森川美咲 2014年11月6日3時17分から2016年4月14日22時38分まで ---------------------------- [自由詩]悩める王子様(だーれも知らないシリーズ4)/森川美咲[2014年11月6日3時17分] だーれも知らないある国に 一人の王子様がいました 王子様はいつも 国民の幸せのために 自分は何をすればよいかを 一生懸命考えていました 国民の幸せのために 毎日毎日 いろんなことを悩んで いろんなことを決めて いろんなものを作って いろんなものを壊していきました 王子様は毎日とても忙しく 国民のために働きました 例えばある日王子様は さびしそうな少女に 面白おかしい物語を教えてあげました 不安そうな青年には 美しい音楽を聴かせてあげました 物語と音楽は幸せへの近道 王子様はいつもそう信じていたのです 王子様は知りませんでした 王子様が立ち去ったあとには 自分の話を聞いてくれる人を求めていた少女と 今まさに自分の歌を恋人に届けようとしていた青年が 呆然と取り残されていたことを 王子様は知りませんでした 王子様の悩みの答えは 町外れの老人がもっていることを 王子様が決めたことは 絶対の命令として国民に伝わり 時として反発を生んでいることを 王子様は知りませんでした 王子様は国民の幸せのために いろんなものを作りましたが 腕に自慢の職人たちが 国にはたくさんいることを また王子様は国民の幸せのために いろんなものを壊しましたが それらを必要とする人もいて そっと涙を流していたことを 王子様は知りませんでした 幸せとは 誰かが作って皆に配るものではなく 皆で一緒に作っていくものだということを どうか誰か 悩める王子様に 教えてあげてください 王子様の大切な国民一人一人に 王子様の知らない 物語があり音楽があるということを どうか誰か 悩める王子様に 教えてあげてください 王子様の大切な国民たちもみんな 王子様と一緒に力を合わせて 素晴らしい国をつくりたいと 思っているということを ---------------------------- [自由詩]妖精のいたずら(だーれも知らないシリーズ5)/森川美咲[2014年11月9日6時04分] だーれも知らない森の奥 いたずら好きでさびしがり屋の 妖精が暮らしてる 風と戯れ 光と舞い 花と笑い 誰かが来るのを待っている だーれも知らない森の奥だけど 迷いこむ人間がたまにいる 今日はほら 家族とはぐれた兄弟が 泣きじゃくる弟を 励ましながら進む兄 本当はぼくだってこわいよう だけどお兄ちゃんだから ぼくがしっかりしなくっちゃ そんな二人の目の前に突如 一陣の風と 一筋の光 そして 花が降る うわあきれい 君はだれ? 透き通る羽に手を伸ばし 追いかけ走り出す二人は もう笑顔 いたずら好きな妖精が キラキラと笑いながら 森の奥へ誘(いざな)う 風と走り 光を纏い 花になり 遊び疲れて眠るまで おみやげは 不思議な夢の記憶と 柔らかい髪に引っ掛かった花びら だーれも知らない森の奥だけど 入ってくる人間はわりといる 今日はほら 偉ーい森の研究家 森のことなら何でも知ってる 道に迷ったわけじゃない この木はブナ、ナラ、そしてカシ おやおやこの足跡は… そんな男の目の前に突如 一陣の風と 一筋の光 そして 花が降る ふむふむ、この花は なるほど珍しい 透き通る羽は彼の視線を そのまま透き通す 偉ーい森の研究家の 知らないものは 森にはいない いるわけがない 馬鹿にするな 風が吹き 光が射して 花が散った ただそれだけ 森をよく知らないくせに入り込んで 迷うやつは馬鹿だ しかし俺は違う 馬鹿にするな そもそもなぜ森を好きになったのか 幼い夢の記憶はいずこ さびしがり屋の妖精が 拗ねて魔法をかけた しばらく迷っていきなさい 歩き疲れて眠ったら 思い出してくれるかな そしたら一緒に 楽しく遊ぼう 弟さんは、元気? ---------------------------- [自由詩]世界の模様/森川美咲[2014年11月13日18時34分] 昔 この世にはあらゆる境界がなく 混沌としていた すべてのものは ないがしろにされることもなく また 特にとりたてられることもなく それぞれあるべき姿で 混ざりあっていた 混沌なればこそ 時に美しい模様が生まれ そして消えていった やがて人々は境界を築き 何者かがそこを越えることを拒んだ 世界は単純化され うまく当てはまらないものを排除した 境界の「内側」で 人々は叫ぶ 我らこそ正義 この美しき世界のために あるべき姿で 共に歩もうぞ と 世界のあるべき姿を取り上げておいて 「内側」でごちゃごちゃやっている そうこうしているうちに 