水宮うみ 2020年7月19日13時12分から2020年10月19日14時35分まで ---------------------------- [川柳]声に暮らす/水宮うみ[2020年7月19日13時12分] 真っ白な世界にセミの声がある 言葉たちがぼくらの中で暮らしてる みたことのない風景を聴いていた いつもよりくだけたきみが笑ってる 日々を流れた時間たちと、また会いたい ---------------------------- [自由詩]それまでの心に/水宮うみ[2020年7月23日20時23分] きみが笑っているときの雨音の場所をわからないまま 忘れるように暮らしているのはいつまでもきれいな夜 ぼくが知ることのない記憶でできた夢のなかで この身体に時間が舞って過去へ変わるまでの心 なくなっていくその瞬間の思い出の声とひかり ---------------------------- [自由詩]目に見えないから/水宮うみ[2020年7月27日22時30分] 目に見えないから恐ろしいと思ったり、素敵だと感じることがある。 目に見えないから捨てられなくて、手に入れることのできないものがある。 見えないものに心が動くのは、僕らが考えるからで、 想像をしなければ見えないものはきっとなくなる。 僕らに想像力があるから、この世界にはないものが在る。 ---------------------------- [川柳]眠るとき/水宮うみ[2020年7月29日23時07分] また夏に微睡んでいる 流れている 空っぽでからっとしてる空の色 未来には果てなどなくて夢をみた 目を瞑る たくさんの場所がひかっている ---------------------------- [川柳]見つける/水宮うみ[2020年7月31日1時01分] 能力を熊力と書いたのは態と まるで丸みたいにみえる八角形 黒歴史 たくさんの色が混ざってる てのひらのなかにひらがなみつけた日 バス停でコントラバスを弾いている ---------------------------- [自由詩]葉が舞う/水宮うみ[2020年8月4日8時48分] 枝分かれしていく言葉がゆれる きみのすべてをぼくが知ることはないということ 水のなかに流れる時間 時間のなかに生まれる空 たくさんの景色が人と人とのあいだにあって 知らないきみのことが何故か好きだった ---------------------------- [川柳]川沿いの木/水宮うみ[2020年8月9日8時26分] お酒飲む代わりに短歌を書いている 大抵の紙たちは底へ昏れていく 俳句やん俳句やんこれ俳句やん 植え込みの中身を下見してみる犬 ---------------------------- [川柳]かるさ/水宮うみ[2020年8月10日22時14分] 夜になると、きみの影はきえる 軽やかにちいさな虫が飛んでいく かわいい風が吹いていてうれしかった あかるくて自分の言葉がかくれてる ---------------------------- [自由詩]その声/水宮うみ[2020年8月12日19時47分] きみの笑顔の意味がわからなかった だけど、ふと気付けば僕も笑っていた きみのその笑顔は、きっと何の為でもなかったから 意味なんていらなかったんだろう きみの後ろ姿に向けて、 口をついて出た言葉にもきっと意味なんかなくて、 僕にもだれにも、きっときみにも、ずっとわからないままだ ---------------------------- [自由詩]呼吸/水宮うみ[2020年8月13日17時14分] いままで居た世界の外側には居なかった世界がひろがっていて、 わたしが見たいものは、自分で選べることを知った。 良いことだと決められていたものが、良いとは限らなかったこと。 駄目だと言われていたことが駄目ではなかったこと。 だれかの世界の内側に居なくたっていいと知り、 初めて、わたしは呼吸できた気がした。 ---------------------------- [自由詩]グラデーション/水宮うみ[2020年8月14日19時42分] 私たちに明確な違いはなくて、 世界はグラデーションになっている。 私は特別でありたかったから、それを認めたくはなかったけれど。 あなたの声が私に届いたのは、 あなたに私の声が届いたのは、 私たちの見ていた景色が、少し似ていたからなんだろう。 だからきっと、特別じゃないってことに、私は何度も救われたのだと思う。 グラデーションの中で、すきな色に何度も出会うんだと思う。 ---------------------------- [川柳]浮かぶもの/水宮うみ[2020年8月23日20時00分] 早朝の時間の流れかたが綺麗 頭上では雲が迷子になっている 夕焼けの音色 瞳にのこるひと 夜の窓 自動販売機のひかり ---------------------------- [自由詩]うれしい/水宮うみ[2020年8月25日16時38分] 詩がとなりに座っているとき、 目的地なんていらないと思う。 浮かんだ言葉がとても綺麗で、 うれしい気持ちで書き始めていた。 ---------------------------- [川柳]この夜/水宮うみ[2020年9月1日19時44分] 航海したことを毎回後悔する 真夜中を泳ぐチョウチンアンコウさ 頭上にも右手のなかにも星がある ---------------------------- [自由詩]われない/水宮うみ[2020年9月3日7時45分] 気持ちがゼロだったからいくらでも割り切れたけれど、腹を割って話すことはできなくて、 ゼロだから我無かった。 ---------------------------- [短歌]明かり/水宮うみ[2020年9月3日10時49分] 「文明の力」と書いて「ぶんめいのりき」と読むんだ おぼえておいて ---------------------------- [川柳]月が暮れる/水宮うみ[2020年9月5日2時25分] 思い出はきれいにデザインされていた 悲しみに暮れていたからくれた飴 明らかに、その月日は明るかった ---------------------------- [川柳]夢に映る日々/水宮うみ[2020年9月8日19時56分] 聴きながら寝たらライブの夢をみた 電車の音 ねむる顔しか知らぬひと よるの水たまりは鉄みたいな色 星々をゆめから醒めた目で見てる ---------------------------- [川柳]ひかりとなる/水宮うみ[2020年9月9日9時21分] この影とともにあるいてきた景色 席替えで、私ときみが隣となる 虫さんがひかりにひかれてやってきた 暗闇でひかってる音楽に聞く 光らない星でしずかに本を読む ---------------------------- [自由詩]みじかなかなしみ/水宮うみ[2020年9月11日19時43分] 日々の中の身近で短い悲しみは 遠くまで続く長い日々と繋がっていて 見方を変えると、味方になってくれたりする ---------------------------- [伝統定型各種]広がる 都都逸/水宮うみ[2020年9月17日6時26分] この目に映る世界となんの関係もない恋をする 眼の表面にひろがる海で ひかりと鳥がないている 眠る言葉を起こさぬように 本を静かに読んでいる ---------------------------- [川柳]熱帯夜/水宮うみ[2020年9月18日14時56分] 絵日記に架空の過去の空を描く その時は寺で侍を待っていた 寝たいんや 寝たいんやけど 熱帯夜 「正」の正しくない書き順制覇する うかぶ言葉たちといっしょに歩いてる ---------------------------- [川柳]日々になる/水宮うみ[2020年9月19日18時43分] あなたとの糸が終わった冬の服 正しくはないけど楽しかった日々 空っぽな瞳の奥の海になる ---------------------------- [川柳]光の色/水宮うみ[2020年9月25日12時59分] あかいろのひかりの前で青を待つ 台風のような目をした日の光 夜が明けただけでこんなに明るい黄 夏の青空のゆめみたいに白い ---------------------------- [自由詩]でかい字でかいた/水宮うみ[2020年9月29日20時16分] 掛け算のように足し算のように、駆け抜ける足 玄関の眩しさに、なにか呟く玄人 夜の外には朝の月 目を瞑って、冥王星を見る その日を記した日記、でかい字 ---------------------------- [自由詩]ネット/水宮うみ[2020年10月1日19時53分] どこか違う場所へ行った、あなたのかつての言葉が、 僕の生活の中に、ときどき顔をのぞかせる もう見れない、消えてしまったその言葉たちに、楽しい気持ちをもらったこと、 伝えられなかったけれど、 楽しかった気持ちは残っている ---------------------------- [川柳]あきらめる/水宮うみ[2020年10月6日12時36分] ぬいぐるみ抱き締めてから諦める きみの目のなかで言葉が揺れていた 日向と日蔭の境界線うごく 秋めいてすこし静かになった部屋 ---------------------------- [短歌]送る日々/水宮うみ[2020年10月7日11時20分] きみの影で星がしずかに暮らしてる ときどきそっと光ってみせる ないということには無という名があって あるものみたいに名前を呼べた 「覚えてる? 降水確率0%の日に0粒の雨が降ったこと」 言えなかった言葉を集めその上で眠る 葉っぱのあったかい色 剥製のねむる街には夜がある あの子のやさしい夢をみている 聴くたびに形や色が変わっていく 音楽たちのやわらかな声 新刊の漫画を買うときの顔が漫画みたいにパーッと明るい もしきみから電話が来たら、史上最強の「もしもし」が言えると思う きみのチョキがぼくの心をグッとさせ、世界をパーッと切り開いていく いつか幸せになっても、この脳とこころで悩んでいたいと思う 違う場所、違う時間にいるひとへ、ひとつの同じ歌が流れる 夜を歩いたあの時間が今ではもう、ひかってみえてしまって、ごめん 本当は利き手が聞き手になっていて、独り言にはなっていなかった 自室にてその人のことを思い出し じたばた悶えたら、それは恋! きみの前で私がうまく話せないのは、きみがずっと心にいるから 楽しげなきみの瞳のあかるさを、きみの全部と思ってしまった あなたには少しだけ光があって、夜がおわるまでそこで待ってた 嬉しいと思ったことがあなたにもきちんと伝わっていてほしい 夜を歩くときの匂いや砂利を踏む音や冷たさが、好きすぎる 「うん」という言葉が句点のようになり、会話が途切れ、窓の外を見る 疲れたら文字を一旦横に置いて言葉のないキャッチボールをしよっ? 雨上がり 光を反射した涙たちが、きらきらと笑っている もういない誰かのことをきみと書き あなたと呼んで、その人と暮らす もう二度と行けないことはわかってたけど、「また行こう」と笑顔で言った だれもが鼻歌で絵を描きクレヨンで音を奏でているんだよずっと ぼくたちの頭の中にはたくさんの夜がある 手を振った人がいる 今日の晩ご飯はきっとカレーだな カレーの匂いがめっっっっっちゃするから すこし陽気な雨の日のかたつむり きみが明るい表情をする あのころの未来を懐かしんでいる そんな未来に夏が重なる いつまでも、大人になっても大切で、切っても切れない記憶があった 言葉がぼくを大切にしてくれたから ぼくは言葉を大切にしたい いまはもう話をすることのできない人と、話をしていたこと 言葉のなかに埋まってる星空を見つけたときは、写真送るね ---------------------------- [自由詩]記憶/水宮うみ[2020年10月16日6時32分] 風のようにたくさんの場所を通ってきたから ぼくらの言葉に、風景が滲むことがある 暗くなっていく夕方や遠い電車の音に、あなたを思い出すのは あなたの声が、その景色を映していたからなんだろう 風景に、あなたの声を見ていた ---------------------------- [川柳]たくさんの名前が世界にあって/水宮うみ[2020年10月19日14時35分] たくさんの、色んな名前で呼び合った シャボン玉はじけるように始まった きみの明るさが羨ましかった日 とても遠い場所で優しく日が落ちる ---------------------------- (ファイルの終わり)