逸れた夜 
服部 剛

そのひととは、ついに重なることはなかった。 
どんなに重なっても、何かがはぐれていた。 

( 左手の薬指に、指輪が光っていた 

求めるものは、柔らかきぬくもりであった。 
それは、組み合わす手と手の隙間にあった。

瞳の内に瞳を映し
結んだ唇は
一時ひとときで離れた

( 消えゆくは、互いの間にたゆたう、微かな糸 

やがて、別れを告げた哀しい体は
独り夜に逸れて 
ファースト・フード二階の窓際から
千鳥足で路上を歩く酔いどれの唄に耳を澄ましながら 
夕餉ゆうげの鳥肉を頬張ほおばっていた 





未詩・独白 逸れた夜  Copyright 服部 剛 2006-08-29 21:01:09
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