ノート(ひろく 白く)
木立 悟





白く大きな建物が倒れ
道に大量の湯を噴き出していた
蒸気と飛沫がとびまわり
離れても離れても熱さは変わらず
自転車を手で引きながら
白いかたまりを見つめていた



建物はますます白くなり
湯の音のなかに消えていった
戦車が二台
車をつぶし はねとばしながら
蒸気のなかに消えていった
壊れた曲がり角の破片が散らばり
やがてもそれらも白くなった



湯は流れずに
ころがりつづけた
道をわたれずに
自転車で引き返した
ふりかえると車輪の轍が
黒く双つからまりながら
どこまでも白から逃れていた















未詩・独白 ノート(ひろく 白く) Copyright 木立 悟 2006-11-25 20:39:13
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