究極のそば屋
二条 敬

プレハブ造りの小屋
緑色の大きな『究極そば』の看板
客が来たとたんに電気をつけた。
私はいったいどこが究極なんだという気持ちを抑えて店に入った。
店内は予想以上に広かった。おばあさんが一人でやっているらしい。
とりあえず座敷に座り、メニューを見ると、

    メニュー
究極のそば
 もりそば    600円
 天ぷらそば   1200円

手打ちそば
 もりそば    500円
 天ぷらそば   1200円

と書いてあった。
究極のそばは手打ちじゃないのかとか
何で天ぷらそばの値段が一緒なんだとか
色々な言葉が一瞬頭の中をよぎったが、
何とか押し堪えて注文しようとした。
だが、究極のそばくださいなんて
なんだか気恥ずかしくて言えない。
「もりそばください」
とそう言った。
するとおばあさんは、「究極の?」と軽い感じで聞いてきた。
そりゃあ確かにもりそばは二種類あるけど・・・
おばあさんよく口に出せたなあ。

そばが運ばれてきた時目を疑った。
そばが三層に分かれ、真ん中が緑がかっていたのだ。
これは期待できる!

食べてみると・・・普通だった。
普通においしかった。そこで、よくよく考えてみると、
あのおばあさんは味じゃなくて麺のことを究極と言っていたのだと悟った。
味を捨ててでも麺にこだわるなんて・・・確かに究極だ!
そして、私はおばあさんの職人魂に感服しつつ、お金を払って店を後にした。





未詩・独白 究極のそば屋 Copyright 二条 敬 2006-09-17 01:45:46
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