饒舌な三遊間
たもつ


ふと右を見ると三塁手が君だったので
僕はすっかり安心した
うららかな春の日、デーゲームは淡々と続いている
スタンド、ベンチ、フィールド
いろいろなところからいろいろな声が飛び交っている
やあ、久しぶり
という一言から
僕らは話を始めた
今まで二人にあったことを
ありったけの言葉を使って話した
痛烈な当たりが二人の間を抜けていく
フライがポトリと落ちる
攻守が交代になり
デーゲームが終わりナイターが始まる
それでも定位置を動くことなく話し続けた
幾年かが過ぎ
球場は取り壊され駅ができたころになると
ようやく五年くらい前の話にさしかかる
「今、おしゃべりをしている三遊間の前にいるから」
僕らは待ち合わせの目印になった
いろいろな人がいろいろな格好で待ち合わせをしている
笑っている、怒っている、泣いている
うららかな春の日は淡々とすぎていく
今までのことを話し終えた僕らは
これからの話をすることにした




自由詩 饒舌な三遊間 Copyright たもつ 2004-03-10 14:09:42
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