる子供に向かって「おじさんにも やらせてくれないか」でもいい。「ウホッ!いい男・・・」「やらな いか」でもいい。いやダメ。全然ダメ。 ケースその3) たかし・・・→そういや父親らしいことを全然してやらなかったなぁ →たかし・・・→あの子供、それにしても下手くそだな→どれ、ここ はシャボンの山ちゃんが秘技を伝授して→なんてな、いまさらか。 いまさらだな ここまでずっと自分の幼い頃と比べるようなことを書いてきたが、 自分の息子ってのもある。この男は家族もかえりみず仕事をし、そ してクビになり、家も出てきた。このほうがしっくりくるな。「居 れたのだろうか」というのがどこに居れたのだろうかということで あって、今目の前にある子供とその家族、父親は「どれ父さんが見 本を見せてやろう」と言い母親はベンチに腰掛け「あらあら」と 言っているその家族の光景に、男自身も居れたのだろうか。何かを 間違わなければ今もあの場所に居れたのだろうか。 確定づけるようなヒントはないのでどれでもいいんだが、彼を襲っ た衝動はシャボン玉に手を出すことか、子供に声をかけることか、 元我が家に電話することか、ポケットに忍ばせた破滅のスイッチを 押すことなのか。(最後のだけは倍率100倍) しっかしこの衝動すぐに打ち消してしまう彼は煮え切らないという か相も変わらずというか、こういう状況におちいってるのも当然 かーって思えてきて、この男に興味なくなってきたよ。 さて、そろそろ物足りないと言っておくのだが、僕が物足りないの はシャボン玉、郷愁、哀愁、苦笑いのセットが陳腐だからというこ とではない。直接的にはそこではなく、ラストだ。 > ふと風に舞う泡沫が一つ > 目の前をゆらりと横切った この「ゆらり」ってわかったようでいて実はよくわからないだろう。 「ゆらり」は男の動揺でもいいんだが、動揺して終わりになって、 いやそれはそうだけど結局何の話だっけ?と感じる。情けない男の 心境をシャボン玉に見立てましたってことなら、なんて長い形容詞 だと思う。それだって詩なのだが、僕はそれを読んで「知ってる」 と思うだけだ。そういう状況なのは知ってる。僕の知ってることと 作者が知ってることがイコールでは物足りない。 作者の解がほしい。この話をこの先どうするのか、この男をどうす るのかは作者が自由に出来るのだ。どうもしないという選択だって 自由だが、その選択はエンターテイメントとしては苦渋の選択では ないか。ここだけは自分も書き手の立場で物を言うが、どうもしな い選択をする作品が多いので(経験上そう思う)、僕は物足りないと 言い続ける。 突風が吹いてシャボン玉が一斉に破裂してもいいし、子供が黒づく めの男に目の前でさらわれてしまうのでもいい。僕はこの男はもう ダメな奴だと思ってるので、叱咤するような、懲らしめるような外 的要素がほしいと思う。だって自分じゃもう何もしなさそうだろ、 こいつ。そんな展開じゃなくてもいいが、このシャボン玉アワーと いう風景を固定させて「ゆらり」という説明でまとめられると、あ あ知っていたなこの作品は、と思うのだ。 風景を観賞するだけならば僕は僕でお外に出る。 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]廃棄文章 #04/Monk[2006年2月21日20時22分] (16) 漢字テスト 問1.以下の漢字の読み仮名を書きなさい。 ・弄ぶ    (    ) ・辱める   (    ) ・嬲る    (    ) ・乱れ牡丹  (    ) ・凌辱医師  (    ) ・緊縛教師  (    ) ・悶絶地獄剣 (    ) ・変態実験室 (    ) ・薔薇族   (    ) 問2.上記の漢字の読み仮名を声に出して読みなさい。    お願いします。読んで下さい。 ---------- (17) 本日休業のしかた こんな貼り紙を出してみましょう。 「しばらくの間、休業させられています」  #ワケアリです 「朝起きたら、店長がいません・・・」  #心配です 「誠に勝手ながら、今日はそういう気分じゃない」  #勝手です 「トイレがヤバイ」  #店どころじゃありません 「しばらく休業することにした。  