饒舌な三遊間
たもつ
ふと右を見ると三塁手が君だったので
僕はすっかり安心した
うららかな春の日、デーゲームは淡々と続いている
スタンド、ベンチ、フィールド
いろいろなところからいろいろな声が飛び交っている
やあ、久しぶり
という一言から
僕らは話を始めた
今まで二人にあったことを
ありったけの言葉を使って話した
痛烈な当たりが二人の間を抜けていく
フライがポトリと落ちる
攻守が交代になり
デーゲームが終わりナイターが始まる
それでも定位置を動くことなく話し続けた
幾年かが過ぎ
球場は取り壊され駅ができたころになると
ようやく五年くらい前の話にさしかかる
「今、おしゃべりをしている三遊間の前にいるから」
僕らは待ち合わせの目印になった
いろいろな人がいろいろな格好で待ち合わせをしている
笑っている、怒っている、泣いている
うららかな春の日は淡々とすぎていく
今までのことを話し終えた僕らは
これからの話をすることにした