古典詩ほうらむ(第二段)
ぽえむ君

今は昔、をとこありけり。
いとあやしき箱の詩歌の会にしげく通ふ。
投げ打ちたる文、すなはち返し給う局ありけり。
誰にか会はむと入りしかども、いらへなかり
ければ、つれづれなることを語るうちに、女、
入り給ふ。
大人なりければ、おくゆかしとて女の歌を
見やれば、いみじふかたき歌なり。
つきなしと思ゆるうちに、ほかより人入り来て、
今めくことににぎははしければせむかたなし
とて放つ。

 山里は人も心も隔てらむ
  虫の音響く一人寂しき

と詠みて寝ぬ。

(現代語訳)
今では昔の話になっしまいましたが、男がいました。
とても不思議な箱(パソコン)の詩歌の会に何度も
通っていました。
(その詩歌の会に)文を投げいけると、すぐに返事
が返ってくる部屋(チャット室)がありました。
(男は)誰かに会えるだろうと(思い)その部屋に
入ったけれども、返事がなかったので、思っている
ことを書き込んでいるうちに、ある女性がその部屋
に入ってきました。
(その女性が)年頃の人だったので、(男はその女
性を)もっと知りたいと思って女性の歌を見たところ、
とても難しい歌でした。
(自分には)似合わないと思っているうちに、外から
人が(その部屋に)入ってきて、今の話などで賑やか
になったので、仕方がなく離れました。

 山里に住んでいては人も心も隔ててしまうものだ
  虫の音はあんなに響いているのに一人孤独なの
  は寂しいものだ

と歌を詠んで寝てしまいました。


未詩・独白 古典詩ほうらむ(第二段) Copyright ぽえむ君 2006-10-05 11:02:53
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