理由はあるのだけれど、それはひどく込み入っていて複雑なのだ。  さらにはある種の特別な問題を含んでいる。僕にはうまく説明す  ることはでききそうにないし、なによりこれは僕自身の問題なの  だ。君には本当にわるいと思うのだけれど、今それを放り出して  しまうことはできない。それは"ある"んだ。森の中でふと見かけ  た一匹の猫の死のように、目をそらすことはできてもそれは確実  に"ある"んだ。」  #村上です 「六回裏 コールド負け」  #間に合いませんでした ---------- (18) 新世紀 「逃げちゃダメだ」 「逃げちゃダメだ」 「逃げちゃダメだ」 「逃げちゃダメだ」 「逃げちゃダメだ」 「逃げちゃダメだ」 「逃げちゃダメだ」 「逃げちゃダメだ」 「逃げちゃダメダ!!!」 と泣きながら追いかけてくる碇君はさっきからずっとオニ。 ---------- (19) 帆船模型 「帆船模型」  白い白い帆船模型  頬杖ついた私の耳に  かすかに響く歓声が  ふりかえれば寄せる大波  私もろとも もろく崩れる の「帆船」を「ハンセン」(※1)に読みかえる。 日曜日の午後はいつもそんな感じ。  ※1 ラリアートの人 ---------- (20) およそ3 円周率 = およそ3 別に3.14で計算しろとはまったく思わないのだが。 半径が2の円の面積を求めなさい。 答え 2×2×およそ3(円周率) = およそ12 およそ12だ。しかしちょっと待て。この答えがおよそ11、およそ13だったときにそれは間違いにできるのか。およそじゃないのか。というように生徒は主張すべきだと思うよ。 およそに変わってこんな言い方はどうだろうか。 円周率 = だいたい3 = わりと3 = けっこう3 = とりあえず3 = 3、みたいな = 俺的に3 = 3チック = 今日は3 = 3? = 3(汗) = B組のケイコって3なんだって! (キャー で答えは 12(爆) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]メイド喫茶検討会 議事録 01/Monk[2006年3月5日17時04分] 「なんかTさん、メイド喫茶行ったらしいよ。年末に」  なんですと。 (※Tさんは会社の同僚)    そりゃ、あれですか。ご主人様おかえりなさいませ、のあれですか。   「あーそうらしい。ってあんまり詳しく聞いたわけじゃないんだけど」  というわけで昼飯を食いながらメイド喫茶の話をしていた。僕は行ったこと がないし、多分これからも行くことがなさそうなのだが、世の中では評判じゃ ないですか。いろんな意味で。たしかに目のつけどころはいいじゃないか。メ イドさんが給仕してくれる生活なんてのは庶民には無理じゃないか。あーでも こないだマンションの見取り図を見てたら「メイド室」ってのがあったよ。な んだろうあれは。メイドが詰まっているのだろうか。それとも専属メイドさん の休憩所なんだろうか。謎だ。  ともかくそこがどんな場所でどんなシステムで甘いのかしょっぱいのか世知 辛いのかアットホームなのか知りたい。きっと僕は何か勘違いしているはずだ。 実状を把握しておかなければならん。あのーなんだ、報道にたずさわるものと して、とかそんな理由で。     「しかも高級メイド喫茶らしいよ」    高級! それは何が高級なんですかね。   「完全入れ替え制だとか」    完全、入れ替え!  ってことは一人ずつ入るわけですかね。   「いや、10人とか20人で60分で入れ替えなんだとか」    なんだよ。単なる時間制限ですか。  私はまたてっきり独り占めで、入口から入った瞬間にメイド軍団がずらっと  両脇にならんで「おかえりなさいませ」とこうべを垂れるのかと思ったよ。  で、ちょっとキツ目の(でも実は恥ずかしがり屋の)メイド長が向こうからツ  カツカとタオルを持ってやってくるのかと思ったよ。  (ちなみに彼女は武術にも長けていて、敵が襲ってくると華麗な鞭さばきで   戦います)    というか何が高級なのかね。   「さぁ?内装とかメニューがじゃない?」    ぐ。なんだよ、それじゃ高級喫茶店じゃないか。