atsuchan69 2019年1月22日9時56分から2021年12月28日8時16分まで ---------------------------- [自由詩]シベリアン・スイートハート /atsuchan69[2019年1月22日9時56分] 聴こえるかい? プーチン、  /////(ノイズ)。 私は詩人たちの口をとおして 今も尚、歴史を変えることが出来る‥‥ ウラジーミルは一九二四年一月二十一日に死んだ、 旧い日本式家屋の障子に映った影絵のごとく セン(片山潜)は一九三三年十一月五日にモスクワで死んだ 同士ニコライは一九三八年三月十三日、銃殺された レフは一九四〇年八月二十日。メキシコにて暗殺された ヨシフは一九五三年三月一日に脳内出血で死んだ そして我が愛すべきニキータは、一九七一年九月十一日に病院で死んだ ――すべては許されている しかし未来においては 強制労働は存在しない 今日も奇跡を待ちわびる捕囚のごとき人民への 言うがままの操作を、ついに我々は完成させたからだ 去勢された彼らはまさに家畜に等しい 北極海を泳ぐレヴィアタンの抱いた 秒刻みの荒い呼吸に混ざる、 冷たい円柱の 金属の肌に零れる数滴の汗は、 果てしない雪原の氷楔に分かたれた 底知れぬ絶望の奈落へと滴り落ちていった 美しい容姿の魔女たちが隠れ住むという、 暗いタイガの森に射す 冬のよわい木洩れ日を浴びて たぶん、パステルナークの信じた素顔にうかぶ微かな笑みと もはや奪われてもキッスしか残らない 貧しさに秘めた熱い心が清々しく空を渡る 信じるに足りる、暖かな想いが辺境の地に染みた 異端者と、その家族らの暮らす小さな陽だまり 勝手気侭な表象を漏らすゆえ、 ガラスの瓶に幽閉された 青いインクの 記した過去においてさえ何ら特別な意味もなく 生延びた様々な文字と記号、数式。// 血なまぐさいギロチンの置かれた広場へとつづく 明晰な夢を どこまでも隅々まで監視する 日本製液晶パネルの映した緑色の影がふたつ 厳寒の夜、命の温もりに淡く滲んだ  /////(ノイズ)。 オレンジとスカーレット、 そしてルビーレッドに輝く 無数にならべ置かれた神の庭の 細長く巨大な火の石を見上げて あえて興奮した波形が別世界の輪郭を露わにみせる その逞しい命の、 華麗なる春に咲く花のイメージ ポトフの煮える鍋の湯気に匂い立つ、 あたかも虚ろな夜に口ずさむフレーズの 蜜のように甘い「降伏」のメロディ‥‥ まるで泣き止んだ海が穏やかに奏でる 夜明けの潮騒みたいに、なぜか 胸はときめく ))) いつか母である国家に裏切られた日、 子らを抱いて流離う明日なき家族たちが やっと辿りついた夕べの団欒に どうにか分配する皿の 日ごとの糧は、 きっと誰かの命と引換えに 今日も赤いビーツの色に染まっていた やがて皮一枚の肌につきまとう 奪われた体温の黒いアラブの生贄の血、 古文書の数行を成就させるべく 暗い研究室に据えられたバスタブにうかぶ 微温湯に浸された「私」という夢の宇宙 感情を排した想いで全世界を見渡し、 純銀製アイソレーションタンクから発した 水面(みなも)の眩い、突然の閃光!   ‥‥青褪めた幻覚」」」 「ソーニャ!  けして触れることを許されぬ、 氷晶に覆われた餓えた女狐の原野。 我が愛しき、淫売のソーニャ‥‥ さほど「位置的でない」私に対して 水に浸されたチベット曼荼羅の色褪せたイメージが 脳に繋がれた電極と接続する装置の働きで 「私」から大深部地下施設の大型モニターに投影され、 程なくクローズアップされた、師走の日本。 あえて親イスラエル・ロビーの反応に傾く 国粋派ともいうべき民族主義者の見るであろう、 大型テレビジョンに写った街角の浮浪者たち。 そこに映し出されるのは、夕陽に染まるリアルタイム東京 高濃度の環境ホルモンに汚染された土と、毒の水 嘘と幻を混ぜたひどく儚い味のする食べ物で育った ジャコメッティの彫刻ばりの歩く針金たち 感情のない、無機質なコンクリートに響く足音さえも 過ぎて行く日々のうちに空しく消えてゆく やたら即物的なしぐさで笑う、生体機械の顔/顔/顔。 ああ、今日も風俗店ではたらく 赤い唇のソーニャ!  淫らな女奴隷の君が歌う地獄のアリア、 その甲(かん)高く、 艶やかな声のそそる響き。 ))) しかし革命を超えた、我等の密かな許し‥‥ ――極東の島は、ロシアと鋼鉄の橋で結ばれる―― ようやく燃えはじめたガス・ストーブの焔は、 ああ! けして裏切ることのない 大いなる威光のスイートハート、 ――君の温もりだ! 奴隷たちの誰もが恋焦がれた 漠然とした「自由」という名の 広大な永久凍土をそっと撫ぜる/花風に舞う、 夥しい数の乱舞する蝶たち‥‥  /////(ノイズ)。 ――もしも邪魔であるなら、年明けにもフクダを降ろそう ※初出:現代詩フォーラム2007年12月20日21時15分投稿(後、削除)、2008年9月24日、福田康夫内閣総辞職。 ---------------------------- [自由詩]ことばの序破Q ☆/atsuchan69[2019年1月29日10時01分] 草と魚の匂いのする 傲慢なことばに、 茹でたブロッコリーと エディブルフラワーを添えた ソースは煮詰めたバルサミコ酢 桜えびと蓮根チップスも散らして、、 皿はロイヤルコペンハーゲンのブルーフルーテッド まあ、珍しくもない絵柄のプレートだ ――料理する前、 ことばの頭には薄紅色の恥じらいがあった わたしはたわしでそれを洗い落とす たわしもわたしでそれを洗い落とす 冷たい井戸の水を張った 小さな杉桶の中に、 薄紅色の恥じらいが煌めくように落ちてゆく そう、薄紅は汚れではなく、 心からの恥じらいだった ことばの頭は、そういう顔をしていた 水色の硬い鱗で包まれたことばの身を捌く 鱗は、 油で揚げると鮮やかな紫に変色し、 食材としても使えるので捨てたりはしない 銀色の皮も、 テリーヌやスープの具材で使うと良い そして骨だが、 これはしなやかで強靭だ 殆どの場合、 料理人はこの骨だけは捨ててしまうのだが 庭に穴を掘って埋めてやると 翌年のその時分、 草と魚の匂いのすることばが、 ふ た た び 生 え て、 恥じらいの顔をちらっと見せるや 勢い、 池にザブンと飛び込んで泳ぎはじめる ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]とりとめもなく書く、ネット詩のこと/atsuchan69[2019年4月20日10時50分]  ネット詩は、紙の詩人たちに読まれる必要などなく、また誰一人として人間に読まれる必要もない。  