フレアスカート
片野晃司

冬の寒気が細く伸びて
岬の先のほうへ
鋭く尖っていった
遠くで生まれた赤土の丘が
最後に海へこぼれ落ちていく場所で
わたしの そしてあのひとの
フレアスカートのはためく裾から
なめらかに伸びた白い両脚の
踵から先が薄く途切れて
その先がない

赤い屋根がひとつ
海へ崩れ落ちていった
つぎにわたしの家
そしてあのひとの家
その窓 その奥の細部が
記憶からぼろぼろと崩れてくる
わたしたちの日々が
わたしたちから
裾のほうへ薄く広がり
そこからわたしの そしてあのひとの
脚がなめらかに白く伸びて
あのひとの失われた日々へ
爪先立って降り立とうとして
海辺の雑草の中で
見失ってしまった
冬の最後の風が
岬の先のほうへ鋭く尖っていった
あのひとの
はためくフレアスカートが
岬から見える



同人誌hotel2006年5月初出掲載


自由詩 フレアスカート Copyright 片野晃司 2007-01-03 16:37:26
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