『優先席』
李恵
電車で席を譲ると何故か優しいねといわれる。
優しいねはちょっと違うんじゃないの?
いつも思いながら、うん。
暗黙のルールって言うじゃん。
ああ、それ?
よくわからないけど、
道を教えるときも優しいね。
信号が渡れないおばあちゃん誘導したときも優しいね。
スラロープの場所教えても優しいね。
なんだかへんな響き。
違和感、感じます。
自分が車椅子で段差登れなかったとき
助けてくれたお兄さんに「ありがとう」といった。
優しい人だって、思った。
他の人は見て見ぬ振りだったから。
周りの人はその兄さんを優しい人だっていった。
でもさ、でもさ、
当たり前のことができる人を優しい人だといってしまったら
他の人はなに?
普通の人、一般人。
当たり前。
普通の人以下、人間じゃない。
言い過ぎ。
シモーヌ・ヴェイユはこう言った。
憐れみと感謝がまなざしを交わしあうとき、
そのまなざしが出逢う一点にのみ神が現存する。
神様は当たり前のことができない人間をよく知っている。
私も、そう、思ったりする。
神様なんて信じちゃいないけど。
神様、そういうの管理してんだったら平等にしたまえ。
偽善者だなんて思われたくないぞ、ちくしょう、ちくしょう。