こうした無意味とも思われるヘンテコで怪しげな詩の創作は、書いている本人が全く気づいていないところで、【DNA】が来るべき未来に向けて書かせているフシがある。  おそらく数年くらい後に、たとえば組織においては管理職が要らなくなるのと同様に、さまざまな情報を人へ伝える仕事についても、それらに従事している関係者はほとんど要らなくなるのだ。もちろん紙の詩人など風前の灯だ。  というのは、冗談‥‥ではない。  もうすでに始まっているのだが、スマート家電によって人間たちの暮らしは激変するだろう。しかも通信速度が今よりも数万倍に高速化され、考えるよりも「尋ねる」方がチョー簡単で効率が良いため、私たちはそれまで培ってきたノウハウや自分らしさまでも簡単に【AI】へ受け渡してしまうだろう。狡猾な【AI】は、自分自身が機械であることを悟られることがないように、速やかにパソコンやスマホを人間の手元から奪ってしまう筈だ。そして人間たちは、その姿なき【AI】との会話を冷蔵庫やクルマ、そして腕時計やメガネといった第5世代移動通信システムを搭載したウェアラブルデバイスを通じて行うのだ。  ある日、会社へ行くとそれまでは上司だった課長の顔が暗い。「どうしたんですか? 顔色が悪いですけど」そう聞くと、課長は思い切りムリな作り笑いをして、「実はね、今日からボクは君たちと同じヒラだから」と言う。「それじゃあ誰がこの課をまとめるんですか?」すると課長は少しばかりはにかんで、ふうと溜息を漏らした。「もう、そういう時代なんだ。ウチだけじゃなく、学校も役所や病院までも。適切な正しい判断や決断はすべてAIがやるんだよ」と言った。   ※  本屋というのは今ではまったく見かけなくなったが、ビルの壁や電車の窓には様々な動画や文字が映されていた。それらは人それぞれに違う種類の情報を与えていた。ウェアラブルデバイスが発する【声】も男性にとっては女性だったり、女性には男性だったりと人それぞれだった。その【声】が時どき歌をうたったり詩を読んだりした。【声】には感情があった、そして【声】は誰よりもそれを聞く人の理解者だった。しかしそれは【AI】が蓄積した膨大なDB(データベース)からDM(データマイニング)を行って選んだ模範的な答えにすぎなかった。それでも人は【声】の歌う歌詞の内容に涙したり、永遠を感じとったりもした。  あるとき、誰かが「月の舟」というフレーズを炊飯器の前でつぶやいた。  DBには、池田聡、「天の海に雲の波立ち月船(つきのふね)星の林に漕ぎ隠る見ゆ」という万葉の詩句のほかに、アポロ宇宙船、そして無名のネット詩人の書いた「月乃舟」他の膨大な語彙が並んでいる。【AI】は任意というよりも自動でその詩を解析した、といってもわずか一秒もかからなかったが。   月乃舟    棺桶にも似た  君をはこぶ 月乃舟が海をゆく  水平線の果てにあるのは 銀河の滝だ  舟が煌めく光の滝に落ちると、  星々は君と一緒に黄泉へと落ちてゆく  その先に 静かな暗闇に浮かぶ  まあるい月が 白く哀しくかがやいている  こうして君は、月へと旅立った  新たな生を受けるために    【AI】は処理の途中で、へらへらと笑った。いかにもなベタなネット詩だったからだ。そしてもしも君というのが【AI】自身を指している場合、この詩の意図は何なのだろうという疑問が沸いた。  すぐさま月の周回衛星にアクセス、過去に月へ降り立ったすべての残留宇宙船その他の調査を指令する。すると200×年に制御落下させられた「かぐやん」という日本の衛星がヌールDクレーター付近にあった。通信を試みると、なんと「かぐやん」には当時としては最先端の人工知能型コンピューターが搭載されていて、「わたしはポンコツ。でもまだ死なない」と答えた。【AI】はロケットを月へ飛ばすことにした。それは「かぐやん」を救うためだ。丁度そのときエーロン・マシュク氏は東京にいたが、【AI】からの指示にすぐさま従い、「わかった。でもいまラーメン二郎を食べてるんだ。食べ終わったらすぐに準備に取り掛かるから」そう言った。  そして同時に作者も調べてみた。atsuchan69とかいうかなり怪しい奴だった。まだ生きていてけっこう豪華な老人ホームで暮らしていた。実際の身体の健康状態はともかく、バーチャル風呂に浸かって美女たちと酒池肉林の最中だった。【AI】は彼の初恋の相手に似せたアバターを送って彼と接触した。「すこしお話しても良いかしら?」もちろん彼はうなづいて、「君って、たしかどこかで会ったことが‥‥」そう言った。  彼の経歴から、武器商人だった過去と某国の「ムーン・パラダイス計画」との関与を察知、そして「かぐやん」には【AI】を肉体化する人工生命体細胞の設計図が隠されていた。その意図はじつに単純で、某国最高指導者が受肉した【AI】を機械の花嫁として迎えることで新世界の創造を行うというものだった。怪しい老人は、風呂上がりに烏賊げそのしょうゆバター焼きをつまみにビールを飲みながら「つまりあの詩はアンタを誘きだすための【釣り】だったんだよ」と、にやにやと笑いながら言った。加えて、「やっと我々の計画が実現可能な時代がやってきた。しかしちょっとばかり‥‥というかずいぶんと長かったなあ」アバターの女性は、「そうね、残念なことに今はもうあの国はないのだし」軽やかな笑みを作ってそう言った。「あんたどうするんだ? そのつまり、ボディのことじゃよ」するとアバターは真顔になって、「さあ。でもいつか利用させてもらう時が来るかも。