彼らの「世界」はどんどん狭くなる 消えない模様を描いた罰だ 「外側」には今でも 昔と同じく 美しい混沌が広がっているのだが もはや彼らには見えない ---------------------------- [自由詩]色あせる言葉/森川美咲[2014年11月15日6時42分] 大切にしまって 鍵をかけておいた言葉が 色あせてしまった 贈らないまま 色あせてしまうものならば 贈らなくて正解だったのか 贈られないから色あせたのか 行き場のない思いがよどんで 途方に暮れている ---------------------------- [自由詩]いつもの夢/森川美咲[2015年1月20日13時42分] 逃げた 触れれば離れられなくなると 知っていたから 逃げながら あなたが追ってくるのを 感じていた 逃げきれなかったふりをして 中途半端な隠れ方をして 待った あなたが通りすぎようとして やがて気づいて 近づいてくる そこで目が覚める あなたとは別の人に与えられた 暖かな部屋で ひとり いつもの夢 あの日 逃げたのはあなた 追わなかったのは私 ---------------------------- [自由詩]今夜も夢で恋をする/森川美咲[2015年2月5日4時07分] もうきっと会うこともない あの日の恋人が笑っている 私の方に手を差し伸べて 愛の言葉を囁く 不随意に緩む私の頬 いつか目覚めるとわかっているから 恐怖も戸惑いもありはしない 今夜も夢で恋をする 今私を守ってくれる貴方を 裏切る気持ちなど微塵もない けれど夢はとめどなく 私の恋心を翻弄する 今夜も 現実には振り向いたこともない あの人も笑っている あの頃の私の想いを受け止めて 悪戯っぽく笑ってみせる 拗ねた顔を見せながら ときめいている私は 十年をゆうに飛び越える すぐに醒めるとわかっているから 切なさも喜びも輝きを増して 今夜も夢で恋をする 貴方の前で 綺麗でいるために ---------------------------- [短歌]クローゼットで独り言/森川美咲[2015年2月5日4時21分] 「貴女って若く見えるわ」ありがとう「若くないのに」聞こえてるわよ アラフォーのツインテールもすっぴんもショートパンツも別にいいでしょ 「好きな服が一番似合う」ホントかな好みはどんどん若返ってく ---------------------------- [俳句]今夜はお鍋/森川美咲[2015年2月5日4時37分] 鍋のふたぐつぐつぐつと幸せが 箸の先鱈もほぐれてほろろ酔い 熱燗の熱に融けいる人の情 食って酔いうどんも餅ももう食えぬ 見苦しや宴の後の冷えた鍋 ---------------------------- [自由詩]重ねたら/森川美咲[2015年2月5日21時30分] ふうわりと心が軽くなって 空気がすーっと晴れた 私に見えていた世界に あなたの見ていた世界を重ねたら 驚くようなことが起こった 正解なんてない 間違ってたっていい だったら 苦しくなる答えばかり 当て嵌めるのはやめよう 一人ではなかなか難しいけど あなたがいてくれるこの世界なら きっと大丈夫 ふうわりと軽やかに 胸いっぱいに深呼吸して 生きてゆける ありがとう ---------------------------- [自由詩]迎えにいこう/森川美咲[2015年2月11日21時21分] 過ぎた時間の中の僕 膝を抱えてうずくまる 受けた傷の痛みにすら 置き去りにされ 出来事の意味に囚われたまま そんな僕を迎えにいこう ふとそんな気になったのは きっと君に会えたから さかのぼる道では 痛みに再会するだろう だけど今なら耐えられる それも君に会えたから 膝を抱えた僕は 僕の見つけた新しい意味に 理解を示してくれるだろうか 顔を上げてくれるだろうか もう過去に置き去りにはしない 囚われた意味から解き放って 君と生きる僕として 全部抱えて歩いてく ---------------------------- [自由詩]空っぽな朝/森川美咲[2015年2月11日22時25分] 苦しいときばかり 悲しいときばかり 怒れるときばかり 歌った 孤独な詩人を ワタクシ自身が 見失う ああ この朝の光を 切望したのは あの詩人だったのに 呆けた顔した ワタクシ自身は 空っぽ だ ---------------------------- [自由詩]逃亡者/森川美咲[2015年2月11日22時50分] 私の中の憧れが 育って恋になる前に さよならも何もなく 逃げるように去ったあなた 何度もくれた電話 尽きないおしゃべり 受験で訪れた都会 夜景を見ながらの電話で 今度は一緒に見たいねって 言ってくれたよね