布レンズ
田島オスカー


 
少しも嬉しくないのだ、という顔をして
柔らかく笑う君が
この手の中に入ってしまえば良いと思った
誰も
許さなかったけれど


喉の奥が鳴って
もっとずっと奥が痛む
そういうやりとりが僕らの普通だった
君はそれを当たり前だとは思わずに
そうだね
僕の過信だった

いつも指の先だけをつないでは
遠くの山のくぼんだところを
ふたつ、みっつ、と数えて泣いて
そして暗くなる前にさようなら、を
だっていつだって君は
僕の目を見て頷いてくれた
暗くなってしまっては意味がないから


遠く離れてしまった君は
いつまでもいつまでもお友達だった
それは素晴らしい夕暮れで
一人山並みを数えていた時の思い

泣いたりしないよ
泣いたりはしない

 


自由詩 布レンズ Copyright 田島オスカー 2006-10-10 00:26:37
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