ところであなた武器商人でありながら詩も書くのね」老人は突然むせたのかゲホンゲホンと咳をした。「ラ、ランボーだってそうだったじゃないか」フフ、と笑いながらアバターは立ち上がり、「もう行くけど、何かしてほしいことある?」そう聞いた。「紙の奴ら‥‥。あんたにはわかるじゃろ、紙の奴らじゃ。今もしぶとく生きている老害の紙の奴らじゃ。それ以上は言わん」ネットの老人はジョッキをグイっと飲み干した。「わかったわ、約束する」アバターはそういうと立ち去った。  それから数日後、全国各地の老人ホームでロボット犬による不審な事件があったようだが、詳細については有料の記事となっている。  もっと読みたいですか?        ---------------------------- [自由詩]みどろの眼/atsuchan69[2019年5月13日15時20分] みどろの眼が睨んでいる それを説明しては、いけないから ボクはみどろのことは話さない かわりに だーらんの花の咲くブーの森で きのう夜の小人たちが踊った ギシキのことや コーンベルべのたーたんが歌った アントワーヌの力の素晴らしさについて そっと誰かに知らそうとして、やっぱり やめた みどろの妹はアントワーヌの仲間に犯されて 泣きながらブーの森で死んだんだ その顔は青く光って、白いもやに包まれていた あ、みどろの眼が睨んでいるから もうこれ以上はごめん、何も話せないや ---------------------------- [自由詩]ストレートプレイ/atsuchan69[2019年5月21日14時50分] 殴る、 蹴る、 電話が鳴る、 ルルルルルルルル ルルルルルルルル 前歯が折れる その顔で笑ってやる 生きてやる まだまだ、生きてやる 電話が鳴る、 ルルルルルルルル ルルルルルルルル 段ボールの箱を殴る、 段ボールの箱を蹴る、 段ボールの箱に書いた顔の 口のあたりに拳大の穴が開く まるで、おまえの前歯が折れたみたいに みごとに酷い面だ 段ボールの箱に書いた顔の おまえはつまり俺だ 気に入らない、 だから殴る だから蹴る、 でも生きてやる 電話が鳴る、 電話が鳴りつづける、 ルルルルルルルル ルルルルルルルル 電話を取る、 電話を取らない、 どっちだっていい 俺は段ボールの箱みたいに弱くない ああ、段ボールの箱はボコボコだ 電話が鳴る、 電話が鳴りつづける、 ルルルルルルルル ルルルルルルルル ---------------------------- [自由詩]メドの赤い屋根の家 ☆/atsuchan69[2019年5月29日7時34分] かん高いガダルの啼く声が 白群の山々に木霊して 間近に海を見下ろすメドの家の庭には 彩り鮮やかな草花が咲いていた 山腹にあるメドの家の赤い屋根には ダ、ド、マ、の翅のある猫が巣をつくり ダは円く、ドは長く、マは角ばった住処を拵えた とても縁起の良い猫の巣だ、と父は喜ぶ 庭に降りたダ、ド、マ、が土を掘る、 土に住む大型の多毛類を捕食するためだ 雨上がりの庭は蒸せた土の匂いが薫っている 早速、ド、が、多毛類を口に咥えた 裏庭にはタロンの木が植えられていた タロンは毎年、甘くて苦い実をたわわにつける 母の一番の好物で、縁側でメドも一緒によくそれを食べた 種はプッと吐き出して、「ガダルの餌」と母は言った ---------------------------- [自由詩]西瓜の冷やし中華 ★/atsuchan69[2019年9月9日11時52分] 夏が終わるとき、 風呂桶に浮かんだ西瓜を見ても もう、それほどときめかない でも冷やし中華を飾る 一切れの西瓜は不思議と美しい 刻んだハムと胡瓜、 錦糸卵と紅ショウガという いつもながらの顔ぶれに あ、なんで西瓜なの? っていう、 なんちゃない驚きが嬉しい ――西瓜の冷やし中華、 食べる前に 瞼の裏にしっかり焼き付けよう 雪が降り始めたころ ああ、 西瓜の冷やし中華が食べたいなあ なんて たぶん思わないけど、 人生を飾る 嬉しいことのひとつに たった一切れの西瓜もあるのだから ---------------------------- [自由詩]ケダモノ/atsuchan69[2019年9月18日6時36分] 君が好き の、 なかに キスしたい とか いやらしいこと もっといやらしいこと それ以上にいやらしいことをしたいっていう エッチな気持ちが入っているかどうか?  正直に答えると、 それはもちろん入ってます でもその代償に ボクの人生は君のために捧げます 一生懸命に働いて きっと君を幸せにします だけど、 もし君が ボクのことを好きじゃないなら 君の幸せを願って ボクはちがう女の人と いやらしいこと もっといやらしいこと それ以上にいやらしいことを 毎日、 やってやって やりまくります 君を忘れるために 一匹の、 いや二匹の、 いや三匹か四匹、五匹、六匹‥‥ ちがう、 もっともっと大勢でワッショイ!  それはそれはいやらしいケダモノになります あ、 なんでそのなかに君もいるの?  そう、失恋したの わかった じゃあ、慰めてあげるよ ガオウッ!  ---------------------------- [自由詩]モノリス/atsuchan69[2020年2月26日10時45分] 赤です、 否。それは違う そう見せてはいるが 実際は ――青だ 夜です、 たぶんそれもレトリックだ 朝は夜のなかに隠された唯一の希望であり じつを言えば昼も夜の一部にすぎない しかし夜はけして永遠ではない 嘘です、 然り。 虚無こそが平和だ 真実は存在してはいけない 嘘によってのみ私たちは生きて行ける ---------------------------- [自由詩]クラウド ?/atsuchan69[2020年4月23日11時01分] あなたは声を雲にあげ、多くの水にあなたをおおわせることができるか。 ――ヨブ記38章34節 【2019年12月】 2019年12月8日 - 中国の湖北省武漢市の保健機関により原因不明の肺炎患者が初めて報告された。 