ポエトリーリーディング
さいとういんこインタビュー
 

―――:リーディングを始めて何年になりますか?

いんこ:98年の春からなので、5年目になるのかな。

―――:98年の頃はどんな方がリーディングなさってましたか?

いんこ:やり始めた頃はどんな方がやってるのか知らなくて。独自に始めちゃった。CDいきなり作っちゃってレコーディングしちゃって自分でレーベル作って。CDが出来てから情報が色々入ってくるようになって。で、ベンズ(Bens cafe)やオージャス(Ojas lounge)とかでオープンマイクがあるのを知って、行き始めるようになりました。そのころにはもうアメリカンブックジャムの方達とか、カワグチタケシさんとか、左鳥話子さんとか、初期のメンバーは既にいましたね。

―――:すごいですね。

いんこ:早いですね彼らは。私より早い。98年にはすでにいた、という感じです。
初期のメンバーの方は。

―――:ウエノポエトリカンジャムは、何故やろうと思ったんですか?

いんこ:99年末くらいに少し閉塞感を感じていたんです。飽きたという言い方が当てはまるかどうかわかりませんが、オープンマイクだけで集まっていても突破口がないなって。今から思えば信じられないくらいオープンマイクのレベルが高くて誘発しあえて、すごく楽しかったんですが、それでも、ちょっと飽和してきたな、閉塞してきたなと感じていて、あと、まだ出会っていない人が地方にもいっぱいいるんじゃないかなと思って、外に出て広いところでやりたくなったんですね。それで場所を探して、都立の公園は安いのを知ってたので電話して、条件に合ったのが上野恩寵公園でした。で、押さえてから場所を見にいって、あんなに広いと知ってびっくりしちゃったの(笑)。

―――:(笑)。

いんこ:「どうしよーあたしってやばいわ」って、あんなに千何百人も入るところだなんて。

―――:ウエノポエトリカンジャムを2回で終了させたのは何故ですか? もうやらないのですか?

いんこ:一応、もうやりません。5年後あたりに開催してもいいんだけれど。まあ、いろいろなところで言ってますが、まず、あまり立派な人になりたくなかったんですね。ウエノに出る事が何かのステイタスになってしまうのがイヤだったので。もう一点、労働量としての限界も感じていました。みんな仕事をしながら2年間働いて、これ以上やるとつらくなっちゃうかなって。

―――:スポンサーがきちんとつきませんでしたからね。

いんこ:つきませんでしたね。だから無理だなと思った。このまま続けていって最初の印象が壊れてゆくよりは、ポンってやめちゃったほうがいいかなと思ったの。それから、「滑走路は造ったからあんた達勝手に飛びなさいよって言われている気がする」って誰かに言われて。やれるんだよってこと、見せられたから、いいかなと。うん、楽しかったです。とっても。
リーディングの現在


―――:今のリーディング・シーンはどうですか? はっきり言って面白くないと思ってるんですけど。

いんこ:ねえ。

―――:(笑)。何故つまらなくなるんだろうってずっと考えてるんですよね。みんなつまらなくしようと思ってるわけじゃないのに。

いんこ:面白い人はいるのよ。

―――:いるんですけどね。面白い人は。状況としてそうなっているのは何故なんでしょうか?

いんこ:・・・わかりません。つまらない理由は、書いてある詩がつまらないとか、読んでいる人がつまらないとか、読み方がヘタとか・・・。つまらないと思ったからSSWSを始めたんだと思います。SSWSは、「SHINJUKU SPOKEN WORDS SLAM」と言って、2月から始めた、ラッパーと詩人のためのトーナメントです。隔週金曜日の深夜に、新宿のMARZというライブハウスで。ラッパー詩人対決。

―――:面白そうですね。

いんこ:かなり面白いですね。詩人がみんなラッパーにあこがれちゃって(笑)。で、きちんと賞金を出します。チャンピオントーナメントで優勝すると10万円、年間チャンピオンになると30万円。ね、やる気出るんじゃない? 始まったばかりなので、これからまだまだいろいろなタイプの人が出てくると思います。どうなるかわからない。どうなってゆくんでしょうね。楽しみです。中だるみもするだろうし、いろいろあるけど、なるべく長く続けて行きたいと思ってます。

