LEO 2007年1月26日21時31分から2008年6月7日22時17分まで ---------------------------- [携帯写真+詩]ブレス/LEO[2007年1月26日21時31分] いまだ冬の 凍える朝にも こぼれる陽光の一筋に 穏やかなる日和を思い 目を細める 匂い召しませ 息つく春を ---------------------------- [自由詩]座標/LEO[2007年2月2日22時28分] 満たされた月が 静まる夜に息をかけ 澄みわたる気配は 、まるで水の中 地に影おく木々の枝先は 水草のように揺らめきたって 浮かびあがる山の稜線で 青さを図る 私は膝をかかえ 天を見上げるだけの 微動だにしない 一個の石と化し 幸福に似せた形を模す  月のように  まるい形 瞬く星に 古よりの伝えをなぞるべく 一点に指先をおいてみても この月明かりのもとでは それさえままならず  君はいま  どの星のもとにいる? 訊ねたいことは たくさんあっても 結べずにいる点と線 開くことのない唇だけが 始まりも終わりも 同じであると知っている  今夜の私は  石でした 青い夜 深い底 てらてら月が輝いている 黙するものにも その身の一片を照らして  まるい月が見えますか? 訊ねたいことは たくさんあっても ---------------------------- [自由詩]絵の中の、/LEO[2007年2月12日13時58分] 画布一面に 描かれた椿の 色彩の深みは 凍えた空を思わせて ひとすじの風にさえ 枝葉のさざめきが 聞こえてきそうであった 重なりあう緑葉の中に たった一輪きりでも 咲き誇る花は 見逃しようもなく 首を傾げ微笑む 女のようである 艶めきと はかなさと 妖しさと つめたさと 触れてはいけない 私が賛美の言葉を吐けば こくりと頷いて 熱い息を 漏らすのではないか 見ている 見られている 釘付けのまま 上気する頬 反転してゆく 内と外 目眩して 呼ぶ声 誰の、 誰を、 静寂に囚われた中 コツと響く靴音に 示された存在で 断ち切る視線 触れてはいけない赤の ---------------------------- [自由詩]ノクターン/LEO[2007年2月18日1時36分] 夜に開いた 隙間を 埋めるように 雨の旋律が 耳に届いて 孤独にいる者の 遊び相手と成りはしないだろうか 滴の奏でる音が たった一人の為の 優しさとなって 降り注いで あなたは雨に歌う 夜に呟く 青の呪文は 寂しさを 消す為じゃなく あしたへの 標のようなもの 雨音が 体を透けるのと同じに 溢れくる思いも いつか解けるだろうと 夜にだけ見える速さで呟く 青の、呪文 雨を歌うあなたに 雨を透したその手で つかまえて ---------------------------- [自由詩]あした、春/LEO[2007年3月20日1時21分] 東の空が明けるころ あなたはまだ 真綿の中で眠っている 朝の日のひとすじが あなたの頬を さくら色に染めて はやく春がみたい と言ったあなたよりも先に 春をみた ---------------------------- [自由詩]春ごとに沈殿する/LEO[2007年3月23日21時47分] あれから いくつ春を 数えたかしら わたしの中に眠るあなたは 春ごとに目覚める 黒と白の斑尾模様の猫が 出迎えてくれた細い路地 人の気配が消え 静まり返った石畳 入り組んだ奥の方から 甘い香りがして あなたとふたり 匂いに誘われる 足音をしのばせ 軒下をくぐり 求めたものは 花もたわわに薄紫の沈丁花 目眩するほどに香しく 並べた肩は 触れそうで触れない ふたりの距離に 呼吸を止めた あのとき 言えなかったひと言を 胸の中に記したまま 重ねてゆくだけの 匂いに沈む春 あなたの 影だけを抱いたまま ---------------------------- [自由詩]夜光/LEO[2007年3月27日21時20分] いまここに 来たるべき夜の紺青は 誰しもの 奥深くに眠る 逃れられない 悲哀の色をして 春はいつのときも 悲しみ覚えたかたちを おぼろに映すから すこし涙もろくなる さしのべる手も届かず 閉ざしたままの瞼に 憂鬱と惑いを見せて 掴めず終える今日 そのなかにあっても 誰のために輝くでもない星が 自らの色をして所在を示すのを 