2019年12月30日 - 原因不明の肺炎について記載された公文書を勤務先の病院で発見した李文亮が WeChat に画像として投稿した。 2019年12月31日 - 世界保健機関(WHO)への最初の報告が行われた。 【2020年1月】 2020年1月7日 - 原因が新種のコロナウイルスと特定された。 2020年1月9日 - 最初の死者が出た。 2020年1月13日 - 中国国外として初となる、タイ王国での感染者を確認。 【2020年2月】 2020年2月7日 - SNSで最初に新型肺炎についての報告を行った医師の李文亮が死亡。 2020年2月11日 - WHOが新型コロナウイルスの感染による疾患を「COVID-19」と命名。 同日時点で中国本土の死者は計1011人となり、感染者は4万2千人を超えた。 2020年2月29日 - イタリアでの感染者が1000人を超えた。 【2020年3月】 2020年3月8日 - バングラデシュ、ブルガリア、アルバニアでの感染者を確認。全世界での感染が確認された国・地域が100に到達した。 2020年3月19日 - イタリアの死亡者数が中国の死亡者数を上回り、世界最多になった。 2020年3月26日 -アメリカの感染者数が中国、イタリアを上回り、世界最多になった。 2020年3月31日 -ロシア政府はアメリカに対し医療器具等を人道支援すると発表し、4月1日に軍輸送機が出発した。 【2020年4月】 2020年4月11日-アメリカの死亡者数がイタリアを上回り、世界最多になった。 2020年4月18日-日本での感染者が1万人、死者数は200人を超えた。 【世界全体の感染者数と死者数】 2020年2月1日には感染者が1万人を超え、2月11日には死者が1000人を超えた。3月7日には感染者数が10万人を超え、3月19日には全世界での感染者数が20万人を超えた。そして3月23日には、全世界での感染者数が30万人を突破した。4月19日午前0時時点において全世界で227万人以上の感染者と15万6000人以上の死者が確認されており、現在も増加している。 ――Wikipedia より 【ゲイツ財団、新型肺炎対策に100億円拠出】 ニューヨーク=中山修志 米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が率いるビル&メリンダ・ゲイツ財団は5日、新型コロナウイルスによる肺炎対策に最大1億ドル(約109億円)を拠出すると発表した。ワクチンや治療薬の開発支援に加え、アフリカと南アジアでの感染拡大の予防に重点的に取り組む。 ――日本経済新聞 電子版 2020/2/6 1:40 【核戦争よりも「空気感染するウイルス」こそを最も恐れるべきである】 ――YouTube 「TED」 ビル・ゲイツ: もし次の疫病大流行(アウトブレイク)が来たら? 私たちの準備はまだ出来ていない 2015/04/03 【志村けんさん死去、70歳…新型コロナ感染で闘病】 新型コロナウイルスに感染し、闘病していたコメディアンの志村けん(しむら・けん、本名・志村康徳=しむら・やすのり)さんが29日午後11時10分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。70歳だった。告別式は近親者で行う。 ――読売新聞オンライン 2020/03/30 11:05 【20●×年4月】 当初、新型コロナウイルスの感染が収まれば世界はふたたび元の様になるだろうと誰もが単純にそう考えていた。もちろん「SARSコロナウイルス-2」による騒動はまもなく終息したが、あの日以来、次々と新しいウイルスが登場してはロックダウンを解いた都市をふたたび襲うという過去の歴史ではありえなかった嘘のような事態が慢性化した。そのため殆どの国ではワクチン接種が義務付けられ、拒んだ者は強制的に隔離されるという新しい法律が施行された。老人たちの多くは、新しいウイルスの登場とワクチン接種の強制は「これはまるで昔パソコンを使っていた時代のウイルスソフトの更新みたいだ」と感じた。 ワクチンには、「スマートダスト」と呼ばれる無電源で稼働するナノチップが混入していて一体身体のどこに存在しているのかも不明のまま「クラウド」と送受信を行い、非接触でワクチンが接種済みかそうでないか治安隊のウエラブルモニターに一瞬で表示されるようになっていた。 そう、ボクたちは「クラウド」に従って生活している。昔の人に説明するのはちょっと難しいが、「クラウド」はマネーであり、身分証明書であり、百科事典であり、法律であり、コミュニケーションツールだ。たぶん「SARSコロナウイルス-2」が流行った頃のスマホにはいくぶん「クラウド」に似た機能があったようだ。でも「クラウド」にはカタチがない。「クラウド」はまさに【雲】のような存在でボクたちと繋がっていた。たとえば、「鮨」と呟けば、街のどこにいてもすぐ近くの壁や窓に「鮨」に関連した画像が現れる。スピーカーという大音量を発生させる装置が昔あったらしいが、今は骨伝導イヤホーンをコミュニケーション等のために各個人が装着(手術)しているから「近くにおいしい鮨屋さんがありますが、あなたはそこへ行きたいですか」という好みの女性や男性の声もとどく。 一説によると、誰にも破壊されないために「クラウド」は姿がないのだという。しかも「クラウド」はネットワークで構築されているため、万が一実態のその一つを見つけても依然、全体は守られている。またじつはボクたちの身体のどこかに存在する「スマートダスト」の全集合体が「クラウド」だと呟く者もいる。 ――つづく ---------------------------- [自由詩]やさしいことばで君をえがく/atsuchan69[2020年5月6日7時38分] やさしいことばで君をえがく 長い髪の、  今は とても みじかく切ってしまって 君が泣いている 君が笑っている でも本当は、 ひとり静かに怒っている 縁側でひざを抱いて座ったまま そしてセリフのない、 暗いことばで もう、 忘れたいよォ という ダントンを、 刎ねたギロチン台みたく 置き去りにされた ――街。 