茶釜 2005年12月11日22時11分から2015年7月14日19時59分まで ---------------------------- [自由詩]世界機械/茶釜[2005年12月11日22時11分] 僕らには何らかの足と 時間があるのに 階段はいつも 非常口の奥で しんとしている 「何階ですか?」 機械のゆみこが訪ねると 「トナカイです」と どこか遠くから 草原の風にのって 野生動物の声がした 機械のゆみこが 早くて優しくて がんばりやさんなものだから だれもかれもが それがプログラムである事や 自分達のちからを すっかり忘れてしまう いつか階段達は 腕まくりをした男の 白いワイシャツの袖からのぞく 野性のにおいと 足のない冷蔵庫の重たさと大事さを 教えてくれていたのかもしれない 時々は ベンチにもなって ともだちや子犬と アイスをなめたり 疲れたら 好きなときに好きな段で 立ち止まり休むことの何かを教えてくれたの かもしれない 長い 屋上への道の途中で カラのじゅうばこのふたの裏 まだくっついている 世界のおもしろさや すべての事を諦めることを諦めることを 考えさせてくれた はずなのに 僕は今このときも 伸びすぎた足を ただ重たいだけの 高価なトレッキングシューズの中に 静かにつめこんで ただ早くて優しくて いつまでも意味ありげな笑みを浮かべ ただ同じ場所を行ったり来たりの せまいユミコの中 ベビー用品売り場も 玩具売り場も 紳士服売り場も 一直線に抜けて ほんの幾つかの 見慣れたスイッチの明かりだけを ただぼんやりと見つめている 数えられる数字は もっともっと有ったはずなのに 僕らはいつも ずるさから 先に覚えてしまう ---------------------------- [自由詩]「白雪」 冬の童話より/茶釜[2005年12月15日0時14分] 猫のミーが 窓から初雪を見ている たんぽぽの綿毛よりも 静かで美しいそれは いつか別れた母親の しっぽの色だった ミー 君の耳も 同じ色をしているよ ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]ネロウルフの誓い/茶釜[2007年1月6日19時37分] ふと考えてみると 最近自分の畑が石ころと草だらけで、何も収穫できない所になっていた、 そりゃそうだ、 近所にはスーパーにコンビニに産地直送市場まで何だってあって、 ちょっとこまめに足を運べば 料理の材料には事欠かない、 どんなに自分の手で美味い食材を作ろうと思っても 草をむしり、石ころをはね、雨を待ち、泥だらけになって土を耕す所から初めて そんでもって、色々な自然の力に任せないといけない、 こんなんじゃ半年も一年も掛かってしまうのだ、 おまけに料理の腕前が悪ければ誰も褒めてくれはしない、 はたまた、明日収穫という時に虫に穴を開けられたりもするんだよね、 でもなぁ、 採算が合わなくてもそれはそれでその過程が楽しかったり 可愛がった自分の野菜が大きくなる様が嬉しかったり その大切なものを棄てたくないから 自然とその料理する腕にも気合が入ったり 風とか雨を本当に自分に関係のあるものとして感じていられたりする良さもあるんだなぁ、 でも石ころがあまりにも多くて、 爪の中にまで泥が入って、 店のお野菜があまりにも魅力的で(泣) 隣の畑が・・(おい) ※タイトルは輸入物 ---------------------------- [散文(批評随筆小説等)]敗北宣言/茶釜[2007年1月9日17時03分] 「金子みすず」という詩人さんを 皆さんご存知だろうか 私はそれほどご存知ではないですが 尊敬している詩人さんです、 彼女の事をはじめて知ったのは五年ぐらいまえで それでもその詩についてちゃんと目にしたのは その二年位後で、詩集に至っては去年童謡集を二冊買ったばかりです。 