恋文[64]
03/03 04:37
小鳥遊

「夕暮れ と 面影に」

夕暮れの狭間にゆくてを遮った
ケチャップをまきちらして
あなたの皮フにうつる分だけ
なめた

 たぶん好きだった。

冬のにおいははなを擽る
ちょうど白衣を着たあなたの背中
ひたひたと迫るように
わたしは手の甲の上皮を噛む

まるではなが咲いたようだった
わたしのながい髪はいつも滴りたがり
それを望むのは
手折ってしまいたくなる衝動と
同質だったのだろう

 たぶん好きだったから。

何もない と微笑んだ
凋落してゆく まるで寝息のように
こんこんと泉のように湧きいでていた
夕暮れの沈殿

わたしは零れたかった
たゆたい そして かきいだかれたかった
てのこうにはわたしの噛み痕が
ただ そうやって ういていた

 たぶん好きでいたかったから。

あなたは遠くにいくのがすきだった
うすい氷のしたを静かにながれる
河のような人だった
わたしにはうすい氷を剥ぐことしかできなかった

 たぶん好きでいてもらいたかったから。

なだれこむ くうき も あつさも すべてが
蛇のように絡まりあって ひえてゆく
そのゆげのおさまりをじっとみつめた
夕暮れの降幕があまりにも美しかった。
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