秋葉竹 2020年6月28日17時20分から2020年10月22日23時38分まで ---------------------------- [自由詩]金魚の音/秋葉竹[2020年6月28日17時20分] 夏に買った 金魚鉢は 金魚を飼うための 金魚鉢なのに、 いまではもう 青空を飼ってしまっている。 いつか知らないうちに 金魚が青空に 溶けてしまったという、 嘘みたいな嘘を彼女たちに聴いた。 だから冬のあいだずっと 金魚は生きていたのですよ、 って、 彼女たちは云い張るんだ。 ホラ、夏至も過ぎても あなたは 微熱に悩まされているでしょう? 金魚の姿をみたくって。 でもね、 いまも深夜。 あなたが眠っているときたまに ポチャンッ! って、 その青空から 生きている音がするのですよ。 って、 彼女たちは嘘をつくんだ。 ---------------------------- [短歌]アオハル春雷/秋葉竹[2020年6月28日21時07分] スカートのすそひるがえし走りさる君の背中がただ真っ白で 十七才忘れられない最強のあたし恋などバカにしていた この胸のこの心刺すこのナイフ透明な血をドクドク流す詩 真っ黒なコートをまとい生きて来た臆病ものと自覚はしながら 月の出た黄昏の街薄汚れ、眩しい気持ちを棄てなきゃ嘘でも よく知らないけどおへそで茶を沸かすくらいな恋で遊んでみたい 獣道まるでふたりの愛の巣へたどり着く道、険しく卑怯な 神さまを呼んで頼んですがりつきそれでも虎は肉食なんだよ 真っ赤な血すする鬼ならまだいいが醜いこの身を食うおまえ、なに? ほお紅をさしてあなたを待っているバカボンみたいな純粋な目で 寒いねとあたしにその身を寄せてくる部屋の角にはサボテンの花 正しい詩なんて知らないもしそれがわかってしまえばかききって死ぬ ---------------------------- [自由詩]泣かない誓い/秋葉竹[2020年7月1日5時06分] かすかな不安に怯えていたの まどろみのあさ 白いレースのカーテンは揺れ 陽はあたたかくこの部屋へ 安らぎを落としていたわ 綺麗な花よりも綺麗な花瓶がテーブルに置いてあり そのうち枯れてしまう花びらが落ちるのが怖いので わけもなく立ち上がり小さく口を開けて 花びらを口にしながら 人生の誤りを認めている からもう責めないで くださいね かすかな不安に怯えていたの また避けられない逃げ腰がいつわたしを襲うのか わからないままだと生きてゆけない苦しみを だれからも理解されないことだけは ずっと昔から知っていたし今も知っているわ そして新しい光をみたときに 避けられない苦々しい嫉妬が いつまでわたしをみないふりをしてくれるのか それが枯れ落ちてしまうまでに知りたいことの 最後の希望のようだから それまでは 泣かないで 笑っているんだと誓うわ ---------------------------- [自由詩]この世界で踏みにじられたものたちへ/秋葉竹[2020年7月2日20時46分] ひとの望みはいろいろあって 爪を立ててその本音を 引っ掻きたくなるのもある 世の中にはそんなライアーが 数えられないので 踏みにじられたやつはみんな 静かに笑ってるんだ でも、泣いてるんだ お花畑に そんな人たちを拒む 強い意志があり だから花は美しいのだと 伝えているのだと知ったとき 知ったらなおさら 死にたくなるんだ なんの救いもないこの世界に 愛いがいにわたしの ありえないたましいの穢れを 浄化してくれるものなど ないのだと 知っている それを 醜い愛と呼ぶことも はるか昔の幸せを忘れたことも 知って佇み空を見上げる 奇妙な寂しさ苦しみを 愛した 瞬間の春雷 この世界で一番踏みにじられたものたちよ きみよ 悲しみの果てで羽ばたけ ---------------------------- [短歌]白痴/秋葉竹[2020年7月10日7時11分] 蜃気楼 その名で呼んだ色街に 架かって照れてる、夜の虹かも その過去の 醜聞まみれで死ぬ人生、 夜のうわさの拡散する街 このなみだ 風の奏でる優しさで 洗い流して、くれはしないか 絶望が おき捨てられたおとといの 流木刻んで、白鳥を彫る 造られた 優雅に羽ばたく白鳥を、 《最果て夢》と、呼んではダメか なみだ拭き 白痴のきみの瞳を守る 折れることない意志になりたい ---------------------------- [短歌]翼が欲しいぞ、神さま/秋葉竹[2020年7月15日22時14分] 救いの手、 ここがホントにありがとう と言える部屋だし、空気が好きだし 憧れる あおぞら見上げ眩しくて まじめに翼が欲しいぞ神さま