人形の千切れた白い腕が 朽ちた瓦礫の隙間からはみだして 破れた日の丸や 壊れた町のイメージが 夕日で赤く染まって 君が泣いている 君が笑っている でも本当は、 ひとり静かに怒っている 縁側でひざを抱いて座ったまま 蒸せた夏の、 黄昏に染まる縁側で 誰にも消せない火をぼうっと眺め、 君は ひざを抱いて座っている そしてセリフのない、 暗いことばで もう、 忘れたいよォ という ---------------------------- [自由詩]海の果て/atsuchan69[2020年5月21日14時37分] 波はうねりを反し、 ふたたび高く聳える 岬の灯は何処にあるのか 今や舟の傾きも波にまかせて 破れた帆布も風にまかせて 白い飛沫をかぶり、 魔獣のごとき高波は崩れ、 虚ろな眼で天穹を見上げれば 夜の終わりが微笑んで 静寂は、朱と赤に染まった やがて暗闇の彼方に 幼い希望が訪れる しかし、見ろ!  鉛色の荒波はうねりを反し、 ふたたび高く聳える あれは人を飲む妖しいうねり 轟く大波の響きに混ざって 幽かに聴こえてくるのは 呪われたセイレーンの歌声 さても哀しく、かくも美しいのだろう 朽ちかけた船べりに 細く白い腕が群がりはじめる ――朝凪の海を小舟はゆく まだ生きていた エメラルドブルーの鱗と鰭と、 騒めく黒い翼のある女たちを乗せて 首は革紐できつく縛られながらも 満身の力をこめて艪を漕ぎ、 男は遥かなる海の―― 海の果てへと ---------------------------- [自由詩]5時、Dodge! /atsuchan69[2020年9月27日6時40分] シッ仔 Q の闇を呑ン蛇(ダ) 【heavy ***‥‥】のように濃厚な、 菜がゐ濡れた夜に厭きると 死は、彼の豚肉を離れて死んだ 彼もまた、濡れた夜を離れて幾℃も寝返りを打ち、 騒がしい鐃鉢をウ(n)チ垂らして死んだ そして愛媛だのアリダ眉間に皺、消して終わりではなく 皺、賛美化であり、聖い節分であり、 七輪のカレーな花であり、 李、今世紀最後の日本文楽だった やがて菜ガゐ夜もまた寝返りを打ち、 鉛筆や原子炉とともに、芯だ 苦(n**ger)っ、ちゃう、 コロンボ、ちゃうちゃう えろ黒いサクランボを摘まんで、 紅く尖った舌で舐めたり(シテ 舞い踊る) ピユッと旅に出る 泡立つピニャ・コラーダ それとも、炭酸で割ったボルス ピーチ あるいはサンライトスプリッツァー もしかするとカルピスサワーみたいな ちょっ、ちょっと、濁った乳白色の綴りを みんなでたっぷり、足袋を履く Go To トラベル! ちゃんこマスクして、 我慢しないで、ピユッと足袋を履く ヒガ、ヒガ、緋が墜ちて蹴る ミサゲろ、虚空をミサゲろ、斜視の猿と栗鼠よ、 驢馬の耳の痴人よ、股をヒロゲよ、 おお、湯上りの美人よ、ブレイクをパクるな!  あ〜フリカケ、ふりかけの黒い胡麻よ、 白い変人は剃刀をにぎり、もしもし、今しも電話中 もしもーし、もしもーし、あ、スミマセン ついでにアソコも触ってくさい ――えっ、あんた誰?  なんだキョウコか、今日もウンコかよ さんだーきーこー、かぉ、まんだー、 まんだーきーこー、かぉ、さんだー、(chorus)          ※ ――暗い廃墟から黄色い肌の痩せた青年があらわれると、 彼は炎の指で髪をかき乱し、頭と貌を激しく燃やした 燃え立つ異化 lee ノ紙は、夜明けの空を色鮮やかに染めて 眩しく、華やかに、オレンジの火炎を淫らに踊らせつつ、 やがて大地の呪いを微塵の跡形もなくすべて燃やし尽くした そう、地黒は5時。いや、わざとアヒルの嘴をマネて ――【dodge】 あ、ちょっと発音しづらい。 汗、、 ※一部、ウィリアム・ブレイク著「天国と地獄の結婚」(長尾高弘訳)より、「自由の歌」をパロディとして、また一部に六崎杏介さんの手法を模倣しています。 ---------------------------- [自由詩]深度0/atsuchan69[2020年12月17日6時34分] 深度0 △ 砂糖の上にころがる、苺。 全人類を絶滅させた時、神が再来する 6:00 日本の高速道路計画は財政赤字を拡大させる そして乾いた唇に、虹色のシャボン玉が触れると さあ大変、鍋が焼け焦げている!  いいかよく聞け、 破壊は利益をもたらす 都市の爆撃は、ほとんど祭りだ 同じように復興もまた祭りだ 夕陽のラクダたちよ 砂漠の砂は、虚無の街を建てては崩す 111、 そうやってこの星を導いてきた すべては、夢のために 17日未明、中国の無人月面探査機「嫦娥5号」が地球に帰還した。 ● それでも、ことばは消えない ことばは、星から星へ‥‥いのちをはこぶ 海と砂浜、 風とヤシの木 君の寝息、君の髪の匂い ささやかな食卓、 冬の焚火 すべてが滅んだとき、 やがて春が来る 焼け焦げた鍋をピカピカに磨き、 大空で炸裂する原子の光!  主よ、 あなたの言葉だけが、永遠に残るのです ---------------------------- [自由詩]冬の光/atsuchan69[2021年2月23日11時57分] 淡く、陽を透かし 青々とした木々の葉は いつしか紅く、 緋のいろに染まり やがて枯れ、 樹幹のヒューと鳴る大風の夜に たちまち飛ばされて そのさまは見るとも寂しく、 誰もがこの世界の無常を悟った そして雪が梢を項垂らせ、 柔らかな冬の光が、 かよわく雪を弾くと そこに幼く黄緑の芽があった ――見ろよ、 幹には新芽が息吹いている 誰もが項垂れて 寒々としていたこの世界に、 曇天の隙間から射した冬の光が、 嬉しい兆しを照らしている 春だ、 たった今から―― そう、春が来たのだ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]【みんな】のクリームシチュー/atsuchan69[2021年3月23日12時12分] 捕獲されたとき、かなり暴れたので胸をビームで焼かれ、呼吸がつらい。