暑中見舞 (旅先より)
ベンジャミン


各駅列車がゴウンとかガタンとか
あんまりうるさい音で行くので
旅の記録も記憶も
まるで陽炎のように歪んでしまいそうです

最近では冷房がしっかり効いていて
天井の扇風機はすっかり黙っています
それでも
人を飲んだり吐いたり忙しく
列車は誰かにとっては遠く
そして誰かにとっては近く
夏の断片を横切っているのです


風景はいつも
上手に描かれた絵画のように
ちょっと新鮮な印象を
わたくしの心象に重ねています

それを慎重にスケッチしようと
ペンを走らせるのですが
列車はガタゴトその速さより
先の目的のために働いています

仕方なく
わたくしは暑中見舞などと称して
こうして詩などを書いておるのです

まったくもって
情緒も何もないままに
蒸し暑い夜を
あと何度か通り過ぎた頃
それが思い出となるには
わたくしはまだ言葉足らずで

それこそ列車がゴウンとかガタンとか
蝉がミンミン鳴く方が
よほど詩的であることに

焼けた肌をいっそう赤らめながら
どうぞ皆様
素敵な晩夏を迎えられますように

誠に不精なわたくしの
これが暑中見舞でございます




夏わたり浮雲
日傘よろしく眩し
鉄橋からは
人が小さく眺められます




かしこ







自由詩 暑中見舞 (旅先より) Copyright ベンジャミン 2006-08-18 03:34:57
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