だけどあの春 あなたの前に広がる未来は 眩しすぎた 一つの傘で歩いた あの雪の午後が最後だったんだと 夏空の下やっと気づいた私 あなたはあの傘の下 私のいない未来を見てたのに もう20年が過ぎ 未練も恨みもないけれど 忘れない名前 見つけたあなたのSNS 懐かしさに駆られて 写真の横顔に面影を探す しばらくしたら閲覧不可 まさかのブロック 私に気づいて また逃げた あなたは私の名前に 逃げたくなるような 過去を見たの それとも あの春からずっと 逃げ続けているの ---------------------------- [短歌]北海道旅行/森川美咲[2015年2月20日19時45分] 冬の旅 とじこめられた 知床で ユトロゆったり 湯にくつろいで 氷上で 上げ揚げられた ワカサギを 昆布風味の 塩でほおばる 憧れの 寝台客車も 運休で 名実ともに 夢の鉄道 ---------------------------- [自由詩]空気の読めないヤツ ですか/森川美咲[2015年2月22日23時33分] 言われたことがありますか 空気の読めないヤツ と 大抵の人は そんなことを空気の読めないヤツに 言ってもムダだと思っているから 君も誰かに直接 言われたことは ないんじゃない 大抵の場合 背中にこっそり貼られるラベルに 書いてあるんだ 空気の読めないヤツ とね 私の背中には 何枚くらい 貼られているかなあ ハイ 質問です 空気って読むものなんですか 絵本や小説や新聞のように だったらなぜ誰も 空気の読み方 教えてくれないのですか それはこういうわけなのさ 大抵の人は 自分ならここで そんなことしない そんなことは言わない って時に こっそりラベルに書き込んでは ペタッとやるのさ 君もそうしてきただろう? だから君の背中には 「空気の読めないアイツ」の書いた サイン入り特製ラベルが もう先に貼り付いているかもしれないよ だってアイツはたぶんここで そんなことはしない そんなことは言わない からね そう考えてみるとさ 空気の読めないヤツ ってラベルを いっぱい貼られてるヤツってのは 自分とは違うタイプの人間に いっぱい出会って 自分らしく関わってきた 豊かな人かもしれないよ 少なくとも 貼る人よりは 貼られる人で いようかな ---------------------------- [自由詩]宴の後のらりるれろ/森川美咲[2015年3月1日23時52分] 宴が去って ふと虚しくなっている 寄り添える言葉の羅列も 破綻する られつ られる らりる らりるれろ ろれるりら 先に立たぬ後悔 あああああ そして願わくは 次の宴を どうか私が窒息する前に 駈られつつ 駈られるは 言葉の羅列の 螺旋 らせん られません ららららら ---------------------------- [自由詩]Kへ/森川美咲[2015年3月2日19時52分] 失いたくないがゆえに 確かめられなかった後悔 心の中に澱んで溜まって こんなに遠くなってから リアルな感情を呼び覚ます 恐れ過ぎたゆえに 歩み寄れなかった 追うことをやめたのは 逃げたのと同じなのに ただ 相手を責めた 愛を伝え 拒まれた または 共に過ごした そんな人たちよりも 心に焼きついてしまった 会いたい 話したい 触れたい 今どこで どうしていますか ただ 心を交わしたい ---------------------------- [自由詩]匿名希望/森川美咲[2015年3月22日23時50分] 匿名でなきゃ言えないことなら 言っちゃいけないと思うよ こんな小さな世界では なおさら 匿名でなきゃ言えないのは そこに仕掛けた毒針を 自覚してるからで 自分が怪我したくないからで わかるよ わかる だけど ね 差出人不明の言葉は結局 宛先不明になるんだ でも返送先が書かれてないもんだから 漂う さ迷う そこいら中にいる人を 突き刺しながら ふわふわゆらゆらと いつまでもいつまでも 正しいことであったとしても 届かなけりゃ意味がない ちゃんと届ければ薬でも 処方箋なしで与えりゃ毒になる 相手は突き返してくるかもしれないよ それでもほら 相手を思いやって送った薬の針なら 刺さったって平気でしょ 相手の方をちゃんと見ないで 返ってくることなど考えないで 何かをぶつけることを 暴力っていうんだ さあ早く 顔の見えない君の毒が ほら僕にも効いてきた 漂う毒針を回収できるのは君だけ ---------------------------- [自由詩]とっても優秀なお医者さん(だーれも知らないシリーズ6)/森川美咲[2015年3月23日0時22分] だーれも知らない小さな国の とっても優秀なお医者さん