いえないよ ずっとまえから好きなこと ガラス窓には、しずくが流れる 自画自賛、 大事にするのはあの頃の じぶんを嫌った呪いがあるから もう一度 欲しい自由なフリをして 星のしたでも眠れた青春 その一言で 蒼いガラスが砕け散る こんなになるまでおまえにすがった 道外す 罪を知りつつ柔らかな 胸に顔埋め、泣きたくなるんだ ねぇ、いまの 心をホントと思うなよ そうはいかない、花一匁 ---------------------------- [自由詩]純愛物語/秋葉竹[2020年7月17日5時18分] きみはときおり 溶けてしまうね…… 信号機に架かる 朝の虹を ながいあいだ眺めて お腹から 消えていく 涼しくさわやかな風も 去っていくみたいに 海のなかの魚のようで 水色のなみだはみえづらく だから幸いなことに ぼくは泣いてないんだよって 口先だけで微笑んでいられる 小さな地震みたいに 心は揺れるけれど 足の裏の痛みが 最後に生きている証になった砂浜で ふと、 さみしいクジラが打ち上げられた 現実を視てしまった 寂寥に襲われる それは ぼくのせいなのか 麦わら帽子をなくしてしまった 少年だった頃の 写真の中のぼくは それでも笑っていたから ぼくはいまは冷たい風が好き 夜の砂漠で北極星をさがす ヒトコブラクダにも似て 溶けていなくなった きみを探して 水色の目を濡らす きみが溶けてしまう わけが知りたいだけなのに…… ---------------------------- [自由詩]陽炎の歌/秋葉竹[2020年7月22日2時31分] くらい?を引きつらせて うつむく麦わら帽子、 伸びた首すじに圧しかかる 逃げられない、罪の意識。 戦場に投げ捨てられた 100を超える銀縁眼鏡たち、 鋭く回転する、音を立てて飛ぶ 裏切りの見えない弾丸。 刻まれる時を止める悪意と 呪詛を捻じ曲げる激しい息遣い。 なだれ落ちる悲しみを音符にし、 世界にただひとつの醜い掠れ声で 疼く自傷の手首を、胸の裡に隠し 歌い上げるのだ、陰鬱な陽炎の歌。 ---------------------------- [短歌]事実無根の、幸福でした。/秋葉竹[2020年8月5日3時32分] 逃げたのはおそらく一番人生で大切な鳥、夢が横切る これ以上吐き続ければ笑顔さえ失くす気がするじぶんへの嘘 黄昏に卑屈にならぬよう歩く知る人もなき異国の街並み サヨナラを言われた暗い隧道で、哀しい笑顔がそれでも綺麗で 告白もできず親しい友として握手し別れた小雪ふる駅 「来年は妻と別れる」イミテーションゴールドみたいな嘘を吐かれる もう君に出逢えただけがラッキーと思うしかない、悲しみの果て 黒板に大きく書かれた相合傘、事実無根の幸福でした。 ---------------------------- [俳句]なにを犠牲にすれば、山頭火になれるのか?/秋葉竹[2020年8月10日9時15分] 自由律? むろん山頭火さんの句に惹かれて。 ただの、マネ? NOよ。心からの、オマージュ! あの猿求めて風の中あるく 撫でたひたいが狭い猫か まちが紫陽花ばかり自転車で走る 老いたのか心よりもからだの痛み 庭の横に小さな白い花が咲いている 美味しいお水を飲む二日酔いの喉 なにものにもなれず老いた顔の皺 じぶんいがい邪魔になる血縁捨てようか まっ正直に言っていいなら寒い ---------------------------- [俳句]お酒に溺れても、山頭火になれないのか?/秋葉竹[2020年8月10日9時16分] 自由律? イエ〜スッ! むろん山頭火さんの句に惹かれて。 ただの、マネ? NOよ。 心からの、オマージュ! その、第二弾ッ! ウシガエルめの鳴き声やまない夜 あぜ道狭く足ふみはずす 街ではビル風のなかをぐるぐる回る 汚れたからだ冷水を浴びたい テーブルに小さな白い花をみつける 雨音を楽しめる酔いもある なにかが押し寄せる胸、厄介なやつみたい じぶんいがい好ましくみえる檻のなか 寝ころびみあけた天井にシミ 正直になれない街を歩く ---------------------------- [俳句]そらとぶ骸骨/秋葉竹[2020年8月18日2時51分] そらをとぶ骸骨か、煙かわからない 死んだあとを焼き場でみた 昼なのに、傷のある音を出す 濡れた髪を切りたい たち止まり雲を見る、ひとは歩いている 夜なら大丈夫、泣く 夜に水を飲む音がする、冷蔵庫の扉の音も ────────────────────────────────────────────── ちょっと不眠症(かな?)で、午前3時くらいまで起きている。 あしたも仕事だから早く眠らないと、 と思うけど、眠れない。 