布レンズ
田島オスカー
少しも嬉しくないのだ、という顔をして
柔らかく笑う君が
この手の中に入ってしまえば良いと思った
誰も
許さなかったけれど
喉の奥が鳴って
もっとずっと奥が痛む
そういうやりとりが僕らの普通だった
君はそれを当たり前だとは思わずに
そうだね
僕の過信だった
いつも指の先だけをつないでは
遠くの山のくぼんだところを
ふたつ、みっつ、と数えて泣いて
そして暗くなる前にさようなら、を
だっていつだって君は
僕の目を見て頷いてくれた
暗くなってしまっては意味がないから
遠く離れてしまった君は
いつまでもいつまでもお友達だった
それは素晴らしい夕暮れで
一人山並みを数えていた時の思い
泣いたりしないよ
泣いたりはしない