夢を見たら書き込むスレ[209]
2004 08/24 16:54
佐々宝砂

夜勤前、昼間の眠りにみた夢。前半長いが省略。星一徹がカラオケで「巨人の星」の主題歌を叫んでいる。そのかたわらに星飛雄馬の弟(推定8歳)がいて、兄ちゃんは俺よりえらいひとになるって決まっているんだ、俺なんか俺なんかと泣いている。マンガに描かれてないだけで、きみも将来立派な人になるかもしれないじゃないの、と私が慰めると、「そのコトバ、忘れないぞ」と飛雄馬弟が言い、それまでふつうだった夢が、突然マンガにかわってしまった。視界全部がマンガの見開きで、見開きの最後までみるとページが変わる。実は私、そういうふうに進行する夢をときどきみるのだ。

まず最初の見開き。とはいっても左ページのみ。ちゃぶ台のある部屋がどんと大きなコマでリアルに描かれていて、その上部に顔写真を貼り付けたみたいな形で飛雄馬弟の顔。汗かいてニキビだらけで17,8歳というところ。「忘れました。」と活字。ちゃぶ台の下のコマで、彼は板金の仕事に励み、それから自転車を漕いで家に帰るのだが、左手がないと見えて作業服の左の袖が風にそよいでいる。帰宅した彼は玄関脇に自転車を止め、玄関に飛び込み、ついでトイレに飛び込み、(改ページ)
やや大きめのコマでくみ取り便所俯瞰図。飛雄馬弟は便器をまたいで立って、自分の足を見下ろしている。右足しかない。ズボンはちゃんとしている。「アレ。俺の左足、ない。」と活字。その下のコマ、ふにゃふにゃした脱力系ギャグマンガのタッチで自分の足をあちこち探す。左足は薄墨色になって彼の身体にぶらさがっている。「この変なのが俺の足かよ!」とフキダシ。(改ページ)一ページに一コマ、痛い!と大きくて真っ赤な活字、その字のまわりで左足を抱えてのたうちまわる少年。(改ページ)
赤とオレンジと黒の色彩、マンガの線は段違いに太く、強くなり、版画の線に似てきている。上の方のわりと小さなコマで足を抱える少年、「俺の足、ヨコだ!」と小さなフキダシ、その下は全部大きな一コマ。便器をキンカクシの前側から見た構図で、少年は、コマの枠を走り回る、その足についてまわる「ヨコヨコヨコヨコ」というオレンジと黒の描き文字。(改ページ)ほとんど同じ体裁で「俺の足、タテだ!」便器を後ろ側から見た構図で、枠を走り回る少年、「タテタテタテタテ」の描き文字。(改ページ)
またもほとんど同じ体裁で「俺の足、ウエだ!」便器を真上から見た構図で、枠を走り回る少年、「ウエウエウエウエ」の描き文字。(改ページ)ふつうのペンタッチで、マンガ家の仕事場。それらしい帽子などかぶったマンガ家がいて、変な運動をしながら喋っている。「おまえのマンガは」おいっちに・おいっちに「そんなんでよいのか」屈伸「とよくきかれますが」のびー。(改ページ)
一ページ一コマ。やたら白っぽい写真ぽい画面に、和服の女性演歌歌手がマイクを握っている。大きな活字「いいんです。」(改ページ)また版画調の太く強いペンタッチに戻り、しつこくのたうちまわる少年。なんと表現したらいいかわからないような描き文字。ひたすらにオレンジと赤と黒。かっきりとしたコマの枠が崩れて、(改ページ)
ものすごく脱力しそうなふにゃふにゃのタッチで描かれる、崩れる少年。「むっちゃん、死にました。」(むっちゃんという名前だったのか?)その下のコマ、情けなくも便所に顔を突っ込む。「むっちゃ、恥ずかしいです。」「だって」少年の股間がクローズアップ、「むっちゃ立ち。」

なんだなんだなんだあんまりじゃないかと目を覚ました。なんだかものすごい「作品」をみてしまったという気がしたが、かなり不快感もあった。ひとりの少年の死を、こんなふうに、残酷きわまりないかたちで描いてしまっていいんだろうか、と私の良心が言った。しかし「いいんです。」と作品自身が答えた、私もそうなのだろうと思った。断末魔の痛みを私は知らない、夢の中の作者も知らない。知らないものを表現しようとして、むちゃくちゃになっている。こんなマンガ描いてると病気になるよと私は思ったのだけれど、このマンガを描いたのは私なのだろうか、よくわからない。
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