【 羊水 】
豊嶋祐匠

  
  
  
  白が白じゃなくなる。
  
  黒が黒じゃなくなる。
  
  好きなものが妙に疑わしくなる。
  
  嫌いなものが少しだけ綺麗に見える。
  
  純粋が無意味に思える。
  
  優しさが嘘っぽく聞こえる。
  
  
  君が生きて来たこの20年とは
  
  きっと
  
  母の胎盤に包まれた世界と
  
  さほど変わらなかったかも知れない。
  
  
  羊水で満たしていた心は
  
  不安な空洞を見せ始める。
  
  
  手触りが変わり色が変わる。
  
  匂いも音も。
  
  
  人もまた
  
  去る者と来る者が現れ
  
  君の価値の在り方を
  
  変え始めて行くだろう。
  
  
  君が君らしく無くなるのは
  
  誰が悪い訳ではなく
  
  お節介な訳でもなく
  
  新たな感性は
  
  けして君への裏切りではない。
  
  
  君がこれから触れる出来事に
  
  急ぎ足で理由をつけないで。
  
  
  なぜ変わったのかと
  
  理由を聞かないで。
  
  
  
  誰かが答えた理由など
  
  君の邪魔になるものばかりだから。
  
  
  
  


未詩・独白 【 羊水 】 Copyright 豊嶋祐匠 2006-10-16 01:49:01
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