半知半能 2005年8月23日22時45分から2009年1月22日13時15分まで ---------------------------- [携帯写真+詩]並んでランデブー/半知半能[2005年8月23日22時45分] ぴったり並んでランデブー  足元なんか見ないで  いつか消える日まで 二人のラヴ 振りまいていくわ ---------------------------- [自由詩]始まりの回想  【一】/半知半能[2005年9月4日13時35分] ゆつくりと 首を すげかへて さみしさ を あなたと わたくしの合間に横たはる、あの さみしさ を  その一端でも 共感しやう 静かなあなた の 夢見言が わたくし の (海、) へと 甘美な原子を  投げ打つて くるのだ そして やうやく わたくしは かすかな夜の中 に わたくし自身を見つけ 子供のやうに (眠るのだ) 、 ---------------------------- [自由詩]「誰の」/半知半能[2005年9月9日23時57分] いつか彼の匂いを忘れることを 否定は出来ずに 私はただ台所に立って皿を洗っている 泡を水に流しては 交わした言葉の残影を何処へ置いてきてしまったのか 思い出せずに いる まるで                   「まるで   。」 何だったのか 分刻みに色褪せる記憶を せめて乾かさないように 涙を流して しまうよ あぁ  彼の残した遺言は短く まっている と 真白い便箋に カリリ カリリ と 細い字で記されていた そんなことも あった気がした ---------------------------- [自由詩]吸気/半知半能[2005年9月14日21時47分] 頑張る という言葉に替わる何かを ずっと探していたのだけれど。 上を向いて 足に力を。 ---------------------------- [携帯写真+詩]2つで300円。/半知半能[2005年11月26日17時27分] おっきいの一つで250円 ちいさいのが一つ200円 「おばちゃーん、おっきいの一つちょうだい」 「あら、小さいのしかないみたい  2つで300円にするけどどう?」 「うーん、じゃあそれでー」 はふ 夕焼けのとろけるような甘さ 秋の暮れのいい香り ひゅーと 風が吹いていった 寒い分だけ 暖かい ---------------------------- [自由詩]飛行機雲が/半知半能[2005年11月27日15時25分] 飛行機雲が伸びていきます 大きな空を見上げて 残した軌跡に追い越されぬよう 空気を切って伸びていきます はじまりはいつだったか 忘れられた原点が 今は水蒸気の一粒となり 尾の端から融けていきます 飛行機雲が伸びていきます 団塊の大雲からともがらに別れを告げ 成層圏の刺す冷たさを突きすすみます いつか大気のどこかで一つになることを信じる 友よ 私の道が見えますか 飛行機雲が 大きな風 伸びる雲 周りが冷たいからこそ 出来ていく白さはより映えて 照る太陽 伸びる雲 そこには何ものも 隔たりはなく ただ確かめられたつながりがあり 伸びていきます 雲を見上げる人々は ある人は暖かく あるいは寂しげに その前途の正しいことを祈り ハンケチを振る 一本の飛行機雲が あの人の この人の 思いを背に乗せてさらに 伸びていきます ただ すすむ先には青い広がりだけが すすむ先には期待と恐れだけが 飛行機雲が伸びていきます はじまりはいつだったか それは遠い昔の際の空 真っ直ぐと貫く白い道 終着にはまだ 早いよう ---------------------------- [自由詩]林檎葬/半知半能[2005年12月2日22時48分] (中央から濡れていく      ひりひりと) 赤い林檎を剥いて がぶりと噛み付き一口目 昨日の出来事 不思議な果実の甘さ が 歯に沁みる 涙が (ひりひりと) 二口目 には 咽喉が焼ける 静かに出来上がった誰も居ない空間が 電撃ヲ走ラセル 一瞬だけ がぶり 三口目を 飛ばして四口目 引火 追い駆けな かった 26時 電車の通る音 の様な  物 伝導熱の逃げ残りが空気に浮かんでは赤くなり 熟れて堕ちる前に甘く香る がぶり がぶり が ぶ ri( ) 五口目に虚空を噛む 戸 残った靴下 唇  (芯は捨てないでね)  果肉を嚥下して胸の中で六口目 通りすぎた酸味を惜しんで 泣いている  がぶり       赤い  林檎         不思議な    味  がぶり     林檎        赤い       不思議な   味    がぶり      不思議な     林檎        赤い     味     がぶり  不思議な    林檎  味 赤い 君 が 行 っ て し ま っ た 短い回顧を 真空に閉じ込めて 三角コォナーに放る (gaburi) 簡単な葬儀 謝らなくても良かったのに 寄りかかった白い壁に 林檎の赤い爪 ---------------------------- [携帯写真+詩]かます/半知半能[2005年12月8日21時16分] 食卓にいて良い顔じゃない。 明らかに二、三人?ヤってる"顔だ。 僕は気づかれないようにそっとテーブルから離れて母に言った!! 「お母さん、し、醤油を!!!」 ごちそうさまでした。 ---------------------------- [未詩・独白]自分だけ地震 〈即興版〉/半知半能[2005年12月22日0時02分] この間から ヘッドフォンで括った僕の世界は なんだかひどく不安定で 1日1回  揺れる 大体震度2くらいの 初期微動 どこかで 誰かが僕を呼んでいるような気分 短い電信をキャッチして 僕の心が揺れる 一回きりの大きな鼓動が 今日も僕に生きろと 言っている ---------------------------- [自由詩]自分だけ地震 〈完成版〉/半知半能[2005年12月23日16時58分] この間から ヘッドフォンで括った僕の世界は なんだかひどく不安定で 1日1回  揺れる 大体震度2ほどの 初期微動 あれ 今揺れませんでしたか                      いいえ 揺れたと思うと その真偽を確かめるべく 電灯から吊るされた一本の白い紐を見る ぴくりとも動かないそれの奥には 一体の着物をまとった紙人形 何も描かれないその真白い顔と ふと 視線があってしまったように感じては 妙な気まずさを覚える 揺れてるのは僕だけなんだってさぁ ただ どこかで 誰かが僕を呼んでいるような気分 短い電信をキャッチして 僕の心が揺れる そんな 夢だったろうか 一日一回きりの大きな鼓動が 今日も僕に生きろと 言っている 自分だけという 自覚が 必要である ---------------------------- [自由詩]季節のさなぎ/半知半能[2006年1月19日12時29分] 短い冬が終わりを告げる頃 街並みの全てが水平となり 凍り損ねた思い出たちが 空気の底に溜まります 両手を器としてそれらをすくい 私の体温を少々与えてから飲み干すと 薄氷色の街並みが 私の内面と数呼吸で入れ替わり さわ と さわ  と 私の内にたおやかに糸を張って 季節のさなぎとなります そうして 短い冬は季節の合間の空白を伴い 優しくなり 春の香りを私の頬に宿すのです ---------------------------- [自由詩]上げた声/半知半能[2006年2月18日0時32分] 何者かが 爪を立てて 音もなく乱暴に 青い森を切り裂いていく 静けさの魔性を駆逐して さざめく命の連続性を絶とうと 想像の上に生きてきた魔獣が 眼を覚ましたのだ それは自らが赤子のように儚いことを知り 同時に自分が世界のように不朽であることを知っている 朝が来る前にそれはあの峰の頂に立ち 翼がない事を一瞬悲しんで 存在の勢いを増す 誰か誰か(誰か誰か)と もしも獣のそばにそっと立ち 耳を貸すものがあったなら 口の中で声になる前に噛み潰される叫びを 聞いたかも知れない 轟く 轟く 轟く 猛烈に加速して光を追い越そうと 地面を喰らいながら 獣が獣の四ツ足を爆発させ 走っている 足で地面を雷鼓し 血の流れるもの全てを誅殺せんと 地の果てを目指す 己の牙を己の爪で研ぎ 己の限界を己の怒号で突破 ふいに 失速 海岸の途切れた場所で 獣は自分の名前を知って 死ぬ前に 消えた そうして今日も 朝が来た ---------------------------- [自由詩]月を見て泣こうよ/半知半能[2006年3月11日23時31分] Dada!