ビール券
あおば




スランプと呟くとちょろり水が出た

雨季だというのに今日も断水している
給水施設が老朽化して能力半減しているのだ
明日には復旧するという噂を聞くが
当てにならないから今日も
ポリタンクを持って飲み水を確保しに
給水車が来るのを待たねばならない

町のFM放送は財政支援を得ると約束している
単なるジョークに過ぎないのだが
選挙を念頭に置いた発言かもしれない

ノイズが多くて聞き取りにくい演説放送
隣家の息子の原付が電波を発しているのだ
ポポポ・ボツボツボツブッブッブー
いつまでも続くのでイライラする
若いくせになにをグズグスしているのだ
振られても知らねえぞ


給水車の時間が来たので外へ出たら
本物かどうか知らないが
新聞勧誘の男が麦酒券を配っている

ミネラルウオーターの支払いにも使えます
喉元まで出かかったが言えなかった
アイデアを無料で配りたくないのだ

断水している県営住宅の中で新聞を読む
雨が降っても雨樋は地下の下水に直結しているから
天水は虚しくなり、配達されることはない
さしあたり麦酒券を待つを仕事とするしかない

ゴミを燃したら水が出るかも知れない
良いアイディアだが特許権が無いから
実現性は考えられない

エアコンのドレインからも透明な水が出る
一日で4リットル位は出るので
飲み水には使えるかも知れないが
空気中の水分が凝結したものだから
そのまま飲むのは気味悪い
煮沸消毒した方がよいだろう
しかし
我が家のエアコンは数年前に故障して
室外機が半分腐りかかっているから
考えても無駄だと悟る



作01/06/13


未詩・独白 ビール券 Copyright あおば 2006-09-03 05:13:50
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