メイド喫茶としての高級さ  は追求されてないじゃないか。   「あーでも。  コーヒー頼むとコーヒーにミルクと砂糖を入れてかきまわしてくれるらしい」    ほう。それでフーフーもしてくれると。   「いや、それはせんだろう」    中途半端だな。  じゃあ、耳かきをしてくれたり、洋服のボタンが取れていたらつけてくれた  りもせんのか。   「知るか」      店によっていろいろ違うんだろうがおおむねウェイトレスがメイド服である ことがメイド喫茶の条件らしい。例えば「おかえりなさいませ、ご主人様」と いうのは別にあらゆる店での決まり事ではなく、普通にいらっしゃいませの店 もたくさんあるようだ。ほら、やっぱり勘違いしていたじゃないか。  あと男性客はご主人様だが、女性客の場合は「お嬢様」らしい。おーこれも いいですよ。お嬢様はメイドにきつくあたるわけだ。コーヒーを頼んでおいて、 「あら?わたくし紅茶が飲みたいですわ。作り直していらっしゃい。まぁ、何、 その反抗的な目つきは」というやりとりが店内で交わされるわけだ。(交わされ ません)    メイドリフレなるものもある。リフレクソロジーinメイドだ。ここなら耳か きくらいしてくれるかもしれない。美容室もあるようだ。居酒屋、カレー屋、 メイド服を着ていればなんでもいいのか。いいらしいよ。そうか。  あれはないんですかね。メイド・ハウスクリーニング。メイド服で掃除して くれるの。で壷を割っちゃったりして「バ、バカモノ!その壷がいったいいく らすると思っているのだ。お前ごときにはとうてい払える代物ではないのだぞ。」 「もうしわけありませんっ、ご主人様」「ふむ、まぁワシも鬼ではない。どう するかは考えようじゃないか」「ご主人様・・・」「とりあえず、あとで部屋の ほうに来なさい」というやりとりがされるわけだ。されるんだよ。  あとメイド・お手伝いさん。お手伝いさんがメイド服でいろいろ世話をして くれるの。ただのメイドじゃないか。  メイド・看病。病気のときに呼ぶとメイド服姿で看病してくれる。基本的に 医療資格などはないのでやれることは額の濡れタオルを変えたり、お粥を作っ たり、オタオタして逆に倒れたりするくらい。まぁ萌えながら死んでいくのも 悪くないでしょう。      ところで。  一つだけ腑に落ちないことがあるのだが。   「ん?なに」    客にとっては自分がそのメイドのご主人様になるわけだろう?   「そうだな」    となると店内には10人、20人のご主人様がいるわけだよな?   「まぁ、そうだな」    で、1人のメイドが何人かのお客、つまりご主人様の給仕をするわけだよな?   「うむ」    おかしいだろ。  かけもちかよ。  さっきまで自分のことを「ご主人様」言ってたメイドがだよ?  隣の席のどこの馬の骨ともわからん輩に対して同じく「ご主人様」ですか?  しかも目の前で。いったいどういう多夫一妻制だよ。   「妻じゃないだろ」    そもそもだな。  メイド→ご主人様: 奉仕  ご主人様→メイド: 独占欲  これが絶対の構図じゃないのか。  普段はエロバカなご主人様だけどいざとなったら「アリサは俺のメイドだ!」  「ご主人様・・・」みたいな展開がお約束じゃないか。全然まちがっとる。   「俺に言うな」    世の中のご主人様どもはそれでいいのか。満足なのか。  自分のメイドが他の屋敷でまた別の男をご主人様にしていることに満足なのか。  否、断じて否。  これは明らかに偽りだ。  メイド喫茶という名を借りた虚実、虚構の世界、虚構のご主人様!  彼らは実際にはご主人様でもなんでもないくせに、自ら思いこむことでご主  人様を演じようとしているに過ぎない!   「それがメイド喫茶だろ」    ま、そうだな。     【つづく】 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【批評ギルド】『早朝』 桐原 真/Monk[2006年3月7日20時48分] http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=59946 > 右半身と左半身がずれてしまわないように > そっと ちからをこめて歩く 南斗水鳥拳でも喰らわないかぎりそんなことはありえないわけだが、 あんまり嘘っぽくなくて逆にリアルな手応えがある。