それからの天気予報
ピクルス


街路樹の堅い葉は濡れて踊りだす
無愛想な舗道は墨絵になって
走りだす鞄と鞄と
迷っている靴
戸惑っている乳母車
泣きそうな晴れ着
得意そうに廻るアンブレラ
街は雨に沈んでゆく
巡る水の祭りが始まる

(行き交う車の音が
ぜんぶ和鳥の鳴き声だったなら
雨に煙る交差点から
一斉にはばたく瞬間は
さぞかし)

ヘッドライトが笑顔に描かれた車は
天才の絵の中にしかない
渋滞に苛立つドライバーに
謝りたくなるのは何故だろうか

傘をさしたなら雨に濡れないという迷信
大切な日だから晴れてほしいという身勝手
俺達は死体ゴッコに興じながら
私達は難しい本を諳じながら
それでも明日の天気予報を気にしている

信号は赤なのに
自信に満ちて渡る人達
信号が青に変わっても
渡れずにいる人達
何れにも
雨の降るわけがある




未詩・独白 それからの天気予報 Copyright ピクルス 2006-11-26 13:32:38
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