私はあまり人の詩を読みません、 詩集もその二冊を加えて4,5、冊程度です、 なぜなら、頭のハードディスクが小さくて、 それゆえに消すべきデータと残すべきデータを絞らないと 消していいのが残したいものを押し出してしまうといった状況に至るからです、 よくあります。 金子みすずの詩は、出来れば国家機密プロジェクト級のロックを施したいですね、 何を忘れても忘れたくないワードが沢山あります。 ふつうそんな素敵な詩人さんの詩はどんなに感動しても共鳴しても 無意識に真似をしてしまい、故に自分の脆弱な個性の芽が引っ込んでしまう懸念に、あえて敬遠する嫌いもあるのですが、 どんなに自分があがいても、もがいても、でんぐりかえっても、脱皮を繰り返しても ジャックの豆の木になっても、 金子信夫、もとい、詩人金子みすずワールドはその万倍も素敵で別格であることは紛れもないので あえて今回、「金子みすず参ったなぁもお、条約書」?にサインをしたしだいです、 既に大国なので、私などが今更ちょっかいを出しても屁の河童だろう、ということもあり、 その辺も安心しております。 古今東西、老若男女の気持ちにすっと忍び込み 心のバージョンアップをしてくれる作品群に 畑に降る恵みの雨に らぶ(はぁと) であります。 ---------------------------- [自由詩]howling/茶釜[2007年1月14日17時48分] 寒さに縮こまったその尻尾を エイトビートでおっ立てたら 部屋でゴム毬追いかけている奴等なんかよそ目に 始めようぜ 春の陽気の中でも 真夏の渇きの中でも忘れはしなかった 狼達のロックンロールを おれ達は誰彼なくおいそれとなびきゃしなかったはずさ ちょっと似た匂いのする奴らと たまにじゃれ合ったりもするが それぞれの獲物をまた見つけたら すぐにバイバイ いつだって自由 毎日が新天地 時に独り 荒野の苦汁も舐めるが それが何だってんだ この際限ないステージで ビッグな月を追いかけて気が済むまで吠えまくり ヘヴィな匂いの泥の中で存分に転げまわれれば 大概の事は忘れちまう 易々と繋がれてやるもんか シャンプーなんてくそ食らえ さぁ、嵐に折れたその耳を ヘッドシェイクで伸ばしたら 狂っちまった髭の感度をチューニングだ 忘れるんじゃないぜ かつて秋の寂しさに 冬の冷たさに 耐え抜いたそのハートに 深く書き込まれた あのメロディを ---------------------------- [自由詩]入れ歯/茶釜[2007年1月15日18時51分] 仏壇の奥から じいちゃんの入れ歯が出てきた まるで貝のようにぴったり重ねてあって 今にも「がははは」とじいちゃんの声で笑い出しそうだ でもじいちゃんは小さい時の僕を よくこの入れ歯でびびらせた その、カパッと取れたぜったい取れるはずのないものが 今にも僕に噛み付きそうな感じと 人相の変わってしまった別人の人の登場に 頭がパニッキになって、いつも泣きそうだった、 そしてから 専用の歯ブラシを出すと 別人のじいちゃんは 見覚えのあるおわんにお湯を入れて 自分の一部をふがふが息をしながら洗い始める ふがふが、ごしごし ごしごし、ふがふが 世にも不思議な光景だった 洗い終わったあと そのおわんのお湯をどうしていたかまでは 記憶にないが とにかく気持ちよさそうに その綺麗になった入れ歯を カセットテープでも入れるように かちゃかちゃっと知らない人の口にはめると そこには正真正銘のじいちゃんがいた。 人をあんなにも変身させる事の出来たこの入れ歯で 変身できる人はもう何処にもいない 仏壇の奥からも 変な顔の人は出てきてくれなかった ---------------------------- [自由詩]おっぱい?