あの丘へ
まほし

ドアをあけたら
新年はじめての
ひんやりした外気が
メントールのリップをぬった
くちびるに染みて
まだ夜も明けきらない街灯りへ
飛び出していく


銀河鉄道のように
走っていって
めざすは駅
改札をくぐりぬけ
自動販売機で
ルビー色の熱い紅茶の
ペットボトルを買って
砂時計をかたむけるように
あおいだら
くちびるにようやく
赤みがさした気がした


 もうすぐ、電車がくる


昨日の想いは
一瞬のうちに
去年に流されてしまったけど
プラットホームで
とくとく高鳴る心は
今年にむかって
発車ベルを響かせる


 もうすぐ、朝がくる


コートのポケットで
ふるふる震える携帯電話
なつかしい名前と
約束の時と場所を
たしかに結ぼうと
文字がおどっている


 あの丘へ


 赤い日が
 あたらしい空を
 あたためるあの丘へ


 ふたり、手をつないで







自由詩 あの丘へ Copyright まほし 2007-01-02 08:58:07
notebook Home 戻る  過去 未来