恋文[421]
2005 03/23 03:31
佐々宝砂

わたし自身が生まれたころのヒット曲を聴いている
それはつまり
あなたが生まれたころのヒット曲でもあるのだけれど

わたしの誕生日はわたしのもので
あなたのものじゃない
たとえ
同年同月同日同時刻だとしたって

うんざりするような偶然が
どかどかと胸におちてくるので
大きな穴ができてしまった
むろんあなたのせいにはしない

偶然がわるいのだ偶然が

夜勤のある日はすこし警戒する
混み合う朝の通勤電車ならいい
でも
夜勤のとき電車はあんまり空いている

わたし自身が生まれたころのヒット曲を聴いている
眼を閉ざして
夜の田舎町を走る 空席だらけの電車のなかで

あなたのことが好きだ
それはちっともかわらないけれど
これ以上穴の開く偶然は
もういらない
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