有給休暇で北へ行く スケッチ帳片手に町の端を収集気分で切っていく そういう暮らしに憧れなくもないね今日の月はやや明るい あーまたどこか行こうか あー また どこか 行こうか またね そういうセリフ待っているよ 僕の右手は空いているから 誰かが隣に来るのを 待っているよ 今日くらいはいいじゃないか、そうそう また 大人買いしないか衝動を 低音の利いた音楽が流れるように 力入れて今日もキーボード叩く さく よう よう き! だだ! 俺は、だ! だだ! DADA! 夢見がち いらいらする してしまう 熱いスープで口を火傷してるみたい いい加減もうよせ世界どこまで時間を無駄にする ようく聞け世界 ようく聞け 俺の額からじりじり角が生えるよもうすぐ蝶が舞うよ その通り明日は雨だが月は出るだろうそのはずだ だが 泣きたいのは何故だ それは 君が居ないから 言いたい こと なんてね つまらないことばかり とりあえず千行の文句 とりあえず   とりあえず 千行の だだ! エゴの幸せを第一優先で行きましょう って言ったのは誰でしょう だだ!だ! ほらこうすれば触ることもできる なんて言って鏡に映った月を握る ねぇお願いだから嬉しそうにしないで欲しかった 掴めなくてもあの高い月を見てきたはずだった なんで不思議 要は泣きたい気分 隣に誰か居ない パーソナルゾーンにおいで あいつらはしばらく帰らないよ 月に行く前に一緒にあの屋上で泣こうよ あいつら気づくはずだよ 月に行ってさ あー月って光ってないんだなってさ 行っちゃったやつの背中見てさ 俺らは泣けばいいんだよ 俺らの背中を見て 泣いてくれる人が居れば それだけですくわれるよ あじてーしょんはきらいです 引用開始!終了!即座に不機嫌 そんなことしたって何もできねぇ そんなことを考えているうちに まつげの上に涙が光った 細い薬指で頬を撫でて 見つからないものを失った いつまでもこうしていたい 振り返らないで 起きないあいつらはそのままに 明日になったら誰も居ないよ 広がる円に誰もいれないよ ねぇ頭を撫でてみて きっと 寂しくなる 一緒に泣こうよdada 月の裏に楽園をつくろうよdada メールじゃ無理だねdada 僕の指は何かを探し続けているよdada 何かになってくれよ dada from tukinomieruokuzyou uhey worder ---------------------------- [自由詩]花散り/半知半能[2006年3月31日0時18分] 桜/が 咲いて/いる 色/素を失った 少女の/(染/み)の/いと、おし/ さ 吸い込まれた/瞳/と深呼吸 /数秒の(儀式)/ 殺生/の真理が咲き乱/れ 接吻/の後の 性感、 が/ 、 、  / 染/まらぬも/のだけが その/身/に熔けず そびえる、桜の下/の / 空に 声   鳴る、   宵      (   、)  / ---------------------------- [自由詩](タイムカプセル)/半知半能[2006年4月1日23時57分] 例えば今日で 例えば高校時代が 例えば終わるとして 例えば今日で 例えばあの日常が 例えば終わるとして (ち、ちチ、チチち、ちti) (チ、ちきュ、地球の、ちキゅうのみナ、ん、聞こえま、、か) (ち、ちチ、ち、ちtiチ) (ちきュ、地球、ノ、地きゅウのみナサん、kiこえ、、ス、、カ) つまらなかった日々を つまらなくなんてなかった日々を ついにタイムカプセルに入れる 積み重ねた光陰を 月の向こうのさらに向こうにある外宇宙に 連れて行くため 冷たい銀色の箱に つめた 手がなんでか乾いている 天球から見下ろす地球の上に 点々とした迷い足の跡がとぼけた星座を作っては 停止できずにまた 散っていく 夢に 似た 僕の  (とうとう) (とうとうこんな) (とおくまで) (とびつづけた) (とうとうこんな) (ところまで) (とびつづけた) (とおく) (とおく) (とおくから) (とおくからなるような) (とおくからなるようなおとが) (ときおり) (とどく) (とおく) (とおくから) (とおくからなるようなおとが) (ときおり) (ときおり) (とどく) (とおく) (とおく) (とおく) (とおくから) (とおくから) (とおくからなるようなおとが) (ときおり) (ときおり) (とどく) (とどく) (とどく) (とどいて) (とどいて) (とどいて) (とどいてくれて、いる) ---------------------------- [自由詩]杏/半知半能[2006年4月28日1時28分] あんずの木が 温かい午前の光に 淡く染められている あんな風に笑えますかと あなたは訊きましたね 異邦人と呼ばれる彼が いつまでも私のそばにいられる訳も無く いらだちと不安だけは いらないよと 言い残して 行ってしまった 売り買いできる言葉に溺れる時代に うつむいて見えたのはぐらついた足場で 嘘と見栄で危なく支えられている うまく生きて行くことだけを教えられた学生時代に 噂で聞いた隣町の巡業サーカスのことが 埋もれず時に思い出されるように 浮かぶ記憶の泡の中のあなたは 潤いを与えてくれます 笑みがこぼれる度に 永遠のようだった時を越えて おーいと 遅れてくる声に 思わず泣いたりしないように お日様の下で風に包まれながら 大きい笑顔の用意をして おかえりと言う日を 待っている ---------------------------- [自由詩]雑念ロンリーナイト/半知半能[2006年4月28日14時44分]   ランプを灯して路上駐車 ラヂオを聴こうか休憩中は 楽にしてチューンを合わせると ライブ盤の熱情 ラッパーの凶状 ライオンの鳴き声の慕情 ららら、なんて口ずさみながら聴こうか リンクした感性で僕ら繋がってる(はず) リップには次に言う言葉が踊ってる(はず) 凛とした外気が窓から入り リズムに合わせて通り過ぎる車のライトが揺れて光った 類推とかで出来上がった会話もさっきから ループしちゃってるって気付いてはいるけど ルビィみたいに輝くこの時間を終わらせてやらない 留守電だけで済ます予定作りなんてもう嫌だからさ 連絡ちょうだいねって君は 冷静なウッドベースの利いたジャズに乗せて言った レスポンスなんて待たないんだろうなって 零時を告げるチャイムを聞いて思った レースのブラ 今日もつけてるのかな 60年代の洋楽が流れてラジオが終わった ロマンティックとかそういった単語が君と一緒に車を降りた 蝋燭が溶けるみたいにあっけなく ロスタイムが終わった ロンリーナイトだねだって今夜は独りだもの     ---------------------------- [自由詩]灰虫想起/半知半能[2006年4月28日14時47分] 蓮の花に 灰色の虫が はり付いている 東から 日が昇るころにはそれは 干からびているだろうに 必死な鈍行路を 否定せず 飄々とある フランスには 不正を許さぬ検事がいたが 粉飾された終末への帰路を ふさわしい人生だと思っただろうか 不覚にも道端にて 腐乱した虫を 踏みつけた日もあった筈だ 平行した二生物の交差点 蛇の頭と尾の消尽点 霹靂たる些事に満ちた地球上 豊満な検事夫人はその日 本当の原因など知らずに 発作を起こして死んだ ---------------------------- [自由詩]仮想現実の実感/半知半能[2006年5月2日1時13分] かけら、そう、欠片だ 重なり合った煩雑な余情の群れが 核を持てずただひたすらに時間を伴って 固まっていったもの 形の定まらないその塊の欠片を抱いて 彼ら(僕らとも言えるだろう)は生まれて育ってきた 気付けば彼らの立つ場所にはいつも 切っ先のようなビル風が吹く 軋みあがる建築の谷間で きっと、という言葉をモラトリアムの合言葉にして何かを 築いてきた、つもり 空白 空転 空漠 空行 空想 空欄 空疎 空虚 苦しみのあるなしに関わらず 腐った気持ちは空に行く運命らしい 結果から言えば 軽率な墜落と満ちたりた時間があっただけなのだが 軽蔑と敬愛のはざまで 険しい視線を泳がせることが 賢明な大人になることなのか未だに 、 わからずに 幸福とはなんだ 「こんな時代」なんて代名詞は打ち捨てるべきだ これは至ってシンプルな問題で 呼吸困難に陥りながらも狭い空を目指して 小汚いビル風を身にはらませて飛びたてるかどうか 