優しい河馬などいない
田島オスカー


ほら、見て御覧、満面の笑顔など何処にもない、




一度きりの夢が
僕を蝕んでしまったことがある
毎晩その夢の続きばかり願っていた
学習など嫌い
全てがもやの中で僕を待っていて欲しい

ライターを取り損ねて
椅子の上で泣く僕は
永遠の無垢をテーマに
百本のマッチを擦ることを決めた
六本目で
やめた

一度見た夢がもう思い出せない
悲しい大人のふりをした
本当はさいなまれて
いつまでも事実を握れないクソガキの僕が

九十四本のマッチを床にばらまいて
上から水を垂らす
徐々に広がるしずくが
きっと僕を大人にしてくれるはずだった





満面の笑顔など、どこにもなかっただろう、
一度きりだった夢が知らない男になって
残りの水を僕に垂らしてゆく
 


自由詩 優しい河馬などいない Copyright 田島オスカー 2006-10-17 01:51:14
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