フラグメンツ(リプライズ) #41〜50
大覚アキラ
#41
青い瞳からは
青い涙が
こぼれるものだと
思っていました
#42
オリジナルという名のコピー
コピーとしてのオリジナル
オリジナルなコピー
コピー的なオリジナル
オリジナリティ豊かなコピー
コピーよりも劣るオリジナル
オリジナルイコールコピー
コピーイコールオリジナル
#43
おばけよりも
こわいのは
おばけのことを
かんがえてしまう
わたしのこころ
どうして
こんなにも
おそろしいおばけを
かんがえることが
できるのでしょう
それが
こわくてなりません
#44
ぼくの人指し指の先っぽに
一匹の小さな猫がいる
小鳥のように指先にとまって
不機嫌そうに尻尾を振って
先生
だからぼくは
字が下手なんです
#45
声を盗まれたソプラノ歌手と
言葉を盗まれた詩人が
犯人探しの旅に出た
旅の途中で二人は恋に落ちて
ただの男と女になって
犯人探しなんか忘れてしまって
仲良く幸せに暮らしましたとさ
#46
わたしがもし
あなたよりも先に
死んだら
わたしの名前を
一日に一回
ちいさく呟いてください
あなたがもし
わたしよりも先に
死んだら
あなたの名前を
わたしの身体のどこかに
ちいさく刺青します
#47
ノッポのガリガリと
チビのデブデブを
足して2で割ったら
どうなるでしょう
正解は
チッポのデリデリと
ノビのガブガブに
なるのですよ
#48
錆だらけの列車が
猛烈なスピードで
背骨を往復している
時間という名の
重い貨車を牽きながら
終着駅まで
無事に辿りつくことは稀で
運良く終着駅に着いたとしても
その頃には
貨車の中身は
空っぽになっている
#49
魔神みたいな雲が
山をまたいでやって来て
季節は夏になった
夏の記憶には
いつも
父の姿が欠落していて
そこにあるのは
汗で湿った母の手の感触
父は魔神に攫われたのか
それとも
父が魔神だったのか
#50
頬伝う一筋の涙塩辛く
荒れ野の果ての大海を思う
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