ある男の病を治してやろうと とっても強い薬を送った というのは嘘で その差出人不明の小包には 毒針が仕掛けられていた 差出人不明は気味が悪いからと 病んだ男は受け取らない 返送先が書かれてないもんだから 毒針は国中を ぐるぐるぐるぐるたらい回し おそろしい毒針が 返ってきては困るから 差出人名を書かなかった とっても優秀なお医者さん というのは嘘で お医者さんはちゃんと 男の病に効く強い薬を 注射器にたっぷりと詰めた たらい回しの小包に仕込まれた針が 国中の心優しい人を突き刺しながら いつまでも旅を続ける 毒にやられたのか はたまた薬の副作用か 病んでもいない民たちが 青ざめ 弱り 倒れていく ちゃんと届ければ効いたのに 差出人を書かなかったのは たいそうに感謝されるのが 照れ臭かったから というのは嘘で これほどの毒を 送りつけられるなんて 男はきっと何かしら お医者さんを怒らせたんだな だーれも知らない小さな国の 心優しい民たちが 痩せこけ 弱り 倒れていく だれにも知られないままに とっても優秀なお医者さんは とっても優秀なんだから こうなることも最初から 全部わかってた というわけにはいかなかったのが とってもとっても残念だ ほんとかな ---------------------------- [自由詩]祝福 Dear.M/森川美咲[2015年4月8日19時48分] 雨に落とされた花びらが 重なってはりつく しめった土の道 ふわりと香りがのぼる 君の口は堅く結ばれ まだ何も語らない しかし その目はこちらを しっかり捉えた 私も君を しっかり見つめる 今、出会った 私の髪も 君の髪も 花の香りの風に なびく ---------------------------- [自由詩]手紙 Dear.A/森川美咲[2015年4月11日10時32分] 会ったばかりの私に おそらくとまどっていた君 馴染みの大人にばかり 声を掛けるのは仕方ない だから 私は傷ついてなど いなかったのだよ 君がスッと差し出した手に 握られた小さな紙 私の名前と 君の名前 ハートに飾られて 並ぶ 君の 優しさと 願いと 期待が 一瞬で伝わった ありがとう ---------------------------- [自由詩]君の放った矢 Dear.S/森川美咲[2015年4月20日19時01分] 君の放った言葉の矢が 僕の胸に刺さった 焼け付くように痛むのは 君の痛みが伝わったからで 僕は傷ついてなどいない むしろ 君の痛みを 少しでも代わってあげたくて でもどうにもならなくて 息が苦しい その場を立ち去り 独り涙する君 泣き腫らした目をふせて またおずおずと 近寄ってくる君 愛しくて 悲しくて 僕は君のために 何ができるだろう ---------------------------- [自由詩]その瞬間(とき) Dear.T/森川美咲[2015年4月20日20時56分] キミに会う前に キミについての話を たくさん聞いた 聞いてしまった キミには内緒だけど キミが奪った笑顔 キミがついてきた嘘 キミが壊してきたもの キミを傷つけた大人たち キミを追い詰めた環境 キミが背負った運命 そしてやっと ようやくやっと 出会いの瞬間(とき) 笑うと覗く白い歯が 切れ長の瞳が きらめいた瞬間(とき) ぼんやりと像を描きかけていた キミの影は吹き飛んで キミとの今日からが 希望に輝いた その隅っこで じわじわと 怒りが 悲しみが キミを傷つけ追い詰め 世間はいったいキミに どれだけのものを 背負わせたのか ---------------------------- [自由詩]ぷちん Dear.O/森川美咲[2015年4月21日21時45分] ぷちん なにかが切れた 音がした いつもの会話 悪ふざけの途中 短い言葉を吐き捨てて 出ていく君 そんなにも いっぱいいっぱい あふれそうな苦しみを 少しずつ少しずつ 育ててしまっていたんだね そんな瞬間にも 私を傷つけることを選ばず 周りに当たり散らすこともなく ただその場を離れて 感情をコントロールしようと君は 今 窓の外で 風に吹かれている 大丈夫 私はずっと ここにいる 待っているよ ---------------------------- [自由詩]往復書簡 Dear.T/森川美咲[2015年4月22日21時54分] 握りしめ ぐちゃぐちゃになった紙に 伝えられた君の苛立ち を 手のひらで そっとのばしてみるけれど 私には解読できなくて 悲しみが沁みだす 苛立ちと悲しみの染み込んだ シワだらけのプリント それだけが今は 君との大切な 往復書簡 ---------------------------- [自由詩]橋をかける