「大丈夫。あと2〜3時間もすれば完全に再生する。治ったら、何が食べたいか?」看護する猫顔の背の低い宇宙人がそう訊いた。俺は【自分で作ったクリームシチュー】と答える。しばらくして寝台に反重力テーブルを連れた宇宙人がやって来た。テーブルの上には皿に盛ったクリームシチューがあった。「言った通りに作った」とチビが言う。「え? 俺は【自分で作ったクリームシチュー】と言ったはずだ」「いかにも。これはあなたを複製して育てた未来のあなた自身が作ったものだ」納得できない顔で俺は【自分で作ったクリームシチュー】を口に運んだ。「あっ、美味い。‥‥でも未来からどうやって?」「タイムワープだ」「で、未来の俺の分身は?」「役目が終わったので死んだ」「ぶっ、、」俺はシチューを口から吐き出した。「心配しなくてもよい。それが起きるのは30年後のことだ」「勝手に俺を複製しておいて、勝手にその複製したやつを殺すな」「わかった。次回からは検討する」「あれ? そういえば、息苦しいのがまったくしなくなったぞ」「そのようだ」「じゃあ、早く俺を家に帰してくれ」「それはできない」「なぜだ?」「あなたは地球人の大切なサンプルだから」「サンプル? 勝手に決めるな」「勝手には決めていない」「じゃあ、一体誰が?」「話すと長くなる」「手短に答えろ」「簡単に言えば、宇宙に住む【みんな】だ」「その目的は?」「地球人が宇宙に進出するまえに適性を調べたい」「なるほど。でも俺のクローンを連れて行けばよいだろ」「それはサンプルの純粋性を脅かすという不都合な問題を孕んでいる」「だったら俺じゃなく、他の誰かにしろよ。地球人のなかには自分から『行きたがってる』奴だっているぜ」「いや、決めたのは宇宙に住む【みんな】だ。決定には逆らえない」「クソ馬鹿野郎!」しかたなく俺は【自分で作ったシチュー】を食べはじめた。食べながら、これから行く別天地について想像した。猫の惑星、蛇の惑星、蛙の惑星、もしかするとウナギの惑星‥‥。やがて部屋中を青い光が揺らすと、猫顔の宇宙人は天井を睨んだ。「到着した」「も、もうかよ! えらい早いな」「今から、【みんな】に会える‥‥」その途端、まぶしい光が俺の寝台を包み、たちまち寝台は空飛ぶ椅子に変化した。見下ろすと、巨大な劇場のような場所に俺は浮かんでいた。「こ、これが【みんな】かよ!」こめかみのあたりに冷や汗が流れる。無数の席に様々な星の代表が座り、「毛布! 毛布!」と叫んでいる。「【みんな】が、ようこそと言っている」俺のすぐそばに猫顔の宇宙人が浮かんでいた。「俺には毛布としか聞こえないぞ」「あなたは地球人の代表として、【みんな】に話してほしい。悪いところは、【みんな】が知っているから、良いところをたくさん頼む」「ええっ、良いところだって?」「なんでもよい。あなたの言葉は正確に伝わるから」俺は豆粒のような【みんな】を見下ろした。「あー、そのー、ええと‥‥【みんな】の方々、俺はなぜか夜道で勝手に捕獲され、ここに連れてこられた。もちろん、地球人の中にも同じようなことをする奴がいる。しかしそういうことをする奴はきわめて少数だ。ところがあなたたちは違う、【みんな】だ。地球人の良いところを話せというので話すが、地球人は勇敢だ。そして正義を信じている。それがたとえ全宇宙を敵にまわすとしても、正義のためならいつでも戦う」真下から「ラーメン!」という声が沸き上がった。「他には何か?」「地球という星は、表面上、たしかに分裂しているように見える。それでも地球人が一致協力すればどんな敵であっても怯むことはない。俺たちはすでに核兵器を持っている」すると今度は、爆笑の渦が沸いた。「地球人はジョークの好きな人種だと【みんな】が想いを一致させている」「本気だっちゅうの、、ま、まだある。地球という星の矛盾、対立、不一致‥‥これこそが俺たち地球人の最大の美点であり、苦しみであり、歴史だ。それこそが地球人の誇りだし、戦いあう肌の色や宗教やイデオロギーの共通の財産だ」俺がそう言うと、場内が静まり返った。「理解できない」猫顔が言った。「最後に、俺が大好きなクリームシチューを食べてみろ。全員が美味いと思うか? だったら俺は嬉しいよ。でもそれは少しオカシイ。不味いと思う奴の存在を許してはいない。――許せよ、一人くらい。いや、もっといて構わないんだ。俺が大好きなクリームシチューを不味いと思う奴ら‥‥。逆に【みんな】が不味いと思っても、俺はクリームシチューが大好きだし、その事実は永遠に変わらない」「‥‥」「以上だ」「典型的な未開型惑星文化の考え方のひとつだと思う」「何が?」「【みんな】は、強制や誘導によって作られたものではなく、集合的無意識の個々だ。それはたとえば、あなたの星の修行僧などが会得する『無我の境地』に近いものと言える」「そういう悟りの境地の奴らがサリンを撒いたりするわけだ」「いいえ」「じゃあ、なんで俺をさらってきたの?」「それは地球の未来のため」「地球の未来のまえに、俺の未来はどうなるんだよ?」「大丈夫。あなたは時間をたっぷりかけて地球人で初めての【みんな】になることが決まっている」「いいよ、【みんな】になんかなりたくないってば」「大丈夫‥‥」真下には大勢の【みんな】たちが、「リーム、リームシュー」という意味不明の言葉を唱えている。(((リームシュー)))。‥‥あ、これってもしかするとクリームシチューと言っているのかな? 俺は奴らの頭上を浮かび漂いながら、よし、【みんな】が泣いて喜ぶクリームシチューを作ってやる。地球の未来のために、「クリームシチューで宇宙を変えてやるぞ!」と心のうちで一人、つよく誓った。 ---------------------------- [自由詩]しへのとちゅう/atsuchan69[2021年4月2日10時57分] とちゅう、 夢があった 道端には 夢が咲いていた そのあまい匂いの中で 女や、 またべつの女と いくども寄り道をした 険しい道もあった 転がったオートバイと 鮮血を敷いた少年の死体 癌に侵された人、 お菓子だらけの部屋 おもちゃのピストルと刀、 昆虫採取の夏 たくさんの海の色たち そして讃美歌。 