2006 08/10 00:42
松岡宮
詩というのは、いままで見ていた景色に新たな価値や見方を与えてくれるものだと思います。 仕事中に盗み読む「詩」が大好きなわたしです。
そんなわけで(どんなわけじゃ?)今回のレビューは「つつみ潤」さんという詩人の「きぎのふでさきみどり」という詩集です。
明るい緑色の装丁も美しいですが、言葉もつぶつぶとしていて、輝きとつやのある描写だなと感じました。
言葉運びがとても巧みで、それでもけっして判りにくいということはなく、読者をセンシティブな詩世界に導いてくれます。
わたしが印象に残った詩は「大きな森へ」という、作者が生まれ育った「大森(東京都大田区)」を描写した詩です。
わたしが失業保険を取りに行ったときに行った、大森。
ハローワークのある、あの大森がこんなに美しく描けるとは・・・
というわけで少し引用します。
今日一度も
太陽光を浴びなかった悲人か嬉人か
どちらにせよ
僕の
この指にいざ
山手線の緑の指輪が
するりと抜けた
僕の
この指とぉおまれ
今から
大きな森
へと誘う
指輪から少し南の
蒼い鉄の川のほとりの
酸素度数の高い
僕のうまれた場所は
大きな森
「大きな森」より
知っている場所の詩、というのは、とても親しみを感じさせてくれるものですね。このような優れた詩に出会うことで、なじみの地に新たな風が吹いてきたように感じられました。
<レビュージャパンにアップした文章を一部改編>
松岡宮