閃光
杉菜 晃




電車が大都市のビル群を

抜け出すと同時に

車内に閃光が走った

乗客はすわ核爆発と

その場に伏せ 

椅子の陰に身を隠した



しかし十人ほどは

吊革に掴まったままだ



間もなく

雲の裂け目に跳梁する

夕日の悪戯と分かって

元の状態に戻った



十人は依然吊革に掴まったまま

乗客の慌てふためきにも

その後の反応にも関心を示さない



おそるべきは十人の内実だ

核爆発をも懼れない

世に疲弊し絶望しているものが

一車輌に十人はいるということだ

百人の乗客がいたとして

十人は十パーセントに当たる

私もその中の一人だ







未詩・独白 閃光 Copyright 杉菜 晃 2006-11-21 15:03:03
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