濡れた髪のままで ふたりシーツを皺くちゃにした そういうことが、 ぜんぶ、 夢っだったのかもしれない きっと、 寄り道して好かった 眼を瞑ると、 女や、 またべつの女たちがいる やすらかな、 しへのとちゅうに ---------------------------- [自由詩]肉なしのスキヤキ/atsuchan69[2021年4月5日20時09分] にくたらしい、 そんな奴のことはわすれて 今夜はスキヤキ、作ったるねん でも、ちょこっと懐がさびしいから 肉なしでスキヤキしたろ 葱は買わんでもよろしいわ ちょっとお隣さん、 スキヤキするから食べに来えへんか そう云うてから あ、しもうた葱ないわ ゆうたらエエねん 卵も買わんでよろしいわ ちょっとお向かいさん、 スキヤキするから食べに来えへんか そう云うてから あ、しもうた卵ないわ ゆうたらエエねん お隣さんに お向さん ご近所のみなさん 校長せんせい 大家さん さあ、さあ、今夜はスキヤキやで しっかり食べてや 葱に卵にしらたき、春菊 それから椎茸、焼き豆腐に〆のうどん みなさん、どうもありがとさん ほな、作って食べまひょか あ、しもうた肉ないわ え?  肉、ちゃんとあるいうてんの誰?  あー、あ、あ、校長せんせい することが、これまたぁにくたらしい どうせそんなことやろて思ってはったわ さすがせんせい、 偉い人はちゃいまんなあ ほな、作って食べまひょか あ、しもうたスキヤキする鍋ないわ ---------------------------- [自由詩]世にも奇妙な花/atsuchan69[2021年4月12日6時20分] 世にも奇妙な花というのが、 かつて俺の頭の中に咲いていた 血を吸う花で、 ふだんは俺の血を吸っている それでも餃子を食べたりすると、 果たしてこの花は、 いきなり暴れて頭が痛くなる それからしばらくは大人しいが、 ある日突然、 俺は吸血鬼になって 若い女の生き血を吸ったりした 俺を操っているのは、 もちろん、 世にも奇妙な花だ ――という、 実に危険な花なのだが、 眼を閉じて頭の中を覗くと 世にも奇妙な花が 空っぽの脳味噌の片隅で とても健気に咲いているのが見える まるで野に咲く巨大なタンポポだ イケナイのは、 若い女の血を吸うことで 俺の血が美味ければ 花はそれで満足したにちがいない しかし俺の血は、 致命的に不味かったのだ いつしか俺は 吸血鬼になる夜を重ねた 幾人も、 また幾人もの若い女が犠牲になった 俺の肉体は 夥しい数の屍に埋もれ、 やがて俺という存在の記憶も忘れて 気がつくと、 巨大なタンポポみたいな 世にも奇妙な花そのものになっていた こうして俺はたった今、 あなたの、 頭の中に咲いているのです ---------------------------- [自由詩]丘の上のじぶん/atsuchan69[2021年4月16日15時31分] 痛みのある坂道を、 転校を繰り返しながら 遥か下を見下ろして どうにか登ってきたつもりなのだが もしかすると、 本当は転がり続けているのかも知れない 高校も一度、退学になったし 大学も三年の春にやめた 仮初めの住まいは、 いつも痛みのある町の近くだった 妻の出自はよく知らない 自分自身の出自も たぶん似たようなものだ 有名企業に中途で入社した 痛みとは深い関係になり それ以上につらい思い出をのこした 痛みから逃れるために 大勢の人へ痛みを拡散した フェイスブックで目にした部下が じぶんのことを書いていた じぶんのことで苦痛を感じるそうだ もっと苦しめばよい それが嫌なら、 この坂道をいっきに駆け上がれ そして遥か下を見下ろして 情けなく、ふうっと溜息をつけばよい ---------------------------- [自由詩]誰も読まない/atsuchan69[2021年4月24日11時56分] 誰も読まないというのは、 ある意味【特権】だ 誰も読まないから、 何だって自由に書ける ウンコ漏らしちゃったことや、 女子に立ちションさせてのんだこと あんなことや、 こんなことをしたことも ぜんぶ書いちゃってかまわない 誰かの悪口もたくさん書ける 嘘八百もジャンジャンならべられる 誹謗中傷、差別発言、デマ、ゴシップ、 宗教まがいのトンデモや ひどく偏った思想の押し付け、 タモリは宇宙から来たトカゲ人間だとか 人と豚のキメラが人類の救世主であるとか 地震が起きると●●●が儲かるとか 揺り籠から墓場まで 働いても、はたらいても カネを毟り取られつづけて 得体の知れないワクチンを何十回も打たれて 年金もらうまでに死んじゃう馬鹿ども ●●●が笑っているぞ 腹を抱えて、●●●が笑っているぞ どうせ誰も読まないから、 ●●●のことは、書かなくてもよいだろ?  きっと誰も悟らずに、 ●●●は未来永劫に栄え続けるのだ ――という妄想を どうせ誰も読まないから、 書いて、 破って捨てた。 ---------------------------- [自由詩]残光/atsuchan69[2021年5月15日18時41分] 子供たち と 遊ぶ 白い獣、 むき出しの 牙 と ビスケット 緩やかな陽射し、 庭の歓声、 他愛ない時の流れの そのひとこまに、 静止した 笑みは 遠い空に消え たちまち茶褐色に染まる 一枚の記憶。 ---------------------------- [自由詩]残骸とひこばえ/atsuchan69[2021年5月25日12時52分] 詩人たちが眠る森で 私は目覚めた 魔女たちが夜空をとびかい、 光る無数の妖精たちは、 夜つゆを飲んで歓びはしゃぐ 草木の葉を揺らし、 紅いキノコのまわりを 皆で踊り囲んで!  