そういう感覚 を俺も知っている、と思う。ああそんな感じ、ずれないように絶妙 な力加減を保つ術について考えてしまうようなことは全く嘘っぽく ない。 だが > こんなにも > 泣きたいの は、 は嘘っぽいと思う。そういう展開もありだね、とは思うが「ありだ ね」なんて余裕で思えるということは他人事であって、そもそもな んで泣きたいの?お腹痛いの?朝から、てか眠くない?って思うよ うな感性の欠片もない俺が批評しますよ、と。 悪い夢でも見たのかなと思うけど、泣きたくなるくらい悪い夢って いうのは俺は知らなくて、そんな夢見たって話も聞いたことあるけ ど、いやちがう、聞いてはいない。文章で読んだ。そんなことを書 いてる文章は読んだ。だからはっきり言ってしまえば文章にしてし まったために嘘っぽくなってしまった。 これは作者が悪いのではなくて、文章にするとだいたい嘘っぽく なってしまう。事実や現象、状況を書いている分にはそうではない が、考え方、感情を文章にするとそうなってしまう。会って目の前 で話を聞かされるのであればもう少しマシだ。相手の姿、表情、声 の抑揚などが伝わるから、というのが一つ。そして声として伝わる 言葉は聞く側と話す側が概ねイーブンの立場にいる。 イーブンとは。 文章ってのは読む人は余裕ですよ。さぁ読むかねと姿勢作って読む わけだし、一回読んでわからなければもう一回読めばいいし、ひと つひとつじっくり考える時間がある。Aという言葉からBという言葉 へ移る速度、タイミングは読者が自分で選べる。対面ならばそうも いかない。相手のペースで話は進むからね。 だから思考、感情などの形のないものは断定しにくい。「泣きた い」という言葉には人それぞれの「泣きたい」があり、疑えば簡単 に「それは違う。それは『泣きたい』ではない。少なくとも俺と は」と言ってしまうことができる。読み手にはそういう余裕がある。 じゃあなぜ右半身と左半身の話が嘘っぽくないかと言えば、それは 感情や感覚のようでいて実は現象だからだ。事実だからだ。加えて、 表現がおもしろいので読者を引き込んで余裕を奪える。「俺の『右 半身と左半身のずれ方』とはちがう」って言う奴はあんまりいない。 なるほど、よくわかりました。 さっさと作品の中に行けよという感じだが、結局のところ作品に描 かれているのは「俺の世界」であって、別に他者の介入を欲してる ものでもなく、ただ俺の世界がそうであった、そうであったのだと いうことである。感性の世界を描いて、閲覧させる作品だ。俺とし ては閲覧させるという言葉を使うが、ただ在ったものを描きあげた 作品という言い方でもいい。どちらにせよ、読者はそれを閲覧する ところまでできっとその世界に入り込んでいく作品ではない。入り 込んでいった人はかなり強引ですが周りからは意外と信頼されグ ループを引っ張っていく力のあるタイプです、ラッキーカラーは群 青色。 なので最初にも書いたが他人事なので読者は余裕しゃくしゃくなの で、なかなか大変っすわ。長々書いといて大変っすわて。でも大変。 つけいる隙を与えず、かつ離さない。つかずはなれず。 まぁでも意地悪なことをいう読者はほっとく、ってのが健全な回答 かもしれない。(書いててちょっと意地悪な気がしてきた) ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]メイド喫茶検討会 議事録 02/Monk[2006年3月13日21時48分] 議事録 01 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=67405  まぁいい、わかった。  ご主人様→(雇う)→メイド  という構図ではないわけだ。  どちらかと言えば  「甘やかしてくれる存在」=メイドさん、ということだな。  都会の冷風に凍えた流浪の旅人たちが羽を休めに来る場所=メイド喫茶  ということだな。   「だな」    そうだよな。  