三日月
船田 仰

空に挟まった三日月が目覚めて
非常階段でぼくはお腹のあたりを気にしてる
睫毛に乗っかるすばやい冷たい、風速は冬
あいかわらずきみは頭上に世界を背負ってるんだろう
右肩にだけ残る重み
まばたき、風速三日月より凛

丁寧にすべらせた両足のさきっぽで
たぶんいくつかの信号を無視していて
だからさみしく生命線より長い沈黙
耳元で
あかりっぽい街の感触をつかむ
ひとりだから
沈黙は無言にはならない

グラスの中で所在無さげな氷が音をたてる
からん
溶けきれないよねぇ
きみの前髪がウェーブして
ぼくのはじっこをつかんでくれるのを待っている気がしてる
からんからん
何本か既に据えられてしまった柱が
十二月の視界をちらほら横切るもんだから
咳払いもうまくない
三日月のうえとしたにわだかまる空
面接されるのは、風速冬で
おなかのあたりをかすめる帰り道までのやさしさ
そしてかえりみちのやさしさ

言い訳もなく今日を明日にして
溶けきれずそこに浮かんで
抜けてゆく



未詩・独白 三日月 Copyright 船田 仰 2006-12-23 22:33:47
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