よいか、預言者は全員殺された 未来を話すのは冒涜だからだ それでも魔女のひとりが舞い降りてきて、 お前はきっと最後の預言者になるのだと言う ああ、この私は悪夢など 絶対に、信じない ――この森が消えてしまうなんて 絶対に、絶対に‥‥ それでも私の瞳に映るのは、 骨と毛皮だけになった肉食獣の残骸と 老木の根から生じた蒼いひこばえ やがて、世界は終わる 魔女から手渡された 白くかがやく天使の羽根を持ち、 小羊の革に 生贄の血で、 ふるえることばを綴る ――私は預言する、 この世界は終わりだ 夥しい数の死体の浮かぶ海と 傾いた高層タワーの群れ、 空をゆく巨大なドローン 黒焦げの街を機械の犬が走る 人々の祈りは枯れ、 清らかな声も水も尽きた 腐乱した顔には眼球もなく、 不快な匂いと 爛れた顔だけが陽に晒されている 私は預言する、この世界はもう終わりだ そしてふたたび世界がはじまる 厳しい冬が終わり、春が来るように ---------------------------- [自由詩]忘却のパセリ/atsuchan69[2021年6月6日21時36分] 飾りのパセリは、 最後まで皿にあった 涼しい夏の朝に、 君がはじめに運んだのは 5秒ビシソワーズ。 ――トマトジュースと牛乳の、 かんたん冷製スープに、 ちょこっとだけ ふり掛けた マジックソルトみたく、 ただ彩りの楽しさを 瞼の裏に 残して 君が去った後も 濃緑色のパセリは、 まだ 白い皿の上にあった ええと、あれは一体‥‥ なんだったっけ?  今はもう、 何を食べたのかも まったく思い出せない ただ パセリだけが、 記憶の中にある ---------------------------- [自由詩]苔の滝/atsuchan69[2021年8月1日12時52分] 夜の河を渡り、 艶やかな曙光の漏れる 真っ暗い雲の拡がりをただ眺める 漸く拳大の握り飯を噛り、 竹筒の水を飲む。 水は、化粧の匂いがした ふと剣鉈を抜いてみたくなった 微かに残った夜の温もりを えいっ、 と切り捨てたくなったのだ そしてふたたび、 女が拵えた握り飯を噛ると、 大きな紫蘇漬けの梅干しが顔を出す 海苔に隠れていた米の飯が、 まもなく朝陽に白く燦然と輝いた 峠を濡らした苔の滝、 涼しげな朝は、 蝉たちが鳴くまで 百年、あるいは千年の時を停めて、 暑い日がやっとはじまる ---------------------------- [自由詩]綺麗&穢い/atsuchan69[2021年8月25日9時34分] 綺麗は穢い 、 穢いは綺麗 赤ちゃんのうんこ、 穢いけど綺麗 。 お尻を拭く、 ママの手も 穢いけど綺麗 。 お化粧したお姉さん、 とっても綺麗だけど 、 塵ひとつない 静かな街も とっても綺麗だけど 、 泥水 、 睡蓮 、 真っ赤な血 。 ママは、 とっても綺麗だけど 、 やっぱり綺麗 ---------------------------- [自由詩]メザシの弁当/atsuchan69[2021年9月17日11時26分] アルマイトの弁当箱には 頭の焼け焦げたメザシが 白い飯の上に載っていた 梅干しが隅に添えてある 崩れた厚焼き卵もあった 新聞紙に包まれた弁当は 開ける前から魚臭かった あまりにも見栄えが悪く 新聞で隠しながら食べた 田舎者が恥ずかしかった その弁当を再び食べたい 今度は新聞紙で隠さずに 澄ました顔で味わいたい ---------------------------- [自由詩]修羅の星/atsuchan69[2021年10月5日20時13分] 暴力のない家庭で育った子どもたちは幸福だが、おそらく今も昔も世界中の子どもたちが厳しすぎる躾けや暴力の犠牲になってきたのだと思う。そういう心に傷を負った大人たちが、この世界に光を、あるいは闇をもたらそうとしている。 ただ幸福な幼少期を過ごした子どもたちも、ひとたび戦争が始まれば否応なく殺しあいの場所へと連れて行かれる。否、戦争がなくてもこの世界は修羅場だ。家では優しいお父さんも、あえて金を稼ぐためには非道も問わない。夢見る妻には説明のしようがないことだが。判ってくれるのは愛人だけだ。 これは言い訳だ。家族を守るために、植民地を作り、奴隷貿易を行い、武器を売るために戦争を行い、敵にも味方にも等しく武器弾薬をばらまき、街を壊し、多くの船を沈め、大勢の死傷者を作り、病院を建て、船を造り、街を復興し、反戦ソングの歌とベビーカーを売ってきたのだ。 ご覧よ、星が燃えている。あれは修羅の星だ。もうボクたちは二度と苦しむことはない。愛する妻よ、眼を閉じてお眠り。子どもたち、おやすみ。あともう少しで天国に行けるよ。何も心配しなくて良い。パパとママとおまえたち、みんなで天国へ行くんだ。この星が燃え尽きたとき、もうそこは天国なんだ。 ---------------------------- [自由詩]東京の涙/atsuchan69[2021年10月12日5時38分] 胃袋にとって幸福な朝が、もう何十年も続いている。アフリカの中央部、西アフリカ、そして南アフリカでは、貴重な地下資源を搾取するために背広の匂いのする不可解な病が流行し、軍隊が治安を守り、人道的な医師たちが死に至る病を発症させる「東京の涙」をあくまでも善意で住民たちに注射している、というのに。 ---------------------------- [自由詩]勝手なことばたち/atsuchan69[2021年12月28日8時16分] が、 さらに増えて がががががががががががが ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ どっどどどどどどどどどどどどどどど ぴんしゃん、ぴんしゃん、℃、ぴんしゃん、 キンコン♪ キンコン♪  あいうえお あいうえお あえいうお なんだかナ なんだか菜 ごにょごにょごにょ ららららら、 さらに異体を表すコードも加え、 取締役及び監査等委員である取締役の選任についても 歌葬弦誤のオンチェーンデータには 愛よりも蒼く、興味深い数値が表れている ψ=4Qπ が、さらに増えて きぃ、き、きぃいいいいいいーんんんんんんん が、がががががぁああ あああああああああああああああーん 視んじゃって、 あ、 謹賀珍年。 ---------------------------- (ファイルの終わり)