確かめることで 私もまたひとつの、 滲んだ夜も 涙することだけに頼らずに あなたの窓に映る 星のひとつになりたいと 強く祈りながら ---------------------------- [自由詩]代わりに、雨/LEO[2007年4月15日23時16分] 夜にまぎれて 雨をみちびく雲の波 朧気に月は 触れてはいけないものがある ということを諭すように 輪郭を無くし遠退いてゆく 深く、 深く息をして 雨の降りる前の 湿った空気の匂いのなか 胸がさわぐのは 頬なでる風が 冷たいせいではないはず 雲間に消えた 月の影を追うふりで 独りのまなざしは 何を見ているの? 微かな背中の震えは 手の届かない距離 深く、 深く息をして ささやく言葉が 雨に変わればいい 私に足りない 優しさと 強さの代わり その肩を抱くために ---------------------------- [自由詩]桜色の夜/LEO[2007年4月21日2時04分] 夜の、 雨の、 それぞれのゆくえを ひと色に染めて あかりは桜色 煙る雨の甘さ、 舞う花びらの温み、 絡めた指が やさしさを紐解く 夜に、 雨に、 焦がれる桜 時計の針は 深夜を指したまま もうすこし、 雨のしずくとおなじ数 無垢の白さで闇にとけるまで ---------------------------- [自由詩]霧の朝、森に帰る/LEO[2007年5月2日1時39分] 風が、やんだ 鳥の声を探して 下草に濡れたのは 迷い込んだ足と 慰めの小さな青い花 遠ざかっていた場所へ 私を誘う手は 湿っていて それでいて 優しいから 触れたところから 私もまた湿っていく やわらかくて あたたかくて 懐かしい場所 尖端に しずくを握って ひらいた木の芽 葉っぱの匂い 手と足の匂い 私がまだ小さかった頃と おんなじ、うぶ毛の匂い 木も 草も 花も みんなひとつに 包まれたその中で 目を閉じて カッコウの声が聞こえる ---------------------------- [自由詩]薔薇と背中と、止まない雨/LEO[2007年6月18日1時39分] ひと足踏み入れば 彩る花弁の甘い香りが しあわせの時を与えてくれる いつの日も 六月の雨に濡れている足が 軽やかに茨を縫って進み 見え隠れする背中を追う 赤い薔薇、白い薔薇、あなたの背中 紫の薔薇、黄色い薔薇、あなたの背中 まどろむ寸前のような 匂いに遠退く意識の中でも 浮き上がる輪郭 その背中もきっと 薔薇の香りがするに違いない 甘く切ない 熱を持ち始めた距離 このままこの時を ささやかな願いに またいつか そう言ってかげろう背中 約束はしないで欲しい 夢見てしまうから 赤い薔薇、白い薔薇、そしてあなた 紫の薔薇、黄色い薔薇、そしてわたし つかの間描いた想いを 至福の庭に鎮めて 纏った匂いは灰の空へ還した 濡れた足が ふたたび重たくなって 六月の雨は止むことを知らない ---------------------------- [自由詩]真夜中に沈む月/LEO[2007年6月26日22時44分] 続いた雨の音階は消え 訪れた静かな夜 問うこともせず 答えることもなく 過ぎてゆくだけの影に 狭くなる胸の内 満たしていたもの 耳に慣れた雨音と 肌に馴染んだ湿度と それらの行方をさがして 暗闇に預けた瞳の端に 光るものがある 薄れゆく雨雲を分かち 天の星、月明かり 雨の滴は夜光となり 無言の夜に点される か細き光明は この胸元にさえ届けられ 私もまた ひとつの夜光となる 眠れぬあなたも ひとつの夜光となって 互いにひきあう その片隅で 月は暮れかかる ---------------------------- [自由詩]紫陽花/LEO[2007年7月14日23時31分] 燦々と そそがれる陽を うけての青 朧々と つめたい雨に うたれて紫の 移ろう色は 六月と七月の境界を曖昧にして 暦がめくれたことにさえ気づかず 深い場所で息する哀しみに黙するばかり ---------------------------- [自由詩]紅い魚/LEO[2007年7月15日23時47分] 耳に雨音 瞳に滴 触れるたび 肌はやわくなってゆく 身じろぎもしないで 硝子一枚に隔てられて 雨に囚われているのだろう 雨を除ける力など もってはいないから ここでじっとしているよ 硝子を伝う滴が頬を縫う