ユーチューブで、英語の聴き流しで 英会話が学べるみたいなのを、聴く。 これなら眠れるかと思って聴いていたが、 けっきょく眠れず、 起きだして水を飲んで来た。 で、俳句を作ってみた。 そんだけのこと。 さぁ、もう、眠りましょう。 ---------------------------- [自由詩]ある夏の夜に、砂浜で花火をした。/秋葉竹[2020年8月19日2時41分] そらの光が、しろいのは せかいの悲しみが、混ざっているから。 夜になれば、小雨が降り ほおりだされた悲しみが、忘れられている。 陸にうちあげられるつめたい海水よ、 あらそいの残骸を、いつまでも、伝えておくれ。 砂浜をゆく、茶色いおさない蛇が 海から生まれ出て、迷わず街へ向かってゆくのを、 斜めに傾いた、砂に埋まった人形の、 青いガラスの瞳が、みつめている。 瞳から雨水を、流しながら。そのとき、せかいに、 しあわせが消えたとも、 神さまに祈らなくても、 しあわせになれるようになった、とも、聴く。 あらそいを好きなひとなど、 いなければいい、夏に、 いつまでまてば、 あらそいの悲しみは、癒えるのだろう? 花火した、夏の夜、そんな心配をした。 いつだって、線香花火は最後にするんだって知ってる。 ---------------------------- [俳句]嘘つく、啄木鳥/秋葉竹[2020年8月28日5時55分] 君の骨をみたことある、なんて嘘をつく 部屋に入った深夜、床にすわりこむ あたらしい夜を探して路地をゆく 生きて、辛くても、啄木鳥 瞳には、あのころなぜか、闇ばかり 這い寄る日常の息苦しさと飛沫(しぶき) 月光に冴える、バルコニーの空き瓶 酔うのは、忘れたいから、ころがす銀杏 本よむ午前3時、遠くの道にトラックの音 くらい宇宙だから、くちづけをください 瞳の奥に君の本当をみた、なんて嘘をつく ---------------------------- [自由詩]なんだって、読まれ読まれて、なんぼなら。/秋葉竹[2020年9月1日20時30分] 《そこ》では、 だれにも読まれないから、 詩を、 詩のサイトに投稿した。 詩、だから、 詩のサイトでは、 読んでもらえると想った。 でも、そこでも詩は、 読んでもらえなかった。 なら、投稿を止めようと想った。 でも、面白かったのは、 それでも、詩を書くことを止めようとは、 一切想わなかったこと。 表現したい、という あふれる想いが、引きも切らず、 ぜんぜん止まらなかったこと。 なら、投稿を続けようと想った。 そしてこの八月で 三年になる。 詩、は 詩、の共同体でしか 読まれない? そういう、時代も、あったでしょう。 でも、いわゆるネット詩が、 詩を世間に発表する人の数を 何万倍(大袈裟だなぁ)にもした時点で 実はそこに 他の人に読まれる詩を書く 方法はあったんだ、って気づく。 考えて、みよ。 僕も未だに暗中模索ちゅう、 なんだって 読まれ読まれてなんぼなら 読まれるために透きとおりたい 2020.8.20 花澤悠 ---------------------------- [川柳]秋の蛇口/秋葉竹[2020年9月24日6時25分] 止まらない口から熱湯この気持ち 上を向きみんな口あけUFO 心臓をぎゅっとにぎられ恋である 貼り紙を貼りたいほどの横恋慕 針を刺し縫いたいほどのスキャンダル 銀の月シャランと鳴いて秋の風 その蛇口固くしめすぎ出ない水 ---------------------------- [自由詩]一過/秋葉竹[2020年10月10日13時10分] 怒りより大きな声で否定され なすすべもなく下を向く 地面に穴がひらくのを 夢みるように待っている 罪が同じだと歓びも同じなのかな 酔っ払ってもひとり月見上げ 翼の折れたカラスは泣いて 故郷の灯りをただ夢にみる 生きることが大嫌いだけど そんなこと恥ずかしくて大きな声で叫べない わたしはわたしが嫌いなのかなぁ ---------------------------- [俳句]紅葉の天ぷら/秋葉竹[2020年10月22日23時38分] (自由律) 蝉の鳴き声もしない、蟻は蛇行する あぜ道で蛙の合唱を聴く 街から逃げ、暗く笑った目 一息に冷水を飲んだ、窓に月 花を踏みつけたあとで気づく 国道の水たまりを過ぎるタイヤの音 来るのは久しぶり、胸が痛い恋 いかがわしさ、好ましくみえるひと 眠れずイヤホンでユーチューブを聴く 正直になれないなら、理由はいつから 紅葉の天ぷら、箕面の山でだけ食べ 山道を歩くひとは夜が好きな嘘 ---------------------------- (ファイルの終わり)