遠音
はな 


あなたは歌うような
あしぶみで

まぶしくかすむ
曖昧な 八月十五日、は
さいわい
のびやかな放物線をえがいて止まる

おともなく



あたしは
きょう
部屋のかたづけを終えて
くろいそらに
そっとはねあがったはなび を
掴みそこねる


あわい低気圧
ゆっくりと まわる
桜のおとが未だ
からからと鳴り 耳を うばう


なんということのない日だ
ちらちらと
希望もゆれているし
ことばなど
かんたんに溢れてしまって
ここんとこ 役立たずだ



あたしが焦げたら
熱いだろう
だってほのおがかさなるのだから
けれど紡ぐことは
とても曖昧で
かさなるより 容易くはなく



あの日
深夜のほてるで
あなたの
UFOキャッチャーで掴んだぬいぐるみが
湿気を すい取ってゆく
列車に包まれて見た
がらすにあたっては横にながれる
いつかの雨を
おもいだす



みどりいろの
夕立が去れば
あしおとをしのび
あなたは銀色のみちを来る
汗ばんだ手で
湿ったきょうを ぎゅっと掴んで




未詩・独白 遠音 Copyright はな  2006-08-17 21:49:09
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