怖がらずに勇気を持てるかどうか 懲りずに、生き続けられるかどうか 心得なんて要らなかった筈で 答えなんてなかった筈で 言葉にするのも野暮な筈だった ---------------------------- [自由詩]欠けら/半知半能[2006年5月2日1時17分]   優しい顔の朝は嫌い やるせない正午の空気が嫌い やがてくる夕刻のわざとらしさが嫌い 夕焼けの終わりに ゆらりと一瞬揺れる炎は少し好き 酔ったように戯れる星光が好き よそよそしい太陽の熱が放射されるのが好き 余計なものが見えなくなるのが好き (ようやく夜が始まった) 妖精たちも眠りにつくこの時にこそ私は生まれたかった 夜は私の時間です 夜は私の時間です 夜は私だけの時間なんです 呼ぶ声に私は 良い予感もなくいつも通りに部屋の鍵を閉め 夜明け色の布団をかぶって少し泣いて寝た     ---------------------------- [自由詩]エイチピイ/半知半能[2006年5月28日1時00分] 誰もこない部屋で ひとりで待っている 時間がじりじりと 過ぎて 短い一日がおわり 部屋の前を通過する 人の数を ため息の分だけふやす 月がのぼる 部屋を抜ける風に カーテンがさざめく 誰もこないへやの 誰かが抱える 小さな段ボール箱には 大好きな飴とか 買ってきた新品のゴムボール また会おうねと 伝えるための古い便箋が ただ 入っている 月がのぼる 声が 聞こえたような気がして そっと立ち上がり 耳をすませる 隣の部屋で 知らない誰かと 知っていたかもしれない 誰かが いつまでか 話している 静かな部屋に 伝わる音がこだまして こだました 月がのぼる いつかくる 誰かを迎えるための たのしい歌を練習して 短い一日がおわる 誰かがこない部屋には 明日も誰もこない 誰かがくる部屋には 明日も誰かくる そういうことを 忘れないよう いつか書いたメモが 部屋の隅で くすんで 月がのぼる 少しの笑い声に 涙をながして 多くの生まれなかった別れを 惜しんでは やってこなかった一日を 繰り返し 繰り返し 一呼吸に三千の祈りと かなしみの既知感 欲望ということばの ひたむきさ 風が運んできた砂粒には 知らない場所のにおいが 月がのぼって 雲が時間をきざむ おぼろげに映った月の影が 部屋に落ちては かき消えていった       ---------------------------- [携帯写真+詩]空に立つ/半知半能[2006年7月19日17時32分] 今日の空はぬかるむ 沈むように空に立って 私は天空へ 憤りを捨てに行く ---------------------------- [自由詩]aquarium/半知半能[2006年9月26日4時02分] その水族館では一日に 水圧が上がっては下がって 悠々と泳ぐ魚達が苦しんで死んで いく、様子が 楽しめます、 ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ 彼女と僕の水族館めぐりが終わるとき それに合わせたかのように 水族館のシャッターが下りていく、 内側から漏れるひかりが だんだんと遮断されて 外側に 彼女と僕と魚達の死骸だけが 残った、 (時計が10時を指す) 建物の影から 黒い子供たちが駆けてやってきて 魚達の死骸を拾っていく 黒い子供が黒い指で触れた魚のうろこが やけに綺麗に子供達の瞳の輝きを反射して やがて、 入り口前の広場 彼女と僕だけがまた 残った 、 水族館から締め出され て、 どちらが内側外側だったかが わからなく なり、 上がったり下がったりする水圧 に 耐えられなくなって しまって、 誰もしゃべらないから 音が無いのだ、なんてことも不明、 そして 手を繋いでいたことを 思い出す。 