あなたから見たら 泣いているように 見えるかもしれない 雨は何色かしら 昨日の小鳥は鳴くかしら 他愛ない想いが 硝子の向こうに 浮かんで消えて さらにやわくなった肌が うるうるしている あなたの目には 沈んでいくように 見えるかもしれない それならいっそ雨に 足先で水を蹴って魚になろう あなたの睫毛の端を 掠めて泳ぐ 尾びれの美しい 紅い魚になろう 雨が上がっても 紅い鱗が背中に残っていたら あなたはきっと笑うだろう ---------------------------- [自由詩]碧い魚/LEO[2007年7月17日19時27分] まあるい泡を ぷくりと吐いて そっと寝床を抜け出す 水の流れは 暗いぶん少し冷たい おびれとむなびれ ぷるぷる舞わし 水草の間から 夜の空を見上げた 真昼の水面を きらきら照らす 陽の光と違って 静かな瞬きをみせる星々の 確かな結びを今宵もなぞる 星の下で 時を送るものは 他にもいて 水辺でダンスを楽しむのは 蛍だったり 畦で歌を披露するのは 蛙だったり 気の早い鈴虫が リリリと鳴いたりもする ほらいま囀ったのは ほととぎす キョキョキョ キョキョキョ 暗闇のなかに 高く響いた それぞれに 夏の夜は案外いそがしい ひと通り星の形を模って 満足するころには 東の空も明るんでくるから 寝静まっているものを おこさないように さっきより緩やかに ひれを舞わして 寝床にもぐる ふるる ふるる せびれの影に流れ星 碧い鱗が いつか夜空の色とおんなじに 深い深い蒼になるといいのに そう願いながら まあるい泡を ぷくりと吐いて 眠りに就いた ---------------------------- [自由詩]八月のエピローグ/LEO[2007年9月11日21時16分] ほどよく冷えた桃の 皮が剥けるのも 待ちきれない様子で 傾いでゆくあなたの 日焼けした首筋 滴る果汁か それとも 戯れの残り香か 甘い匂いが 鼻腔の奥に絡んで 涙させる理由 洗われたシーツの なお一層の白さと 眠ったあなたの 影と結んだ約束と わずかに残る大輪の向日葵は いまだ蒼い空への道を指していても たぶんどこへも辿り着けない 知らなかったこと 知りたかったこと 同じではなかったと 気づいた今 静かに閉じる夏は 白く白く焼きついて ---------------------------- [自由詩]彼方/LEO[2007年9月26日12時30分] いま あの日、に立っている 右手をのばし 空の高さを測るきみ 手招く左手は 薄の穂の間に 見え隠れして 黄昏の 目で追う背中には 金色の翼があった 喧嘩しても すぐに忘れるくらい ぼくら幼くて 紅の頬に 黒髪を踊らせ 翔けていた どこまでも どこへでも 行けると信じて 波打つ薄の原は川のよう 変わらぬ景色に 時の移りは見えなくても 無邪気でいるには ずいぶん遠くまで来てしまった 流れてくるもの 流してしまうもの 対岸のきみには見えるだろうか 答えて欲しい、いま あの日感じることの無かった冷たさで 風が鳴いている ---------------------------- [自由詩]凸凹(ひとつ)/LEO[2007年10月2日20時43分] 哀しみのあなたの窓辺に秋桜いちりん ――凹 灰色に覆われた低い空に 押しつぶされて 想いと呼ぶには小さな いくつもの欠片が 重たくなって 沈んでゆくだけ 雨ならなお一層 すこしの慰めに、と 硝子窓の 滴模様に指をあて 見えないあしたを描いた 窓の外には 雨にぬれた秋桜いちりん 花びらは 淡いさくら色をして ――凸 道すがら 秋桜を一本手折りました 花びらが くるくる風にまわって 笑っているよう それは 微笑んだときの あなたみたいに やわらかでした 哀しみの あなたの窓辺には いまはただそっと 見つけたら やわらかさだけが 届けばいいと ことばの代わり 置いて行きます ――凸凹 晴れたら 秋桜を見に出かけよう 丘のむこう 風の遊ぶ場所 くるくる、くるくる 秋の陽に包まれて 哀しみさえもとけるから 淡くとけてゆくから 微笑み交わして 触れたらきっとやわらかい ---------------------------- [自由詩]ring/LEO[2007年10月30日0時16分] しずかに秋は しずかに染みて 紅柄色に染まった桜葉が 夕闇の風に揺れ落ちて 