しりとりの詩 2nd[136]
2006 01/13 01:15
モリマサ公

父に最後にあったのはクリスマスの前だった
25日の夕方に公衆電話がかかってきて
しゃがれた小さな声でこういう
「今新潟のスキー場にいて、参ったよ、ごめんなまさこ足の骨が折れちゃって帰れないんだよ、一応報告しとこうとおもって」
フラットな画面のようなイトーヨーカドーでなにもしてやれないことを肯定するために
棚に並べてあるものをたどった
棚はどこまでも平坦に見えてなにも買わなかった
車が信号待ちになるとだんだんその赤信号はにじんでみえた
3年前に還暦をむかえた父には3歳の娘がいる
その母親は日本人ではなかった
彼女から正月に国際電話がかかってきて
わたしは知っている単語をならべて父の現状を報告する
インドネシア語でそれをなんていうのか
わからなくて
「泣かないで」
と日本語で何度もくりかえした


                    
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