車窓に雨、
AB(なかほど)

新しい病院へ向かう車の後部座席で
寝転がって窓の向こうを見ていた
お泊りはもういやなんだけど
指を銜えるほど
もうちっちゃい子供でもない

やがてドアが開き
傘をさしながら
ゴメン
と言った父の気持ちが
今でも判らない





同じ雨が降るわけじゃない
同じ雨が降るわけもない
もうすぐワイパーの向こうに
古くなってしまった県立病院が見えてくる
聞けば父は答えてくれるだろうか
覚えているわけもないのに

同じ雨が降るわけじゃない
父にも
同じ雨が降るわけもない

静かに停まった駐車場で
どこからともなく
ゴメン
と聞こえたのだが
それは父の声ではなく
僕の声なのか
同じ雨が降るわけもないのに




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未詩・独白 車窓に雨、 Copyright AB(なかほど) 2006-08-10 00:05:31
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