歩む速さで声を聞く かさこそ、かさこそ、 いつかは土に還ろうと 囁きあって 紫、薄紅、白、青藍 雨に詠った紫陽花も かたちを残し色褪せて 移り気だった面影を 閉じて仕舞った傘の内 主のいない蜘蛛の巣の 端に絡まり黒アゲハ 片羽だけでも思わせて 逃げ水の先に消えた 葵の夏を 深まるにつれ 無口になってゆく秋の日毎に 書き記す言葉もないけれど すこしの名残りを見つけては 心にとめる いつかふたたび 華やぐ日が廻りくると知りつつも ---------------------------- [自由詩]百年樹/LEO[2007年11月18日23時19分] ちいさな雲を いちまい、いちまい、風が縫って 空に真っ白な衣を着せている あそこへ往くの? 問いかけても もう動かない唇は冷たく ひかれた紅の赤さだけが 今のあなたとわたしの今を 繋げているようだった 人と人の手が手向ける花々で あなたは四季の色に飾られていく わたしといえば 空が上手に模様を描くから ずっと遠くを見たままで あなたのために 何かひとつをさがして あなたの生きた年月は 大きな大きな木のよう 多くの枝を伸ばした証に たくさんの花をつけ実を結び それらあふれる涙で 扉は静かに閉じられた 最後にみたあなたの紅と同じ色 陽にかざした手にも 継がれたひと筋は わたしの中にも流れて ありがとう 言えなかった言葉 届けばいいと 空の白さ仰いでいる ---------------------------- [自由詩]イマージュ/LEO[2007年11月22日20時59分] 黄昏は 銀杏をゆらし 金色、降りそそぐ 風の音(ね)、葉の音(ね) 寄せては返し 伸びた影にも戯れて 落ち葉の色を並べて遊ぶ 孤独を愛しいと思うとき 胸の内を やさしく撫ぜた時の手は 流れのままに往き過ぎ 指先の凍えに現在(いま)を知る 振り返り見れば 背中に夜はすぐそこ 風の音(ね)、耳にさざめいて きみが恋しいと思うとき 背中を押され 踏み出す足は 右か、左か、 昨日か、明日か、 願わくばきみの下(もと) つっ、 と伸ばした指先に 始まりの蒼(あお) 降りてくる 足の先まで 降りてくる ひとり影を残して     ---------------------------- [自由詩]月を狩る/LEO[2007年12月3日23時56分] プラタナスの高い梢の先で まるい種子が揺れている 風の匂いが蒼くあるのは冬しるし 澄み渡る空気に月は銀色に光る 耳をすませば 眠る者たちの息づかいまでもが 聞こえてきそうな静寂 まだ浅い冬に 白い息はすぐに消えた うっすら影は足下に 纏わりついて常に共にあり 歩くたび 砂を踏む音と 衣擦れの音が しゃりり、しゃりり 背中の向こうに 流れてはまた しゃりり、しゃりり 幼い瞳には煌々と輝く月が いつも同じ高さであったことを思い出し 斬れない夜を往く 追いかけられて 追いかけて 月が笑ってる てらてら笑ってる 追いかけられて 追いかけて 影をお供に月を狩る ---------------------------- [自由詩]誰そ彼(たそがれ)/LEO[2008年1月19日1時38分] 薄紅そまる風の道 夕闇せまる草の道 落日の片隅に 佇む人の 瞳に映る翼の模様 羽ばたく視線は 彼方を知らない 澄まして聞こえぬ その名のみ 凝らして見えぬ その姿のみ 悲しく夜の訪れに 願いの数ほど 容易く点る窓明かり 星より近く 想うに遠く 優しさを隠して 鈍色おちる草の道 静かにねむる風の道 夜闇の中で 迷う人の 伏せる睫のその先に 朝(あした)の滴が 微かな産声をあげたのに 気づくのは ---------------------------- [自由詩]雪の朝/LEO[2008年1月22日21時40分] 遅く迎えた朝に 雲間から覗く空は アイスブルーの明るさで 粉雪を落としていた そのひとひらが 頬をすべり 手のひらにとける 捕らわれた夢から 抜け出せないままの体を 目覚めさす冷たさ 微かに 雪の重なる音だけがして モノクロームの 無声映画を 見ているようだった 決して止ることない 時間の中で いまこの時この場所だけが 切り離されたようにさえ 思えてしまう  夢はいつもかなしい  かなしいから  やさしさをたずねる 降り止まぬ雪で 足跡はすぐに消えると 知りつつも ひと足、ふた足、 まっさらな雪の原に 跡をつける 