

子守り唄の誕生
赤坂 憲雄/講談社学術文庫
価格:¥945(税込)
レビュー:原口昇平
民俗学者・赤坂憲雄の微に入り細を穿つ研究が結実しています。
誰でも口ずさめる「赤とんぼ」の歌詞。けれど「十五でねえやは嫁に行き」のネエヤとは誰だったのか、多くのひとが忘れかけている――。赤坂は、子守唄をうたった「ネエヤ」=「守り子」たちの姿のひとつを、熊本県・五木村にまつわる「五木の子守唄」の歌詞の研究を通して綿密に描き出します。「うた」はどのようにして産み落とされたのか。歌ったひとびとはどこから来て、どこへ行ったのか。そのような問いかけのなかから、「うた」への読者のまなざしを、この研究はまた新たなものにしてくれます。学術的・専門的な研究でありながらこれほど易しく読みやすいものを、ぼくは他に知りません。