/茶釜[2007年6月7日20時45分] 夕暮れの お台所の とこで 弟の ゆうちゃん が ぼくのママのおっぱい、 のんでいたよ おっぱい ぼくのおっぱい おいしそうに のんでいたよ ゆうちゃん もうはなれてよ ぼくのママから ぼくのおっぱいから ママ ぼくを見るときのように やさしい顔でゆうちゃんをみつめないで ぼくはここにいるよ ゆうちゃんが泣き出したら ママ すぐにおっぱいあげるのに どんなにぼくがないても もう しらんかお ゆうちゃん ぼくのおもちゃ ぜんぶあげるよ おかしもあげるから ぼくにママをかえして おねがい おっぱい とらないで あんまりのんじゃうと しぼんで なくなっちゃうよ ぼくの おっぱい #原題「ぼくのおっぱい」 ---------------------------- [自由詩]おっぱい?/茶釜[2007年6月9日20時02分] おい、野郎どもよ いつまでそんな狭い小島で遊んでやがる 五歳を越えたんなら さっさとママのおっぱいから錨をあげな 人生なんてなよお メダカのちんちんよりみじけえんだぜ そんな小島はとっとと父ちゃんにくれてやれ さあ、船出だ 新しい夢の大陸をめざそうぜ ヨー、ホウ ヨー、ホウ 東の海の向こうには マルコポーロを骨抜きにしたお宝があるんだとよ 死ぬ前に先ずそいつをひと目拝んでみようじゃねーか ヨー、ホウ 東に舵を取れ ヨー、ホウ 西の海の向こうには コロンブスが熱を上げたお宝があるという 見つけられなきゃ海賊の名折れってもんだ ヨー、ホウ 西に舵を取れ ヨー、ホウ 七つの海の向こうには 七色の女神が待っていて 七色の女神の体には 七つのお宝が眠っていやがるんだ 俺たちから掘り出されるのを 今か今かと待っていやがるんだ だが七つの宝にゃ気をつけろ 七つ七色それぞれに 七矢七毒七呪い 下手すりゃあの世に上陸だ ヨー、ホウ ヨー、ホウ へたすりゃあの世に上陸だ ヨー、ホウ ヨー、ホウ やれ、漕げ それ、漕げ ヨー、ホウ 南の海の向こうには キャプテンクックもチビッちまった 難攻不落の砦があるそうだ 今こそ名を上げるチャンスじゃねーか みんな、ビビんじゃねーぜ 宝の為ならヨーホ あのこのためならヨーホ #原題「よくある海賊の唄」 ---------------------------- [自由詩]おっぱい?/茶釜[2007年6月17日12時57分] 忘れようとするほどに 溢れてしまう貴方を きつく胸の底に収めて ただ昔の思い出として そのシフォンケーキのような重みと 和らぎだけを感じながら生きていこうとしても 「今も愛している」 なんて 甘く苦い片想いが 知らぬ間にホロリと 恥ずかしくはみ出して 時々私を困らせる  #原題「ベティのセレナーデ」 ---------------------------- [自由詩]おっぱい?/茶釜[2008年1月13日22時43分] 朝も夜も 頭に思い浮かぶのは ただひとつ あのこの おっぱい 何よりも柔らかく 何よりも近寄りがたい そのふくらみが すべての悩みをぶっとばす すべての望みもぶっとばす 明日の予定も あさっての予定も 盆も正月も 方程式も 年表も 元素記号も ラファエロも 光太郎も賢治も ものの見事にぶっとばす 今ぼくの前にも後にも とにかくあるのは おちちだけ いつもいつだって ぼくのおつむは おちちで貸切満員御礼! あぁ 寝ても覚めてもバスト 頭の中はバースト あぁグレイテストテイスト 地球はひとつ バストは二つ 大小形はこだわらない 贋乳だってご愛嬌 山を望めばおっぱい 空を見上げてもおっぱい やっぱりおっぱい すっかりおっぱい 二十歳になっても 四十になっても 還暦過ぎても 想いはただひとつ #原題「永遠の思春期」 ---------------------------- [自由詩]sax/茶釜[2008年1月29日19時00分] 興醒めした夜のひび割れから 奴の鎮魂歌が聞こえる よせやい まだ早いぜ ただ夜に紛れて お前の様に美しく拗ねて見たかっただけさ 世間の事なんか何も知っちゃいないで 独り口笛吹いて 腹膨らませてたら このざまさ このざまさ 苦いものにはシュガー 苦くないものにもシュガー まるで瓶詰めチェリーの様に ただ甘ったるいだけの