昨日までと違う 真新しい世界を目にして喜ぶ 子供のようだと 足先が悴むころに気づいて ふっと可笑しくなって すこし笑った ---------------------------- [自由詩]言葉無くして/LEO[2008年2月3日23時14分] 冷たい雨に 震えるきみの 肩を抱いたのは それもまた 雨でした 時に言葉は行き過ぎて 途方に暮れる長い夜 抗うこと諦めることを重ね いくつの哀しみを覚えたの その身を預け 降りしきる雨が じきに雪に変わっても それとも止んで 明日には晴れたとしても きみに寄り添う手は たとえば今日の それは雨 夜更けの街に留まって 今日と明日の境界を 曖昧に消しさってくれる 今はそれをやさしさと 信じることにして わたしも同じ雨に抱かれる アスファルトに揺れる夜光は どこへも導かないけれど 見守る者の眼差しのように すこし温かい ---------------------------- [自由詩]夢うつし/LEO[2008年2月28日23時58分] リネンの隅に 残された匂いは 何を恋しく思わせる 布地の波の 泳いだあとの曲線に 躯を添わせ ぬくもりを懐かしみ 満たされた想いと 満たされなかった願いと 抱きしめ夜を往くのだろう ひどく 時間はゆっくりで 時計の針の 1/60の刻みを 耳が追う 時間の流れは 常に等しいはずなのに 何故こんなにも 静かすぎるのだろうか さみしいのは誰 曇る硝子窓に 夜灯りはちかちかと 儚くも 七色に光る蛍火のよう まどろみのなか それを頼りに 逢いに行く もう一度 何度でも その顔を知りたくて さみしいのは たぶんきっと‥ ---------------------------- [自由詩]風の人/LEO[2008年4月3日1時29分] 灯りは星のひとつひとつ 身動ぎしない風景の その一個となって 孤独と添うには 十分な夜である 静まり返る街角の 路地の向こうから 細く聞える口笛は 独りの耳にも届いて 胸をふるわせた それは哀しみ あるいは呼ぶ声 独りいるはずのこの夜にも 確かに誰かの 何かを感じて 眠り容易く安らぐ者と 淋しさに囚われ彷徨う者と 交わす言葉は沈黙の 背中合わせに 白紙のままの朝を待つ ---------------------------- [自由詩]a shooting star/LEO[2008年4月25日23時08分] 雨の降る夜は 無口になって 過ぎるときと 訪れるときを 見つめるばかり 触れるのは 雨の音と 薫る灯り 窓辺においた影を 揺らした あなたの夜も独り 何を見つめているの たとえば同じように 窓辺にあっても それぞれに想いは 違った温度で 繋ぐのは雨 隔てるのも雨 そして 重ならない夜 雨音 灯り揺れ 窓辺においた影は 雨に奪われて 無口なまま 見えない星に 願いは あしたの天気 それとも あしたの行方 ---------------------------- [自由詩]春おぼろ/LEO[2008年5月12日23時57分] 素足に若草 浅く緑の 木々は萌え 目眩するほどに 花曇りの日なら なおのこと 生まれたてのそれらは やわらかに躍る 耳に愛しい鳥の名を 春になるたび あなたに訊ね 匂い淡しい花の名を ひとつ覚えて ひとつ忘れて 幾たび春は 変わらぬ眩しさ やまぶき花に 目をくれて 泳いだ指先 棘を食み つっと 滲んだ一点の赤 痛み 消える頃には いまを忘れ おくる季節の 間に間に つぎ来る春を 懐かしく想う ---------------------------- [自由詩]雲雀、鳴く/LEO[2008年6月7日22時17分] この季節(とき)こそと 一点の曇り無く 嬉々として 降り注ぐ陽光 風おだやかに 黒髪戯れる 木漏れ日揺れ うつらうつら 遠退く意識の中 手招くまぼろし 誘われるまま 白濁の中 ひとつ影が笑う それは懐かしいきみ 風に等しいその姿 腕に抱くこと叶わず 空に近しいその名前 呼んできみに届かない 留まる時は 哀しみの 夢中の内に 影は消えゆく 微睡み醒めて 束の間のきみ 虚ろなままの 視線の先は 雲ひとつ無く 眩しいばかり 高みには 雲雀の囀り もう一度 きみに逢いたい 叶わないと 知りつつも 想いは翔(か)ける 雲雀の声より高く ---------------------------- (ファイルの終わり)