ジギタリス・ブリュ
ピクルス
『亜紀子さんや、小遣いくれんかの?』
「また、ですか。昨日あげた二千円は、どうしたの?」
『あ?…あれは、もう使ったから無いんじゃ』
「もう、まったく!ウチだって楽じゃないんですからね。お爺ちゃんだって、自分の年金があるでしょうが」
『年金は…使うてしもうた。なぁ、小遣いくれんかの?今日はな、みんなでゲートボールするんじゃ。行かんと仲間外れにされるんよ』
「…ふぅ。しょうがないわね、幾ら?」
『えぇと…三千円』
「ゲートボールに?」
『あ、いや、だから、その後でコーヒー飲んだりカラオケしたり。うひ、そんな怖い顔せんでや』
私の、お爺ちゃんはケチで近所でも有名でした。
だから、お爺ちゃんが死んだ時には、パパもママも、なんだか少しホッとしているように見えました。
お爺ちゃんの最期の言葉は『通帳…』だったそうで、私、ガッカリしたよ。
形見分けの時です。
ママが大きな声で泣き出しました。
ママの手には、お爺ちゃんの通帳が。
そこには、ママからせびった小遣いと、お爺ちゃんの年金が、一円も使われる事なく貯められていたのです。
通帳の名義には、
私の名前がありました。