になっちまった 時代って奴は いつか一緒に腹減らしたり 震えながら安い酒を食らって 長い夜を越えたはずなのに 次に逢ったときは まるで別人だ お互い様だが 随分こっちの分が悪い そりゃないぜ なんてね 心配しなさんな 運が良けりゃまた後から 急行列車かなんかで 追いつくこともあっから あの頃に なんだろ あんだけ聞き慣れていた筈の そのライトナンバーが 今夜はなんだか やけに重たい ---------------------------- [自由詩]鰭/茶釜[2008年9月17日21時27分] 鰭(ひれ) 少ないということは 時に惨めなことだ 僅かということも なんだかみすぼらしくて 心細い 単純ということは なんにも飾りようがなく 寂しいことで 易しいということも なんだかつまらなくて 弱々しい 普通ということは もう皆が知っていて 目立たないし 安らぎや平和も なんだか勇気がないみたいで 恥ずかしい そうかと言って いらないものをどうしよう ---------------------------- [自由詩]宴/茶釜[2008年11月6日20時35分] 興らくの人々の あやうきあしどり 法うながせば 宴はいとさみしくなりそうらう さりとて お膳をこさへるかたまでも ようたら御酒もすすまず 歌を詠む御方までようたなら せつかくの 浮世の雅の 酔いも薄れけり ---------------------------- [自由詩]下戸/茶釜[2009年4月3日20時23分] 私は酒が飲めない 飲めないから酒に酔ったことが無い 酔ってくだを巻いたことが無い だから酔わずに文句を言う他ない だがほとんどが 酔わずには言えない文句ばかりだ 私はあきらめる それでも出てくる少しばかりの愚痴を吐いて だが人は その僅かな言葉でも しらふで言うと怪訝な顔をする 私は酒を飲まない 飲まないから酒に酔ったことが無い 酔って気が済むまで泣きはらした事が無い だから酔わずに泣くしかない だが誰だって人前では泣きたくない 私はあきらめる それでも出て来る少しばかりの涙を零して だが人は その幾粒かの涙でも 男の癖にと笑う 私は酒が飲めない 飲めないから酒のせいに出来ない ちゃんとした意識の中で はっきりとした罪悪感の中で 酔った人のしでかす少しばかりの罪と 酔っていない自分の罪の全てを受け入れなくてはならない あらゆる傷の痛みを そのままに感じなければならない だが酔っていないからこそ 感じられる味わいもある ---------------------------- [自由詩]月風鳥花人/茶釜[2009年5月10日18時40分] 咲いた花実は何もしなくても 雨に風に歳月にいつかは落とされる 枝も木も どんなに立派で大きくても 終わりは来てしまう そんな世界にせっかく頑張って立っているものを そんなに無下に揺すりなさるな 叩きなさるな およしなさいよ ほらまた一本 細い枝から折れてゆく まだ青くて小さな実から落ちてゆく ごらんなさいよ 痩せっぽちの小鳥が一羽 すらっと伸びたあの枝の上 やっと見つけた真っ赤な甘い実を あんなに美味しそうにほおばっているじゃござんせんか ---------------------------- [自由詩]鼈/茶釜[2010年6月17日21時14分] 一貫痩せて 憂う人無く 一貫肥へて 憂う人も無く ああ私は 月になりたい ---------------------------- [短歌]言の葉/茶釜[2010年7月21日17時22分] 親しめばいつか尾を振り向こうからここ掘れわんわん言って来るかなあ あれこれとやな事ばかり指図してよき関係の育つ筈無く 深々と眉間に皺寄せ近づけば何事やろかと尻尾潜める 立ち座り人の服着て棒を追い何をやっても一匹ぼっち 引っ張ったり引っ張られたり引っ張ったり朋に歩くはいつのことやら ---------------------------- [自由詩]仁/茶釜[2011年3月18日9時27分] 