思い出しては忘れ、 黒い子供はもういない いない まるで 浅い呼吸を覚えた金魚のような 必死さで、 我に返ると僕は彼女を拾って 家に帰った 大きな水槽で一緒に眠る、 次は君の番 ---------------------------- [自由詩]so/半知半能[2006年10月3日12時24分] だれかが 言いました 「言えない言葉をたいせつに 」 するとあかないはず の ドアが  ぱたりと ひらきました 明後日、 水曜日 すいようび すいようび みじかい 夏 の いちに ち の 透き間 まってたの まってたよ いつまでも まってたの 、 ね やさしいの ね みみ がやわらかい ね  となりにずっと いて いいですか ? いきも ゆっくり   と あさ い 夢の ような  きもち ただしい じぶんの 抱きかたを おしえて もらいました と  う   め い   、    と    う め           い            、     す べて を                     つつ む 静かなこみち で ひざし と  かげ  、 が               あるよ              ただここに いて まちがいのない 明日を むかえて 、 ね まってたの まってたよ そう ---------------------------- [自由詩]青方偏移/半知半能[2006年10月15日8時05分] 見つめ合って私ではないのがあなたです 目が覚めて一言目 やさしく囁いた 青い夢を見ていた気がする 一日の始まりに飲む苦いコーヒーが 私の中に少しずつたまっていく あなたそういえばコーヒーが嫌いだった 必死に私の胸の中の黒いどろどろを 青くしてくれてた そういう慈しみの方法を知っていた 今は私ひとり 部屋のドアを開ける 今日も私は世界の中に飛び出して「私」になる 失う記憶は無いけれど あったものが見つからない 一歩踏み出して 視界の端にあなたがいないだろうか 探している ふり 青い夢を見ていた気がする 青いあなたがいた気がする 青い季節は過ぎ 秋がありもう冬が来る 時々広がる澄みきった空に 懐かしい匂いがあって ふっと 手を伸ばして 沈んでいきたくなる 空に ---------------------------- [自由詩]創書日和「流」 誘い涙/半知半能[2006年10月31日10時45分] 流すというよりは こぼれるという感じ 涙が線を 引いていく まるで上から下へ 潤いを運ぶ川のように 一筋の流れがかすかに伝い (ぽ、と)                      すべての人々のために                        心に涙を満たして             やさしさの温もりと潤いを与えてきました                              ただ                 生れ落ちてからの時間を数えては               寒い眠りの床で闇に抱かれる一瞬前に                    あて先のない溜息をついて                            きました こぼすものがあるということは 溢れるものがあるということ 溢れるものがあるということは 満ちゆく器があるということ 満ちゆく器があるということは 触われる形があるということ 教わったというよりは 思い出させてもらったという感じ 涙が線を ふたつめ                       それは必然のようで                      しかし確証の無い約束                      漏れることなく誰もが                     気付けば隣に居る誰かと                          手を温め合え                              たら                 そのためにこの両手があるのだと                              信じ でも孤独                              でも 一粒でも涙 一粒でも流れ 一粒でも川で 一粒でも至る先は海 一粒でもまた空に上る 一粒でも大切な真実 気付いてもらえたというよりは 伝えるのを待っていたという感じ 涙が線を みっつめ よっつめ いつつめ                              でも                           わたしまだ 空に上れば                          帰ってくると 