―――:ライフワークで。

いんこ:でもやめたくなったらやめます(笑)

―――:(笑)

いんこ:「やばいな、違うな」って思ったらやめないと。

―――:運営は大変ですか。

いんこ:MARZさんが基本的なことはやってくれてるので楽です。

―――:入場者数も多いそうですが。

いんこ:前回(注:第2回)は有料入場者数が59人でした。その場にいた人は70人以上ですね。おかげさまで。あんな時間に(注:SSWS開催時間は深夜1:00〜4:00)。

―――:多くの方に見て欲しいですよね。

いんこ:とりあえずどんなもんか見て欲しいです。でもラップの人達が詩人の詩を聴いてくれて、うれしいよね。

―――:そうですね。詩にはそれだけのパワーがあると思いますし。

いんこ:問題ないです。ウエノもSSWSも、生きる力がないと生まれない、未来に向かうチカラみたいなもの、場を提供したいなって。詩を書く事はかっこいいんだぞ運動。詩を書いてるって、なんてかっこいいんだろうって、モテモテでしょうってならないと(笑)。

―――:海外ではモテモテなんですけどね(笑)。

いんこ:モテモテですよう。ちょっと気のきいた詩書けば最高でしょう。


詩の話も・・・

いんこ:詩の話はしなくていいの?

―――:します?

いんこ:出来るかどうか・・・。どんなふうに詩を書くんですか、なんて(笑)。リーディングは、ほら、私リーディングが大切な人だと思われているんだけど、テキストのほうが大事だと思ってます。テキストが良くないと、リーディングしてもしょうがないもん。ほんとに。まずテキストが良い事。それから、まあ表現発信手段のいくつかとして、リーディングもあるし、詩集にしてもいいし。それで、基本的には、詩で食べていける人がもっと増えるといいなって思ってます。10年後に10人くらいいたらいいなと。

―――:そんなに?

いんこ:多い?(笑)

―――:多いですよ(笑)。10年後3人くらいじゃないですか?

いんこ:それで十分ですかね?

―――:小説でも10人いますかね。

いんこ:賞とっても続かないもんね。ほんとに才能のある人ってあんまりいないから
ね。いてもおかしいし。

―――:どこの世界でもそうじゃないですか、音楽だって。

いんこ:そうですね、あと、リーディングやってる人は、自分に厳しくやりましょう。一回ずつの拍手を気にするのもどうかと思うけどさ。

―――:毎日きちんと練習している人っているんですか?

いんこ:まあ前の日は練習するだろうけど。練習が必要じゃないタイプの人もいるし。練習してきたそのままをやるのも違う気がします。それだとライブ感がない。前の人がこういうふうに読んだから変えるとか、観客の反応がこうだから変えるとか、余裕が欲しいですね。

―――:難しいけれど、でも、当たり前のことかもしれませんね。

いんこ:ねえ、当たり前ですよ、マイクの前に立つなら。私はお客さんにお金配りたいくらいですよ。聴いてくださいって。でもね、「デフ・ジャム・ポエトリー」というアメリカの番組を観て、あまり変わらないんだなと感じました。詩というのは、スポークンワーズという表現行為は、スタンダードな表現なんだなって。大きな変化を目指すのではなく、スタンダードを作るつもりでやればいいんですよね。キテレツなものじゃなくて。ブームじゃなくて。

―――:ウケ狙っても漫才師には勝てませんし。

いんこ:そうですねぇ。日本の詩人、リーディングしてる人は自分の痛みを書いていないようにも思います。だから届かない。そこをスタートにしないと。なぜもっと自分の感情を言葉にしないんだろう。それはでも若いラッパーもそうかも。その人自身が見えてこないの。

―――:そのあたり、シーンが面白くなるためのポイントのひとつかもしれませんね。

 
作詞家 詩人。もともとはバンドのボーカリストだった。インディーズ・レーベル・インディーズ出版をやって既成の業界とかに小さくケンカ売り中。

趣味 スターバックス・タンブラー・コレクター、縁起かつぎ、歌舞伎鑑賞、自分の思いつきに周囲の人を巻き込むこと
性格 意外にいい人
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