サーモ
田島オスカー


夏よりもわずらわしい温度
記憶ばかりを鮮明にしてしまうから

ふと
何かを考えてしまう時はたいてい
君の手のひらの温度を思い出してしまう時だ
何も知らないという顔をして
巧みに僕を導いたりした
そういう時の欲のかたまりみたいな温度
僕には何も見えていなかったのだと
君の目が僕を責めていたようだったので
ふと
何かを考えてしまう時はたいてい
そうなのだ
そうなのですよ

夏よりもわずらわしい温度
もう直に触れることもない
夏よりもずっと遠くにある
そういう悲しい悲しい温度

 


自由詩 サーモ Copyright 田島オスカー 2006-12-08 06:25:42
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