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地震の科学(パリティブックス)

パリティ編集委員会/丸善
 
レビュー:小池房枝
三月以来、図書館で地震ならびに原発関連の本がぞろりと並べられていた中の一冊。
阪神・淡路大震災後には報道や災害対策などに重点をおいた関連書籍が四百点近くも出版されたが、既存の著書に一章書き足しただけのものやハウツーものも目立ったとのこと。だが、災害軽減を実現するためにはまず地震現象そのものの理解が不可欠と考え、地震の物理を一般の読者にもわかりやすく提供すべくわが国で唯一の物理科学雑誌(!)に連載された記事をまとめた本がこれ、だそうです。1996年の出版ですから新刊ではありません。
一般の読者にわかりやすく、と言われても物理学の常。通読して数式等はほぼお手上げでしたが、各種地震用語、マグニチュードの種類、プレートテクトニクス理論が確立する前から地震の研究はずっと行われていたこと、予知と観測、災害と防災、宏観前兆、もちろん津波についても、初めて知ったり、頭の中であらためて整理できたりしたことが多かったです。台風同様、地震そのものを消し去ることは出来ない。けれど普段からの、研究者や自治体での少しずつの研究の進歩や誠実な取り組みには、人間を信じていたいほうの気持ちを支えられるような気もしました。
通信全盛の時代ですが、本には本の役目がまだあります。情報の断片の洪水に押し流されながらではなく、自分ひとりで考えながら読めること。ネットを使いこなせる人ならば少し古い本の何処が古いか、古びていないか、確かめながら読み進む読み方も出来ること。
いざという時(今が/今も、)発表やら流言やらになるたけ右往左往しないための自分ワクチン、慌てないため、せめて少しでも腹を括るためのワクチンとして今更ながら有効でしたので紹介します。amazonでは78円とか4800円とかよく分からない値段が出ていますが、定価は1600円。余震尚、揺れ止まない夜に。
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