『優先席』
李恵



電車で席を譲ると何故か優しいねといわれる。

優しいねはちょっと違うんじゃないの?

いつも思いながら、うん。
暗黙のルールって言うじゃん。

ああ、それ?



よくわからないけど、
道を教えるときも優しいね。
信号が渡れないおばあちゃん誘導したときも優しいね。
スラロープの場所教えても優しいね。

なんだかへんな響き。

違和感、感じます。



自分が車椅子で段差登れなかったとき
助けてくれたお兄さんに「ありがとう」といった。
優しい人だって、思った。
他の人は見て見ぬ振りだったから。


周りの人はその兄さんを優しい人だっていった。

でもさ、でもさ、
当たり前のことができる人を優しい人だといってしまったら
他の人はなに?



普通の人、一般人。
当たり前。
普通の人以下、人間じゃない。
言い過ぎ。




シモーヌ・ヴェイユはこう言った。
憐れみと感謝がまなざしを交わしあうとき、
そのまなざしが出逢う一点にのみ神が現存する。

神様は当たり前のことができない人間をよく知っている。


私も、そう、思ったりする。
神様なんて信じちゃいないけど。




神様、そういうの管理してんだったら平等にしたまえ。

偽善者だなんて思われたくないぞ、ちくしょう、ちくしょう。


散文(批評随筆小説等) 『優先席』 Copyright 李恵 2006-11-08 16:35:06
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