もし友達3人くらいで行ったら「ご主人様は俺だ!」「何言ってやがる俺様  だ!」なんて喧嘩になっちゃうもんな。   「流浪の旅人は友達3人では行かんと思うが」    もし家族で行ってさ、自分の母親が「何にいたしましょう、お嬢様」て言わ  てるのを目の当たりにしたら大爆笑だよな。   「家族で行くなよ」     ところで前回、女性客は「お嬢様」であると書いたのだが、お屋敷といえばメ イドの他に執事がいますよね。そう、執事喫茶はないのか。  :  : やばい!あった。まだメジャーではなく期間限定だったりするがあった。 もちろんウェイターがタキシードだ。しかもメニューが素晴らしい。  『いつもの』 ハヤシライス、紅茶、ケーキのセット  『何か甘いものを』 好きなケーキと紅茶  『軽いものを』 レモンソーダとBLTサンドのセット そして  『モーツアルトをかけて』   アイスクリームにモーツアルトリキュールをかけたデザート たまらん。 お嬢様はいつもハヤシライス! モーツアルトをかけて、って言いたい! 僕もお嬢様と呼ばれたい! もちろん執事長の名前はセバスチャンだ。初老の紳士で口髭はデフォルト。 普段は言葉少なで穏やか、目は開いてるのか開いてないのかわからない。しか し、いざお嬢様の危機には必ず現れ、いったいどこからどうやって現れたのか わからんが、悪党を支倉流暗殺術で一瞬にして滅殺。 ってよく見たらここの執事の方たちは男装した女性だった。普段はメイド喫茶 なのだが期間限定で執事に扮してサービスするイベントだったらしい。しかし、 ちゃんとした執事喫茶も出来るようだ。気になる人はググれ。 というわけでメイド、執事と来たわけだが執事はメイドの派生に過ぎない。メ イド喫茶の数も増え、リフレやハウスキーパー、居酒屋なども出来ているよう だ。だとしたらこの分野はまだいけるのではないか。  そう、たとえばドジっ娘喫茶なんてどうかね。   「だから、俺に聞くなよ」 【つづく】 ---------------------------- [自由詩]ハタライテ/Monk[2006年10月25日21時39分] 嗚呼、僕の恋人よ 働いて働いて働いて 僕のために 僕のためだけに もっと働いて できればデスクワークじゃなく 汗水流して 重い荷物を運搬するような ツルハシで地面に穴をあけるような ハードな仕事を 僕のために 働いて 嗚呼、僕の恋人よ 働いて休まず働いて 僕が暇を持て余し 録画したTVドラマをぼーっと眺める間にも もっと働いて 僕がこうしている間にも 君が腰の痛みを我慢したり 肩のあたりにストレスが蓄積してゆく姿を想像すると たまらなく嬉しい 君がヘトヘトになって帰ってきて 冷蔵庫に愚痴をぶつけてやつ当たる姿が とてもイイ すごくイイ 嗚呼、僕の恋人よ 働いて働いて働いて 嗚呼、僕のかわいい恋人 嗚呼、僕のすり減った靴底 嗚呼、僕の乾ききったボロ雑巾 嗚呼 どんどん疲労して そして 僕はいつか君を完全に回復させるだろう だからそのときまでは どうか恋人よ 君はどこまでも完全に疲労していって ---------------------------- [自由詩]スズキ/Monk[2007年9月9日19時03分] 格式のある店内 マナーは重視されている テーブルクロスの裾からのぞく恋人の赤いパンプスが 僕の心臓を掴んでいる 身の豊かなスズキのムニエルが運ばれ 彼女は優雅な手つきでそれを口へと運ぶ 思わず息をのむ その横で饒舌なウェイターは 僕の耳元に恋人のあらゆる秘密を囁きはじめる 露わになる恋人の 露わになる恋人の これは許されないことだ、と 叫ぼうとする僕の口は いまだ叫んだことがない そのやりかたを知らない 僕は徐々に赤面してゆく 耳をふさごうとする その両手を 恋人が優雅な手つきで阻む 露わになる恋人の 露わになる恋人の ウェイターはいつのまにかいない 恋人は食事をすでに終えている 何事もなかったように 何事もなかったのだろうか? 僕は自分の皿を見下ろし 顔に照れ笑いを取り戻す 途端 手つかずのスズキが 歪んだ口を使って告げる 許されないのはお前のほうだ ---------------------------- (ファイルの終わり)