子どもの隣り (灰谷健次郎さんを偲ぶ)
まほし

わたしのなかにも
ちいさな子どもがいて、
大人になってしまったわたしを
おおらかに抱きしめているのだろう。


それに気づかせてくれたのが
あなただった。
小学校の先生をしていたという
あなたは
ちっとも先生らしくなくて、
先に生きることなんてしなくて、
隣りに寄り添って話をしてくれるような
そんな陽だまりのような人だった。


 いのちは
 けっしてちっぽけではなくて、
 自らぐんぐん伸びていこうとする
 巨木を秘めたドングリのようにたくましくて、
 どんなに重いくもり空を背負っても、
 みんなの痛みを忘れたりなんかしない。
 こころをぎゅっとしぼれば
 熱い雨がぽたぽた落ちてくる。
 からだの血となってかけめぐる
 いとおしい人たちの涙が・・・



ところが、あなたは、先にいってしまった。


天に瞳をこらすと
背もたれていた木は
どんどん蔭りと光りを深めて
隣りに転がるドングリひとつ。
今さらあなたの大きさに気づくなんて。


 あなたはいなくなったんじゃない。
 かくれんぼしているだけ。
 まだここにいる。
 ここにいる。











平成十八年十一月二十三日に亡くなられた
灰谷健次郎さんに寄せて





未詩・独白 子どもの隣り (灰谷健次郎さんを偲ぶ) Copyright まほし 2006-11-25 22:17:37縦
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