小さな傷には小さなばんそうこうを 大きな傷には大きなばんそうこうを 深い傷には情けないほど無力だけれど ポケットに入れておいても邪魔にはならないはずさ 自分に使ってもいいさ 誰かにあげてもいいさ 使い方知らない人なんていないから 貼り難い処には貼ってもらえばいい 貼り難い処には貼ってあげればいい 例えば深い傷でも治る時があるけど 小さな傷から深い傷になる時がある 長い傷には長いばんそうこう 見られたくない場所にはかわいいばんそうこう 汚れてきたらまたはりかえたらいい 濡れて剥がれていたらまたあげればいいさ おなかの足しにはぜんぜんならないけれど 万能薬には程遠いけど 少しは痛みも和らいで 少しは早く治るはず 小さな傷には小さなばんそうこう 大きな傷には大きなばんそうこう ---------------------------- [短歌]義/茶釜[2011年3月19日13時39分] 板前も厨房もなき休校舎漁師の包丁上手あり 剣豪も抜けば珠散る名刀も大根菜っ葉に歯が立たず 安物の包丁なれど大根の百や二百は活かして錆びよう 包丁を一度持たば芋ひとつ胡瓜一本真剣勝負 男女の別流派巻物免許無用日ノ本に知らぬ者無きその技は人呼んで銀杏半月斜めぶつ切り(かなり字余り) ---------------------------- [自由詩]うた/茶釜[2011年3月22日12時21分] 皆が悲しい時 感情が感情に嘘を付かせる時がある 「私は大丈夫だから」と言わせる 「そちらを先に」と言わせる 高齢者も子供も男も女も 誰もがそれが誠の嘘だと分かっていて そして世界で一番短い詩を返す 「有難う」 数々の試練に打ち勝った この国の人たちは 昔からそうやって来たのだ 誰に強要されることもなく 当たり前の様に 私は 私もあの人たちの様に 失った朝も 「おはよう」を忘れずに言えるだろうか 明日の希望が薄れた夜も 「お休み」を言い合うことが出来るだろうか うたを交わし続ける事が出来るだろうか ---------------------------- [短歌]式/茶釜[2011年4月10日22時38分] 半月の間に二度の葬儀あり一人は身内一人は知り合い 葬礼の献花を貰い帰った日花瓶にはまだ先日の献花 二度の香二辺の念仏沁みたまま一張羅の喪服洗濯屋に出す 念仏も御香も花も間に合わぬ世界を目にした数日の後 ---------------------------- [自由詩]ahiṃsā/茶釜[2013年7月9日23時12分] 文月を何触ること無く過ごせれど 何をか踏まずに過ごせざりけり ---------------------------- [自由詩]天の河/茶釜[2015年7月6日18時06分] 遥けき天を流るる河よ 今宵は誰が胸の願い乗するや 想いの下流を辿らば 母の背より浮かべし 銀紙の小船 現在は何処の星の海 星の国 星の里 静けき闇に輝く河よ 今宵は誰が夢照らせしか 思いの上流を辿らば 幾光年の暗黒を貫く河は 幾万の願いを集め 現在こへゆくは我が星 我が国 我が故郷 ---------------------------- [自由詩]地上の星座/茶釜[2015年7月14日19時59分] 雨雲が宇宙を拭うと 夜は一層明るくなって 地上を照らす 俺には生憎 童話の様な 月や星まで届く手も ブラシもないので とりあえず 埃だらけの部屋の電球を磨く 少し明るくなった部屋の窓から 外を眺めれば こんなにすぐ近くに 人の手でひとつひとつ磨かれた ぴかぴかの街星が並んでいる 人も街の生き物たちも 満天のこの夜空と共に その一粒一粒の小さな星をも大事にしながら 現在、手を差し伸べあえる仲間達や家族や恋人 それにいつか手の届くであろう何かを想って 明日を夢見ていくのだろう 子供たちは 目を凝らして まだ天の川を見ている ---------------------------- (ファイルの終わり)