鈴木ぽろ 2021年6月23日18時44分から2022年3月6日17時28分まで ---------------------------- [自由詩]駅前の詩/鈴木ぽろ[2021年6月23日18時44分] 駅前では 公衆電話が姿を消した さびしいね あなたが途切れさせた連絡網 伝言を覚えたあの子が 家族に話さずに旅立っていくよ 改札口はシュレッダー ぼくたちを他人にして 誰もが無言で通りすぎるから 駅前のロータリー 寂しそうな車が ひとり静かに回ってる 無口なきみへ いってらっしゃい 近すぎて見えない駅は あなたの幼い夢だった ---------------------------- [自由詩]ホームレスの詩/鈴木ぽろ[2021年7月2日14時58分] さびしい駅裏に倒れてる自転車 他人が助け起こしたら 叱られるよ 今日も明日も 雨ばかり 神様に優しく叱られて死んだ人たち ぜんぶ透明な水に流れて 死因は綺麗な詩になってしまう あなたの痛みは 記録にも 記憶にも残らない どうかぼくを許してください ---------------------------- [自由詩]夕焼けのニュース/鈴木ぽろ[2021年7月3日23時09分] 夕焼け 遠い空の向こうに 小さなニュースが消えていく 戦争について語る夕刊紙 読まないまま 駅を降りて 選挙の演説をしている人たち 何も聞かないまま 通りすぎて 駅前のロータリー バス停に並ぶ人々 孤独な車がぐるぐる回りながら 止まる場所を探してる 私と出会う人たちは本当はすれ違うだけなこと 綺麗な道が舗装されて 違う目的地に向かっていただけだとわかること 悲しみとは何か違う。対向車線を乱暴なジープが飛ばしていって 私は彼らに挨拶したくないのに さようなら と言えば 世界は正しくアルバムになってしまう おやすみなさい 終電を超えて 駅に取り残された職員の人 夜の都会に 私が見たこともない明かりが点っているから 今日も 私は世界を独り占めできない ---------------------------- [自由詩]将来のゆめ/鈴木ぽろ[2021年8月24日15時45分]  世界で 私ひとりができない逆上がりが  夕焼けの色を染めていく  誰も 見つけられない 鍵穴の向こうに  通り抜けていった身体の痛み  まっしろな手紙を 下駄箱に添えた     きみの指に すべり落ちた飛行機  放課後のひかりで 壊れてしまうから  証明してよ   ゆめは いつまでも同じ光でいると ---------------------------- [自由詩]孤独/鈴木ぽろ[2022年3月6日17時28分] 自転車で駆け出した 幼い私のよろめく背中で 静かにそっと離された腕 あの腕のやさしさに ずっと気付けなかったから 私は今日まで 独りきり  ---------------------------- (ファイルの終わり)