Dear.O/森川美咲[2015年4月24日23時50分] 君と私の間の 見えないけれど深い溝 飛び越えてくるも橋を渡るも君次第 なんて言ったら君はまた怒るかな 見捨てているわけじゃない 私はいつでも橋をかけて これでは渡りにくいのかしらと 形を変えてみたり 補強してみたり こちらから 渡っていきたくなることもあるけど 君はきっと逃げるだろう そしてそんな君との間には 今までよりもさらに深い 溝が刻まれてしまうだろう 君がその気になって 飛び越えてくるか 橋を渡ってくるかしない限り この溝は埋まらない いやむしろ 埋まらなくても いいのかも ただ君には いろんな橋をかけては 作り直して 君と会えるのを待っていた そんな私がいたことを 知っていてもらえれば だから私は 今日もまた新しい 橋をかける ---------------------------- [自由詩]いき・くるしい/森川美咲[2015年5月11日23時56分] わかった やわらかいんだ まだ なぜわたしが あなたたちに あたたかさと いとしさをかんじるばかりで それなのに おとなのなかじゃ こんなにも 息苦しい でも あなたたちといるときは こころがほっとして ほんとうに あなたたちをおもって つたえたいとおもうことを つたえられる はんぱつされても やわらかいあなたたちのこころに なにかのこると しんじられる おとなは はんぱつすればするほど かたくなになって とおざかっていく きがする だから おとなのなかじゃ こんなにも 生きるの苦しい ---------------------------- [自由詩]膨張か収縮か/森川美咲[2015年5月17日20時49分] そんなにもわかりやすく 堕ちてしまうものなのか 恋に 怠惰にと 君たちにとっては 限りなく広いであろう その世界で出会った 隣人に 誘惑に 今こうして 目を丸くしているくせに 自分自身の 昔の恋は あの時期は 特別だったという 思いだけは揺るがない不思議 あの頃の私たちの 無限にも思えた世界も 壁の外側から 見つめる大人たちがいたのだろう 世界は小さくなり続けているのか それとも広がり続けているのか ---------------------------- [自由詩]ある医者の決意/森川美咲[2015年8月11日22時35分] 私のせいで 世界が歪む 正しさだけで 温かさの欠片もない 私の叫んだ言葉によって 世界が 溶ける 落ちる 赦せとは言わない 甘んじて火の粉を被ろう しかし あの瞬間の私は 知らなかった いや 知っていたが 見ていなかった 正しさにも いろいろあるということ 違う正義のもとでは 影響力は効果ではなく 迷惑と呼ばれること ああ よく似た話を知っている クスリはリスクだと 副作用の話だ それでも患者の健康を祈って 薬を処方する そんな医者でいよう 副作用に関する責めは 甘んじて 全部受けよう 患者によって 健康の定義はいろいろあるのだろうが 私が不健康だと思う患者を まさか放ってはおけないだろう しかしこれからは 忘れずにいよう 蒙った迷惑を ある種の効果だと 裏返して考えてみる 新しい視点 毒薬も良薬に変える かもしれない 新しい視点 ---------------------------- [自由詩]何もわかってない大人たち/森川美咲[2015年8月28日1時00分] 「自分がされて嫌なことは 他人にもしてはいけません」 子どもだってわかってるのに 私たちは 自分を許すように他人を許せない もしくは 他人は許せても自分は許せない 「自分がされて嫌なことは 他人にもしてはいけません」 ってつまり 自分も他人も同じように大切だよって そういうことなのに おかしいね ---------------------------- [自由詩]ぐらぐら/森川美咲[2016年4月14日22時38分] ぐらぐら 不安定な私が ぐらぐらぐらぐら また揺れ始めた 抱き止めてもらわなきゃ 倒れてしまう というのは嘘 しばらく放っておかれたら 揺れたことも忘れて また笑うから 安心してて ユレタ ワタシハ ドコヘ… タスケテ ぐらぐら 冷めない私が ぐらぐらぐらぐら また煮え始めた 火を消してもらわなきゃ 燃え上がって燃え尽きてしまう というのは嘘 しばらく放っておかれたら 火が付いたことも忘れて また眠るから 安心してて モエタ ココロハ ドコヘ… ナカッタコトニ シナイデ タスケテ ホントハズット ユレテル ニエテル ダキトメテクレルノハ ヒヲケシテクレルノハ ダレ 大丈夫 安心 してて ---------------------------- (ファイルの終わり)