信じてる                             だから                            (ぽと)               (ぽと)               (ぽと)               なんでか                             ようやくわたし自身               素直に ねぇ いちばんに乾いていたのは言うまでも無く 誘い水に潤って 届けたかったものが ひとことめ やっと 流れ出して     ---------------------------- [自由詩]創書日和「雪」 雪睫毛/半知半能[2007年1月31日16時12分] 雪睫毛、って言葉を 貴方に送る手紙の冒頭に書きたくなって 意味も勿論分からないままに 便箋を箪笥から出してきました 「雪睫毛」 二〇〇六年 十二月 三十一日 大晦日 午前六時某分 おばあちゃんが鴨川の病院で 息を引き取った おばあちゃん やっぱりおばあちゃんはお婆ちゃんより おばあちゃんの方がいいですね、って そんなことを亡くなってから一月もたって思い立つような孫で 少し申し訳のない気分です 思い出や懐かしみを きれいな言葉にして並べることは 得意に思っていたつもりですが いざ始めてみると それもなんだか違う気がして こんな感じです 僕はおばあちゃんにはいつも敬語でした それでいいと思います 亡くなる一月前 僕がまだアメリカに居て 冬休みには帰国するかしないかなんて 呑気にもぼんやりと考えている頃に おばあちゃんは入院した 何度も入退院をしていたおばあちゃんでしたから 何とかなるだろう、なってほしい という気持ちを持ちながらも 僕は14時間の時差を甘受していました ゆうちゃん おばあちゃんは僕をいつだって そうやさしく呼んでくれました おばあちゃんからすれば僕はいつまでも その小さな背に負ぶってもらっていた頃の僕で ねぇ 大きくなったねぇって 僕もう3年も背は伸びていないよ ねぇ なんとかおばあちゃんが生きているうちに ひとめ会いたいと 僕は日本に戻りました 病院の海の見える一室で おばあちゃんは体を動かせずに 半開きの目で 僕が必死にアメリカで生活してきたことを伝える様子を 見てくれて なにか言ってくれている様な、でも もう人工呼吸器の音なのかなんなのか ねぇ、分からなかったよ ゆうちゃん ゆうちゃん って聞こえてたんですけれど そうだよね 違うかな おばあちゃんが亡くなって ああ と、しか思えず 一月三日、三箇日内にも関わらず、遺体の状態などを考慮して葬儀と火葬が行われた 葬儀の前に一目見たおばあちゃんは まるで人形のように小さく もののようでした ずっと無感動に式を過ごし 骨壷の奇妙な生温かさが印象的でした 踏みしめられていない雪原のような冒しがたさを湛えた白い肌 遠い約束を待つように閉じられた瞼 動くことのない雪睫毛 ボストンは今年はとても暖かくて 葬儀も終わり正月明けも早々に再渡米してからも しばらく雪は降らず やっと最近少しずつ降るようになりました ちらちらと舞い落ちる冷たい雪を見ていると なんでかおばあちゃんを思い出します おばあちゃんと一緒に雪を見たことはなかったけれど くじけないでね、って それが海を越えたところにいる孫への 最後の託し言だった ねぇ、おばあちゃん 一人で過ごす今日の夜は 熱した眼に雪を受け止めて 今更に泣いても、いいんでしょうか  朝の寒さに涙が凍り 雪の合い間に隠れないうちに   ---------------------------- [川柳]創書日和「星」 甘い星/半知半能[2007年7月13日20時50分] 甘い星 甘い星たちを食べたのだ 一夜毎 星のない夜を 見上げては  甘さを増して 綿飴羊   ---------------------------- [携帯写真+詩]創書日和「淡」 はざま/半知半能[2007年9月28日18時18分] 掴み損ねたよ 淡くない何か ---------------------------- [携帯写真+詩]朝のカクテル/半知半能[2009年1月22日13時15分] それは徐々に溶け込んで ---------------------------- (ファイルの終わり)