イメージを…(誤訳)
若原光彦

原文



閉じられた扉をこじあける力より
閉じられた扉を塗り込める力がほしい

もっと全てのイメージを
もっと全てのイメージを
もっと全てのイメージを力強く
夢を見る必要がないくらい

目を閉じて飛んでいる鳥を思い浮かべている
60分の1秒ごとにかたちを変える翼がある
晒しもののその秘密が知りたい
奇跡をおこなう側に変わろう
飛ばないものをぶっ飛ばしてやりたい

閉じられた扉をこじあける力より
閉じられた扉を塗り込める力がほしい
内側に向かって開かれていく箱に
大きな窓をひとつ作ろう
唇をふさぐ指を立てよう

もっと全てのイメージを
もっと全てのイメージを
もっと全てのイメージを力強く
二度と夢を見る必要がないくらい
幸せになる必要がないくらい強く
神様を拾ってしまいそうなくらい計りしれなく





誤訳A



閉じた扉を開くんじゃなくて
閉じた扉を 塗り込められるようになる

あらゆる想像
あらゆる想像
もっとあらゆる想像を鮮やかに
夢を見る必要もない

飛んでいる鳥を目を閉じて思い描く
1コマごとにフォームを変えていく翼
野ざらしのたちの秘密を教えてよ
奇跡をおこなう側に成長しよう
飛ばないものを突き飛ばして遠く

閉じた扉を開くんじゃなくて
閉じた扉を 塗り込められるようになる
壁に囲まれた広い空間に
天窓を用意しておくよ
あなたのくちびる 指でふさいであげる

あらゆる想像
あらゆる想像
もっと あらゆる想像を鮮やかに
もう夢を見る必要もない
幸せを祈る必要もない 狂うほど
神様を拾ってしまうなんて考えられない






誤訳B



閉ざされし門を開け放つ資格など要らぬ
閉ざされし門を塗り込める者で居よう

全ての千里眼を超える
全ての千里眼を超える
全ての千里眼を繋ぐ千里眼を
予想に期待に憶測も必要無い

飛ぶ鳥の姿が瞼に再現する
無限に柔らかな翼を知っていた
オープンソースの秘密の再理解を望む
奇跡を取り仕切る一群の升席
飛ばない者達を飛ばすこの腕を持て

閉ざされし門を開け放つ資格など要らぬ
閉ざされし門を塗り込める者で居よう
箱は内側に拡張し続ける
光を取り込む窓がひとつ
秘密を守るための命令がひとつ

全ての千里眼を超える
全ての千里眼を超える
全ての千里眼を繋ぐ千里眼を
もう予想に期待に憶測も必要無い
幸福などはもう語るに墜ちた
神様を拾えるほどに超えてゆく






誤訳C



しめだされちゃったドアのカギなんかほしくないよ
そんなドアならこっちがしめだしてやるんだ

もっとなにもかも見ていたいんだよ
もうなにもかも見ていたんだよ
もっとなにもかも鮮やかになるよ
夢を見る必要もなくなったね

いつか見た鳥の姿を思い出してるのさ
みるみるうちに翼が風をつかんでいた
むきだしの魔法を解明したいのさ
魔法使いに生まれかわるんだ
飛べないという気持ちをまず飛ばしてみるよ

しめだされちゃったドアのカギなんかほしくないよ
そんなドアならこっちがしめだしてやるんだ
どんどん深くなっていくよこの箱は
窓をひとつだけ添えておくから
だれにも言わずに飛び込んでおいで

もっとなにもかも見ていたいんだよ
そうなにもかも見ていたんだよ
もっとなにもかも鮮やかになるよ
ああ夢を見る必要もなくなったね
幸せなんか望みもしないよ
考えられない神さまを拾ってしまいそうだよ






誤訳D



扉を押し開く豪腕よりも
ここに扉を埋め立てる技術力を今

今以上に完全な世界を
今以上に完全な世界を
エネルギッシュに完全な世界を
妄想している場合ではない

飛んでいる鳥を脳裏に活写する
全ての時間に違った形がある
素肌の秘密を流し込んでくれ
奇跡的な加害者として旅立つとしよう
飛べぬ者達を吹き飛ばしつつ

扉を押し開く豪腕よりも
ここに扉を埋め立てる技術力を今
内面に展開する立体へ
大きなスクリーンを掲げるとしよう
あらゆる発音を禁じるとしよう

今以上に完全な世界を
今以上に完全な世界を
エネルギッシュに完全な世界を
妄想している場合などではない
満たされることをもう期待などしない
神を見い出してもなんら不思議はない


未詩・独白 イメージを…(誤訳) Copyright 若原光彦 2006-07-03 19:22:08
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