体温
水町綜助

冬が秋に流れ込むとき

夜に長い雨が降って

切れ味の鈍い刃物みたいなつめたさの水が

体と体の間に滔々と流れた

僕はとある地方都市の道の真ん中で生まれて

都市計画がめずらしく成功した広い道路を

ぐしゃぐしゃの頭を手で掻き回してあるいていた

あなたは南アルプスとか言う山に抱かれた小さな町で生まれたらしいね

僕は行ったことはなかったけど話に聞くととてもきれいなとこらしい

今度行ってみるよ


記憶の中の太陽のひかり

ひとしく別々の町を照らした

オレンジ色と透明の光線は攪拌した

アップルタイザーとあたたかいミルクを

同じ記憶の中の国道

僕が速く速く時を回すために

まるで時計みたいな二つの車輪を

息も出来ないくらいのスピードが出るまで

回し続けていたとき

あなたは僕の

風で絡んだぱさついた髪の毛に

「でも車輪は時計とは逆に回っているよ」

とつぶやいて聞かせた

僕は途方に暮れて

町の上にぽっかりと空いた

重大なミステイクみたいな空を仰いだ

それは遠い遠い彼方とでもいいたくなるような青色で

さみしいかわりにとても綺麗な色だった

僕は車輪を止め

冬の空気にさらした冷たい体その体温を

頬を触って感じた



失望と挫折は僕に挨拶を

恋愛は革命で僕に強いKICKを



まぁじっさいはそのどれもが

訪れた瞬間に去ってしまっていたのだけれど

あとはFREEWHEELでさして大変じゃない

熾火は僕の頬を赤く染めた

まだ冷たい体には二文字の名前の付いた二十一歳の血の袋

僕はなめらかなそれを強く抱きしめて


とけようとして


頭の中が白くなるほど強く抱きしめて


あたたまって


あたたまって


つぶやいて


うらぎって


うらぎって


うらぎって


あたたまって


すてた




知らない町の中のアパートの一部屋に
















もう無くなったあたたかな体温

あたりまえのように風景は流れだし


車輪は回りだした


自由詩 体温 Copyright 水町綜助 2006-11-25 19:41:47
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