眠らない人
ピクルス

 
影を慕うように歩いた
いつか座ったベンチは
同じ赤色のままで
覚えてるかい
と問うので
耳を塞ごうとして
その中途で迷った

ギターを弾きたい
ギターを弾きたい
こんな夜には
どんな夜だって
目覚めたままの人の
追憶の弦を指は忘れない
どんなに上手に弾ける
こんなにも懐かしくない
その、
伐りたての樹根の歌は

余韻に酔えるほどの軽さなら
漂って一輪にもなれよう
浮かべぬほどに重いなら
石女の無口が救うだろう
流れない水が澄んでいる
メジャー・コード指で探して
夜だけが独り
起きている

立ち去ってゆく残像が
淋しくないなら嘆かない
帰ってきた人は
やがて帰ってゆく
選ぶには溢れ過ぎて
せめて零れてゆく流れを
あの海に連れてって

眠らない花だけが
夜に音を拾う
拾い損ねては
ばかだね、と笑って
ちゃんと拾っては
ばかだね、と笑った

星の下に夜がある
夜の下に星がある




未詩・独白 眠らない人 Copyright ピクルス 2006-12-26 10:38:00
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